この記事の作品:
最終回となる第12話の副題は「ラブ・アクチュアリー」。愛琉との戦いを終えたミーティアは、前世の夢を見る。駆け出しのころに憧れた伝説の魔導士は、のちに魔王となる流星だった。そんな中、流星の家が火事で焼け、妹の萌を迎えての同棲生活が始まる。流星は勇者を「すごいやつだ」と認め、夜には魔王になる前の話を語り出す。喧嘩ばかりの二人が、一つ屋根の下で幕を下ろす。




副題「ラブ・アクチュアリー」と、公式のあらすじ
あらすじは「平和」と「同棲」を並べている
最終回となる第12話の副題は「ラブ・アクチュアリー」。これまでと同じく実在の映画の題名から取られている。公式サイトのあらすじは「愛琉との死闘を制し、平和を取り戻した流星たち」から始まり、「穏やかな日常でミーティアが見たのは前世の頃の夢だった」と続く。そして「しかし平穏な時間も束の間、謎の不審火で流星の自宅が全焼し、急遽ミーティアのマンションでドキドキ同棲生活がスタート」。戦いの後始末、前世の夢、そして新しい暮らしの始まりが、一つのあらすじの中に詰め込まれている。
「世界を救ってくれてありがとう」
冒頭は、愛琉との戦いの直後から始まる。流星は「礼を言うわ」と声をかけられ、「世界を救ってくれてありがとう」と感謝される。流星は「今回の一件は」自分が引き寄せたものだと受け止めるが、返ってくるのは「君たちのおかげでオズの職員は事後処理に追われ」「当分寝る暇もない」という恨み言まじりの言葉である。それでも「当然だ 世界を救った者たちだぞ」「一晩ゆっくり休むくらいの権利はある」と認められ、流星の「一晩だけですか」でしめくくられる。世界を救った直後でも、休めるのは一晩だけという軽さが、この作品らしい。
ミーティアが見た前世の夢
平和を取り戻したあと、ミーティアは前世の夢を見る。
「私が駆け出し冒険者時代の記憶」
「これは夢」「私が駆け出し冒険者時代の記憶」。仲間たちとの会話の中で話題になるのは、「難攻不落のダンジョンをいくつも攻略し続け」「大陸にその名を轟かせていた」「S級冒険者パーティー」のメテオドライブだった。ミーティアは「もちろんめちゃくちゃファンです」と答え、憧れの相手として一人の魔導士の名を挙げる。剣士であるミーティアが、剣聖ではなく魔導士に憧れていたという意外な過去が明かされる。
「その最弱と言われたマナカラーで」
魔導士には「生まれもっての魔法適性があり」、魔導士ギルドは「それを色で分類していた」。ミーティアが憧れたのは、「得意分野のない最弱色と言われていて」「その最弱と言われたマナカラーで」「Sランクまで」上り詰めた魔導士だった。「3つの魔法を同時発動させるって話だぞ」「それが上級魔法を3つ同時だって」「これがS級の世界か」と仲間たちも驚く。ミーティアは「私はその伝説の冒険者に憧れていた」「いつか彼に追いつきたいと」と振り返る。一番弱いと言われた色で一番上まで行った魔導士は、勇者を目指す少女にとって何よりの希望だった。
「最後のピースがはまってしまった」
目を覚ましたミーティアは、「最後のピースがはまってしまった」と気づく。その魔導士は「冒険者を辞めどこかの国の宮廷魔術師になったと聞いた」。そして宮廷魔術師として姫に仕え、国を滅ぼされたあとに魔王スカーレットアイズとなったのが、流星だった。「思えばずっと助けてもらってばかりだ」と思い返したミーティアは、耐えきれずにもう一度眠ってしまう。勇者が若いころに憧れた英雄と、のちに倒した魔王が同じ人物だったという事実が、最終回になって明かされる。
戦いのあとの、それぞれの場所
流星のまわりの人たちも、それぞれに戦いを振り返る。
「最後のクライシの魔法は見事だったよ」
流星はオズの二人と戦いを振り返り、「最後のクライシの魔法は見事だったよ」とたたえる。倉石は「いきなりテレパシーで連絡が来て驚きました」と答え、流星は「君の魔力なら」「奴の想定範囲外から確実に当てられると思っていたよ」と返す。多岐川にも「エンチャント能力とデザインセンス」「すごい特技を持っていたんだな」と声をかける。元魔王が、若い魔導士たちの力を正面から認める場面になっている。
「君も立派な勇者だ」
別の場所では、小鳥遊綾姫に「君が戻ろうとしていた剣と魔法の異世界だ」「その次元に君を戻してもいい」と申し出る声がある。綾姫は「でも私はこの世界で頑張ってみるわ」「上には上がいるって分かったし」と断る。返ってきたのは「少しだけ道を間違えてしまったかもしれないが」「君も立派な勇者だ」「成長期待しているよ」。異世界へ戻る道を選ばなかった帰還勇者に、「立派な勇者だ」という言葉が贈られる。
「そもそも勇者って何なんだよ」
流星のもとでは、世界崩壊を企てた聖女を勇者と魔王が止めた一件が話題になる。「そもそも勇者って何なんだよ」と聞かれた流星は、「力 勝利 責任 希望 理想」「人々の一方的な願いのすべてを背負わされる存在だ」「俺には呪いにしか思えないがな」と答え、続けて「俺には真似できない」「すごいやつだ」と言う。すぐに「本人に直接言ってあげた方がいいですよ 魔王様」と返される。勇者という役目を呪いと呼びながら、それを背負い続けたミーティアを本人のいないところで認めているのが流星らしい。
焼けた家と、萌の涙
平穏は長く続かなかった。
「私の部屋が」「私の思い出が」
