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『名探偵プリキュア!』第36話の副題は「試練の金メダル」。古本屋で起きた金メダル盗難事件に挑むあんなたちの前に、ヒントを出す不思議な女子高生が現れる。その正体は、物語を大きく動かす意外な人物だった。足跡と杖が暴いた嘘、牧房春菜の正体とロンドン本部の所長、そして託されたスターキラリングブローチまで、新たな局面を迎えた一話を振り返る。




第36話の副題は「試練の金メダル」
『名探偵プリキュア!』第36話の副題は「試練の金メダル」。マコトジュエルの気配を追って商店街の古本屋に駆けつけたあんなたちは、店主の古屋茂三が大切にしていた金メダルの盗難事件に挑む。容疑者は3人。推理の末に浮かび上がった真相と、事件の陰でヒントを出していた女子高生・牧房春菜の正体が、物語を大きく動かしていく回だった。
「ロンドンが陥落した」
冒頭、怪盗団ファントムの側では不穏な会話が交わされていた。デッチ・アゲインが告げたのは「ロンドンが陥落した」という知らせ。ただし、決着の直前に暁の証明と呼ばれる人物には逃げられてしまったという。一方で、未來自由の書に記されたマコトジュエルはニジーが手に入れ、あとは持ち帰るだけだとも語られる。
第28話でロンドンを任されていたと語られたデッチ・アゲインが、ついにその本拠を落としたという事実はかなり重い。ロンドンで何が起きていたのかという謎が、この回の後半で思わぬ形で回収されていくことになる。冒頭のわずかな会話が、そのまま全体の伏線になっている構成が見事だった。
「わしの大事な金メダルが」
あんなたちが駆けつけた古本屋では、店主の茂三が「わしの大事な金メダルが」と取り乱していた。孫の美樹によれば、茂三は町内のダーツサークルのメンバーで、地区大会で優勝したときのメダルを大切にしていたのだという。ダーツを遊びだと言われた茂三が「遊びではない」と言い返す場面には、思わず笑ってしまった。
「血の滲むような努力を続けて」ようやく手にした金メダル。茂三の「探偵さん頼む」という言葉に、あんなたちは事件の調査を引き受ける。練習仲間に見せようとメダルを磨き、カウンターに置いたまま店の奥で乾布摩擦をしていたという茂三の話はどこかとぼけていて、深刻さとユーモアが同居する導入がプリキュアらしかった。
金メダル盗難事件の推理
事件当時、店にいたのは3人だった。
「足跡以外も映って」
本の整理をしていた孫の美樹、練習を休むと伝えに来たダーツ仲間の竹松梅、そして叫び声を聞いて立ち寄ったという女子高生の牧房春菜。梅は足の調子が悪く、杖がないと歩けないと話していた。プリキットで調べると、カウンターの近くに残っていたのは茂三と美樹の足跡だけ。梅と春菜の足跡は、離れた場所にしかなかった。
犯人は美樹なのか、それとも離れた場所から盗むトリックがあるのか。考え込むあんなたちに、ルーペに興味を示した春菜が声をかける。「足跡とか足跡以外も映って」というやりとりから、あんなたちは足跡以外の痕跡という視点に気づく。何気ない会話がそのまま突破口になる流れが、推理ものとしてとても気持ちいい。
「これが答えだ」「犯人はあの人だ」。決めぜりふとともに、あんなとみくるの推理がまとまっていく。二人が同じ答えにたどり着く瞬間の高揚感は、何度見ても胸が躍る。
「本物の梅さんならね」
あんなとみくるが犯人として指摘したのは、梅だった。「今日は杖がないと歩けないって」言っていたのに、「杖の跡はルーペに映ってなかった」。「つまりあなたは普通に歩けるのに嘘をついたんです」。さらに、杖を使えば「杖を伸ばして引っ掛ければ取ることができるんです」と、離れた場所から盗む方法まで示してみせた。
それでも茂三は、梅が盗むはずがないと信じていた。あんなたちもそれに同意しつつ、「本物の梅さんならね」と続ける。そこへ春菜が、団子屋にいた本物の梅を連れてきて、偽物の正体が明らかになる。梅に化けていたのは、変装を得意とするニジーだった。仲間を信じる茂三の気持ちを裏切らない真相になっていたのが、とてもやさしい解決だと感じた。
足跡という物証から嘘を見抜き、杖という小道具でトリックを説明し、最後は人物の信頼関係まで守ってみせる。短い事件ながら、名探偵プリキュアらしい推理の手順がきれいに詰まっていた。
牧房春菜の正体
事件が解決に向かうなかで、もう一人の不審な人物が浮かび上がる。
「見てられなくて新人探偵にヒントをあげちゃったよ」
春菜の言動には矛盾があった。おじいさんの悲鳴を聞いて駆けつけたと言っていたのに、店に入ってきたのはあんなたちの後。「だって先に来た私たちは悲鳴を聞いてないんだから」。さらに春菜は、「あんなたちが杖の矛盾に気づくように」ルーペを見てヒントを出していた。問い詰められた春菜は「見てられなくて新人探偵にヒントをあげちゃったよ」とあっさり認める。
春菜に促され、あんなたちは逃げるニジーを追う。ニジーは「君たちの諦めの悪さは金メダル級だね」と言い放ち、ハンニンダーを呼び出した。巨大なメダルを投げつけるハンニンダーは「近づいても離れても危険」な強敵だったが、攻撃のたびに体が小さくなっていく。自分の体を削って投げていたと見抜いたプリキュアたちが、最後はエクレールの浄化で勝利をつかんだ。
