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『メビウス・ダスト』第9話の副題は「エンプティ・クラウン」。中身が無いという意味の語が題に入るのは、九本でこれが初めてである。この回のゲームはチェスなのだが、盤にはポーンだけが並び、王冠のつく駒は町のどこかに隠されている。この回でアラキは三つのチームを続けて倒し、最強という札を貼られる。そしてそのすぐ横で、らしくないと言う側も、らしさを説明できずにいる。




盤の上には、ポーンしかない
副題は公式サイトのSTORYに出ている
第9話の副題は「エンプティ・クラウン」。公式サイトのSTORYに、話数と一緒に並んでいる。
公式のあらすじは、アラキのディアボリック・ゴーストでの生活が始まった、から始まる。最も衝撃を受けたのはクルスがスピカに振るう暴力だった、と続き、ゲームでの活躍、そして連日の容赦のなさに憤るスザクの決意までが書かれている。
九本の副題を並べてみる
一本目から並べる。ファースト・ライト、アドレナリン・ゲーム、ディアボリック・メテオ、オーバー・ヒート、ガールズ・ロアー、シン・シンコイワ、リストアド・メモリー、ディープ・ディバイド、そして、エンプティ・クラウン。
中身が無いという意味の語が題に入るのは、これが初めてである。ここまでの八本は、光、熱、咆哮、記憶、分断と、何かがそこにあることを指す言葉で作られてきた。
チェスなのに、駒が足りない
この回の二つ目のゲームがチェスである。開幕の説明が、コマが足りないけれど、だった。
普通のチェスじゃつまらないからねと続き、盤にはポーンだけが並ぶ。始まった時点で、盤の上はほとんど空である。
王冠のつく駒は、町のほうに隠されている
残りのコマ、クイーン、ナイト、ビショップ、ルークは町のどこかに隠されているよ、と説明される。
捕まえたチームがそのコマをチェスのバトルで使うことができるという決まりで、追加コマは自陣にランダムに配置される。盤の勝負をする前に、町を走る勝負がある。
駒のほうが、見つかった瞬間に名乗る
隠されていた駒は、よくぞ、我を見つけた、と口をきく。
探されている側が、自分から名乗り出る。ネットの反応でも、しゃべったところで声が上がっている。ものを探すゲームのはずが、相手のいる勝負に変わる合図になっている。
兄の痛みは私にしか受け止められない
朝と夜が入れ替わっている
拠点での朝が、食うなら食え、適当に、から始まる。今何時、と聞いて、九時半、と返ってくる。
夜の、と確かめると朝のだった。太陽沈んだら起こして、と言ってまた寝る。夜に集まる子どもたちの暮らしが、生活のほうから示される。
暴力の引き金は、アラキの話だった
スピカが、彼のこと、どうして、と聞く。返ってくるのが、アラキのためだよ、これがアラキにとっていいことなんだ、である。
そこへ何か不満? 文句でもあるの? 何かあるなら言えよが続いて、手が出る。連れてきた理由を疑われたところが引き金になっている。
「どう扱おうが僕の自由でしょ?」
止めに入ったアラキへの答えが、スピカは僕の妹だよ、である。
どう扱おうが僕の自由でしょと続く。前の話で、アラキのことを僕のもののように語っていた人が、妹についても同じ持ち方で話す。
直後に、丁寧な世話を指示する
同じ場面の続きで、いつまでアラキのことソファで寝かせてるの、と言い出す。
ベッドを用意してあげて。あと、アラキの新しい服も今日中にである。前の話にあった、アラキには丁寧に接するように、がそのまま続いている。丁寧に接しろと言われた相手が、その場で殴られている。
説明するのは、殴られた側
アジトではいつも君にあんな感じなの、と聞かれたスピカの答えが、気にしないで、だった。
兄の痛みは私にしか受け止められないからと続く。止めてほしいとも、助けてほしいとも言わない。実の双子なのに、まるでいじめてるみたいに、という言葉のほうは、外から来た側が言っている。
ラムスの割合が、痛みの説明に使われる
続く説明が、兄のラムスは頭部以外全身、私は違う、ちゃんと体はある、である。
そのうえでいいの、私は丈夫だから、私より、兄の心はもっと痛いからと締める。体がどれだけ残っているかという話が、そのまま心の話に接続されている。この作品はラムスの割合を人物ごとに数えてきたが、それがここで痛みの目盛りとして使われる。
未来が見えると言った瞬間、全員が自分の未来を聞く
一つ目のゲームはモグラ叩き
今夜のゲームはモグラ叩き、先に百点を取った方の勝ち、と説明される。
得点がマイナスになるモグラもいるみたいと補足が入ると、めんどくせえ、が返る。ルールの細かいところを面倒がるのが、このチームの流儀である。
「てめえの能力って何なんだよ」
待ち時間にアラキが聞かれるのが、てめえの能力って何なんだよ、である。答えが、未来が見える、だった。
するとマジ? 占い? 俺、何歳で結婚すんの?が来て、明日上がる銘柄を全部教えろ、十年後の俺、と注文が並ぶ。勝負に使う話は誰もしない。
何ひとつ答えられない
アラキの返しが、いや、そういうのは、である。じゃ、何が分かんだよ、と詰められて、えっと、で止まる。
能力の名前だけは立派なのに、聞かれたことには何も返せない。前の話で最も歓迎されたその力が、雑談の場ではまったく通じていない。
「王子様より王様にしとけ」
話が流れて、百人の王子様と結婚したい、という声が上がる。
返しが王子様より王様にしとけだった。王冠が題に入っている回で、王の話が軽口として通り過ぎる。順番が来て、え、結婚、それは俺だけで決められることじゃないし、と答えた側は、ノリ悪い、と言われる。
