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『おじさんはカワイイものがお好き。』第2話の副題は「小路課長とガチャの人」。パグ太郎のグッズを周りにバレずに集めようと奮闘する小路は、休日のパグ太郎のガチャコーナーで、自分と同じビルに勤める男性と出会う。昔の傷に引き戻された小路、河合ケンタとの出会い、そしてパグ太郎スタンプのデビューまで、隠れた趣味を分かち合う喜びを描いた優しい一話を振り返る。




第2話の副題は「小路課長とガチャの人」
『おじさんはカワイイものがお好き。』第2話の副題は「小路課長とガチャの人」。キットディランドの人気キャラクター・パグ太郎のグッズを、周りにバレないように集めようと苦労する小路。休日に向かったパグ太郎のガチャコーナーで出会った男性は、なんと同じビルに勤めていた。隠れた趣味を初めて誰かと分かち合える喜びが、優しく描かれた一話だった。
パグ太郎のチャームポイント
冒頭は、小路によるパグ太郎の紹介から始まる。パグをモチーフにしたキャラクターで、キットディランドのメインキャラに次ぐ人気者。プロフィールによると身長は45センチ、好きな食べ物はヨーグルト、趣味はお昼寝、チャームポイントはお尻。けれど小路が何より気に入っているのは、ぬいぐるみの触り心地だという。ふわっと柔らかいだけでなく、手に収まる重量感があり、特に首周りが最高なのだと。チャームポイントのお尻よりも触り心地を推すあたりに、ぬいぐるみを日々愛でている小路のこだわりが表れていて、思わず笑ってしまった。
身長45センチと聞いて、家にあるぬいぐるみがほぼ等身大だと気づく小路。仕事中にまでパグ太郎のことを考えてしまい、業務に支障が出そうだと自分を戒める姿がおかしい。完璧な課長の頭の中が、実はパグ太郎でいっぱいというギャップこそ、この作品の魅力だ。
隠してきた理由
部下のさりげなく可愛いボールペンや、堂々と好きなものを使う同僚を、小路は少しうらやましそうに眺める。結婚していた頃は、可愛いもの好きをひた隠しにしてきた。結局それが理由で離婚してしまったが、離婚して分かったのは、今一番大事なのはパグ太郎だということだった。
自分の好きなものを隠し続けることの重さを、小路は誰よりも知っている。それでも周りの目は気になってしまう。好きなものを好きと言えない窮屈さが、この先の展開を見守るうえでの大切な前提になっている。
おまけ付きのお茶
コンビニで見つけたのは、キットディランドのおまけが付いたお茶。しかもバージョン2で、2番目にパグ太郎のお尻が見える。お茶を買うだけなら、パグ太郎好きだとはバレないはず。そう意気込んで手を伸ばした瞬間、甥の真純に声をかけられてしまう。
慌てて学校はどうだ、足りないものはないかと話をそらす小路に、真純は「気にしてくれてありがとう」と素直に返す。勘違いさせてすまんと心の中で謝る小路が、なんとも不器用で愛おしい。結局お茶は買えなかったものの、真純は大学でもらったというおまけを小路に手渡す。鍵につけていたから、これも何かにつけるかなと思って。「大切にするよ」と受け取る小路の表情には、ささやかな幸せがにじんでいた。
ガチャコーナーでの出会い
子どもたちが去るのを待つ
テレビでは、大人気アニメキャラクターのコラボカフェに大行列ができていると紹介される。周りを気にしていそうな男性客の姿に、小路は気持ちがめちゃくちゃ分かると共感する。自分もパグ太郎カフェがオープンしたら行ってみたいが、テレビに映ったら困るし、子ども連れや女性も多いだろうからハードルは高い。
そして休日、小路は会社の近くで見つけたパグ太郎のガチャへ向かう。前回は周りの目が気になってできなかったが、今回は小銭も袋も用意した。あとは子どもたちが去るのを待つだけ。ところが子どもたちは全然いなくならない。休日恐るべし。ガチャひとつ回すのにも作戦が要る小路の奮闘ぶりが、たまらなくかわいい。
ようやく誰もいなくなった隙にガチャを回し、どっさりとパグ太郎を手に入れた小路。そのとき、落としたものを拾ってくれた男性がいた。最初は焦ったが、相手は普通に拾ってくれただけだった。昔と違って考え方も多様化しているのだから、自分が思うほど周りは気にしていないのかもしれない。小路は少しだけ前向きな気持ちになる。
「ガチャの人」との再会
ところが会社のビルで、その「ガチャの人」と鉢合わせしてしまう。相手に気づかれて、ガチャガチャの、と言いかけられた小路は、そういうのはここではと言葉を濁し、逃げるように帰ってしまった。特別ひどいことを言われたわけではない。なのに、気持ちがあの頃に引き戻されていく。
落ち込んだ小路は、部屋にこもりきりになる。可愛いはずのものを見ても、心が躍らない。パグ太郎にさえろくに触れていないことに気づいた小路は、これでは昔と同じだと自分を奮い立たせる。他人のせいで自分の好きなものを楽しめなくなるなど馬鹿らしい。ビクビクしていた10代の頃の自分とは違うのだと。
