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『とある暗部の少女共棲(アイテム)』第3話「華野超美(ごにんめ)」は、口座凍結で資金繰りが危うくなったアイテムのもとに、五人目の少女がやってくる回だった。電話の声は、とびきり危ない大仕事も一緒に持ち込んでくる。コロシアムと優勝賞金150億の仕組み、最後の一枠をめぐる絹旗と華野、そして一般人の死に怒る麦野まで、場面ごとに振り返っていく。




第3話 五人目の訪問者
『とある暗部の少女共棲(アイテム)』第3話「華野超美(ごにんめ)」は、原因不明の口座凍結で資金繰りが危うくなったアイテムのもとに、五人目の少女・華野超美がやってくる回だった。電話の声が持ち込んだ大きな仕事、アイテム最後の一枠をめぐる絹旗と華野の争い、そして初めての襲撃。場面ごとに振り返っていく。
怯えた子犬のような少女
第15学区の複合ビルの最上階。電話の声の指示どおり、新しい仲間として迎えてくれる人たちのもとへ向かう華野。ところが、扉の向こうで待っていたのは、報酬が振り込まれていないことに怒り狂う麦野だった。きちんと仕事をしてきたのに、いったい何がどうなっているのか。最悪のタイミングで現れた新人という構図が、華野の不運さをよく表していた。
子犬のように縮こまる華野の姿は、これまでの戦闘場面で圧倒的な強さを見せてきたアイテムの面々とあまりにも対照的だ。誰あれ、知り合い、と首をかしげるメンバーたちの反応も含めて、暗部に似つかわしくない少女の登場が、物語に新しい空気を持ち込んでいる。
電話の声と口座凍結
報酬はきちんと振り込んでいる、と電話の声は言う。麦野たちの口座が意味不明な理由で固まっているだけだ、と。原因を聞かれても、私は何でも答えるチュートリアルの女神じゃない、と突き放す。警告なしの問答無用の凍結。誰かが暗部絡みで仕掛けている可能性がある。
そして電話の声は、マンションにいる知らない顔について説明する。アイテムは3人しかいないから組織に幅を持たせたいと前に言っていたでしょう、と。華野はレベル0だが、変装と潜入の専門家。クーリングオフは30日以内、死んだり手足が飛んだりした場合は返品に応じない。人を雇える状況かと噛みつく麦野に、「1円預ければ銀行で新しい口座は開けるわ」、そして「お金が欲しいなら自分で働きなさい」と言い放つ電話の声が、相変わらず食えない。
口座を止められて家賃も払えないと嘆く暗部組織、という絵面はどこか滑稽だが、裏を返せば、金の流れを押さえられただけで暗部の精鋭も動けなくなるということでもある。能力の強さだけでは生き残れない世界の厳しさが、この冒頭のやりとりにさりげなく詰まっていた。
コロシアムと150億
ルール無用の地下格闘
電話の声が持ち込んだのは、でかい話だった。口座が凍結されたのも、敵がこの依頼を知って先制攻撃してきたからではないかという。そこで語られたのが、コロシアム。武器も能力も使い放題、ルール無用の地下格闘イベントで、観客はダークウェブのライブ配信で本物の殺し合いを楽しむ。録画もスクリーンショットもできない仕組みだ。
「優勝賞金は150億」。その出どころは、参加者全員にかけた高額な死亡保険。試合と称して全員を死なせ、優勝者一人に全額が集中するように制度を整えている。運営は配信の広告収入やオンライン賭博、課金で選手に武器を贈るサービスでも稼ぎ、150億程度にはそもそも興味がない。人の命をそのまま金に換える仕組みの冷たさに、学園都市の暗部の深さを改めて感じさせられた。
保険会社からの依頼
今回の依頼主は、食い物にされている保険会社。客に支払う額より預かる額のほうが多くなければ成り立たない商売なのに、短期間に高額の死亡保険を吐き出し続ければ倒産の危機だ。だから蛇口を閉めろ、手段は報告不要。運営の金庫には最低でも150億以上のお宝が眠っているはずだと聞いて、麦野はいいね面白い、と笑う。
一方で電話の声は、運営側はとんでもない戦力で身を固めているはずで、暗部の高位能力者の線が濃厚だと釘を刺す。ヘマをすれば死ぬ。報酬よりも獲物の大きさに食いつく麦野の姿は、アイテムのリーダーらしい危うさと頼もしさを同時に見せていた。
最後の一枠
仕事を前に、まず決めなければならないのが新入り二人の扱いだった。暗部組織の活動には、一人一人に下部組織の分厚い支援が必要で、メンバーを増やせばコストも跳ね上がる。フルスペックの要員は一つの組織に3人か4人が限界。だから新入り二人のうち一人が正規メンバー、一人が雑用。
自分が雑用かもしれないと知って憤る絹旗。一方の華野は、アイテムに興味はない、衣食住がしっかりしていれば雑用の下働きでも、と言いかける。「勝負から逃げない」という言葉が投げかけられ、二人は最後の一枠をめぐる争いに放り込まれることになる。自分で戦闘できないレベル0を一番危険な前衛に立たせたら死ぬリスクが上がるだけ、という麦野の判断に、意外と優しいという声が上がるのもおもしろい。冷酷に見える麦野が、実はメンバーの生存率を冷静に計算しているという描写は、第2話で絹旗を迎え入れたときの姿とも重なって見えた。
