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『ロメリア戦記』第2話の副題は「砦攻略開始」。ばあやを連れて辺境のカルルス砦にやってきたロメリアは、新兵ばかりの討伐隊を率いることになる。冒頭の痛ましい回想が、その決意の重さを静かに物語る。故郷のために戦えという演説と金貨、黙って見ていた訓練の真意、そして砦の大人たちの思惑まで、ロメリアの軍づくりが本格的に動き出した第2話を振り返っていく。




第2話の副題は「砦攻略開始」
『ロメリア戦記』第2話の副題は「砦攻略開始」。第1話で婚約を破棄され、実家から東の地へ向かうことを決めたロメリアは、ばあやを連れて辺境の砦へとやってくる。そこで彼女が始めたのは、新兵ばかりの討伐隊づくりだった。冒頭の痛ましい回想から、新兵たちへの演説、訓練、そして砦の大人たちの思惑まで、ロメリアの戦いが本格的に動き出す回である。
冒頭の回想と、奴隷の一家
物語は、魔王討伐の旅の裏側から始まる。港で奴隷として働く女性が、魔導船を止められたロメリアたちのために手を貸し、妹らしき少女に明日必ずと約束する。けれど一行が魔王を討ったあと、残された人々のもとに届いたのは、一家が処刑されたという知らせだった。魔族の怒りを鎮めるための身代わりとして、手を貸した側が犠牲になったのだ。
魔王討伐という華々しい功績の陰で、名もなき人々が命を落としていた。この回想は、ロメリアが馬車の中で見ていた夢として描かれ、目覚めた彼女は顔色が優れないとばあやに心配される。勝利の代償を誰が払ったのかを、ロメリアだけは忘れていない。この重さが、第2話以降の彼女の行動の原点になっていくのだろう。
第1話のロメリアは、婚約破棄を毅然と受け入れ、魔王の首で功績を証明し、実家の財政まで立て直してみせた。けれどその胸の内で何を思っていたのかは、ほとんど語られていなかった。今回の回想は、その空白を埋める最初の手がかりになっている。王子たちと同じ旅をしながら、彼女だけが見ていたものがあったのだと思うと、これまでの冷静な振る舞いにも違った重みが感じられる。
住めば都の砦
ばあやは、てっきり近くのミルトの街で休むものだと思っていた。ところが馬車が着いたのはカルルス砦。うろたえるばあやに、ロメリアは住めば都よとさらりと言ってのける。兵士と一緒だから魔物が出ても安心ね、と。本気でここに住むのかと聞かれれば本気よと答え、これからここはもっと賑やかになると笑う。第1話で実家を出るときに見せた覚悟が、ここで具体的な行動として形になっていく。
砦を任されているセルベク代官に、ロメリアは早速魔物討伐の隊の編成を願い出る。道中の村で魔物の被害を見かけた、父の領地でそれを見過ごすわけにはいかない。手練れの指揮官がいないと渋る代官に、私が指揮をとりますと言い切るロメリア。聞いていないと青ざめるばあやとの温度差がおかしい。ばあやを置いていく選択肢まで用意しているあたり、ロメリアの決意は最初から固かった。
魔物を倒せばカシューの村の人たちも安心して暮らせるし、税収も上がる、お父様もきっと喜ぶ。そう説得されて言葉に詰まるばあやの姿もおかしい。領民の安全と領地の財政を同じ文脈で語れるのは、第1話で実家の財政難を解消してみせたロメリアならではだろう。お嬢様の気まぐれに見えて、その裏にはきちんとした計算がある。
小娘のおもちゃとして差し出された新兵たち
代官の思惑
代官は表向き、なんと勇ましい方だと持ち上げ、すぐに準備させると約束する。けれど裏では、砦の兵士たちを素人の好きにはさせないと言い、「小娘のおもちゃとして差し出すのにちょうどいい」者たちを選び出す。こうして集められたのが、実戦経験のない新兵たちだった。隊長に任命されたアルは、お偉方の招集なら他に適任者がいるのではと問うが、黙って命令に従えと突き放される。
新兵たちは、指揮官がグラハム伯爵の令嬢だと知ってざわつく。役に立たなかったから王子に振られたという噂が根強く、汚名返上のための討伐隊ではないかと勘ぐる者もいる。そこで「本人と話したこともないのに決めつけるなんて」とたしなめたのがレイだった。噂に流されず、相手を自分の目で見ようとするレイの姿勢が、この時点ですでに印象に残る。誰が上官だって命令に従うまでだと言うアルもまた、噂より目の前の任務を優先する男だ。性格の違う二人が、それぞれの形でロメリアを見極めようとしている。
自分の故郷のために
翌日、新兵たちの前に立ったロメリアは、グラハム伯爵家の長女として名乗り、領内の魔物を一掃したあとは魔王軍との戦も視野に入れていると告げる。聞いていないとざわつく中、アルが進み出て、実戦も未経験の新兵がなぜ魔王軍と戦うのか、王子率いる王国軍がいるだろうと問う。ロメリアは逆に問い返す。王国軍はいつ我々のもとに来ると思うか。
答えたのはレイだった。王国軍は国境沿いの戦いに向かっていて、ほかで魔王軍が現れても、優先されるのは交易路や人口の多い主要都市。つまり、この地に王国軍は来ない。ロメリアはそれを認め、魔族に目をつけられたら最後、確実に蹂躙されると続ける。そして、新兵たちの家族や恋人がいるのはどこかと問いかけた。「あなたたちは自分の故郷のために戦うべきなのです」。
