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第10話の副題は「BRAIN DRAIN ⅲ + GHOST COAST + EPILOGUE」で、三本ぶんの章題が一話にまとめられている。狙撃で義体を失った素子は脳だけになり、バトーの隠れ家で閉鎖モードに入る。そこへ消滅したはずの人形使いが割り込んできて、融合を持ちかける。素子が確かめた二つの保証は、どちらも無いと即座に否定される。それを聞いた直後に、素子は申し出を受けた。




素子を消す判断は、どこでも交渉されていない
第10話は、素子が撃たれるまでの二分ほどから始まる。画面に出てくるのは指示を出す側と報告する側ばかりで、撃たれる本人はここで一言も発しない。
前の回では、同じ話が取引として持ち出されていた
第9話の中心にあったのは「特殊部隊規制法案を持ち出されたくなければ、彼女の業務上過失致死罪を受け入れろ」という提案だった。一人を差し出せば部隊は助かるという形にまで整えたうえで、相手はそれを交渉として持ってきていた。
今回は誰も交渉していない
第10話の冒頭で同じ内容が出てくるときの言い方は「一つミスの後始末が残っています」だ。差し出すかどうかを話し合う場面が無く、後始末という語のあとに続くのが「狙撃ユニット02」という指示になっている。
消す理由が、人質を撃ったことだとされる
別の回線では、発端が垂れ込みであったこと、そして「草薙が人質の足を打ったことだ」という一行が語られる。第9話の籠城で起きたことが、ここで初めて言葉になって出てくる。
垂れ込み屋への報復まで同じ流れで手配される
続けて出るのが、標的の名を情報提供者にも教えてやれ、という指示と「闇医者にはいい薬になるだろう」という一言だ。一人を消す段取りと、別の一人を痛い目に遭わせる段取りが、同じ通話のなかで並べて片づけられている。
その直前に下りているのは「作戦はまず成功だな」という評価
総理への報告では、中枢に浸透していた工作員を把握したこと、通商協定で情報を引き出せたことが並べられ、「作戦はまず成功だな」で締められる。成功だと確認したあとの残務として、部下だった人間を消す話が出てくる順番になっている。
狙撃は段取りの一部で、中継まで用意されていた
撃つ側の描写は短い。ただし、撃たれる瞬間を誰が見るかについては、事前に手配が済んでいる。
「生中継を始めるわよ」
撃つ準備と並行して進んでいるのが、回線の同期だ。「契約成立だわ」に続けて回線がこちらとシンクロしたという報告があり、「生中継を始めるわよ」「ユニットを渡してやれ」で話が終わる。撃つ段取りと同じ列に、撃たれる瞬間を見せる段取りが並んでいる。
撃つ側は位置に着いたと報告するだけ
狙撃手の側から出てくる台詞は「位置に着きました」の一行しかない。撃つ人間の判断や迷いは画面に無く、あるのは番号で呼ばれたユニットが所定の場所に着いたという報告だけだ。
鳥が飛ぶ
狙撃の直前に鳥が飛び立つ画がある。記事内の箱でも複数のアカウントがこの鳥に触れていて、狙撃の直前という位置を挙げるものと、鳥同士のつながりのほうを見るものに分かれている。
撃たれたあとに交わされるのは荷物の指示
現場で出るのは「誰がやった」という問いと、処理班を呼ぶ指示と、「彼女の荷物を調べろ」の三つだ。誰がやったのかを聞いた側が、答えを待たずに次の手続きへ進んでいる。
第8話から続いた「見られること」が、ここに行き着く
第8話の幕は、素子の名前がニュースで読み上げられる場面だった。第9話はそれが国会まで届く回だった。第10話では、素子が撃たれる瞬間そのものが、あらかじめ回線をつないだ相手に向けて中継される対象になっている。
脳だけになった素子とバトーは、損得の言葉でしか話さない
ここから逃亡の場面になる。素子は脳だけの状態で、義体を探しに行くバトーに連れられている。二人の会話は、最後まで貸し借りの数え方で進む。
「別に困らないわ」「死ぬだけよ」
バトーが素子を隠していこうとする理由が「生体維持装置のバッテリー上がったら困るだろ」だ。返ってくるのが「別に困らないわ」「死ぬだけよ」で、そこに「ちげえねえ」が重なる。心配を心配として言わず、困るか困らないかの話に置き換えている。
