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成人の儀を終え、前世の記憶と力をはっきりと思い出したフィーア。3か月の訓練を経て騎士団の入団試験に挑むものの、聖女であることを隠したい彼女の思惑とは裏腹に、その実力は少しずつ周囲の目を引いていく。兄たちが試験官を務める入団試験、異例の第一騎士団への配属、そして騎士団総長サヴィスとの模範試合まで、第2話を場面ごとに一つずつ振り返る。




騎士団入団試験
『転生した大聖女は、聖女であることをひた隠す』第2話「フィーアと騎士団」は、成人の儀を終えたフィーアが騎士団の入団試験に挑み、王族を守る第一騎士団へ配属され、騎士団総長サヴィスとの模範試合で思わぬ注目を集めるまでを描いた回だった。目立ちたくないのに目立ってしまう、そのおかしさと、隠しきれない実力の両方が存分に楽しめる一話だった。
3か月の修行
成人の儀以降、大聖女だった前世の記憶や力をよりはっきりと思い出したフィーア。それから3か月、魔法の使い方を覚え、自分の能力と向き合いながら訓練を重ねてきた。私絶対に騎士になるわ、という決意とともに、いよいよ入団試験の日を迎える。
一次試験は、試験官の打ち込みを10回受け止めれば合格のはず。ところが試験官を務めていたのは、兄のレオンだった。このレオンの剣を弾き飛ばせる奴はいないのか、と受験生を次々に退けていくレオンの姿に、合格者を出す気がないね、とフィーアもあきれ顔。
ファビアンの助言
そんなフィーアに声をかけてきたのが、整った顔立ちの青年だった。私たちの試験官はちょっと独特みたいだ、受験生が残り少なくなった頃に慌てて合格者を出し始めると思う、だから列の後ろに並んだほうが合格の可能性が上がる。その冷静な観察に、確かに、と感心するフィーア。
ところが、列の後ろへ回ろうとしたフィーアを、兄のレオンが見逃すはずもなかった。黒っぽい竜っぽい何かを従えたからといって、いい気になっているんじゃないのか、と呼び出され、目立たずにいくつもりだったのに、最初から注目の的になってしまう。
隠しきれない実力
下手なことを言われる前にさっさと終わらせなきゃ。そう考えたフィーアは、身体強化の魔法を使って試験に臨む。けれど、それが新たな騒ぎの種になっていく。
身体強化の誤算
攻撃力1.2倍、速度1.2倍。それでもレオンは強く、フィーアは強化を1.5倍に引き上げる。あ、しまった、目立っちゃってる、と気づいたときにはもう遅い。だいぶかなり手を抜いていただいたおかげで、たまたま10回切り結べましたわ、と取りつくろって去っていく姿には笑ってしまった。
最終試験の模擬戦で使うのは、成人の儀をクリアしたときに父からもらった鉄剣。実は攻撃力2倍、速度2倍を付与したうえで、目くらましの魔法で普通の剣にしか見えないようにしてある。武器への効果付与は今の時代では失われた技術だから気づかれないだろう、という考えが、のちに大きな波紋を呼ぶことになる。試験時間100分の二次試験も乗り越え、いよいよ最後の模擬戦へと進んでいく。
右腕の痛み
模擬戦の最中、前世で大聖女だったフィーアだけが気づいたことがあった。試験官と互角に戦っている受験生が、右腕を折っている。剣を打ち合うだけで激痛が走るはずの彼に、フィーアは剣を拾って渡しながら、そっと守りの加護をかける。5分くらいは痛みを感じないはず、という簡単な魔法だった。
その受験生こそ、列の後ろを勧めてくれたあの青年だった。聖女であることを隠しながらも、困っている人を放っておけないフィーアのやさしさが、さりげなく描かれていた。
氷の騎士アルディオ
フィーアの模擬戦の相手を務めることになったのは、もう一人の兄、氷の騎士と呼ばれるアルディオだった。殺す気でかかってこい、と言われ、レオン兄さんみたいにはいかない、と覚悟するフィーア。彼女が選んだのは、成人の儀で手に入れた魔石に魔法を付与し、兄の動きを封じて時間切れを狙う作戦だった。
お前、そんな卑怯な勝ち方でいいのか、と問われても、勝ちは勝ちだわ、と言い切るフィーア。けれど結果的に、またしてもめちゃくちゃ目立ってしまった。本人の思惑と正反対の方向へ転がっていく展開が、この作品の楽しさだ。
第一騎士団への配属
無事に合格し、晴れて騎士となったフィーア。配属先を確認しようとしたところで、試験のときの青年が声をかけてくる。
公爵家の嫡男ファビアン
ワイナー公爵家の嫡男、ファビアンだ、と名乗る彼に、公爵って都市伝説じゃないの、本当に存在するの、と驚くフィーアには思わず吹き出してしまった。お化けでも魔物の類でもないと保証するよ、と笑って返すファビアンの余裕も、いかにも貴族らしい。
試験のときに拾ってもらった剣を握ったら、うそのように痛みが引いた。君は幸運の女神様なのかもね。そう言われても、回復魔法をかけたことには気づいていないらしいと胸をなで下ろすフィーア。彼は貴族に多くいるという天然の女たらしだわ、と警戒する心の声もおかしかった。
