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『骸骨騎士様』第9話の副題は「再会は黒き獣の咆哮と共に」。第2期の九本で、再会の相手を書いていない副題はこの回だけである。前半でチヨメが心配していたのは、ダンカを襲った賊が身内ではないかという一点だった。返ってきた答えは「奴は死の穢れを纏っていた」で、それがそのまま安心の根拠になる。そして終盤、その同じ根拠がそっくり裏返ることになる。




副題が九本で唯一、再会の相手を書いていない
八本は必ず相手を名指ししている
第2期の副題を並べると、第1話「死闘? 白銀の騎士対白銀の騎士!」から第8話「潮騒よ聞け、哀しきくノ一の想い」まで、どれも相手や対象がはっきり書かれている。エルフの花嫁、兄妹の絆、聖女の霊、死霊の影、龍王の泉、漢魂、くノ一の想い。
ところが第9話は「再会は黒き獣の咆哮と共に」で、具体的なのは「黒き獣の咆哮」だけで、肝心の再会の相手が書かれていない。
この回の再会は二つある
一つは探していたダンカとの再会で、これは公式のあらすじにも書かれている。もう一つは、会えるとは思っていなかった相手との再会である。
相手が二人いるから、副題は片方を選べない。書けないのではなく、書くと片方が消えるという事情に見える。
公式のあらすじは前半で止まっている
公式のあらすじは「ドリフトプスに乗るためには力比べをして主と認めさせる必要があるようで――。」で終わっている。紹介文が扱っているのは乗り物を借りるところまでで、この回の重心はそこから先にある。
副題のうち書かれている側の「黒き獣の咆哮」のほうは、集落を襲う魔獣の声として後半をずっと鳴らし続ける。声だけが先に来て、姿を見せる相手は最後まで伏せられている、という構えになっている。
公式からの放送後の投稿も出ていた。
借りた獣を返しに行くことが、旅の代金になる
前回の魔物が、そのまま港町の名物になっている
冒頭のアークはクラーケンのイカ焼きを売っている。第8話で海の脅威として出てきた相手が、上陸した町では行列のできる食べ物になっていた。
アリアンの「何、イカれたこと言ってんの?」に、アークが「イカつであろう?」と返すところまで前回からの続きである。
ダンカはもうこの町にいない
静養しているはずのダンカは、動けるようになってすぐタジエントへ発っていた。距離はアリアンいわく「歩きなら20日、鳥なら5日ね」。会いに行った先で、会えないと分かるところから旅が始まる。
貸してもらえるのは、はぐれた一頭だけ
本来の乗り物は休養期間で貸し出しができない。代わりに出てくるのが、虎人族からはぐれたドリフトプスである。余っているから貸すのではなく、持ち主のもとへ届けてほしいから貸す、という形になっている。
料金はタダ、条件は主と認めさせること
アリアンの評価は「乗りこなして虎人族に返すことができれば料金はタダなんて、いい条件ね」。ただし乗るためには「力比べをして、主と認めさせなければならない」。
返しに行くという用事そのものが代金になっていて、しかも先に力比べが要る。アークは当然のように勝つ。
乗り物と料理まわりの反応をいくつか並べておく。
骨しかない男が、整体で体が軽くなる
乗り心地には代償がある
走りに満足したアークが「見よ、この走り。力強さ」と上機嫌なのに対して、乗せられた側は無事では済まない。「ドリフトプスでの移動は、人によってお尻に負担が大きいから」という説明が入って、その日はそこで野営になる。
速さの自慢と、乗った人の被害が、同じ場面に並べて置かれている。
ヒールが効かない理由まで説明される
アークの「アリアン殿のお尻にヒールをかけてみてはどうかな」に、チヨメが「骨折などならともかく、このような症状では効果は薄いかと」と答える。
万能に見える回復魔法の適用範囲が、ギャグの流れの中でわざわざ限定されている。当人の「そもそもお尻にヒールをかけられたくなんかないわよ」で話は終わる。
恋愛小説だと思って買った本
手当てをしているツボネの種明かしが「骨の髄まで愛を貪る恋愛小説かと思って市場で買ったら、整骨の本だったの」である。骨という一語で買い間違えた本を、骨だけの相手のいる一行が持ち歩いている。
施術を受けたアークの感想は「体が軽くなったような」「結構効いているのかもしれぬな」。中身のない体で効き目を語っている。
前回の毒が、一言で片づく
夕食はアラビアータ。第8話でチヨメが「トマトは毒があるので、そのまま食べるとお腹を壊します」と警告していた食材である。アークの返答は「大丈夫、トマトは下処理済みであるからな」の一言だけだった。
実際、口にした側の感想は「これ意外といけますね」で、辛さについては「辛さの向こうに旨味が待っていたであろう」と自賛する。
この場面はネットでもよく拾われていた。
教国の権威は、倒したという言い伝えの上に立っている
損耗が少なすぎる国が二つある
場面が変わって、セクトとユリアーナが神聖レブラン帝国の情報を検討する。ユリアーナの報告は「不自然なほど損耗がありません」「魔獣討伐のための最低限の損耗すらないような状況です」。
戦争がないことではなく、魔獣を狩る手間がかかっていないことのほうが不自然だ、という見方である。
