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第10話の副題は「忘れない日」。シーナはミミの言葉を、偏見も忖度もなく、心の中にもやもやしたものがないと褒める。ところがその褒め言葉が出るのは、ミミの中にもやもやが芽生えた直後だ。ミミは「あ」と一音だけ漏らし、そのあとに「頑張ろ」と続ける。最後に出てくるのは、お願いを聞いてもらえないことへの「ずるい」だった。静かな一日の中で、名前のつかない気持ちが一つずつ増えていく回だった。




ミミは自分に「応援する係」という役をつける
第10話は、風の気持ちいい昼休みから始まる。第8話で欠けた席のことは、独白の一行にだけ置かれている。
誘っているのはいつもミミのほう
開口一番が「今日は風が気持ちいいね」「まだ時間あるよね」「裏庭でクッキー食べよ」だ。予定を出すのはミミの側で、シーナは本を読んでいる側になっている。
借りた本には返却期限がある
シーナの答えが「実践魔法の本だよ」「先週借りたんだけど、返却期限今日なんだよね」だ。本を返しに行くという用事が、この回の終わりの場所につながっていく。
勉強の理由が過去形で語られる
「シーナまた勉強してるの?」への返しが「まだまだ知らないこといっぱいあるから」「自分の魔法について調べてるんだ」だ。以前は「みんなと違ってうまくできないな、嫌だな」とばかり考えていたと、本人が過去の話として言っている。
教室には欠けた席がある
独白が「いつもと同じ時間が過ぎていく」「あの子の足りない教室で」「私たちはまた日常に馴染んでいく」だ。名前も出来事も書かず、席が一つ足りないという言い方だけで済ませている。
ミミが自分に役をつける
そこでミミが言い出すのが、シーナを応援する係になる、という申し出だ。返ってきたのが「係?」という聞き返しで、この役目がこの回の終わりまで効いてくる。
治癒魔法は、相手に「敵じゃない」と言い聞かせる術だった
授業を受けているシーナの頭の中には、保健室で教わった説明が流れている。
攻撃魔法とは向きが逆になる
説明は「攻撃魔法のように魔力を打つんじゃなく」から始まる。理由が「どんな生き物でも、自分の内側に異物が入るのは拒否する」で、拒絶反応の話につながっていく。
魔力も異物のうちに数えられる
続くのが「魔力だって異物の一種には違いない」だ。だから「異物じゃないですよ」「あなたの味方ですよ」「平気ですよ」と言い聞かせながら、優しくそっと流し込むのだと説明される。
シーナの手応えは攻撃魔法より良い
内心が「まだまだうまくできないけど」「攻撃魔法なんかよりも感覚はわかる」だ。第9話でフラン先生が並べた、修復魔法は外側から、治癒魔法は内側に作用するという区別が、そのまま実感の形になっている。
目的は言いかけたところで切れる
続きが「もしうまくできるようになったら、傷ついた人を癒すことも」で途切れる。第9話の「もう逃げない」という一行から先に、具体的な中身が付き始めている。
同じ教室でミミは板書に追われている
授業が終わり、シーナが「ミミも早くあの式移して」「オミ先生に怒られるよ」と急かす。ミミの言い分は「でもノート書くとこない」で、同じ席に並んでいても向いている先が違う。
用事のある側と、待つ側に分かれる
放課後、シーナは保健室へ向かう。ミミもついていく。
用事の中身は先に言われない
切り出し方が「あのね」「もう用事があるから」で、ミミの確認が「また保健医のとこ?」だ。先に決まっているのは「夕方には戻るから」「晩御飯は一緒に食べよ」という約束のほうになっている。
手伝いは細かく時間がかかる
保健室での指示が「再生よろしくね」「ついでに瓶詰めして、ラベルもよろしく」だ。ミミの「ねえ、すぐ終わる?」への答えが「すぐは無理かな」で、時間の見通しがそこで割れる。
手順そのものが遅さでできている
続く指示が「いつもの手順でよろしく」「時間をかけて一つ一つ」だ。急ごうにも急げない作業だと、指示の側から先に言われている。
ミミはその場を離れる
「私がやるから、そこに置いといて」というやりとりのあと、ミミは部屋を出ていく。残ったシーナの内心が「追い出しちゃった」で、出ていかせたのは自分だという数え方になっている。
シーナの願いは「役に立ちたい」
