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空間のねじれに飲み込まれた一行は、砂丘の地下へ。スバルと共に落ちたのはラムと“アナスタシア”ことエキドナ、そして地竜パトラッシュ。だが出口なき暗闇には、心を蝕む瘴気が満ちていた。シリーズ屈指の恐怖と評判の死に戻りの一周を経て、最後に現れる監視塔の番人とは。第69話を振り返る。




砂丘の地下、四つの影
目覚めと、双子のつながり
「バルス、いつまで寝ているの?」。ラムに叩き起こされたスバルが目にしたのは、無風で冷たい地下の暗闇だった。分断前のベアトリスの言葉を信じるなら、原因は空間の歪み。この場に飛ばされたのはスバル、ラム、“アナスタシア”ことエキドナ、そして地竜パトラッシュの三人と一頭だけだ。
動けないレムの身を案じて取り乱すスバルは、「お前はレムが危なくても平気なのかよ」と口走り、すぐに深く詫びる。ラムは静かに答えた。双子の共感覚で薄いつながりを感じる、「少なくとも 命だけは無事よ」と。エキドナはそっと明かす。スバルが目覚める前、ラムこそ誰より取り乱していたのだと。
冒頭から、毒舌の下に隠したラムの動揺を二段構えで見せる構成が上手い。「役立たずのバルスも起きたことだし」という軽口さえ、彼女なりの平静の取り戻し方に見えてくる。
スバルにしか見えない扉
出口を探して歩く一行の前に現れたのは、分厚い鉄の壁。ところがスバルには、それがなぜか「扉」に見える。エキドナには鉄の壁、ラムには邪魔な鉄くずにしか見えないのに、だ。スバルが触れると壁は消え、道が開けた。
同じことは二度、三度と続く。「行く手を遮らない扉なんて なんの意味があるんだ?」。魔獣だけを通さない結界ではないか、という推測も出るが、正体は分からない。分かれ道では「右を選べってフロイトが言ってた」とスバルの現代知識が飛び出し、張り詰めた空気を少しだけ緩めた。
スバルにだけ扉が見える、という違和感が静かに不気味だ。頑なに先へ進むのを嫌がったパトラッシュの警戒も含めて、この地下が「招いている」ような薄ら寒さが積み上がっていく。
心を蝕む瘴気
ささくれていく一行
進むほどに、体は重く、口数は荒くなっていく。軽口を叩くスバルに、ラムは「バルスうるさい」と切り捨て、「楽しむために歩いているの。目的を思い出しなさい」と苛立ちを隠さない。
見かねたエキドナは「ココロがささくれだっとるときは、誰とどんな話してもええ結果にならん」とスバルをなだめる。だが三つ目の扉の先で行き止まりに突き当たると、スバルも「くそが…」と壁を殴りつけ、感情の箍が外れ始めた。
後から思えば、この苛立ちの全てが異常のサインだった。じわじわと会話の温度がおかしくなっていく描き方が巧みで、視聴している側まで息苦しさに飲み込まれていく。
地獄絵図
ついに、ラムとスバルの罵倒が止まらなくなる。「ここに来たのはレムのことを目覚めさせるためよ」「ラムはレムを、妹を思い出すために来た」と詰るラムに、スバルも「お前がレムとそっくりな顔してると思うと」と最低の言葉を返す。「バルスなんてレムに合わせる価値もない。輪切りになってここで朽ちなさい」。ラムの殺意は本物だった。
掴み合いの果てに、背後からエキドナがラムを刺し、ラムの魔法がエキドナを両断する。そして逃げようとしたスバルを待っていたのは、狂乱したパトラッシュの牙だった。信頼していた愛竜に喰われ、スバルは絶命。死に戻りが発動する。
互いを大切に思う者同士が、外からの毒で殺し合うという最悪の見せ方だ。本人たちの本音と紙一重の言葉を吐かせるあたりが本当に意地が悪く、シリーズ屈指の恐怖回という声にも頷くしかない。
二周目の生存戦略
敵の名は、汚染されたマナ
目覚めたスバルは、今度は感情より先に問いを投げる。「なあ、瘴気ってのは一体何なんだ?」。ラムいわく、瘴気とは要は汚染されたマナのこと。放っておけば身も心も蝕まれ、ゲートがマナを取り込む以上、完全には防げない。できるのは濃いところに近づかないことだけだ。
前の周回で一行を狂わせたものの正体を掴んだスバルは、進路を変える。「左だ、左に進もう」。死の記憶を頼りに、瘴気の濃い道を避けるルート取りが始まった。
死んで得た知識を、騒がず慌てず質問の形で引き出すスバルの成長が光る。絶望を一度飲み込んだ上で淡々と対策に変える、この切り替えこそ死に戻りの真骨頂だ。
薄気味悪い優しさ
二周目のスバルは人が変わったように細やかだ。天井の低さを気遣い、足場の悪さを知らせ、「寒かったらすぐ言え」とマントまで差し出す。ラムは「その薄気味悪い気遣いは何なの?」と眉をひそめ、「やってることはユリウスと変わんねえだろ」と抗弁すれば、「ユリウスは自然やけど、ナツキ君のは不自然やし」と、エキドナにまで追い打ちをかけられる始末。
それでも、どこかで空気は和らいでいた。異変の匂いに気づいたスバルが「俺が見てくる」と申し出れば、ラムは「何かあったらバルスをおとりにするわ。恨まないようになさい」と返し、スバルも「その時は呪わせてくれ」と軽口で応じる。
一周目で殺し合った相手を、それでも守ろうとするスバルの不器用な優しさが沁みる。おとり呼ばわりの応酬がむしろ信頼の証に聞こえるのだから、この主従漫才は大したものだ。
「監視塔の番人」まとめと考察
燃える匂いと、救いの針
何かが燃える匂いに導かれた先で、一行は巨大な魔獣に襲われる。絶体絶命のスバルを、身を挺して庇ったのはラムだった。その窮地を貫いたのは、どこからか飛来した光の針。魔獣は瞬く間に射抜かれ、沈黙する。
現れたのは、屈託なく笑う謎の美女。砂丘であれほど一行を苦しめた狙撃と同じ力で、今度はスバルたちを救ってみせた。ネットの反応でも「現れたのが賢者シャウラか。スバルを探し求めていたらしい」と、その正体と目的への考察で持ちきりだ。監視塔の番人は敵か、味方か。答えは次回に持ち越しとなる。
殺しにきた狙撃手が救い主として現れる、この反転の気持ち悪さがたまらない。タイトルの「番人」が誰を、何から守る存在なのか。考えるほどに不穏さが増していく引きだった。
ゲートなき少女と、これから
幕間のミニコーナー「エミリア陣営奮闘記」では、アナスタシアの秘密がさらりと語られた。彼女は生まれつきゲートに不備があり、魔法が全く使えないのだという。魔法を使いすぎるロズワールとは真逆の体質だ。
本編はエミリアがベアトリスの背中を押し、アナスタシアと「仲良くしなくちゃ」と握手させる微笑ましい一幕。緊張で盛大に噛むベアトリスと、「改めてベアトリスちゃん、仲良くしような」と受け止めるアナスタシアに癒やされる。
地獄のような本編の後に、この気の抜けた幕間が効く。ゲートの不備という設定は、エキドナが彼女の体に宿れた理由とも無関係ではなさそうで、さりげない情報の置き方に唸らされる。地下で分断されたままのエミリアたちの安否も含め、次回が待ち遠しい。












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