依頼人を狙え
暗部の基本
コロシアムの主催者は顔も名前も分からない。そこで麦野が選んだのは、依頼人である生命保険会社の常務をさらうことだった。仲介人を通した伝言ゲームに付き合っていられない。「分かるところから片付けて糸口つかむのが暗部の基本だよ」。いきなり味方に牙をむくのかと慌てる華野に、メンバーたちは平然としている。
電話の声が保険会社や常務といった余計な情報まで伝えてきたのは、やりたければ好きにしろという黙認の合図。暗部絡みの領域まで不自然に情報収集した保険会社を探れば一社に絞れる。情報の出し方そのものを読むアイテムの手際は、まさに暗部のプロの仕事だった。依頼人を守る気が電話の声には本気でない以上、何らかの別の利害が絡んでいる。誰が本当の本命なのかを見極めようとする姿勢も、生き残るための知恵なのだろう。
学園都市第六位
気をつけるべき相手として名前が挙がったのが、学園都市第六位、通称暗部の天敵。悪質なストーカーが吊るされた状態で見つかった、武器密売グループが一夜で消滅した、誘拐組織から小さな子どもを無傷で取り返した。星の数ほど伝説があるのに、顔も名前も一切不明。学園都市の弱者にとっては救世主でも、狙われる側にしてみれば「形を得た最悪」。
第四位の麦野がいれば問題ないのでは、と言う華野に、同じレベル5同士が真正面から殴り合えば麦野も無事では済まない、と返される。だからこそ周到に準備して、やるのは一瞬、そこから速攻で撤退する。第六位の存在が、これからの物語に影を落としていきそうだ。強さを誇る麦野でさえ正面からの衝突を避けるべき相手として語られることで、学園都市の暗部がいかに危うい均衡の上に成り立っているかが伝わってくる。
襲撃
いよいよ常務の車を襲撃する。暗闇の五月計画で第一位の思考パターンを刷り込まれた絹旗は、どれくらいできるのかと聞かれて、人を殺す程度なら、と答える。フレンダの地雷が炸裂し、車を止めることに成功。表の人間を殺したらまずいのでは、と心配する声に、頑丈な車だからこれくらいでは死なないと返す冷静さも含めて、アイテムの仕事の速さが際立っていた。
ところが、そこへ現れたのが、液体の金属を操る少女だった。もともとは新しい高度干渉剤研究の産物で、実用化するには重すぎたが、自分の能力とは相性がいいという。常務から窓のないビルについて知っていることを聞き出す約束になっている、学園都市の統括理事長に用があるのか、と問われて、潰す前に図面くらいは欲しい、と答える。物語の背後にある大きな企みがちらりと見えた瞬間だった。
第3話のまとめ考察
一般人の死に怒る麦野
こっちは5人、たった一人で何ができる、と挑発するフレンダに、少女は上空に待機させていた銀色の雨を降らせる。絹旗が滝壺を守り、華野にもまだ巻き返せると声がかかる。そして、戦いの中で麦野が見せたのは怒りだった。「普通の一般人を 無駄死にさせやがって」。遊ぶなら強敵とだろう、と。
冷酷な暗部の顔を見せ続けてきた麦野が、巻き込まれた一般人の死に本気で怒る。こんな時でも死んだ人のために怒れるなんて、という言葉が添えられるように、麦野の中にある一線がはっきりと描かれていた。防御を捨てて攻撃に全振りした絹旗とともに、反撃が始まる。
しかし少女は、液体金属を人形の形に変え、無数の人形を並べてみせる。さーて、人数差がなんだっけ、という余裕の一言で、第3話は幕を閉じる。5人対1人のはずが、一瞬でひっくり返される絶望感が見事だった。
振り返ると、第3話は華野という新人を通して、アイテムという組織の仕組みと仕事ぶりを見せる回だった。フルスペックの要員は3人か4人が限界という現実的な制約が、新入り二人の争いを生む。暗部にも予算と人員の論理があるという描き方が、この作品らしいリアリティになっている。
気弱でおどおどしてばかりの華野が、変装と潜入の専門家としてどんな力を見せるのか。そして絹旗との最後の一枠争いはどう決着するのか。コロシアムの運営、窓のないビル、そして暗部の天敵と呼ばれる第六位。いくつもの謎が絡み合い始めた。
一方で、口座凍結で家賃の心配をするアイテムや、ポケットの奥からプリペイドのマネーカードを探し出したフレンダなど、生活感のある場面も楽しい。殺伐とした仕事と、どこか抜けた日常。その落差こそが、アイテムという少女たちの魅力なのだと思う。
五人目として現れた華野が、この先アイテムの日常と仕事の両方にどう溶け込んでいくのか。銀色の人形に囲まれた絶体絶命の状況から、アイテムがどう切り抜けるのかも含めて、楽しみに見届けたい。最後の一枠を勝ち取るのが絹旗なのか華野なのか、その答えもこの戦いの中で見えてくるのかもしれない。
怯えた子犬のような少女が、暗部の世界でどう変わっていくのか。華野の成長も、この作品の新しい見どころになっていきそうだ。おどおどした少女が暗部の現場で何を選び、どう生き残っていくのかを、じっくり追いかけていきたい。アイテムの五人目という肩書きが、彼女にとって居場所になるのかどうかも気になるところだ。




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