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『ここ俺』第10話の副題は「敵陣突入」。消えた奉公人たちをつないだのは、正門ではなく通用口を使うという一点だった。明日の段取りを決め終えた夜に、マスタフォン侯爵邸のメイドたちが向こうから襲ってくる。いちばん強い男が、正体を隠すために高みの見物をしているしかない。そして裏口から入り込まれていた屋敷に、ロックとエリックは正面から入っていく。




呪いを感じない像から、下水道の行き先までが一本になる
第10話は戦闘から始まらない。前回の終わりに組み上がった破片、その像を囲んで話し込むところから始まる。副題の「敵陣突入」にたどり着くのは終盤で、そこまでは机の上の話が続く回だ。
呪いを込めて召喚する、と説明される
像の正体について、シアは「この像に呪いを込めて召喚すると聞いたであります」と説明する。召喚に要るのは像そのものではなく、像に込める呪いのほうだという言い方になっている。前回この像を昏き神々の柱の一つだと言い当てたのも彼女で、狼の獣人族に伝わる知識が二話続けて話を前に進めている。
感じないということは、もう使い終わったのかもしれない
ロックが引っかかっているのは、前回の自分の言葉のほうだ。「さっきこの像からは呪いのようなものを感じないって言っただろう」。呪いが無いという観察が、安心材料ではなく最悪の可能性に裏返る。邪神はすでに召喚されたあとのものなのか、それともまだ使う前なのか。シアは「像を見ただけではそこまでは分からないであります」と正直に答えて、判断はそこで止まる。
魔鼠が巨大化したのは、あくまで結果論だ
像は下水道の魔鼠の体内から出てきた。誰かが食わせたのか、流された像が割れて勝手に食ったのか。魔鼠を集めて巨大化させるのが狙いだったのかと問われて、シアは「そういう効果については聞いたことはないであります」と否定する。前回いちばん派手だった巨大魔鼠が、ここでは目的ですらなかったことになる。
下水道の行き先が、そのまま容疑者の名前になる
巨大な魔鼠がいた下水道は、マスタフォン侯爵邸の下だった。侯爵家の関係者が下水にこれを流した可能性もある、という話になり、前回のメイドの応対がここで思い出される。弁償を断られたという一件が、一話ぶん遅れてようやく地図の上に置かれる。
相手が大貴族なので、まだ材料が足りない
調べるといっても相手は要職を歴任した大貴族だ。国王の命令で踏み込めないかと聞かれたエリックは書状の用意を引き受けるが、「だがもう少し材料が欲しいところだな」と付け加える。捜索依頼を自分から取り下げた点はシアが十分怪しいと言い切るけれど、怪しいだけでは踏み込む理由にならない。
消えた人たちは、全員が通いの奉公人だった
ここから王都の失踪人を洗い直す作業になる。前回の空振りをもう一度並べ直すところから始まるので、画面の上では何も起きない時間が続く。
家出か失踪かはっきりしないものばかりだった
セルリスの報告は前回と変わらず、線引きのできない案件ばかりだ。年齢の面でも、前々回に囚われていた子供たちとは合わないとシアが補足する。数だけは集まっているのに、集まっていること自体が意味を持たない状態から始まっている。
消えたのは、みんな貴族の屋敷の奉公人だった
一つだけ揃っている項目が出てくる。消えた人は全員、貴族の屋敷で働く奉公人だった。奉公先は五カ所で、いずれもロックの屋敷と同じ地区にある。ただし同じ地区というだけで、五つの屋敷が近所に固まっているわけではない。
住んでいた場所はバラバラで、共通点が消える
全員が住み込みではなく通いだったことが分かり、それぞれの自宅も確認済みだった。ところが自宅の位置はばらばらで、奉公人の家同士が近いわけでもない。共通点が一つ見つかるたびに、次の項目でそれが打ち消されていく。
奉公先というだけでは見えてこない共通点
それでもロックは「何かあるはずだ」と引かない。言い方が「奉公先というだけでは見えてこない共通点が」と一段細かくなっているのが効いていて、探すものを屋敷そのものから屋敷の使い方へ言い換えた直後に、答えの側から声がかかる。
