前話の作戦で船を大破させたエルマに、星系軍から払いきれない賠償金と短すぎる納付期限が突きつけられる。ミミとの新生活が形になっていく一方で、監獄送りの瀬戸際に立たされても先輩傭兵としての意地を張るエルマに、ヒロが差し出したのは施しではなく取引だった。エルマの賠償金、俺の船のクルーになれという提案、そしてミミとエルマの本音まで、第3話を振り返る。




第3話「エルマ」は借金を背負ったエルマがヒロの船に加わる回
『目覚めたら最強装備と宇宙船持ちだったので、一戸建て目指して傭兵として自由に生きたい』第3話「エルマ」は、前話の作戦で船を大破させたエルマが、払いきれない賠償金を背負わされるところから始まる回だった。ミミとの新しい暮らしが少しずつ形になっていく一方で、先輩傭兵のエルマは監獄送りの瀬戸際に立たされる。そこへヒロが差し出したのは、施しではなく取引という形の救いの手。副題どおり、エルマという人物の弱さと意地、そして新しい居場所を見つけるまでを描いた一話だった。
突きつけられた賠償金
冒頭、エルマが手にしているのは星系軍からの請求書。さっきの戦闘で軍に与えた損害の賠償として妥当な額だ、と告げられたエルマが問題にしたのは、金額よりもむしろ納付期限のほうだった。一流のシルバーランク傭兵なら容易に稼げるはず、という言い分に、そんなのプラチナランクでもできるかどうか、と返すエルマ。そもそも肝心の船が大破しているのに、仕事などできるはずもない。期限を超えれば帝国法で罪に問われる、と念を押されても、エルマは上等よ、やってやろうじゃない、と強がってみせる。
第1話ではヒロをニュービーと呼んで持ち上げたり、たかったりしていたエルマが、ここでは完全に追い詰められている。強がりの言葉が勢いよく出てくるほど、余裕のなさが透けて見えるのがつらい。それでも誰かに頼るのではなく、まず自分で何とかしようとするところに、5年間傭兵を続けてきた彼女の生き方がにじんでいた。
ミミとの新生活とギルドでの一幕
クルーとしてのミミの気づかい
場面はクリシュナの朝へ。気づいたらステラオンラインのような世界にいて、美少女を助けて、宇宙船で宙賊相手に無双している。朝起きるたびに夢ではないかと思いながら、ヒロは「夢じゃないんだよな」と腹をくくり直す。ミミは頼まれていた船内環境を良くするための設備を、ひととおりピックアップしてくれていた。うまい飯、きれいな部屋、快適な寝床はメンタルに好影響を与える。傭兵だからこそ、生活の環境はしっかりしないといけない、というヒロの考え方は、この作品らしい堅実さだった。
さらにミミは、ヒロがハイパードライブ中の事故で記憶に障害があると言っていたことを覚えていて、一度詳しいメディカルチェックを受けるべきだと勧める。とっさにごまかすヒロの慌てぶりは少しおかしいが、何かあってからでは遅い、というミミの言葉は、事故で両親を亡くした彼女だからこそ重い。ここで自分が倒れたら、またミミを路頭に迷わせることになる。頼まれてもいないことを勝手にと謝るミミに、ヒロは「頼もしいクルーだよ」と返す。ミミにはオペレーターの才能があるのかもしれない、という言葉が、ミミの居場所をしっかりと肯定していた。
報酬とクルーの相場
傭兵ギルドでは、女連れで来るとは自分へのあてつけか、と絡んでくる傭兵を、受付嬢があっさりとチェンジしてしまう一幕から。依頼報酬と賞金を合わせて84万エネルという大活躍に、ヒロはもう少し歯ごたえのある相手が多ければもっと稼げた、と余裕の表情を見せる。ここでヒロが尋ねたのは、クルーの報酬の相場。船への出資がゼロの新人クルーなら、報酬の0.1%から0.5%が相場になるという。
0.5%でも4200エネル。命がけにしては安い、と感じるヒロに対し、受付嬢は自分の給料より高いと笑う。そんなにもらえないと遠慮するミミも、正当な対価なのだからちゃんと受け取るように、と諭される。金はいくらあっても困るものじゃない、特に傭兵という因果な稼業ならなおさらだ、というヒロの言葉には、ミミを一人前のクルーとして扱う覚悟が見えた。