演説の締めくくりに、ロメリアは働きに応じて褒美を出すと宣言し、金貨を掲げてみせる。初めて見たと目を輝かせる新兵たち。理想を語るだけでなく、現実的な報酬で背中を押す。大義と実利を両方差し出すこの演説は、王子の隣で旅をしながら人の動かし方を学んできたロメリアの経験を感じさせた。故郷を守るためなら報酬を惜しまない、という言葉にも嘘はないのだろう。
黙って見ているお嬢様
訓練と、レイの見立て
金貨でやる気を出した新兵たちは、どのくらい倒せばもらえるのか、英雄になれるかもと浮かれる。一方で、実戦経験もないのにそう簡単に行くかよと冷静な声もあり、アルは死ぬ可能性だってあることを忘れるなと釘を刺す。そこへ「アルの言う通りです」と現れるロメリア。いつから聞いていたのかとうろたえる新兵たちに、どうかなとはぐらかすのが小気味いい。
訓練では、新兵たちがチームに分かれて組手を行う。ロメリアは馬に乗り、遠くからじっとその様子を見ているだけだった。特に指示もしない彼女に、本当に指揮なんてできるのかと疑問の声が上がる。けれどレイの見立ては違った。何か目的があるのかもしれない。「意思の強い目をしてる」。興味本位でこんなことをしているわけじゃないと思う、と。
一方で、仮にあの子が本気だとしても、戦って死ぬのは自分たちだという声もあがる。レイがロメリアをかわいいと言って周囲にからかわれる場面はほほえましいが、その奥にあるのは、命を預ける相手を見極めたいという切実さだ。指揮官を信じたい気持ちと、信じきれない不安。新兵たちの揺れが、それぞれの言葉からよく伝わってくる。アルの体が生傷だらけなのも、隊長としての責任を一人で背負ってきた証のように見えた。
新兵たちの顔ぶれも少しずつ見えてきた。調子に乗りやすいカイル、冷めた物言いで仲間をいさめるオッド、仲間うちの組手で器用に立ち回る者たち。訓練の場面は、一人ひとりの得意不得意や性格を短い時間でさっと見せていて、寄せ集めの新兵たちが、少しずつ顔と名前のある仲間になっていく過程が楽しい。ロメリアが黙って見ていたのも、まさにこの一人ひとりの違いだったのだろう。
資料室の在庫目録
黙って見ていたロメリアの真意は、代官との交渉の場面で明らかになる。新兵たちの鎧と馬2頭を求めるロメリアに、代官は懐がかんばしくないと渋る。するとロメリアは、在庫目録を拝見したところ、まだ使用していないものがいくつかあるようだと切り返した。どこでそれをと問われれば、当然この砦の資料室だと答える。
訓練を黙って眺めていたのも、砦の資料室に足を運んでいたのも、すべては準備のためだった。口で指示を出すより先に、見て、調べて、手を打っておく。新兵たちが不安に思っていた沈黙こそが、ロメリアの指揮官としての資質だったのだ。王子の一行で役に立たないと見なされていた彼女が、実は誰よりも周到な参謀だったことがうかがえる。在庫目録という地味な紙切れ一枚で代官を黙らせる場面は、剣を振るう戦いとは別の、ロメリアならではの戦い方を鮮やかに見せてくれた。新兵たちがまだ知らないところで、指揮官の戦いはとっくに始まっていたのだ。
第2話のまとめ考察
エンキ討伐へ
新しい鎧を受け取った新兵たちは大喜びで、一体でも多く魔物をぶっ倒してやると意気込む。ロメリアは「エンキという魔物」を討伐すると告げ、皆さんならきっと村を救えますと送り出す。一方、ばあやは寄せ集めの兵で魔物討伐など許さないと反対し、まさか王子への復讐なのかと疑う。ロメリアは、なかなかいい目をしている兵士もいると答え、きっと領民たちを救ってみせると言い切った。
けれど砦の大人たちは冷ややかだ。代官のもとで交わされる会話では、ここ数年でエンキの知能が飛躍的に発達したと聞く、実戦経験のない新兵には手に余る相手だと語られる。魔王退治に行っていたお嬢様はそれを知らない、と。さらに兵の中からも、無駄死にさせるようなら捨てて戻る、戦死するのはお嬢様一人で十分だという声が漏れる。味方であるはずの砦の中にさえ、ロメリアの失敗を待つ空気が漂っている。
孤立の中の指揮官
第2話は、ロメリアが誰にも頼らずに一から軍をつくろうとする姿を描いた回だった。代官には侮られ、ばあやには反対され、新兵たちには疑われる。それでも彼女は、演説で故郷を守る意味を示し、金貨で現実的な動機を与え、資料室で装備を確保する。どれも派手さはないが、一つひとつの手が確実に新兵たちを戦える状態へと近づけている。
冒頭の回想で描かれた奴隷一家の犠牲を思えば、ロメリアが領民を救うことにこだわる理由も見えてくる。勝利のために誰かが犠牲になる戦いではなく、守るべき人々を自分の手で守る戦い。その第一歩となるエンキ討伐で、新兵たちが彼女を指揮官として認めるのか、それとも代官たちの思惑どおりになるのか。アルとレイ、それぞれの視線がロメリアをどう映していくのかも含めて、初陣の行方をしっかりと見届けたい。新兵たちの成長も含めて、目が離せない。




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