帰り道が重なると気づいたのは、下水道にいた子だ
声を上げたのはミルカだった。屋敷では家事を担当していて、この場に地図を読む役として座っているわけではない。
奉公人は正門ではなく通用口を使う
ミルカの言い分は一行で済む。「どの家も屋敷を出た奉公人が帰るとき同じ道を通るんじゃないかな」。理由は「奉公人は正門じゃなくて通用口を使うだろ」だ。手がかりは屋敷の位置でも自宅の位置でもなく、出口の位置だった。
通用口の場所を知っていた理由がいちばん重い
なぜ通用口の場所を知っていたのかと聞かれて、ミルカは「下水道をねぐらにする前、この辺りのゴミを漁ってたからな」と答える。推理を成立させているのは知識でも訓練でもなく、家を失っていた時期の行動範囲だ。前回は下水道で暮らしていた子が下水道から出てきた破片を組み上げていて、今回はその土地勘そのものが手がかりになっている。
セルリスの返しが、その場でいちばん短い
事も無げに話すミルカに、セルリスは「もうそんなことしなくたって大丈夫だからね」と返す。推理の中身ではなく、推理の出どころのほうに反応している。第8話で服を用意し、前回はその服を褒められていた関係の続きが、ここでは一言だけ置かれる。
五本の帰り道が、地図の上で一本に重なる
通用口を起点に引き直すと、五つの屋敷から出た道は必ず同じ一本を通ることになる。エリックはすぐに見回りの兵を出す判断をする。ここまでの足踏みが長かったぶん、線が一本に重なる場面のほうは驚くほど短く済んでいる。
囮になると言い出した二人が、どちらも止められる
見回りを出す話の直後に、もっと直接的な案が出る。しかも二人続けて出る。
セルリスが自分から囮を買って出る
「私が囮になってみようと思うの」と言い出したのはセルリスだ。前回は爆発に巻き込まれて服も髪もぼろぼろになっていた人が、今回は自分から前に出ている。返ってきたのは「そんなこと許さんぞ」という即答だった。
ミルカが「囮は俺がやるぜ」と続ける
止められた直後、今度はミルカが「囮は俺がやるぜ」と手を挙げる。理由付けが「セルリス姉さんはすごい美人だから目立ちすぎるよ」「囮には向いてないって」で、断る言葉ではなく褒め言葉のかたちで、自分に順番を回している。
狼の子を捕まえるには狼の巣に入らないとダメだ
二人とも使わないと言われても引き下がらず、「狼の子を捕まえるには狼の巣に入らないとダメなんだぜ」という言い回しが出る。祖父の口癖だったのだという説明が、そのまま押しの強さの出どころになっている。
却下の理由が、危ないからではない
最後に案を潰したのは、危ないからという言葉ではなかった。「さらわれたからといって、必ず黒幕のもとに運び込まれるとは限らないだろ」。危険だからではなく確実ではないから却下する、という筋の通し方になっている。そのぶん、代わりの手を出す責任がこちら側に残る。
段取りを決め終えた夜に、向こうから来る
代わりの手も、結局はミルカの記憶から出てくる。そしてその段取りは、実行される前に丸ごと不要になる。
王都中の下水道の入り口を調べてあった
ロックが聞いたのは下水道の入り口の位置だ。ミルカは「ねぐらにする前に王都中の下水道の入り口を調べたからな」と即答し、前回アリオたちを追って入った入り口から巨大な魔鼠に出くわすまでの経路を、指でなぞってみせる。この回のミルカは、二度とも記憶だけで話を前に進めている。
問題の道の上に、下水道の入り口がある
なぞった線は、失踪人が通るはずの道の上を通っていた。奉公人をさらい、下水道を通ってマスタフォン侯爵邸まで運ぶ。魔鼠の巨大化と像の投棄と失踪人が、下水道という一語でようやく一本につながる。
明朝の書状と、断られたときの踏み込み
エリックは明朝に呼び出しの書状を用意すると決める。また体調を理由に断ってくるのではないかと言われると、「その時は、失踪人事件に関与の疑いありとして踏み込む」と答える。断られること自体を、はじめから次の手続きに組み込んでいる。
