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稀咲と天竺との抗争を終え、マイキーとの約束を胸に未来へ帰ろうとするタケミチ。その前に待っていたのは、相棒の千冬と仕掛けるホワイトデーのサプライズと、ヒナが抱えていた知られざる不安だった。12年後を約束した突然のプロポーズ、仲間たちが夢を叶えた12年後、そしてその輪のなかにいないマイキーの影まで、第52話を場面ごとに一つずつ振り返る。




千冬のホワイトデー大作戦
『東京リベンジャーズ【三天戦争編】』第52話「Be left behind the times」は、タケミチがついにたどり着いた幸せな未来と、その輪のなかにいない一人の存在を描いた回だった。千冬との掛け合いで笑わせる前半、ヒナへのプロポーズ、仲間たちが笑い合う12年後の世界。そして最後に突きつけられる不穏な影。幸福と不安が背中合わせになった一話だった。
2日前にタイムリープしたい
冒頭、タケミチは千冬に泣きついていた。2日前はホワイトデーだったのに、ヒナにお返しをするのをつい忘れてしまったのだという。俺はヒナに殺される、もうダメだ、と頭を抱えるタケミチの姿には、タイムリープの力を持つ主人公とは思えない情けなさがあって笑ってしまった。
そこで千冬が持ち出したのが、T2-D2大作戦。タイム、トラベル、ドキッ、ドキッ、大作戦の略だという。水玉模様の箱とリボンとメモ帳を使い、忘れていたお返しを劇的なサプライズに変えてしまおうという計画だった。女の子はいつの時代も水玉とリボン、そしてサプライズに弱いのさ、漫画に書いてあった、と得意げに語る千冬が頼もしいのかどうか、絶妙なところだ。
公園の暗号
計画はこうだ。3つの箱に2日前までの日付を書き、暗号を解いた先にそれぞれの箱を置いておく。行きは足で帰りはお尻、の答えは滑り台。こいでもこいでも前に進まないもの、はブランコ。そして最後の箱は砂場に置き、なかにはホワイトデーのプレゼントを入れておく。すげえよ千冬、俺タイムトラベルしてる、と感動するタケミチと、お前ソクラテス超えたよ、とまで持ち上げるやりとりは、まさに漫才のようだった。最後の箱を開けたら、今日じゃないとこのサプライズはできなかった、と一言添える。そこまで台本を用意してくれる千冬の面倒見のよさも、彼らしいところだ。
重い戦いが続いたあとだからこそ、二人のばかばかしいやりとりがいっそう楽しい。千冬という相棒がいてくれることのありがたさを、改めて感じる場面だった。
12年後の約束
いよいよヒナを呼び出したタケミチ。けれど、計画は思わぬ形で崩れていく。ヒナの口から語られたのは、タケミチが知らなかった彼女の苦しみだった。
ヒナの不安
ずっと元気なくてごめん、苦しいのはタケミチくんのほうなのにね、と頭を下げるヒナ。稀咲が目の前で死んだあの日から、ちゃんと眠れないのだという。稀咲のことも、エマのことも、全部ヒナのせいなんじゃないかって。明るく見えていたヒナが、ずっと一人で罪悪感を抱えていたことに、胸が締めつけられた。
そんなふうに思っていたなんて。タケミチは用意していた暗号も段取りもすっ飛ばして、いきなり指輪を差し出してしまう。物陰で見守っていた千冬が、砂場は最後だろ、と慌てる様子にも思わず笑ってしまった。
俺と結婚してください
俺、特技なんてなんもないし、お金持ちにもきっとなれない。でも君を幸せにしたい気持ちは誰にも負けないから。「俺と」「結婚してください」。ヒナが不安なら、安心できるように俺がそばにいて守る。だからもう泣かないでよ、12年後結婚しよう。
中学生のプロポーズとしてはあまりにまっすぐで、だからこそ胸を打つ。もちろん大人になってからだよ、急にプロポーズしちゃうんだもん、と照れるヒナの表情もかわいらしかった。タイムリープを重ねてきたタケミチが、この時代のヒナに未来を約束した瞬間だった。
最後の握手
そしてタケミチは、直人を公園に呼び出す。初めて握手したのもこの公園だった、だから最後の握手もここがいい。お前が俺を信じてくれて、未来のお前が俺を助けてくれたから今がある。じゃあ姉ちゃんも僕も助かったってことですか、という直人の問いに、ああきっと、と答えるタケミチ。千冬、ヒナ、未来で会おう。過去との別れを告げる、静かで温かな場面だった。
たどり着いた最高の未来
戻ってきた現代で、タケミチはなぜかタキシード姿だった。鐘の音、結婚式。まさか、と期待するタケミチだったが、スピーチを始めたのは、新郎のパーちんだった。
みんなが生きている
緊張してしどろもどろのスピーチをするパーちんに、仲間たちから容赦ない野次が飛ぶ。三ツ谷、ドラケン、千冬。みんなが生きている、みんなが幸せそうに笑っている。何度も絶望を味わってきたタケミチにとって、夢のような光景だった。
そこへヒナが声をかける。知ってるよ、タケミチくん。12年前の今日、こっちに帰ったんだもんね。待ってたよ、ずっとこの日が来るのを。おかえり、タケミチくん。12年分の思いが込められたこの一言に、思わず涙がこみ上げた。
それぞれの12年