学校を休んでしまったミーティアは、「ちゃんと流星と話がしたいな」と、手土産のタルトを持って流星の家に向かう。ところが、たどり着いた家は火事になっていた。妹の萌は「私の部屋が」「私の思い出が」と泣き崩れる。ミーティアは「私はこの涙を知っている」「ダンジョンに失敗した冒険者の涙」「魔族に村を焼かれた村長の涙」と、前世で見てきた涙を思い出す。勇者として見てきた涙の記憶が、目の前の少女を放っておけない理由になっている。
「困った時はお互い様」
ミーティアは萌を自分のマンションに連れて帰り、「一人暮らしみたいなものだから 気にせずくつろいでね」と迎える。「そうですか 私どうしていいかわからなくて」「すごいテンパっちゃって」と言う萌に、「普通はそうなっちゃうよ」と寄り添い、温かい飲み物を用意する。萌の「ありがとうございます」に返したのは「困った時はお互い様」だった。いつもは騒がしいミーティアが、年下の少女の前ではきちんと年上として振る舞っている。
「花織さんのおかげです」
萌はミーティアに「ずっと言いたかったんです」と切り出す。兄が「突然引きこもりました」、そのころ「ぶっちゃけ 家族がギスギスしてました」。「そんな時 花織さんが来たんです」「その後すぐに兄が立ち直りました」「先生に戻ったし 最近はとても楽しそう」「花織さんのおかげです」。ミーティアは「誤解だわ 結果オーライなの」と照れる。第1話でミーティアが押しかけてきたことが、家族の側から見れば兄を立ち直らせた出来事だった。
同棲生活の始まり
帰ってきた流星と、今後のことが話し合われる。
「一人で妹さんを守るには限界があるわ」
「火事の原因は」「まだわからない」。けれど「何日か前から変な人がうろついてたって話を聞いた」という情報もあり、「もしかして何者かに家族が狙われたってこと」「その可能性もあるな」と話は深刻になる。ミーティアは「一人で妹さんを守るには限界があるわ」と言い、流星も「それに俺たちの分断を狙っている可能性もある」と応じる。ミーティアの出した答えは「うちで一緒に暮らすしか」。「さすがに同棲はダメだろ」という声もむなしく、同棲生活が始まる。ふざけた展開に見えて、きっかけは正体の分からない相手への警戒になっている。
「これがノブレスオブリージュ」
夕食の席で、萌は「ミーティアさんは料理も上手なんですね」とほめ、ミーティアは「萌ちゃんが手伝ってくれたからよ」と返す。流星の「ご飯まで何から何まですまんな」に対しても「困った時はお互い様よ」。「これがノブレスオブリージュ」「まさか前世は貴族」と驚かれても、答えは「平民出身よ」。二人の出会いについては「剣と魔法のネットゲーム」で知り合ったことにしてあり、あとで「私たちの魔法だ 勇者だ 異世界だって話を聞かれてもいいようによ」と理由が明かされる。にぎやかな食卓の裏で、秘密を守るための気配りもきちんとしている。
魔王になる前の話
夜、ミーティアは流星に一つの頼みごとをする。
「魔王になる前の冒険者時代の話を聞かせてよ」
「魔王になる前の冒険者時代の話を聞かせてよ」と頼まれた流星は、「冒険者時代か 眠くなる話だぞ」と前置きして話し始める。語られたのは、マナカラーが不人気だったせいで追放された過去だった。「才能が可視化され」「得意分野を伸ばすのが魔導士の定石だったし」「火力に特化した攻撃力の高い魔導士が優遇される時代だったんだ」「偏見がひどくて人間不信にもなるし」「一時期は仕事がなくて荷物持ちをやっていたな」。ミーティアが夢の中で憧れていた伝説の魔導士は、本人の口から語ると、差別に耐えて食いつないだ一人の冒険者だった。
「これが人のぬくもりよ」
「囮にされたり見捨てられたりするんだよな」という話に、ミーティアは「これが人のぬくもりよ」と寄り添う。流星は「人を悲しきモンスターみたいに扱うのやめてくれる」と返しつつ、「お前の頃は何が流行ってたんだ」と話をつなぐ。最後は「魔王なのに勇者に養われる気分はどうかしら」とからかわれ、「ごめんなさい」で終わる。夢で憧れた英雄の苦労話を、今は同じ屋根の下で本人から聞いている。二人の距離は、前世よりずっと近い。
まとめと考察
第12話は、大きな戦いのあとの日常を描きながら、二人の前世がもう一度つながり直す最終回だった。
憧れた英雄と、倒した魔王
ミーティアは夢の中で、最弱の色でSランクまで上り詰めた魔導士に憧れていた自分を思い出した。その魔導士が流星だったと気づいたことで、勇者と魔王の関係は、憧れた者と憧れられた者という前世のもう一つの形を持つことになった。本人の口から語られた追放と荷物持ちの話は、憧れの裏側にあった苦労を見せている。
「すごいやつだ」
流星は勇者を「人々の一方的な願いのすべてを背負わされる存在」と呼び、呪いのようだと言った。それでも「すごいやつだ」と認めた相手と、今は同じ食卓を囲んでいる。副題の「ラブ・アクチュアリー」が示すように、戦いの外にある身近な愛情が、最終回の中心に置かれていた。
一つ屋根の下の二人
火事の原因は分からないまま、正体の見えない相手への警戒も残っている。それでも、勇者と魔王が一つ屋根の下で昔話をする夜で幕を下ろしたのは、喧嘩ばかりしてきた二人にふさわしい結末だった。喧嘩をしながらも隣にいる、という二人の形は、これからも続いていきそうだ。




関連作品:

















































コメント