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『岩元先輩ノ推薦』第11話の副題は「毒男」。原因不明の集団食中毒が起きた聖導女学院を、栖鳳中学の面々が警護する回である。岩元が二年前に読んだ記録では、毒男は「しきみ」と呼ばれていた。そして瑠璃は、学院に生える毒の植物として同じ「しきみ」を挙げ、「植物が悪いのかしら」と問い返す。毒を持って生まれたものは悪なのかという問いが、彼岸花の炎を操る岩元自身にも向いてくる。




「毒男」を探しに行って、毒の草と古い鏡に行き当たる
第11話の副題は「毒男」。十一本の副題の中でいちばん短い二文字で、しかも第8話の「通称・怪奇箱男」、第9話の「隙間男ト箱男」、第10話の「同時多発流星事件ト電波物件ト念写男」に続いて、四話連続で「男」が入った。公式サイトのあらすじは、原因不明の集団食中毒が起きた聖導女学院で、栖鳳中学の面々が生徒の警護にあたるところから始まる。そして「果たして内臓のない人間など本当にいるのか」と問いを立て、最後に岩元が「麗しい金髪の女学生・瑠璃と出会うのだった」と結んでいる。
軍服がうろつく女学院に、毒蜘蛛の噂が立つ
冒頭は女学生たちの噂話から始まる。「ねえあなた、うろつく軍服をご覧になって」「私たちの中に毒蜘蛛が紛れているらしいのよ」「それをしらみつぶしに探しているのですって」。探し方は「腹を見せるのよ」で、「毒蜘蛛の腹を裂くと空洞になっているそうよ」「その蜘蛛は昔、内臓をすべてえぐり取られているの」と続く。栖鳳中学が追う毒男の話が、女学院の中では毒蜘蛛の怪談として先に回っている。
語りによれば「ここは聖導女学院」。「先日、集団食中毒が発生したとのことで」、栖鳳中学の面々が警護などを「しばらく任されることになった」。原因は「毒物混入って噂だね」「水道か、飲食物か、食器か」とまだ絞れていない。「僕なら一旦学校閉鎖するがね」という声も出る。
警護する側も、その噂は承知している。生徒に「この紙を持って検査を受けてください」「体調は悪くないですか」と声をかけ、「何か少しでも異変を感じたら我々に知らせてください」「そこら辺にいますから」と言ったうえで、「軍服がうろついてますよ」と付け加える。噂話の中の言い方を、噂されている側がそのまま使って、相手の緊張をほどいている。
奥秋のやり方は、服の下を確かめること
公式サイトのあらすじによれば、奥秋は食中毒を「毒男」の仕業だと疑い、「生徒に服を脱がせて中身を確認しようとする」。本編でも「服を脱がせて中身を確認しろ」「見ればすぐ分かるので」と言い切る。
止める側は「毒男はあんたの追ってる危険案件の一つだ」「焦る気持ちも分かるが」「ここで普段のような振る舞いをやられると」「行動しにくいんだよ」。返ってくるのは「ライオンは常に百獣の王である」「お前みたいに人によって対応を変えるなんてできんね」で、「また訳の分からんことわざもどきを」とあきれられる。相手によって態度を変えないことを、百獣の王のたとえで押し通している。公式サイトのキャラクター紹介は奥秋雄弐を「粗暴な振舞いが目立つ人物で岩元とは正反対だが、なんだかんだ仲は悪くない」と書いている。
内臓を抜かれたまま逃げた少年
毒男の言い伝えはこう語られる。能力者を解剖していた時代があり、「もちろん死んでからだぞ」「解剖ってのは内臓を抜くわけだが」「その中で毒を操る能力を持つ少年が内臓を抜かれたまま逃げた」。その少年は「体内で生み出す毒を血液に変え動くことができたのだ」、ただし「だが腸がないために栄養を頻繁に得なければならなかった」。
公式サイトのあらすじも、毒男を「能力者の死後、解剖により内臓を抜かれ生き返ったとされる存在」と説明している。内臓がないのに生きている、という一点が、毒男を見分ける唯一の手がかりになっている。服の下を確かめろという乱暴な案も、理屈の上ではそこから出てくる。
「まあお仲間だしな岩元」
岩元の読み方は違う。「毒男のことは分かってますよ」「俺が毒男だとしてもここに来た」「若い婦女子が常に多くいるのだから」。岩元は、追う相手の側に立って考える。それを「感情移入か」「まあお仲間だしな岩元」と茶化され、「今回は殺しちまわないようにな」と釘を刺される。
公式サイトのキャラクター紹介によれば、岩元胡堂は「燃える彼岸花から繰り出す炎を操る能力を持っている」。能力者を追う側の岩元もまた能力者で、「お仲間」という言い方はそこを突いている。言い返しの「だから不幸を生んでいるんだろ」には、「今日はずいぶん怖いよ」と返される。
二年前に読んだ記録と、「しきみ」という名
岩元が毒男の記録を読んだのは「2年前」、「入学当初のことだったんだよ」。回想の岩元は「隔離施設所属」と名乗り、橘城先生に「早速読んでも構わないでしょうか」と頼んでいる。記録によれば「毒男には名字はなく」「しきみと呼ばれていた」。そして「明治33年2月」「多臓器不全により死亡」。
記録の上では、毒男はとうに死んだことになっている。それでも岩元は「今も生きているのなら」と考えを先へ進める。死亡の記録と、内臓を抜かれても生きていたという言い伝えが、同じ一人について並んでいる。
「私は毒男でもないし」「内臓もあるわ」
瑠璃のまわりの女学生たちは、軍服の中に「素敵な人」を見つけたと騒ぎ、「あなたにぴったりだと思う」「狙うならいい色を貸してあげる」と口紅を差し出す。女学院の中では、軍服は怖い噂の種であると同時に、うわさ話の楽しみにもなっている。
