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天道家一行がやってきたにぎやかな夏の海。そこに突如現れ、やりたい放題に振る舞う八宝斉をおとなしくさせようと、乱馬とシャンプーはガールフレンドを紹介する作戦に出る。ところが引き合わせた相手は、八宝斉と因縁のある、シャンプーの祖母コロンだった。家宝の腕輪に秘められた過去、三つの惚れ薬、そして素直になれない乱馬とあかねまで、第3話を振り返る。




第27話「ハッピーとコロン」は夏の海が舞台
『らんま1/2【新作】第3期』第3話、第27話「ハッピーとコロン」は、天道家一行が海水浴にやってくる夏らしい回だった。やりたい放題の八宝斉に、乱馬とシャンプーがガールフレンドを紹介しようと画策する。ところが引き合わせた相手のコロンと八宝斉の間には、家宝の腕輪をめぐる因縁があった。惚れ薬をめぐる大騒動まで、テンポよく笑わせてくれる一話になっていた。アバンでは人魚姿のあかねと乱馬も登場し、夏らしい華やかさで物語が幕を開けた。第3期に入ってからも、日常の笑いとキャラクター同士の関係の積み重ねを大切にする作りは変わらない。
天道家の海水浴
青い空、白い雲、まぶしい太陽。浜で食べるかき氷は最高で、まさに平和そのものの海水浴。ところが、そこに突如現れたのが八宝斉だった。海はいい、武道家の血が騒ぐというものじゃ、と言いながら、やっていることは相変わらずの女の子追いかけ。おとなしくさせる方法はないのかと、天道家の面々も頭を抱える。どれが青い空で白い雲でまぶしい太陽なのか、と突っ込まれるほど、八宝斉の目に映っているのは水着の女の子ばかりだった。家族そろって海に来ても、のんびりできないのが天道家の宿命なのかもしれない。早雲はどこかを放浪し、乱馬の父もいつも通り。誰もが自由に夏を満喫しているようで、結局は八宝斉の騒ぎに巻き込まれていく流れが、このシリーズらしいお約束だった。
海の家では、猫飯店が夏の間だけ営業していた。冷やし中華を運んでいたのはシャンプー。乱馬を追って海に来たのかと喜ぶシャンプーに、偶然だと言い張る乱馬。店が終わったらデートすると迫られるやりとりも、このシリーズらしいにぎやかさだった。あかねがやきもきする姿も含めて、三人の関係は相変わらず。夏の海という開放的な舞台が、いつもの三角関係をいっそう華やかに見せていた。夏の間だけ海の家で営業するという猫飯店の商魂のたくましさも、さりげなくおかしい。
八宝斉にガールフレンドを
女の子を追い回す八宝斉をなんとかしようと、乱馬はガールフレンドを紹介すると持ちかける。八宝斉は宝箱から取り出した腕輪をプレゼントすると言い、好みは目がぱっちりしたロングヘアーの子だと語る。それを聞いた乱馬は、シャンプーを紹介するつもりなのかとあかねに疑われるが、本人は意外と相性がいいかもしれないと自信満々だった。女の子を追い回すのをやめさせるために、いっそガールフレンドを作らせればいい。単純だけれど理にかなった作戦は、乱馬らしい発想だった。
ところが、シャンプーが連れてきたのは祖母のコロン。目がぱっちりしたロングヘアー、という条件にはたしかにぴったりだ。同世代だしベストカップル、と盛り上がる周囲と、うれし泣きどころではない八宝斉の顔の対比に、思わず吹き出してしまった。あとは年寄りに任せて、という声とともに、若い二人はさっさとデートへ向かおうとする。コロンもまんざらでもない様子で八宝斉の前に立ち、年長者同士の思わぬ組み合わせが、ここから物語の核心へとつながっていく。
ハッピーとコロンの因縁
愛と青春のメモリー
コロンが目をつけたのは、八宝斉が持っていた腕輪だった。どこかから持ち逃げしてきたのではないかと疑われた八宝斉は、「わしの愛と青春のメモリーじゃ」と語り始める。18歳で修行のため中国大陸に渡ったとき、ある村で美しい娘と出会い、恋をした。けれど修行の身に女は禁物。娘は「この腕輪を私の代わりに連れてって」と言い残し、二人はそれきりになったという。修行のために恋をあきらめた若者、という筋書きだけを聞けば、まるで古い映画のような美しい話だ。
なかなかの悲恋ではないか、と聞いていたコロンは、自分たちの村にも似た話があったと返す。もっともその男は、村娘全員に声をかけて振られ、その腹いせに村中の金品を奪って逃げたのだと。美しい思い出を語る八宝斉と、真相を知るコロン。同じ出来事がまったく違う物語として語られる落差が見事で、八宝斉の都合のいい記憶にあきれるしかなかった。回想が美化されたものだったと分かる瞬間の、コロンの冷めた視線がたまらない。昔から八宝斉は八宝斉だった、と納得させられる場面でもあった。
腕輪の秘密
そして明かされる正体。「久しぶりじゃのう、ハッピー」。ハッピーとは八宝斉の若き日の通り名で、腕輪はコロンの家の家宝だった。まさか知り合いだったとは、と乱馬も驚く。逃げ出した八宝斉を追いながら、コロンは腕輪の秘密に気づかれる前に取り返せとシャンプーに命じる。手遅れになれば、この世は地獄と化すと。若き日の通り名がハッピーというのも、今の八宝斉のイメージとのギャップがあっておかしい。長い年月を経ての再会が、まさかこんな形になるとは誰も思わなかっただろう。