百年近く前、一国の大軍が一匹に消された
似た状況の国としてヒルク教国の名が挙がる。教国が一変したのは「一国の大軍を、たった一匹の化け物が殲滅した事件」以来で、その化け物は「冥王とも死神とも称された」存在だった。
そしてその後、消息を絶っている。倒されたのではなく、いなくなった、としか語られていない。
倒した証拠はなく、言い伝えだけがある
続く説明が「それは教国の聖騎士たちが倒したおかげと言い伝えられております」で、以来その聖騎士団が教団を支えているという。
権威の土台が、確認のしようがない一件になっている。二人の結論も「今はまだ憶測の域を出ません」で止まる。断定しないまま話が積まれていく。
魔獣が集落を襲い続ける理由
剣を向けた相手が、一言で信じる
野営地に現れた虎人族は、ドリフトプスの鞍を見て「そのドリフトプスの鞍は我が一族のもの」「答えによっては貴様らをここで討つ」と迫る。事情を説明しても「そんな話、信用できるか?」で通らない。
ところがダンカが現れて「こいつらは怪しいものではない!」と言った途端、返ってくるのが「お前が言うなら信じよう!」だった。信用が理屈ではなく人に付いていることを、アリアンが「全幅な信頼ね」と一言で片づける。
襲ってこないはずの魔獣が襲ってくる
集落を襲うジャミアントについて、族長のエインは「ジャミアントは恐ろしい魔獣だが、集落を襲うなんてことはなかった」と言う。いつもと違うことが起きている、という前提だけが先に置かれる。
袋の中身
二度目の襲撃の最中、ポンタが匂いに反応してズタ袋を見つける。中に入っていたのはジャミアントの子どもだった。アリアンの叫びが「子供を殺して撒き餌代わりにするなんて、一体誰が!」である。
魔獣を暴れさせているのは、魔獣の親の情のほうだった。仕掛けた側は、獣に理屈が通じないことではなく、獣にも子を思う心があることを利用している。
探していた相手が、行き先の理由まで持っていた
ダンカがこの大陸に来た理由も、この夜の食卓で明かされる。「俺は、南のこの大陸でもエルフ族が囚われていると聞き、調査に来た」「どうやら彼らの仲間も、同じ場所に囚われているらしい」。その場所がタジエントだという。
乗り物を借りてまで向かおうとしていた町が、そのまま調べるべき現場だった。アネット山脈の麓で拉致した人々に魔晶石を採掘させ、亡くなった者をアンデッドにする実験まで行っていた件も共有され、「どこかの国が戦争の準備でもしているとしか思えないな」という見立てが並べられる。
母をかばわれて生き残った者が、それを見る
この場にいるチヨメは、第8話で語られたとおり、盗賊に襲われた村で母親にかばわれて一人だけ助かった子どもである。子を守ろうとする親の情を道具にした仕掛けを、そのチヨメが見せられている。
集落を守る側の反応も出ていた。
「そうではない」の根拠が、「そうだ」の証拠になる
心配の中身は、身内かどうかだった
落ち着いたところで、チヨメがダンカに尋ねる。「ダンカ殿を襲った賊の件で、もしや僕たちと同じ、刃心一族ではありませんでしたか?」。心配していたのは賊の正体そのものではなく、それが身内かどうかという一点である。
死の穢れが、安心の根拠になる
ダンカの答えは「いや、それはないだろう。奴は死の穢れを纏っていたぞ」。アンデッドは「この世にあらざる者で、生ある者を妬み、死を振りまく存在」だと確認され、そこから出るのが「じゃあ、サスケ兄さんじゃない?」である。
生きているはずの人はアンデッドではない、という理屈で二人は安心する。アークも「うん、これで二人の懸念も消えたな」と受けた。
終盤、同じ根拠がそのまま逆に働く
集落へ襲いかかってきた双剣使いを倒すと、アリアンが「死の穢れを纏ってるし、間違いないわね」と言う。ダンカを襲ったのはこの相手だ、という確認である。
そして倒れた相手に獣の耳がある。アンデッドだから兄ではない、という前半の理屈は、そのまま、兄はもう生きていない、という意味に裏返る。チヨメがこぼすのは「なんで…」の一言だけだった。
「フラグ」と言った直後に立つ
直前、援軍に来たツボネが「勝ったも同然ね」と言い、アークが「アリアン殿、そういう発言はフラグというのだが」と釘を刺している。アリアンの「フラグって何よ?」で笑いになりかけたところで、正体が割れる。
ゲームや物語の知識で異世界を渡ってきた男の口ぐせが、この回だけは悪いほうへ的中する。
脚本はこの回が二本目で、最後
公式サイトによれば第9話の脚本は鈴木やすゆき。第2期でこの人が書いたのは第3話と第9話の二本だけである。
第3話の副題は「悪党散華と兄妹絆の舞」で、公式のあらすじによれば、妹の怪我を治すために少年が拉致に加担させられる話だった。妹のために兄が悪事の側に立つ回を書いた人が、兄が妹の前に敵として現れる回も書いている。
コンテは第2期で初登板
絵コンテは石平信司で、第2期の九本でこの人がコンテを切るのはこの回が初めてになる。演出の村上勉は第4話に続いて二本目、総作画監督の鈴木光はこれで六本目だった。
作画監督は八人。第7話の十一人、第8話の十二人からは減っている。
視聴後の反応も、正体のほうへ集まっていた。




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