そしてヒロは、連絡のつかないエルマのことを尋ねる。星系軍への賠償金の支払いに奔走しているが厳しいらしい。払えなければ監獄ステーションに送られて強制労働、しかもそこは男性の犯罪者が圧倒的に多い場所だという。言葉を濁す受付嬢の様子だけで、その先にある危うさが伝わってくる。エルマが来たら話くらいは聞いてやってもいい、と伝言を頼むヒロ。これも縁というやつだ、どうするかはあいつ次第だけどな、という距離の取り方がヒロらしい。そのあとはミミの案内で、最新の調理機の売り込みを受けたりと、コロニーでの買い物を楽しむ姿も描かれた。
エルマを救う「俺の船のクルーになれ」
立場が逆になった再会
路地裏で酒をあおっていたエルマは、ヒロの姿を見るなり「私を笑いにでも来たの」と突っかかる。こんな短い間で立場が逆になってしまった、とこぼすエルマ。貯金をはたき、船から何から全部売り払っても、まだ300万が足りない。期限は今日、残りはあと2時間ほど。払えなかったら監獄で強制労働、そこには捕まった宙賊が山ほどいる。傭兵として宇宙で死ぬ覚悟はあった、でもこんなのは、と言葉を詰まらせるエルマの姿は、これまでの残念な先輩ぶりとはまるで違って見えた。
ヒロの全財産は330万。出そうと思えば出せる金額で、また稼げばいいだけの話でもある。けれど、弱いやつが強いやつの食い物にされる、と第1話でヒロに忠告したのはエルマ自身だった。この残念エルフは、善意の施しを受けるくらいなら意地を張りかねない。だからこそヒロは、ただお金を渡すのではなく、エルマが受け取れる形を探す。この一瞬の思考に、ヒロの優しさと、相手の誇りを守ろうとする気づかいが詰まっていた。
俺の船のクルーになれ
そしてヒロが口にしたのが「お前 俺の船のクルーになれ」という提案だった。300万を支払う代わりに、エルマはミミに傭兵のいろはを叩き込み、ヒロのサポートをする。本気かと聞き返すエルマに、ヒロは本気も本気だ、今ここで決断しろ、もう時間はないぞ、と迫る。なぜそこまでするのかと問われれば、なんだかんだで世話になったし、エルマがひどい目に遭えばミミが悲しむ、自分も目覚めが悪い。そして最後に「何よりお前が欲しいからだ」。
この一言をエルマが別の意味に受け取ってしまうのが、いかにもこの作品らしい。ヒロが欲しかったのは、あの扱いの難しい船をある程度乗りこなした操縦の腕と、傭兵としての経験。素人同然のヒロとミミにとっては、それが十分な助けになる。乗るのか乗らないのか、と問われたエルマの答えは「乗るわ」。オッケー、歓迎する、という軽い返事で、エルマは正式にクリシュナの仲間になった。
セレナの調査と思わぬ顛末
一方、セレナのもとには、例の傭兵が賠償金をわずか1週間で全額納めたという報告が届く。驚くセレナが問題にしたのは、ここでも納付期限だった。罪には問わないと言ったはずで、支払いの免除こそできないものの、期限は設定しなかったはず。どうやらある大尉の独断で、傭兵を使って功績を立てるセレナへの嫌がらせだったらしい。思わず毒づいてから冗談です、と付け加えるセレナの切り替えの早さがおかしい。
とはいえ問題なので調査をする、と決めたところで明かされたのが、その大尉の思わぬ末路。返済の現場に立ち会った大尉は、現物の下敷きになって病院送りになったという。現物、現物です、と繰り返されるやりとりに、思わず笑ってしまった。嫌がらせを仕掛けた本人に、思わぬ形で報いが返ってきたのが痛快だった。
新クルー・エルマとの日々
ギルド登録と射撃訓練