戦いのあと、変身した姿を見られたと焦るあんなたちの前で、光とともに春菜の変装が解ける。女子高生の姿をしていた人物の正体が明かされる瞬間は、この回いちばんの見せ場だった。
「暁の証明 まふる所長よ」
現れたのは、名探偵プリキュアのロンドン本部をまとめる人物だった。るるかが紹介したその名は、「暁の証明 まふる所長よ」。冒頭でデッチ・アゲインが取り逃がしたと語っていた暁の証明とは、まふるのことだったのだ。「ジェットから全部報告は受けてるよ」と、まふるはこれまでのあんなたちの活躍もすべて把握していた。
まふるは「しかし本当にペンダントが二つあるとはね」と、あんなとみくるの二人がそろってプリキュアであることに驚きを見せる。一方で、あんなはまふるをどこかで見たことがあるような気がしていた。みくるもまた、まふるを前にして複雑な表情を浮かべている。初対面のはずの所長に向けられた二人の反応が、新たな謎として残された。
所長を前に、くれあとるるかはこれまでのことを報告する。くれあは内緒でるるかの助手をしていたことを打ち明け、勢いあまって「あと大王でした」と付け加え、るるかも「シャドウで」と続ける。上司への報告としてはあまりに情報量の多い二人のやりとりに、笑わずにはいられなかった。
それを聞いたまふるは、二人を責めなかった。「私の方もいろいろあって」「あんたたちが苦しい思いをしてるときに」力になれなかったと、「すまなかった」と詫びる。厳しそうな第一印象とは裏腹に、部下を思いやる懐の深い人物であることが伝わってくる場面だった。
ロンドンの事務所とスターキラリングブローチ
まふるがまことみらい市を訪れた理由も、少しずつ明らかになる。
「あいつはポチタンが集めたマコトジュエルを探している」
マシュタンの占いに映し出されたのは、枯れていくガーデンの花。そして、怪盗団ファントムのデッチ・アゲインがロンドンの事務所を攻めてきたという事実だった。「事務所のみんなは」と案じるあんなたちに、まふるは「安心しな」「直前に一人残らず逃がしたよ」と答える。
デッチ・アゲインの目的は、「あいつはポチタンが集めたマコトジュエルを探している」というもの。そのありかを聞き出すために、わざわざまふるのもとを訪ねてきたのだという。ポチタンのマコトジュエルをめぐる争いが、ロンドンにまで広がっていたことがわかる。冒頭の会話と後半の説明が一本の線でつながり、物語のスケールが一気に大きくなった。
まふるはこれから、散り散りになった妖精たちを探しに行くという。所長自ら動かなければならないほど、事態は切迫しているのだろう。
「奇跡を起こせるかもしれないと」
去る前に、まふるはあんなたちに「ペンダントを掲げてみな」と促す。現れたのはスターキラリングブローチ。中央にはめられた星のリングを身につければ、まことの名探偵になれるという伝説のアイテムだが、これまでリングを抜いた者は誰もいない。まふる自身も含めてだ。実際にあんなたちが試しても、リングはびくともしなかった。
それでもまふるは、幾多の困難を乗り越えてきたあんなたちなら「奇跡を起こせるかもしれないと」思っていると語り、「これを託してもいいかい」とブローチを預ける。まだ抜けないリングを託すという形が、二人のこれからの成長を予感させる。ジェットの発明品を受け取り、「元気でやるんだよ」と言い残してバイクで去っていくまふるの姿は、颯爽としていて格好よかった。
まとめと考察
第36話は、金メダル盗難事件を通じてあんなたちの推理力を描きながら、ロンドン本部の所長・まふるの登場とスターキラリングブローチの継承によって、物語の新たな局面を開いた回だった。
去っていく背中を見つめるみくる
気になるのは、やはり最後のみくるの表情だ。バイクで去っていくまふるの背中を、みくるは意味深なまなざしで見つめていた。あんなもまたどこかで見た気がすると話しており、まふると二人の間には、まだ語られていない何かがあるのかもしれない。
1999年のまことみらい市に暮らすみくると、2027年から来たあんな。そこに、ロンドンの所長という新たな人物が加わった。時間を越えた三人の関係がどうつながっていくのか、ここから先の大きな見どころになりそうだ。
一方で、デッチ・アゲインはポチタンのマコトジュエルを狙ってロンドンを襲い、ニジーは未來自由の書に記されたジュエルを手に入れた。怪盗団ファントムの動きもいよいよ本格化している。日常の事件と大きな陰謀が同時に進む、この作品らしい厚みが感じられた。
試練の金メダル、試されるのは
副題の「試練の金メダル」は、盗まれた金メダルの事件だけでなく、まふるがあんなたちに託したブローチの試練も指しているように思える。血のにじむような努力で金メダルを手にした茂三のように、あんなたちもまた、努力と絆の先にリングを抜く日が来るのだろう。
事件の推理、新キャラクターの登場、そして新アイテムの継承と、見どころの多い一話だった。まふるが残した期待にあんなたちがどう応えていくのか、続きが楽しみになる回だった。




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