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戦車道の試合を離れた少女たちの日常を、各校ごとに描くオムニバスが幕を開けた。聖グロリアーナにはオレンジペコそっくりの小さな少女が現れ、大洗女子ではスポーツテストを前にプール掃除が始まる。ダージリンの意外な憧れ、大洗に紛れ込んだサンダースのスパイ、そして大洗へ潜入するアンツィオの面々まで、にぎやかな第1話を学校ごとに一つずつ振り返る。




聖グロリアーナに現れたミニペコ
『ガールズ&パンツァー もっとらぶらぶ作戦です!』第1話は、聖グロリアーナ、大洗女子、審判員の3人、そしてアンツィオと、場面を次々に切り替えながら進むオムニバス形式の回だった。戦車道の試合はひとつもないのに、おなじみの面々の素顔がたっぷり詰まっていて、本編を見てきた人ほどにやりとさせられる楽しい幕開けだった。
ペコが二人
最初の舞台は聖グロリアーナ女学院。ダージリンとアッサムの前に、いつもよりさらに小さなオレンジペコが現れる。思わず、あそこまで小さかったかしらと首をかしげる二人。お茶をいただいてしまって申し訳ないと恐縮する小さな少女に、全部飲んで、全部食べてとお菓子まで勧める歓迎ぶりがほほえましい。
そこへ本物のオレンジペコがやってきて、ペコが二人という事態に。正体は、聖グロリアーナに憧れているオレンジペコのいとこだった。髪型までそっくりにして、お弁当を届けに来たのだという。紅茶の飲みすぎでペコがさらに小さくなったわけじゃないのね、というダージリンのとぼけた反応には、思わず笑ってしまった。
ダージリンはさっそく彼女を「ミニペコ」と呼び、すっかり気に入ってしまう。いつも優雅なダージリンが、小さな後輩候補に目を輝かせる姿は、本編ではなかなか見られない一面だった。ミニペコという呼び名を本人が不思議がるやりとりも、かわいらしくて楽しい。
憧れの肩車
ミニペコにお願いがあると切り出したダージリンが望んだのは、肩車だった。これがしたかったのよ、と満足げなダージリン。ノンナさんの気持ちがわかったわ、という一言で、プラウダのカチューシャとノンナを思い浮かべた人も多いはずだ。他校の名物コンビへの憧れが、こんな形で表れるとは思わなかった。
これからはミニペコの時代だわと上機嫌のダージリンに、アッサムまで私にもさせてくださいと名乗り出る。けれど、高くてちょっぴり怖いですとミニペコに言われてしまい、夢はあっさり崩れていく。「肩車の夢はもう捨ててください」という冷静なツッコミが、聖グロリアーナらしい上品な笑いを締めくくっていた。
それでも、なせばなるわ、体勢を整えればと食い下がるダージリンの往生際の悪さが、なんとも愛おしい。格言好きで余裕たっぷりの隊長が、小さな少女ひとりにここまで振り回される。その意外性こそ、スピンオフならではの醍醐味だと感じた。
大洗女子のスポーツテスト
続いては大洗女子学園。毎年やっているのかと思いきや、例によって会長の気まぐれで行われることになったスポーツテストだ。けれどその前に、思わぬ大仕事が待っていた。
まずはプール掃除から
運動は我々の独壇場だと張り切るのはバレー部の面々。脳筋チームの汚名を挽回すると意気込んで、汚名は挽回しちゃダメだからとすかさずツッコまれる。頭まで脂肪が詰まってるなんてもう言わせない、そこまで言われてないから、というテンポのいい掛け合いに、本編と変わらない元気さを感じた。
ところが、会長が言い忘れていたのは、まずはプール掃除から始めなければならないということ。水泳部の予備プールをきれいにしたら自由に使っていいという約束なのだ。めんどくさいと言いながらも、やってみようかと楽しそうにデッキブラシを手にする仲間たち。こういうのって学園生活っぽくていいなあ、というみほのつぶやきに、彼女がここで手に入れた日常の尊さがにじんでいた。
夏らしい明るい色彩の中、水をかけ合いながら掃除を進める光景は、見ているだけで気持ちが晴れやかになる。戦車に乗っていないときの彼女たちの、ごく普通の高校生らしさが、まぶしいほどに描かれていた。
チームごとの個性