腕はもう治ったのね、と尋ねるフィーアに、新人が腕を折ったまま入団なんて格好がつかないから、回復薬をじゃぶじゃぶ飲んで激痛にのたうち回り、聖女様に回復魔法をかけてもらった、と明かすファビアン。この世界では、聖女の回復魔法がそれほど貴重で特別なものだということが、さりげなく伝わってくる。フィーアがさらりと使った力の重さを、改めて感じさせる場面だった。
スーパーエリート集団
ファビアンが教えてくれた配属先は、なんと第一騎士団だった。騎士団は全部で20あり、王族警護の第一騎士団と王城警備の第二騎士団は、通常10年以上勤めた騎士しか配属されない。新人が配属されるのは記録に残っている限り初めてらしい。
けれどフィーアの頭をよぎったのは、王族という言葉だった。前世で自分を見殺しにした3人の兄のいずれかの血筋を、全力で守らなければならない。嫌になって見殺しにしないかな、という不安には、彼女が背負う過去の重さがにじんでいた。守るべき相手が、かつて自分を見捨てた者の末裔かもしれないという皮肉が、物語に影を落とす。
騎士団総長サヴィス
現在の王族は国王陛下と王弟殿下の二人だけ。そして次の王になると公言されている王弟殿下こそ、二十の騎士団をまとめる騎士団総長だった。翌日の入団式で、フィーアはその姿を目にすることになる。
空気が変わった
総長が姿を現した瞬間、場の空気が変わった。何者をも略奪せず、排除せず、屈服しない。騎士の誓いを守り、血の最後の一滴までをこの国と国民にささげよう。サヴィスの言葉に、これほど人心をつかむ人は初めて見た、とフィーアは素直に感嘆する。目が合った気がした、いやいや自意識過剰にもほどがあるわ、とあわてる様子もかわいらしい。新人騎士の代表挨拶を務めたファビアンに、1回もかまなかったなんてすごいね、と声をかけ、その基準はフィーア独特のものだと思うけど、と苦笑される場面にも、彼女らしさがにじんでいた。
新人騎士の中に赤髪の女性がいたが、あれは誰だ。サヴィスのその問いに、例のあれか、と応じる声。フィーアの知らないところで、彼女の名前はすでに注目を集め始めていた。
模範試合
そして入団式の模範試合。新人騎士代表に選ばれたのはフィーアで、相手はサヴィス総長その人だった。俺からは一切攻撃しない、全力でかかってこい、という言葉に、兄たちのアホな言動のおかげで落ち着いたフィーアは、憧れの騎士として剣を振るう。ずっと騎士になりたかった、その憧れの地に立てているんだ、恐れることはない、と自分に言い聞かせる姿には、騎士を目指してきた彼女のまっすぐな思いが表れていた。
勝負ありの声のあと、サヴィスは、攻撃を一切しないと宣言したがそれを破った、と自らの勝ちを無効にする。そして、フィーアの剣を手に取り、第一騎士団長のシリルと一勝負してみせた。ミスリル製の剣を鉄剣で折った、この剣を握ると魔人になった気分だ。フィーアが付与した魔法が、とんでもない魔剣を生み出していたことが、ここで明らかになる。
これは国宝クラスの代物だ、とフィーアを問い詰めるサヴィス。父から成人の儀の祝いにもらったもので、館の武器庫から適当に選んだだけ、そんな非常識な魔剣だと知っていたら即座に王国に献上していました、と必死に言い逃れるフィーアの姿には、思わず笑ってしまった。付与魔法をかけたのが自分だとは、口が裂けても言えない。
まとめと考察
『転生した大聖女は、聖女であることをひた隠す』第2話は、フィーアの騎士としての第一歩と、隠しきれない実力が周囲の目を引き始める様子を描いた回だった。最後に、印象に残ったポイントを振り返っておきたい。
左ばかり打ち込んだ理由
なぜ俺の左側ばかり打ち込んだのか。サヴィスの問いに、騎士道精神です、と答えたフィーアだったが、ごまかしは通じなかった。正直に明かしたのは、総長が左足をけがしていると気づいたから、という理由。歩くときの足の運び、立っているときの重心のわずかな偏り。大聖女だった前世の目が、誰も気づかない傷を見抜いていた。
お前の名は覚えたぞ。確かに俺の傷は治りきっていない、そのことを知っているのはわずかな者のみ。一人だけ冷静に俺を見つめていた、というサヴィスの独白に、フィーアの秘密が少しずつ明るみに出ていく予感がした。
鈍いのか鋭いのか
入団から1週間。フィーアを観察していた人物は、チェスでは必ずぎりぎりで勝つように無意識で調整している、と分析する一方、ファビアンの髪が3センチも短くなったのに全く気づかない鈍感さも指摘する。よくわからない人物像ですね、という言葉どおり、鋭さと鈍さが同居するフィーアの不思議さが、周囲を戸惑わせていた。
剣は300年前の超黄金時代にのみ製作可能だった効果変動型の剣だと判明し、謎はさらに深まる。もううちの子ですから、と言い切るシリル団長に守られながら、フィーアは第六騎士団の魔物討伐に同行することに。ひた隠すはずの聖女の力が、次はどんな形で顔を出すのか楽しみだ。目立たないように行動するほど目立ってしまうフィーアと、その小さな違和感を一つずつ拾い集めていく周囲の騎士たち。その追いかけっこのような関係が、この作品のいちばんの面白さなのだと思う。




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