続く独白が「私もミミやみんなのように、誰かの役に立ちたい」「自分の力が誰かの助けになれるように」だ。この一行とほとんど同じ内容が、少しあとに別の人の口からミミへ向かって出てくる。
ミミは、保健室のベッドでハルと出会う
行き場をなくしたミミは、保健室の空いたベッドのほうへ流れ着く。
相手のほうが先に知っている
ハルの第一声が「知ってるよ」「隣の本棚掃除してた」「だから知ってるってば」だ。ミミの「ハル、あんまり教室にいないから」への返しが「いつもここにいるからね」で、居場所のほうが先に示される。
シーツの話からシーナの名前が出る
「晴れた日にマットを干してシーツ洗うとバフってするんだよ」に続くのが「シーナ、よくやってくれるんだ」だ。ミミが知らないところで、シーナはすでにこの部屋の世話をしていたことになる。
邪魔かと聞いて、まあねと返される
ミミが自分がいたら邪魔かと聞くと、返ってくるのは「まあね」だ。それでもミミは出ていかず、「今日はせっかく宿題ないのに」「みんな勉強好きだな」と話し続ける。
勉強の理由は好きだからではない
ハルの答えが「別に好きでやってないよ」「授業休んだ分、自習してるだけだから」だ。続きが「実習でみんなと同じことができない分、せめて勉強くらいは負けたくないんだ」で、理由が引き算の形になっている。
体のことは条件のように並べられる
出てくるのが「いつもこんなだよ」「咳が止まらなかったり」「日に当たるとすぐ熱が出たり」だ。恨みも自嘲もなく、決まっている条件を読み上げるような並べ方になっている。
「君に勝っても全然嬉しくないよ」
話はテストの点の見せ合いになる。
比べる前から順番がついている
ミミが答案を見て「すごい」と言うと、返ってきたのが「嫌味?」「赤点ギリギリなんだけど」だ。ミミの側の返事は「負けた」で、勝ち負けの話としてだけ受け取られている。
字の汚さでやり返される
ハルが「何、この汚いの」と言い、ミミは「上手にかけてるでしょ」と返す。そのあとに置かれるのが「君に勝っても全然嬉しくないよ」だ。
ミミは理由が分からない
「どうして?」「ミミよりいい点数なのに、どうして嬉しくないの?」と重ねて聞く。返事は「そりゃそうでしょ」だけで、中身の説明は与えられない。
同じ言い方をシーナもしている
ミミが持ち出すのが「シーナも嬉しそうじゃないんだ」「いつもいい点なのに」だ。引かれるのが「こんなんじゃダメだ」「ミミには分からないよ」という二つで、ミミの結論は「ダメじゃないのに」になる。
ハルはミミに役割のほうを返す
そこでハルが言うのが「君は、ここの役に立っているだろう」「学校のみんなの役に立っているだろう」だ。同じ建物の中でシーナが願っていた「誰かの役に立ちたい」が、ミミには最初から与えられている。ミミの返しは「シーナだって」で、向けられた評価をそのまま人に回している。
熱を測ろうとした手を、ミミが見ている
そこへシーナが来る。
呼ばれ方が「保護者」になる
ハルの第一声が「やっと保護者が来たか」だ。ミミの連れとしてシーナが扱われていて、二人の関係が外からはそう見えていることになる。
立ちくらみは「いつものこと」で片づけられる
席を立ったハルがふらつき、シーナが「一旦ベッドに座って」と止める。返事は「いいよ、平気」「いつものことだから」で、心配の受け取りを断る言い方になっている。
手つきに台詞は付いていない
公式サイトのあらすじは、このあとシーナがハルの熱を測ろうとしたことに、ミミが複雑な想いを抱くと書いている。本編ではその場面に一言も台詞がなく、ミミの表情だけが置かれる。
送っていく申し出も断られる
シーナの「じゃあ、一緒に途中まで行こう」に対して、ハルは「平気だって」と返す。途中で「ここでいい」「もう平気だから」と切り上げられ、送る側だけが残される。
独白が名前をつけずに一行だけ置く
そのあとに入るのが「馴染んだ日常に」「私の知らない花が芽吹く」だ。芽吹いたのが何なのかは、この時点では書かれない。
ミミの言葉が、ハルのいちばん痛いところを解く
翌日、三人は帰り道で服の話になる。
ミミは思ったことをそのまま出す
ミミが口にするのが、ハルの私服も制服も男子用だという指摘と、女の子なのに、という一言だ。シーナが名前を呼んで止めるが、間に合っていない。
ハルは言われる前に自分で言う
返ってきたのが「気持ち悪い」「君も」「おかしいと思う」だ。相手の評価を待たずに、自分で最悪の言葉を先に置いてしまっている。