掃除の最中にも、各チームの個性が次々に顔を出す。こういうのを着るのはほぼ初めてだと照れるアリクイさんチームは、プールに入るのは10年ぶりくらい、こんな日の下に出るのも久しぶりと、筋金入りのインドアぶりを発揮する。戦車道をやらなければこんな機会は一生なかった、という言葉には、戦車道が彼女たちの世界を広げたことがさりげなく表れていた。
一方、華はプールの隅に生えた草を見ると血が騒いでしまい、デッキブラシを使った生け花を披露してしまう。優花里が草を抜こうとすると、お花さんに罪はないと必死に止め、「ここでしか咲けない花もあるんです」と訴える。華道の家に生まれた華らしい、ずれているのにまっすぐな情熱がおかしくてたまらない。
さらに、時代がかった名乗りを上げて草に切りかかり、「またつまらぬものを切ってしまったぜ」と決めてみせる者まで現れる。まだ寝ている麻子には、起きなさいと声が飛ぶ。誰もがいつもどおりで、本当にいつ終わるのかと心配になるほどのにぎやかさだった。
アメリカ人観光客を名乗るスパイ
そんな大洗女子に、戦車の大好きなアメリカ人観光客を名乗る怪しい人物が現れる。正体はサンダースのアリサだ。我ながら完璧な変装だと自信満々で、「大洗の重要機密を徹底的にスパイしてみせるわ」と息巻く。けれど、どう見ても怪しすぎる姿に、大洗の面々は口々にスパイですね、スパイだね、スパイだなとささやき合う。
体が温まったところで始まったのは、なんと騎馬戦大会。あんこうチームが勝ち抜き、アリサは西住みほの存在にひそかに目を光らせる。ところが、人数が足りないからと会長に手伝いを頼まれ、カメさんチームの一員として決勝のバトルロイヤルに参加することに。スパイが敵陣のチームに組み込まれてしまうという展開には、腹を抱えて笑った。
最後は、お久しぶりですと現れた優花里の一言で、ついにスパイだと見破られてしまう。捕虜の扱いは戦車道規則に従ってもらうわよと強がりながら、生きて帰ってこの情報をサンダースにと決意するアリサ。一方そのころ、ケイとナオミはスパイ騒ぎにも我関せずで夏を楽しんでいる。必死なアリサと、のんきな隊長たちとの温度差が、サンダースらしくてたまらなかった。
審判員たちの打ち上げ
3つ目の場面は、いつも試合を裁いている審判員の3人、篠川香音、稲富ひびき、高島レミが主役だった。普段は公平な立場から選手たちを見守る彼女たちの、知られざる素顔がのぞく一幕だ。
清く正しくつつましく
試合後、大洗の生徒たちからお弁当を作りすぎたので、と差し入れを勧められる3人。うれしそうなひびきとレミに対し、香音は賄賂だと疑われたら困るのはあちらだからと、きっぱり断る。「戦車道は清く正しくつつましく」という言葉には、審判としての誇りと責任感がにじんでいた。
特に大洗は初心者が多いから気をつけてあげないと、と気づかう香音の姿からは、厳しさの裏にある優しさが伝わってくる。けれど、ひびきは大洗の子たちを野球の審判のまねでからかって遊んだと楽しそうに語り、レミもプラウダの子たちで遊んだと打ち明ける。真面目な香音と、おちゃめな二人という組み合わせが、いいバランスだった。
おでん屋で飛び出す本音
打ち上げの舞台はおでん屋。お酒が進むにつれ、ひびきとレミは、香音だってアンツィオの試合後のパーティーにちゃっかり参加しているのを知っていると突っ込む。あの料理の誘惑には負けるでしょ、とうなずき合う3人。「でもお酒だけは出ないのよね」という本音に、思わず吹き出してしまった。
話題はやがて、出会いがないという切実な悩みへ。男のいない職場だと、うすうす危機を感じている様子だ。勝ち続けていたらファンがついてしまう、と浮かれる二人をよそに、香音はすっかり酔いが回っていく。そして、おはこを求められて香音が披露したのは、あの教官のものまね。「グッジョブ ベリーナイス」の一言に、映画やテレビシリーズを見てきた人なら思わず笑顔になるはずだ。大人になっても青春の延長線上にいるような3人が、とても魅力的だった。
アンツィオの大洗潜入作戦
最後の舞台はアンツィオ高校。ドゥーチェことアンチョビのもとで開かれた会議で、思わぬ爆弾発言が飛び出す。
「大洗の生徒になります」
