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『彼方から』第2話は、言葉の通じない異世界で途方に暮れていたノリコが、自分にできることを見つける回。盗賊のカシラを撃退したイザークのそばで、ノリコは「ココ」が水だったと気づき、この地の言葉を学ぶと決める。兵士であふれるカルコの町、敵側の思惑と事情、そして夜の宿で起きたイザークの異変まで、希望と不穏が入り混じる第2話を振り返っていく。




第2話は言葉を学ぶと決めたノリコの一歩
『彼方から』第2話は、言葉の通じない異世界で途方に暮れていたノリコが、自分にできることを見つけて前を向く回だった。盗賊に襲われていた行商人を助け、そのカシラを撃退したイザークとノリコ。ノリコは何もできない自分を嘆く代わりに、この地の言葉を学ぶと決める。行商人の馬車でたどり着いた街は、目覚めを探すザーゴ国の兵であふれていた。そして夜、イザークの体にある異変が起こる。希望と不穏が入り混じる、物語が本格的に動き出す一話だ。
目覚めを追う者たち
冒頭は、前話のラストで樹海の出口に集まっていた者たちの場面から。目覚めを狙う侵入者として拘束されそうになる中、ケイモスは周りの制止を振り切り、「俺は俺のやり方で目覚めを連れ去った奴を見つけ出す」と言い放つ。強さに異様なこだわりを見せるこの男が、目覚めを連れ去った者、つまりイザークを追い始めた。ノリコたちの知らないところで、包囲網が少しずつ狭まっていく。
崖下の行商人
一方、イザークとノリコは険しい崖下の道にいた。慣れない足場で、イザークはノリコをかばって服も荷物もぼろぼろ。ノリコは「私をかばったせいだ」と申し訳なさでいっぱいになる。高所恐怖症というわけではないけれど、あんな足場には慣れていなくて、と懸命に謝るノリコに、イザークは「何を言ってるのかわからん」。言葉の壁は、相変わらず二人の間に高くそびえている。
そこで二人が見つけたのが、崖下に倒れていた男だった。壊れた車輪や散らばった荷物を見ると、どうやら馬車ごと落ちてしまったらしい。イザークは手当てのための薬草を探しに行き、ノリコはその場に残される。イザークの姿が見えなくなったら不安でたまらないというノリコの心の声には、異世界にたった一人で放り出された少女の心細さが詰まっていた。
盗賊のカシラと「ココ」
イザークの剣
倒れた男は、苦しそうに何かを訴えている。何と言っているのか分からず、ノリコはおろおろするばかり。そこへ現れたのが、男を探していた盗賊のカシラだった。動けない男にとどめを刺そうとするカシラの前に、戻ってきたイザークが立ちはだかる。剣を持っているところを見ると渡り戦士か、と言われたイザークは、なんだってこう厄介事が次から次へと、とぼやきながら剣を抜く。巻き込まれ体質なのに見捨てられない、イザークの人の好さがにじむ。
カシラは、いつどこから来るか分からない攻撃が自慢らしく、自信満々に襲いかかる。ところがイザークはそれをものともせず、あっさりと斬り伏せてしまう。「バカな、この俺が斬られるなんて」と捨て台詞を残して逃げていくカシラの小物感がなんともおかしい。ノリコの「すごい」「かっこいい」という素直な感嘆には、思わず頬がゆるんだ。
「ココ」は水のこと
戦いのあと、ノリコはある事実に気づく。倒れていた男がずっと繰り返していた「ココ」という言葉は、水のことだったのだ。イザークが男に水を飲ませる様子を見て、ようやく意味がつながった。「水だって分かっていたら」、あの時すぐに渡せたのに。私だって役に立てたのに。悔しさと同時に、ノリコの中でひとつの答えが形になっていく。
言葉は勉強すればいい。そうしたら、自分でも役に立てることがあるかもしれない。「自分の立場を嘆いている暇があったら一言でも言葉を覚えよう」。第1話で帰りたいと泣いていたノリコが、ここで初めて、この世界で生きていくための一歩を自分の意思で踏み出した。最初に覚えた言葉が「水」というのも、生きることそのものに結びついていて象徴的だ。何もできないと落ち込むのではなく、できることを探す。その前向きさが、この作品の主人公らしい強さだと感じた。
着替えと帯の結び方
命の恩人と商売っけ
助けられた男は、衣類の行商人だった。ノリコの言葉を聞いて、島から来たんだろうと勝手に納得するあたり、この世界には大陸の周りにたくさんの島があるらしい。行商人は助けてもらったお礼もそこそこに、ノリコの服やイザークの服がボロボロだと言って、一式そろえて150ゾルと売り込んでくる。イザークが100ゾルと値切ると、怪我人相手に値切るなよとぼやく行商人。それに対するイザークの「命の恩人相手に商売っけ出してるのは誰だ」という切り返しが痛快だった。
結局イザークは、手持ちの品を差し出して、これで50ゾルにはなるだろうと話をまとめる。自分は盗賊が落としていった剣をもらうから構わないというイザークに、行商人は多分盗品だろうけどと苦笑いし、「綺麗な顔に似合わず」いい根性をしていると感心する。イザークの「顔は関係ない」という返しと、いきなり食い口が一人増えたという本音。ノリコを連れて旅をすることの重さを、イザークはぶっきらぼうな言葉の裏で引き受けているのだ。
帯と「すってんころり」
新しい服に着替えたノリコに、イザークは帯の締め方を教える。帯はくくらず、こう折って巻く、そして中へ入れ込む。ノリコがその言葉を一生懸命まねして繰り返すのを見て、イザークは言葉を覚えようとしていることに気づく。この世界の服の着方ひとつにも文化があり、それを教わりながら言葉まで吸収していくノリコのひたむきさが、とても微笑ましい場面だった。