腕輪にはめ込まれていたのは、惚れ薬だった。「それを飲むと最初に見た異性に一目惚れしてしまうのじゃ」。八宝斉がこの秘密を知ったらどうなるか。確かに地獄だな、という乱馬の言葉に深くうなずいてしまう。しかもその話を、当の八宝斉がしっかり聞いていたのだから始末が悪い。惚れ薬という一つの小道具が、八宝斉、コロン、シャンプー、乱馬、あかねを次々と巻き込んでいく展開の速さは、この新作シリーズのテンポのよさをよく表していた。
惚れ薬をめぐる大騒動
コロンに一目惚れした乱馬
八宝斉が落としていった惚れ薬を、ひょんなことから乱馬が飲んでしまう。最初に目に入ったのはコロンだった。この人の魅力に今まで気づかなかったなんて、と照れる乱馬。今すぐ結婚式をあげよう、と本気で迫る乱馬に、シャンプーもあかねも大慌てだ。普段はコロンを警戒している乱馬が、目を輝かせて求婚する姿のギャップは強烈だった。惚れ薬の恐ろしさを、これ以上ないほど分かりやすく見せてくれる場面だ。
ところが、効き目はあっという間に切れる。乱馬が飲んだのは一瞬玉だった。惚れ薬は三つあり、それぞれ効き目の長さが違う。「残るは一日玉と一生玉」。もし一生玉を飲んでいたら、今ごろ「わしは今頃姉さん女房じゃ」というコロンの一言には、腹を抱えて笑ってしまった。命拾いしたのは乱馬だけでなく、見ているこちらも同じだった。一瞬、一日、一生と効き目の長さが違う三つの惚れ薬という設定は、それだけで騒動の行方を想像させる。どの玉を誰が飲むのかというサスペンスが、後半の笑いを支えていた。
あかねが飲んだのは
今度は、残った惚れ薬のひとつをあかねが飲んでしまう。最初に見た異性に惚れてしまうと分かっているからこそ、誰を見るかは自分で決めると言い張るあかね。コロンが一日玉だと言ったので、一日男を見なければいいんでしょ、と強がって目を閉じる。乱馬は「俺で手を打たねえか」と持ちかけるが、素直になれない二人の言い合いはいつも通りだった。目をつぶって男を見ないようにするあかねの意地っ張りぶりは、いかにもあかねらしい。乱馬の提案に素直に乗れないのも、相手が乱馬だからこそなのだろう。途中、溺れていた子ブタのPちゃんまで騒動に加わり、海辺はますます混沌としていく。
ところがコロンは、間違えていた、あかねが飲んだのは一生玉だと言い出す。白馬に乗った王子様に会えるかもしれない、と言っていたあかねの前に現れたのは、白馬に乗った八宝斉。慌てた乱馬は、じじいなんかに惚れたらお前の一生がめちゃくちゃになるから、と男の姿に戻り、「仕方なく男になってやるんだぞ」と前に立つ。けれどあかねは、惚れ薬を吐き出していた。結局、あかねが飲んだのは一日玉だった、というオチまでついて騒動は幕を閉じる。あかねを守るために仕方なくと言いながら、真っ先に男の姿に戻って駆けつける乱馬。その行動こそが、口では言えない本音を雄弁に物語っていた。結局は一日玉だったと分かっても、あかねを本気で心配した乱馬の行動は消えない。惚れ薬がなくても、二人の間にはすでに特別な何かがあることを、この騒動は改めて示していた。
第27話のまとめ考察
素直になれない二人
第27話は、八宝斉とコロンという年長者の因縁を軸にしながら、最後はしっかり乱馬とあかねの物語に着地する回だった。惚れ薬という強引な道具があっても、二人の気持ちは素直に表に出てこない。仕方なく、と言いながらあかねを守ろうとする乱馬と、薬の効き目に頼らず自分で決めたいあかね。薬よりも強い意地っ張りこそが、この二人らしさなのだと思う。惚れ薬で人の気持ちを動かそうとする八宝斉やシャンプーと、薬に頼らず自分の気持ちを大切にしようとするあかね。その対比も、さりげなく描かれていたように思う。海水浴という非日常の舞台は、普段は素直になれない二人の距離を、ほんの少しだけ近づけてくれたのかもしれない。
そしてラストには、八宝斉にもガールフレンドができたというオチが待っていた。お似合いのカップルと言われた相手を見れば、思わず笑ってしまう。悲恋の思い出を美しく語っていた八宝斉が、最後まで報われないところも含めて、夏の海らしい開放感とドタバタが詰まった一話だった。最後まで笑いで締めくくる構成が、夏の一話らしく心地よかった。八宝斉にお似合いと言われた相手が人間ではないところまで含めて、最後の最後まで遊び心にあふれていた。
海の家の値段に昭和を感じたり、水着姿のシャンプーやあかねを楽しんだりと、見どころは盛りだくさん。新作シリーズならではの丁寧な作画で描かれる夏のエピソードを、存分に楽しませてもらった。
また、八宝斉とコロンの因縁が明かされたことで、二人の過去にも興味がわいた。家宝の腕輪を盗まれた側と盗んだ側。長い年月を経てもなお続く因縁は、今後のエピソードでも思わぬ形で顔を出すかもしれない。シャンプーのかわいらしさ、八宝斉の憎めなさ、コロンの存在感と、脇を固めるキャラクターたちの魅力も存分に味わえた回だった。




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