部屋にこもる小路を、真純はそっと気にかけていた。仕事が忙しいのか、もしかして別れた奥さんのことなのか。そんな心配をよそに、小路は真純の作った夕飯を食べて、料理がうまいなあとしみじみ感心する。小路の秘密を知らないまま、さりげなく支えてくれる真純の存在が、この家の空気を温かくしている。一晩たって少し落ち着いた小路が、パグ太郎のぬいぐるみを前に気持ちを立て直す場面は、静かだけれど力強かった。
一方、会社では部下たちが、いつもより機嫌のいい課長を見て、週末にデートでもあったのではないかと噂していた。小路の心の浮き沈みが、周りからは全く違う意味で受け取られているのが楽しい。毎日お茶を入れるくらいでは気持ちは伝わらない、と部下同士でけしかけ合う様子も微笑ましい。本人の知らないところで、職場の人たちはいつも小路のことを気にかけているのだ。そのにぎやかさが、小路の孤独な戦いとちょうどいい対比になっている。
四十を超えて初めての仲間
河合ケンタ
同じビルとしても早々会うことはない。そう思った途端、また「ガチャの人」と出くわしてしまう。大人として普通にやり過ごしてみせる、と心の中でパグ太郎に見守りを頼む小路がおかしい。ところが相手は、2階に入っているデザイン会社で働く河合ケンタだと名乗り、名刺を差し出してきた。
その名刺は、驚くほど可愛かった。思わず反応してしまった小路に、河合は可愛いキャラクターが好きなのかと尋ねる。反射的に「はい」と答えてしまう小路。ところが河合は、実は自分も可愛いキャラが結構好きなのだと打ち明けた。あのとき笑ったのは、自分と一緒だと思ったら嬉しくなってしまったからだったのだ。
笑われたのかと思っていたが、違った。小路を苦しめていたのは、相手の視線ではなく、自分の中に残っていた昔の傷だった。四十を超えて初めて仲間を見つけたかもしれない、と小路は思う。まだ挨拶ぐらいしかしていないのに、仲間がいるかもしれないというだけで、こんなにも気分が違う。うれしくなって、おまけ付きのお茶を3つも買ってしまうところまで含めて、とても小路らしい。
なくしたストラップ
ところが今度は、鍵につけていたストラップをなくしてしまう。一つのストラップに全部つけていたのがまずかった。木庭にもらったものも、真純にもらったものも、まとめて失ってしまったのだ。たかがストラップの紛失と頭では分かっていても、地味にダメージが残る感じがつらい。
そんな中、部下たちも気に入っていたボールペンや付箋を使い切ってしまったと話している。大事にしていたものがなくなるのは寂しい。でも、次はどんなのにしようかと楽しみにできる。その言葉に、小路は新しいものを探す楽しみができたと前を向く。何より今は、仲間ができたのだから。
職場では、前髪を2ミリ切ったことに気づいてほしい部下に、1ミリも気づかなかったと正直に返す小路のやり取りもあった。こうした小さな会話の積み重ねが、小路が部下たちから慕われている理由をさりげなく伝えている。完璧に見える課長の、少し抜けたところも含めて、職場の人たちは小路を大切に思っているのだろう。
パグ太郎スタンプのデビュー
河合とは名刺を渡したついでにLINEを交換していた。初めてのLINEが届き、河合はさっそくスタンプを使っている。買ったものの今まで使えずにいたパグ太郎スタンプの使い時なのではないか。けれど、アラフォーの男がはしゃいでいると思われないか。そもそも既存のスタンプすら使えないから、すごく緊張する。
それでも本当は、スタンプを使って楽しい会話にしたい。悩みに悩んだ末のスタンプデビューは、小路にとって大きな一歩だった。その勢いでランチにまで誘ってしまい、ちょっと早まったかなと照れる姿もほほえましい。落ち込んでいた気持ちが嘘のように晴れ、仕事もはかどる。最後は店員に勧められるままダッフルコートを買い、ワンちゃんのお散歩にもぴったりだと言われてうっかり買ってしまったと明かすオチまで、温かい余韻が続いた。犬を飼っているわけでもないのに、パグ太郎と散歩する自分を想像したのだろうか。そんなふうに想像がふくらんでしまうのも、仲間ができて気持ちに余裕が生まれたからこそだろう。
好きなものを隠してきた小路が、同じものを好きな仲間と出会う。たったそれだけのことが、こんなにも世界を明るくする。第2話は、小路と河合の関係の始まりを丁寧に描いた、優しさにあふれた回だった。
好きなものを分かち合うということ
第2話で描かれたのは、好きなものを誰かと分かち合える喜びだった。小路にとって可愛いもの好きは、子どもの頃に笑われ、結婚生活でも隠し続けてきた、言わば心の奥にしまい込んだ秘密だ。だからこそ、河合のたった一言で、胸にのしかかっていた重い気持ちが嘘のように軽くなった。
同じものを好きだと言ってくれる人がひとりいるだけで、世界の見え方が変わる。ストラップをなくしても新しいものを探す楽しみに変えられたのも、スタンプひとつに勇気を出せたのも、河合という仲間がいたからだ。年齢も立場も違うふたりが、パグ太郎を通じてどんな関係を築いていくのか。ランチの約束の行方も含めて、これからがますます楽しみになる。




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