役に立たないほうの「見える」
もう一人の見える力については、おじさんがラーメン食べてるのが見える、と披露される。
マジ? 俺も食いてえで終わり、その場ではただの余興になる。ところが後半、隠された駒を見つけるのは、この力のほうである。
場所だけ分かる側と、意味からたどる側
アラキは、座標を読み上げる
探索が始まると、アラキの指示が、亀有駅、北口から北西に向かって百七十メートル、になる。
手がかりは何もない、というところから、いきなり距離まで出てくる。本人はその直前に、チェスはあんまりやったことなくて、と言っている。
「そこまでは言ってなかった」
現地で、どの駒がいるの、と聞かれた返事が、そこまでは言ってなかった、である。
場所はわかるけど何かまではわからないのかと確認が入る。先読みは座標だけを寄越して、中身は寄越さない。
見えない人と、見える人がいる
何も見えねえぞ、という声に、キラキラしてるよ、が返る。
ほら、ソラには見えるもんである。場所を出す力と、そこにあるものを見つける力が、別々の人に分かれている。二つが揃わないと駒は取れない。
もう一方は、名前から意味をたどる
フェブラリー・ロアーズ側は、駒は甲冑屋にあったみたい、というところから始める。駒と関連する場所にあるってこと、と気づき、ビショップは教会ってこと、と当てる。
それでもディアボリにビショップも取られちゃった、もう先に読まれてるねになる。正しく推理しているほうが、いつも一歩遅い。
クイーンだけは、身内の思い出からたどり着く
残りはルークとクイーン、二兎を追う者は一兎も得ず、ルークは捨てる、クイーンに絞るよ、と決める。
悩んでる時間はないよ、なんでもいいから案出して、と急かされて出てくるのがおばあさん、昔のど自慢のクイーンって呼ばれてなかった?である。駒の名前から、身内のあだ名をたどって場所に行き着く。当てずっぽうを出せと言った直後に、いちばん個人的な記憶が当たる。
全部のチームを倒したよ、と王冠が載る
この回はゲームが三つ続く
公式のあらすじにも、ディアボリはランプス、緋狼を一方的に打ちのめし、ついにはフェブラリー・ロアーズとの対戦を迎える、と書かれている。
どの試合も、アラキの先読みが入った時点で片がついている。勝ち方の説明がほとんど要らないまま、次の試合に移っていく。
「やっぱりアラキが最強だ!」
締めの場面で言われるのが、これで全部のチームを倒したよ、アラキ、である。
続くのがやっぱりアラキが最強だだった。自分の力が分からないと言い続けてきた人に、最強という札が貼られる。
前の話の「便利だな」の続きになっている
前の話では、言われたとおりに動いた側から、こいつは便利だな、という声が出ていた。
今回は同じ場所から、最強、という言葉が出てくる。呼び方が上がっただけで、していることも扱いも変わっていない。
「あなたの居場所は本当にそこ?」
勝ち名乗りのすぐ横で、これでいいの、という声が入る。
あなたの居場所は本当にそこと続く。誰の声かは断定できないが、最強という言葉に重ねて置かれている。
望まれているのは、力を持ったものではない
終わり際の語りが、我が真に望むのは、力を持ったものではなく、未来を切り開くもの、である。
全ての常識を覆し、抗えぬ運命さえ変えてしまう存在なのだろうと続く。この回のアラキは、まさに力を持ったものとして扱われている。副題の王冠が空だというのは、そういうことになる。
らしくないと言う側も、らしさを知らない
元のチームは、外から見ている
ポリスホッパー側の場面が、アラキ、どんどんすごいことになってる、から始まる。
続くのがでも大丈夫なのかな? なんか様子が変だけどである。強くなっていることと、心配していることが、同じ口から続けて出てくる。
突き放す返しが来る
返しが、なんでアラキのこと気にすんの、あんなやつどうなったっていいじゃん、うちらにはもう関係ない、である。
前の話でもやる気ないならハルトも出てく?と、同じようにハルトが名指しされていた。今回も、突き放す言葉のなかでハルトの名前が呼ばれる。話者は書かないでおくが、同じ形が二話続いている。
「こんなのアラキらしくない」
それでも、こんなのアラキらしくない、と言う声が残る。
強くなったことではなく、様子が変だということのほうを見ている。心配の言い方としては、いちばん普通の言葉である。
「アラキらしいって何?」
返ってくるのが、アラキらしいって何、である。
何が本当で何が嘘かも分からないのに、ハルトはアラキの何を知ってたっていうのと続き、もういい、アラキの話なんかしたくない、で切れる。怒っている側が、いちばん痛いところを突いてしまっている。
怒りが、知らなかったという話に変わる
残された者たちのまとめが、俺たち、アラキのことどれくらい分かってたのかな、である。
俺も分からない、嫌いにはなれない、だから困るんだで終わる。裏切りの話として始まったものが、途中から、知らなかったという話にすり替わっている。
見ている側にも、同じことが起きている
ネットの反応にも、アラキらしさが分からないと言われても困る、という声が並ぶ。
作中の人物が答えられないことを、見ている側も答えられない。狙って揃えたとも、置いていかれているとも読める。空の王冠が誰の頭にあるのかは、まだ決まっていない。




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