夜食の支度の途中で、玄関に立たれる
そのあとは完全に日常の場面だ。泊まると言い出すゴランを娘が追い返しにかかり、ミルカが夜食を用意していたと言い、ゴランが「気が利くな、ミルカちゃん」と機嫌を直す。取ってくるよと席を立った先に立っていたのが、マスタフォン侯爵邸のメイドたちだった。明朝の予定は一晩ももたない。
いちばん強い男が、正体を隠すために動けない
襲撃そのものは短い。見どころは、誰が戦って誰が戦わないかのほうにある。
結界を簡単に破って入ってきた
メイドたちは眷属化していて、しかもロックが屋敷の周りに張った結界を破って入ってきている。「こいつら、ただの眷属化じゃねえぞ」という警戒が出て、前回の引きにあった昏き神々の加護を受けた特別な眷属という宣言が、そのまま手応えとして画面に出てくる。
拳を食らって起き上がってくる
前に出たのはゴランだ。「名門をあてにすんな」「獲物はこの身一つで十分」「それが戦士だ」と言い切って素手で受ける。その拳を食らってなお起き上がってくるところで、相手の異常さが数字ではなく体感で示される。
魔法は使うな、監視されている
ロックは動かない。「魔法は使うな、監視されてる」「今、お前の正体を敵に知られるわけにはいかん」と止められるからだ。この作品でいちばん強い人物が、強いことを隠しているという設定のせいで手を出せない。
高みの見物でもしてろ、と言われる側になる
続く言葉は「ま、高みの見物でもしてろよ、ロック」だ。十年間ひとりで戦い続けた人物に向かって、見ていろと言う役が回っている。第6話で仲間に背中を守ってもらうのもいいものだと独白した流れが、今回はもっと極端なかたちで出ている。
王が自分の民を斬り、灰は年下が片づける
戦いの中身よりも、そのあいだに交わされる言葉のほうが重い場面だ。
眷属化した者は二度と人間には戻れない
エリックの手は一度止まる。「自国の民を斬るのは気が進まんが」。答えるのはシアで、「眷属化した者は二度と人間には戻れないであります」と言い切る。第5話で魅了でよかったと線を引いた本人が、今回はその線の向こう側だと告げている。
平和ボケが抜けていないらしい
エリックの自己評価は厳しい。「私もまだまだ、平和ボケが抜けていないらしい」。ためらったことを美点として扱わず、鈍っていた証拠のほうに数えている。そのうえで出てくるのが「せめて一刀の下に葬ろう」だ。
見ない方がいい、と連れ出される
戦いのあいだ、ミルカは「見ない方がいい」「こっちへ」と連れ出される。ルッチラとガルヴにミルカを頼む声も、その直前に飛んでいた。この家でいちばん新しい家族に、何が起きているかを見せないという判断が働いている。
覗き野郎、と呼びかける相手はコウモリだ
手を出せなかったロックがやったことは一つだけだ。監視していた相手に向かって「よう、覗き野郎」「よくも俺の家族に手を出してくれたな」「お前は、俺を怒らせた」「覚悟しておけ」と言い、その目を潰す。魔法を封じられた人物に残された手が、宣戦布告だけになっている。
灰だらけの床を、いちばん年下が引き受ける
終わったあとに残るのは灰だ。掃除が大変でありますな、という声に、ミルカは「掃除なら任せといてくれ」と即答する。セルリスが手伝うと言うと、「姉さんたちは化け物と戦って疲れてるんだから、休んでなって」と断る。第8話の掃除は俺の仕事だぜという台詞が、人が灰になった床にそのまま適用されている。
ひと月、餌ももらわずに残っていた犬が手紙を運ぶ
事態を動かすのは、推理でも戦闘でもない。屋敷の外にいた一匹の犬だ。
中に入りたそうにしていた
連れてきた理由の説明が「中に入りたそうにしてたんでな」しかない。迎え入れた側は、それが何なのかをまったく分かっていない。分かったのはエリックのほうで、「タマではないか」と名前で呼ぶ。
侯爵は無類の犬好きで、王宮にも連れてきていた
タマはマスタフォン侯爵の飼い犬で、侯爵が王宮に何度も連れてきていたのだという。国王が犬の顔を覚えていたという一点だけで、手紙は宛先にたどり着いている。
差出人はマスタフォン侯爵自身だった