今俺らに命があんのもお前のおかげってことだもんな、ありがとなタケミチ、と仲間たちは口々に感謝を伝える。俺一人じゃ何もできなかった、みんなが助けてくれたから、と返すタケミチもまた、この12年を支えてくれた仲間たちへの感謝でいっぱいだった。
パーちんは家業を継いで大金持ち。三ツ谷はファッションデザイナーとして大きなコンテストで賞を取り、八戒は海外で活躍するトップモデル。スマイリーとアングリーの兄弟はラーメン屋を営み、千冬は夢だったペットショップを開いている。ドラケンはイヌピーと一緒にバイク屋をやっていた。そして直人も生きていて、タケミチ君、ミッションコンプリートです、と告げる。今までで最高の未来。誰もがそう信じて疑わない世界だった。
よかった、生きてたんだな、と安堵するタケミチに、トリガーの僕が死んだらタケミチ君はこっちに戻ってこれませんし、と冷静に返す直人。姉さんのいる世界だ、という言葉には、姉を失い続けてきた彼の長い苦しみがようやく終わった安堵がにじんでいて、二人で積み重ねてきた戦いの重みが伝わってきた。
幸せの輪から消えた影
ヒナとの結婚式は3か月後。君はたくさんの人の人生を背負ってずっと頑張ってきたんだもん、その分いっぱい二人で幸せになろうね、と笑うヒナに、もう十分幸せです、と答えるタケミチ。けれど、その幸せのなかに、どうしても欠けているものがあった。
あの頃のまんま
タケミチは、ヒナのウエディングドレスを仕立てている三ツ谷の仕事場を訪ねる。知り合いがオーナーの建物の屋根裏を安く借りているだけだと謙遜する三ツ谷だが、独立したばかりでもう仕事が入っているのだという。タキシードの採寸では、動くなよ、と真剣な顔を見せる三ツ谷を、八戒が茶化してしかられる。東卍の特攻服以来だな、お前の服を仕立てるの、という言葉に、12年たっても変わらない仲間たちの距離感がにじんでいた。
相変わらず汚い部屋に帰り、レンタルビデオ店では店長と呼ばれる日々。それでも、でも幸せだ、とかみしめるタケミチの姿に、これまでの苦労が報われたのだと感じて胸が熱くなった。
マイキーはどこに
今日マイキー君は、と尋ねたタケミチに返ってきたのは、海外で飲食店を経営していて忙しいらしい、という答えだった。約束通りみんなを守ってくれたんだね、マイキー君、とタケミチは胸をなで下ろす。12年後また会う日まで、東卍のみんなもヒナちゃんも俺が絶対守ってみせる、というあの日の約束は、確かに果たされたように見えた。
ところが、スマイリーたちのラーメン屋で、話は思わぬ方向に転がる。白い豚骨がスマイリーで、黒い豚骨がアングリー。見た目に反して優しい味なの、とヒナが笑う、二人らしいメニューに和んだのもつかの間だった。東卍解散のときの記念写真を前に、次は全員で会いたいっすね、マイキー君も元気してるみたいだし、と言うタケミチに、スマイリーは、俺らもう10年以上会ってない、と答えたのだ。三ツ谷に聞いても同じだった。
イザナのピアス
さらにタケミチは、テレビに映った人物の首元の刺青に目を留める。その模様は、黒川イザナのピアスと同じものだった。最高の未来に、ひとつだけ小さなほころびが見えた瞬間、物語の空気が一変する。
なんで嘘ついたんすか、マイキー君が海外だなんて嘘ですよね。ドラケンに詰め寄ったタケミチは、最悪の想像を口にする。ひょっとしてイザナは生きていて、マイキー君は。最高の未来だと思ったのに。マイキー君は生きてるんですか。その問いで幕を閉じるラストに、息をのんだ。
まとめと考察
『東京リベンジャーズ【三天戦争編】』第52話は、タケミチがついに手に入れた幸せな未来と、そこにいないマイキーの影を対比させながら、新たな戦いの始まりを予感させる回だった。最後に、印象に残ったポイントを振り返っておきたい。
取り残されたのは誰か
副題の「Be left behind the times」は、時代に取り残される、という意味を持つ言葉だ。仲間たちがそれぞれの夢を叶えて前に進むなか、ただ一人その輪のなかにいないマイキー。みんなの幸せのために約束を守ったマイキー自身が、時代に取り残されてしまったのではないか。そんな考えが頭をよぎり、胸が苦しくなった。
振り返れば、今回のタケミチを支えていたのは、いつも千冬だった。ホワイトデーの作戦を考え、物陰から見守り、12年後も変わらず隣で笑っている。タイムリープの秘密を共有する相棒の存在が、タケミチをどれほど救ってきたかを改めて感じた。
ドラケンと千冬だけが何かを知っているらしいことも気にかかる。二人がなぜ嘘をついたのか、そしてマイキーの身に何があったのか。タケミチの戦いは、まだ終わっていなかった。
笑いと涙の落差
千冬との漫才のような前半、まっすぐなプロポーズ、仲間たちとの再会。その幸福感が大きかったぶん、ラストの不穏さがいっそう際立つ。幸せの絶頂から一気に突き落とす構成が見事で、三天戦争編が本格的に動き出す予感にあふれた一話だった。
次にタケミチが向き合うのは、マイキーという最大の謎になりそうだ。彼がどんな未来を選ぶのか、目が離せない。




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