ギルドでのエルマの登録では、身寄りのない美少女の次は借金のかたに手に入れた美少女か、と騒ぐ傭兵が再びチェンジされる。美少女に疑問形をつけたでしょ、こっちはピチピチの53歳だ、と言い返すエルマに、まさかの年齢が明かされて驚いた視聴者も多いはずだ。エルマはサブパイロット、そしてミミの教育係。今回はギルドとして力になれず申し訳なかった、それでも個人としてはなんとかなって本当によかった、という受付嬢の言葉もあたたかい。
さっそく始まったのは、射撃訓練場でのレッスン。宙賊と白兵戦になることもある、と言いながら全弾を真ん中に当ててみせるエルマ。「狙うときは両目を開けたままよ」、こことここを合わせて目標を重ねるの、と教える姿は、まさにベテランの先輩だった。初めてにしては数字がいい、あとは数をこなすだけ、とミミを励ますエルマの教え方は本当にうまい。陸の上ではまだまだね、とヒロに胸を張ったものの、ヒロも撃ってみれば絶好調。この流れのお約束ぶりも楽しかった。
豪華な船内と一戸建ての夢
クリシュナの食事を口にしたエルマは、なんで傭兵の船の食事がこんなにおいしいのか、まるで高級客船じゃない、と叫ぶ。よそはよそ、うちはうち、と返すヒロ。傭兵に何を求めているのかと聞かれ、ヒロは目的なら自由に生きること、目標ならとりあえず惑星上に庭付き一戸建てを買うことだと答える。帝国で土地や市民権を買うとなれば、安くても2億3億、下手をすれば10億まで届くと言われても、目標は高く持たないとな、と動じない。
その理由として添えられたのが「愛するコーラのためにも」という一言。第1話から続く炭酸飲料への執着が、ここでもきちんと拾われていて思わず笑ってしまった。壮大な目標の根っこにあるのが、宇宙では飲めないコーラというのが、この作品の肩の力の抜け方をよく表している。
ミミとエルマの本音
お風呂では、ミミとエルマが二人きりで本音を語り合う。自分までヒロの船に乗っていいのか、と気にするエルマに、ミミは不安がないと言ったら嘘になる、一流傭兵のエルマと違って自分には何もないから、と打ち明ける。ところがエルマも、自分だって同じだと返す。ヒロは傭兵としての腕も心構えも規格外で、自分もかなわない。不安なのは自分だけじゃないと分かって笑ってしまうミミに、エルマも少し肩の力が抜けたようだった。
そしてミミが口にしたのが「私はヒロ様を信じていますから」という言葉。誰からも見放された自分に手を伸ばしてくれた、たった一人の人。その言葉に背中を押されたエルマは、その夜、思い切った行動に出る。ヒロの何よりお前が欲しいという言葉を別の意味で受け取ったままのエルマと、そんなつもりではなかったヒロとのすれ違いには、思わず笑ってしまった。前話でミミに大胆な方法を教えたエルマが、今度は自分が同じ立場になるという流れも、うまく対になっていた。
第3話のまとめ考察
一人じゃない傭兵稼業
第3話は、エルマが一人で抱えていたものを、ヒロとミミのいる船に預けるまでの物語だった。施しではなく取引として差し出された救いの手は、エルマの誇りを傷つけないためのヒロなりの優しさだったのだろう。第1話でヒロに忠告した、弱いやつが強いやつの食い物にされるという言葉が、そのままエルマ自身に返ってきたのは皮肉だが、だからこそヒロの判断が光って見えた。
ミミとエルマが互いの不安を打ち明け合ったお風呂の場面も印象に残る。何も持っていないと思っているミミと、すべてを失ったエルマ。立場は違っても、二人ともヒロの船に自分の居場所があるのか確かめたかったのだと思う。セレナの調査で嫌がらせの張本人に思わぬ報いが返ってくるくだりまで含めて、テンポよく笑えて、少しだけ胸に残る一話だった。オペレーターのミミ、サブパイロットのエルマ、そして船長のヒロ。3人になったクリシュナの傭兵稼業がどう広がっていくのか、これからも楽しみに見届けたい。
































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