本日の議題を発表しようとしたドゥーチェに、リコッタが大洗の生徒になると宣言する。パスタが気に入らなかったのかと慌てるドゥーチェをよそに、大洗のほうがお金を持っていそう、いつの間にか戦車が増えている、お嬢様っぽい子が多い、かわいい子がいた、と仲間たちも次々に乗っかっていく。あんこう鍋の屋台があるはず、おやつの時間は何になるかと、想像はどんどん膨らんでいった。
頼みの綱のカルパッチョは、困った人たちですねと言いながら、すでに大洗の制服に身を包んでいた。ある方にお願いして貸してもらったというその制服からは、あの人の匂いがするという。待ち人がおりますのでと去っていく姿に、裏切り者と叫ぶドゥーチェがかわいそうでおかしい。自分にいちばん正直だったのがカルパッチョという落ちが見事だった。
最後の頼みのペパロニも、大洗には戦車カツなるものがあるらしいと、レシピを盗んでくると張り切って出ていってしまう。たまには頭で物を考えてくれと嘆き、みんながいないと静かだなとつぶやくドゥーチェ。広い場所にひとり取り残された背中には、隊長の苦労と寂しさがにじんでいた。
大洗での一日
大洗女子に潜り込んだアンツィオの面々は、広い食堂に海鮮丼、テレビまでついた設備に、お金持ちの学校だと大はしゃぎ。カルパッチョはカエサルとの再会を楽しみ、その裏ではおりょうが予備の制服が見当たらないと首をかしげている。カエサルが貸した制服だったと判明するくだりは、二人の仲のよさが伝わってくるほほえましい場面だった。
ペパロニはバレー部にスカウトされて汗を流し、何をしに来たのかすっかり忘れてしまう。さらに、どこのクラスかと聞かれて、アンツィオのペパロニだとあっさり名乗ってしまう始末。潜入作戦とは思えない堂々とした正体の明かし方に、笑いが止まらなかった。
けれど、大洗にはアンツィオ名物のおやつの時間もなければ、屋台も出ていない。学園艦のパスタはもう品切れ。食べたいものが食べられない一行は、だんだん元気をなくしていく。憧れの場所で過ごしてみて初めて、自分たちの学校のよさが見えてくるという流れが、とても自然だった。
やっぱりアンツィオ
ぼろぼろになって帰ってきたみんなは、大洗はパスタがないし、屋台も出ていないし、おやつの時間もないと口々に不満を漏らす。女の子はかわいかったけれど、やっぱりアンツィオがいちばんだと、ドゥーチェのパスタを食べたいと言い出す仲間たち。そんな彼女たちを、ドゥーチェは特製パスタのパーティーで迎える。
振り回されっぱなしだったドゥーチェが、最後には笑顔でみんなを受け入れる。アンツィオという学校の温かさと、ドゥーチェへの信頼があらためて伝わってくる、すてきな締めくくりだった。
まとめと考察
『ガールズ&パンツァー もっとらぶらぶ作戦です!』第1話は、戦車戦のない日常の中で、各校のキャラクターたちの魅力をたっぷりと味わえる回だった。最後に、印象に残ったポイントを振り返っておきたい。
本編を知るほど楽しいオムニバス
肩車に憧れるダージリン、デッキブラシで生け花をする華、教官のものまねをする香音、カエサルに会いに行くカルパッチョ。どの場面も、テレビシリーズや劇場版、アンツィオ戦のOVAで描かれてきた関係性を踏まえたうえで成り立っている。長年このシリーズを追いかけてきたファンへのご褒美のような一話だと感じた。
そして、短い場面をテンポよくつないでいく構成のおかげで、登場人物がこれだけ多いのに、まったく散らかった印象がない。聖グロリアーナの上品な笑い、大洗のにぎやかさ、審判員の大人の悲哀、アンツィオのノリのよさ。それぞれの学校の空気感が、短い時間の中でしっかりと描き分けられていた。
戦車を降りた彼女たちの素顔
戦車道の試合では凛々しく戦う少女たちも、一歩戦車を降りれば、悩み、笑い、ふざけ合うごく普通の女の子たちだ。試合では見られない素顔こそが、このスピンオフの主役なのだと思う。肩の力を抜いて楽しめるこの作品が、これからどんな学校のどんな日常を見せてくれるのか、今から楽しみでならない。




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