タマが運んでいたのは手紙で、差出人はマスタフォン侯爵本人だった。前回は当家に被害は出ておりませんと応対した屋敷から、助けを求める手紙が出てくる。門前で追い返した側と屋敷の主の意思が別だったことが、ここで確定する。
狙いは末娘のフィリー嬢だ
手紙の中身は深刻だった。相手は新たなハイロードで、狙いはマスタフォン侯爵の末娘フィリー嬢、このままでは命が危ない。第8話の時点で公式が紹介していた人物の名前が、ここで初めて本編の台詞に出てくる。
伝説を知らないのは、この家でミルカだけだ
二人が出ていったあと、屋敷に残った者たちの会話が少しだけ続く。この回で二度目の、戦闘でも推理でもない時間だ。
二人だけで行くなんて心配だよ
不安を口にするのはミルカで、姉さんたちがなぜそんなに落ち着いていられるのかと詰め寄る。この屋敷でただ一人、ロックの正体を知らされていないのがミルカだ。
何度もこの国を救ってきたくらい強い
セルリスの答えは「ロックさんは今まで何度もこの国を救ってきたくらい強いのよ」だった。ミルカは「え、あのロックさんが」「全然そんな風に見えないよ」と本気で驚く。作品名にある伝説になっていたという一語を、初めて聞かされる側の反応として見せている。
私なんか、弟だと思っちゃった
続くのが、シアの「私も初めて会った時は、あまりの自然体ですっかり騙されたでありますよ」と、セルリスの「私なんか、弟だと思っちゃった」だ。第4話で起きた早とちりが、六話をまたいで自分から差し出す持ちネタになっている。見る目がなさすぎですと返されて、場が緩む。
ここにいる全員がロックに助けられた
締めるのはゴランで、「ここにいる全員がロックに助けられたろ?」と言う。強さの説明ではなく、この部屋にいる人数のほうが根拠として出てくる。ゲルベルガ様を地下通路から王宮のレフィのもとへ移す算段も、この会話と並行して決まっている。
裏口から入られた家に、正面から入る
副題の「敵陣突入」はここからだ。そして突入の仕方のほうに、この回のすべてが出ている。
正面から行くか、時間も惜しい
侯爵邸を前にしたロックの判断は速い。「正面から行くか」「どうせこっちが来ることはバレてるだろうし、時間も惜しい」。忍び込む必要が無いのではなく、忍び込む価値が無いから正面を選んでいる。
侯爵には弁償しておいてくれ
そのうえで飛び出す一言が「侯爵には弁償しておいてくれ」だ。前回は自分から弁償を申し出て断られた人物が、今回は壊す前に弁償の話を済ませている。断られたことが証拠になった回の次に、こちらから先に払うと言ってから門を壊している。
目で追えていなかった、それだけのことだ
屋敷で待ち構えていたのは、倒された眷属の恨みを口にするヴァンパイアだった。斬るのはエリックで、相手が余裕を見せているあいだに背後を取り、「偉そうに語るな、死体め」と返す。決着のあとの説明が「背後を取られた時点で、お前は私を目で追えていなかった」「つまり、私の攻撃も見えていなかった」「それだけのことだ」で、勇者の強さが技でも剣でもなく、速度の一語だけで説明されている。
一年前に雇い入れた、非常に優秀な執事
助け出された侯爵の説明が、この回の答えだった。一年前に雇い入れた執事が非常に優秀で、半年経つ頃には屋敷の一切を取り仕切るまでになり、ひと月前に豹変した。正体は、王都の結界内では活動できないはずのヴァンパイアロードだ。敵は結界を破って忍び込んだのではなく、面接を通って正面から雇われていた。
鏡の向こうへ連れ去られた
フィリー嬢の行方について返ってきた答えは、「ハイロードがフィリーを連れ去りました」「鏡の向こうへ」だった。屋敷に踏み込んだ時点で、探す相手はもう屋敷にいない。ひと月も餌をもらわずに屋敷へ残っていたタマの理由が、フィリーが心配で残っていたのだろうと語られるのも、この直前だ。











































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