ミミの返しは条件を一つ確かめるだけ
ミミが聞くのが「だって、自分で選んだんでしょ?」で、答えを受けてから「なら何もおかしくないじゃん」と続ける。励ましも評価もせず、選んだのが本人かどうかだけを確かめている。
礼は二人に分けて言われる
ハルの「ありがとう」はまずミミへ向き、そのあとトツキさん、と呼んでシーナにも向けられる。シーナの返しは「どういたしまして」だけだ。
まっすぐさは踏み込みすぎとセットになっている
続けてミミが「ミミも着てみていい?」と聞き、「は?」「いやだよ」と断られる。相手を救った言い方と、遠慮がなさすぎる言い方が、同じ性質から出ている。
「もやもやしたものがない」と褒められる
帰り道、ミミはハルの話をシーナに報告する。
ミミはハルを持ち上げる
「ハルってすごいんだよ」「授業休んでてもミミよりいい点数取れるの」「保健室でもずっと勉強しててね」と並べ、締めが「かっこいいよね」だ。この日いちばん近くにいた相手のことを、真っ先にシーナへ持っていっている。
シーナはミミも同じだと言う
返ってくるのが「でもミミもかっこいいよ」で、理由が「ミミはいつでも物事をまっすぐ捉えて、ミミの言葉で伝えてくれるから」だ。続きが「だからアリやハル君も、みんな素直になれるのかな」で、根拠に実例が挙がっている。
言い換えが二段で来る
「ミミの言葉って?」への答えが「偏見とか忖度がないっていうか」だ。ミミが聞き返すと、さらに「心の中がきれいっていうか」「もやもやしたものがないっていうか」と言い換えられる。
ミミの返事は一音だけ
ここでミミが出すのが「あ」という一音だ。心の中にもやもやが無いと褒められたのは、その日のうちにもやもやを覚えたばかりの本人になっている。
気づいたことは口に出さない
続くのが、自分もそう思ってもらえるように、という内心と「頑張ろ」だ。ミミは訂正も告白もせず、褒められた形のほうへ自分を合わせにいく。
最後の一言は「ずるい」だった
シーナとミミは、地下の書庫の隣にある倉庫へ向かう。
場所を教えたのはハルだった
探している参考書は図書館ではなく、地下書庫の隣の倉庫にこっそり置いてある先輩たちのノートだと教わる。そもそもの始まりは、ハルが返しに行くはずだった本をシーナが引き取ったことだ。
その申し出には口実が付いていた
シーナは「私たち、これから参考書を借りに行こうと思ってたんだけど」と切り出している。その少し前にミミと話していたのは、戻ってクッキーを焼くかどうかという予定だった。
ミミが先を急がせる
道中のミミの言い分が「早く行かなきゃ、晩御飯間に合わない」で、おやつがまだだと言われても「いいから」と押し切る。昼には自分から寄り道を提案していた側が、この日は最短で終わらせようとしている。
転倒は台詞のない時間に起きる
「ここだね」のあと、しばらく声が途切れる。次に出るのが「ミミは平気?」「ちょっと待ってて」で、心配の順番はここでも相手のほうが先になっている。
怪我はすり傷ひとつ
シーナが自分の傷に気づいて言うのが「本当だ」「痛た」「階段で擦っちゃったかな」だ。ミミが「帰るとき保健室寄っていい?」と言い出すのに対し、シーナは「ダメだよ、擦り傷くらいで」と断る。
断る理由が魔力の節約になる
「でも痛いんでしょ?」「痛くないよ」「うそ、痛いって言ったもん」と押し問答が続き、シーナの答えが「こんなことで魔力使うのもったいないし」だ。ミミの返しは「もったいなくない」だけで、理屈の形になっていない。
借りが積み上がっていることを持ち出す
シーナが挙げるのが「腕の怪我の時もミミに助けてもらったし」「こんな、いつも助けてもらってばかりじゃ」だ。断る理由が、痛いか痛くないかではなく貸し借りの数え方に移っている。
ミミは一方通行になっていることを数える
そこで出るのが「ずるい」「シーナばっかりミミにお願いして」だ。例に挙がるのが「怪我しないで帰ってきて」「体大切に」という、第5話の見送りから続けて言われてきたお願いになっている。
最後は問いのまま終わる
締めが「それなのに、ミミはシーナにお願いできないの?」「お願い、シーナは聞いてくれないの?」で、返ってくるのが「ミミ、だめだよ」だ。大きな事件は一つも起きないまま、副題の「忘れない日」だけが残される。




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