そのあと岩元の前に現れるのが瑠璃である。「君が毒男なのか」と問われた答えは、「軍服さん」「私は毒男でもないし」「内臓もあるわ」。噂話の毒蜘蛛の条件を、先回りして自分から打ち消している。
瑠璃は岩元を「若い軍服さん」と呼び、「でも調べれば毒なんて出ると思うわ」と言う。疑われている本人のほうが、探している側の前提を崩しにかかる。そのあと瑠璃は、周りから「ルリ様」と呼ばれる女学生として描かれていく。
根も毒、葉も毒、実も毒
瑠璃の言い分は「だってこの学校には」「毒性の植物も生えているのですもの」「しきみとか」「根も毒」「葉も毒」「実も毒よ」。毒男の記録にあった名前と、学院に生える毒の植物の名前が、同じ「しきみ」で重なる。
そして問い返す。「でもそれって」「植物が悪いのかしら」「毒なのは」「人間にとって刺激が強すぎるだけ」「彼らはただ生きているだけなのに」「そんなものを探してどうするの」。毒を持って生まれたものを、毒を持っているというだけで追い回すのか、という問いである。
毒の出どころの一つは、江戸時代の鏡
分析の結果は「女の子からは確かに」「毒が検出されました」「そして指先からヒ素が確認できました」。手がかりは「これは中庭に落ちていた鏡なんですが」「これはおそらく江戸時代後期の代物」「その頃作られた鏡には十数パーセントほど」「ヒ素が含まれていました」「その毒性から素手で鏡を触るのは当時からご法度です」「あの子は素手で触ったようですね」。毒男を探していた場で、毒の出どころの一つは古い鏡だった。
一方の岩元は「毒男を見つけた」と言い、「内臓を確認できたってことか」と聞かれて「毒男に内臓が戻る可能性はないだろうか」と返す。「内臓あったんかい」「毒を血に変えることができたとしても」「内臓を再生するなんて難しいんじゃねえか」。内臓があったことを、疑いが晴れた理由ではなく、仮説を組み直す材料にしている。
彼岸花にも毒がある
植物の話はもう一度出てくる。「そういや彼岸花にも毒があったっけ」「ええ」「同じですよ」。岩元の能力は、公式サイトの紹介どおり燃える彼岸花から炎を繰り出すものだ。毒の草を「ただ生きているだけ」と言った瑠璃の問いは、彼岸花の炎を使う岩元にもそのまま返ってくる。
閉じられない学院と、姿を見せない学長
閉鎖の話は通らない。「閉鎖の件だが無理そうだったわ」「学長はかなりのご老体のようでな」「最近は姿を見せてないらしい」。さらに「髪が変色してたぞ」「前髪が変色している子がいたな」「毒男に近い子なのか」と、女学生の側にも気になる印が見つかる。学院を閉じる話は通らず、決める立場の学長は姿を見せない。
しおりを挟んでおいた人
最後は一人の女学生の目線になる。「あなたが今日借りる本」「やっぱりそれだったのね」「そうじゃないかと思って」「しおりを挟んでおいたの」。瑠璃のことを「いつの間にか現れ」「私の心を支配した」「魅力的なお方」と思い、「お手製のしおり」を「お礼だって言えばもらってくれるよね」と用意する。
ところが「ルリさんどこ」と探しに行った先で見つけるのは「部室の下にこんなものが」。そして「そんなに知りたいのね」「いつかあなたにも見せようと思っていたの」で終わる。先回りしてしおりを挟んでくれた人が、今度は隠していたものを見せる側に回るところで、この回は切れる。
脚本は大知慶一郎、総作画監督は一人だけ
各話スタッフは、脚本が大知慶一郎、絵コンテが安東大瑛、演出が又野弘道。大知慶一郎の脚本は第5話以来で、第1話、第2話、第5話に続く四本目になる。安東大瑛は第4話と第9話では演出を担当していた。
総作画監督は菊地洋子の一人だけで、総作画監督が一人だけの回は、第1話から数えてこれが初めてである。第10話に続いて、松井晟花と吉田和香子のどちらも総作画監督に入っていない。作画監督の欄には個人名が13人並び、そのほかに寧波麦冬映画、不思議動画、蜜柑動画、EN.studio、所沢映画の名義もある。
まとめと考察
探していたのは内臓のない男、見つかったのは毒の草と古い鏡
第11話は、毒男という一人の怪人を探しに行って、毒の草と古い鏡に行き当たる回だった。噂は毒蜘蛛の怪談として先に回り、奥秋は服の下を確かめろと言い、岩元は毒男の側に立って考える。毒の出どころを一人の悪者に集めようとするほど、毒は学院のあちこちに散らばって見えてくる。
記録の毒男は「しきみと呼ばれていた」。学院に生える毒の植物も「しきみ」。毒男の名が植物の名と同じなのは偶然なのか、それとも毒を持つもの同士に同じ名がつけられたのか。この回はそこに答えを出さないまま、瑠璃に問いを預けている。瑠璃の「そんなものを探してどうするの」は、毒男を探す栖鳳中学の仕事そのものへの問いにもなっている。
「植物が悪いのかしら」は、能力者に向いた問い
「彼らはただ生きているだけなのに」という瑠璃の言葉は、植物についての話でありながら、能力者についての話としても読める。毒を持って生まれたことと、悪であることは同じなのか。燃える彼岸花の炎を操る岩元は、「お仲間」と茶化されるほど毒男の側に近い場所で、その問いを受け取っている。
女学院の最後の場面では、隠されていたものが見せられようとしている。毒男を探す話が、毒を持つものをどう扱うかという話に変わりつつあるところで、第11話は幕を閉じる。




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