行商人とのやり取りも楽しい。おじいちゃんの形見の弓のおかげで盗賊から逃げられたのに、馬車の車輪が外れて「崖下へすってんころり」。ノリコがその響きをおもしろがって「すってんころり」とまねすると、場の空気がふっと和らぐ。言葉が分からなくても、笑い合うことはできる。言葉を覚えていく過程そのものが、ノリコとこの世界の人々をつなぐ橋になっていくのだろう。
カルコの町とリエンカの思惑
兵士であふれる町
行商人の馬車でたどり着いたのは、カルコの町。人がいて、建物があって、街がある。それだけでノリコの表情が明るくなるのが印象的だった。ところが、怪我人を診てもらおうと訪ねた医者のもとには、兵士の遺体が次々と運び込まれていた。「彼らにはもうわしは必要ない、葬儀屋の担当だ」という医者の言葉が重い。樹海の周辺に集まっていた兵隊たちが、今朝になってどやどやと運び込まれてきたのだという。
そこへやってきた兵の隊長は、よそ者と見るや「怪しい」と所持品の検査を命じる。行商人に渡り戦士、それに島の娘という妙な取り合わせなのだから無理もない。医者がたしなめても、隊長は兵の命も助けられぬヤブ医者がと罵る始末。そんな隊長に、イザークは静かに言う。あんたたちの仲間だろう、静かに弔ってやったらどうだ。言葉少なでも、死者への礼を失わないイザークの姿勢が胸に残った。
医者によれば、樹海に目覚めが現れたらしく、それを求めて他国と一戦あったのだろうという。目覚めは見つかっていない。何年も前から占者が予言していたことが、ついに現実になってしまった。天上鬼を目覚めさせる目覚め。その張本人であるノリコは、自分が話題の中心にいることなど知るよしもない。
アゴルとジーナハース
舞台は変わって、リエンカ。目覚めを奪った者を追わずに戻ったアゴルが、その理由を問われている。駆けつけたときにはすでに痕跡がなく、さらにザーゴの兵とケイモスが斬り合いになったため、引き上げざるを得なかったという。他国の兵などいくら犠牲にしても構わないと言い放つ相手に、アゴルは部下の命が危険にさらされると反論する。現場を知る者の誠実さが、短いやり取りからも伝わってきた。
占者として類まれな才能を持つという盲目の少女ジーナハースも、目覚めの居所は分からないと言う。色々な色がぐちゃぐちゃとしていて何が何だか分からない、でもどの国もまだ手に入れていないことは分かる。大量の花虫が真っ二つに斬られていたという報告と、それを見て暴走したケイモスの話を聞き、相手はケイモスに会ってみたいと興味を示す。
あとでジーナが「ラチェフ様って苦手」と打ち明けることで、この相手がリエンカを事実上支配しているという若きラチェフだと分かる。そしてアゴルが傭兵になったのは、娘ジーナの目を治すお金が少しでも欲しかったからだった。父の足にしがみつくジーナとのやり取りは温かいが、アゴル自身は今度の仕事に気が進まない。天上鬼が目覚めによって蘇れば、この世はどうなるのか。敵側にも事情を抱えた人物がいることで、物語の厚みがぐっと増した。
宿の夜と、イザークの異変
ノリコの日記
宿屋では兵士同士のけんかが起きていたが、明かりがふっと消えると店の中は静かになった。それがイザークの力だと気づいたノリコは、つけることも消すこともできるなんてすごいと感心する。イザークの返事はやはり「何を言ってるのかわからん」。するとノリコは、よく聞くその言葉をまねして、何を言っているのか分かりません、と練習を始める。何気ない口癖さえ教材にしてしまう吸収力に、思わず笑ってしまった。
同じ部屋に泊まると分かって戸惑うノリコだったが、疲れた様子のイザークを見て、気持ちを日記に向ける。カバンを捨てる前に持ち出したのは、ノートとペン。日記を書こうと買ったばかりのものだった。いつか元の世界へ帰る日が来るのだろうか。もしその日が来たら、この日記を読んでもらおう。元の世界の家族に宛てたようなその思いが、切なくも前向きだ。ノートの落書きをイザークに見せる場面も含め、言葉が通じなくても少しずつ距離が縮まっているのが感じられた。
「俺に触るな」
しかし、穏やかな夜は長く続かない。眠りについたはずのイザークが、体が重いと苦しみ始める。様子に気づいたノリコが「イザーク」と呼びかけ、近づこうとした瞬間、イザークは「俺に触るな」と叫んだ。これまでぶっきらぼうながらもノリコを守ってきたイザークが見せた、初めての拒絶。その裏に何があるのか、強い不安を残して幕となる。
言葉が通じ始めた二人のゆくえ
第2話は、ノリコが言葉を学ぶと決め、イザークとの間に少しずつ意思疎通が生まれていく過程を丁寧に描いた回だった。「ココ」が水だと分かった瞬間の悔しさ、帯の結び方を繰り返す真剣さ、日記に込めた帰りたいという願い。そのどれもが、異世界で生きることを選んだ少女の小さな一歩として積み重なっていく。
一方で、目覚めを狙う各国の動き、強さに執着するケイモス、ラチェフの不気味な興味、そしてイザーク自身の異変と、不穏な要素も次々に提示された。前話のラストでイザークは、目覚めならいずれ彼女を殺さなければならないと心の中でつぶやいていた。言葉が通じ始めた二人の関係が、この先どう揺れていくのか。目が離せない。




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