心配が殺人罪の話に化ける
出かける前の一言も「一番いい義体をこっそり持って帰るから」「お礼の言葉でも考えとけよ」と続いたあと、「なんせこれじゃ殺人罪だからな」で終わる。放置すれば人が死ぬという事実が、法律上どうなるかという言い方でだけ口に出される。
九課を振り返る最初の言葉が、備品の質だった
廃品置き場に並ぶ義体を前にして出るのが「みんな腐ってやがる」と「闇ルートで手に入る部品は」という不満で、そのあとに続くのが「九課はよかったな」「本当の高級品を扱えて」だ。組織を過去のものとして振り返る最初の言葉に選ばれているのが、扱っていた部品の質になっている。
用心深さが、生き延びた理由として語られる
隠し場所を開ける場面で出るのが「こういう瞬間」「状況に関わらず」「罠じゃないかって思わない」という問いで、返ってくるのが「それぐらい神経質で用心深くないと」「生き残ってこれなかったわ」だ。用心深さが性格としてではなく、これまで死ななかった理由のほうとして説明されている。
逃げる相談のなかで数を読み上げる
外の連中を確認する場面では「全部で18人ぐらい」「ヘビー級のサイボーグは3機いる」と数が読み上げられる。「戦略的撤退するぞ」という判断に対して並ぶのが、偶然現れた無関係の人物かもしれない、という別の可能性と、最初に突入してくる者はいい義体を持っているかもしれない、という読みだ。逃げる相談のなかにまで、次に手に入るものを数える言い方が混ざっている。
「節電するため閉鎖モードになるわ」
バトーが出ていくときに素子が言うのが「節電するため閉鎖モードになるわ」と「コード11で起こして」だ。閉じる理由が節電という即物的なもので、起こし方まで自分で決めている。
人形使いの長台詞は、ぜんぶ「失えないものは滅ぶ」という話
閉鎖モードの素子に割り込んでくるのが人形使いだ。ここから続く長い説明が、副題の二つ目にあたる部分になる。
いちばん閉じた瞬間に、いちばん外から入ってくる
素子の第一声は「閉鎖モードにインタラプトできるなんて何者」で、続けて「人形使いは消滅したはずよ」と確認する。自分から回線を落とした直後が、いちばん外から入られる瞬間になっている。
安定を保つ二つの方法
人形使いの問いは、ネットが破局を避けて安定を保つにはどうするか、というものだ。素子の答えが二つで、一つはコピーを取ること、もう一つは内部の分業を細かくして多機能化することだった。問われた素子が即座に二つとも挙げてしまうので、説明の残りは素子が出した答えの検討になる。
上へ行くほど決まっていて、下へ行くほど揺らぐ
ピラミッドの図で示されるのは、上の階層ほど決定論的に振る舞い、下の微細構造ほど非決定論的になる、という並びだ。下の階層の揺らぎが上の階層を守っている、という言い方で、揺らぎに役目が与えられている。
死も忘却も、破局への防御機能として並べられる
続く列挙が、脳が忘れる機能を持つこと、細胞が入れ替わりながら老いること、死ぬときに大量の経験情報を捨ててミームだけを残すこと、文明が周期的に疲れることだ。これらがすべて「破局に対する防御機能」という一語でまとめられる。
「コピーでは個性や多様性が生じないのだ」
人形使い自身の弱点として挙げられるのが、自分のシステムに老化も揺らぎも無いことだ。コピーを増やしても一種のウイルスで全滅しうると言い、続けて出るのが「コピーでは個性や多様性が生じないのだ」になる。素子が「自慢の演算処理力でコピーに味付けすればいい」と返しても、すぐ融合して欠損が補われると否定される。
世界を語り終えた相手が、自分を未完成だと言う
宇宙の分岐まで説明したうえで、人形使いは「私は以前自分は生命体だと言ったが」と切り出し、現状では未完成だと認める。素子はそれを「あんたまるでガン細胞ね」と受ける。相手を否定する語ではなく、比喩として差し出された言葉に、人形使い自身が「本質的にその比喩は間違っている」と応じている。
「お断りよバカ」から「申し出を受けるわ」まで
頼みの中身が明かされてから素子が受けるまでは、それほど長くない。ただし、そのあいだに素子は二回だけ、確かめる側に回っている。
世界の構造を語る相手への返事が「バカ」だった
融合したいと言われた素子の返しが「は?私に多重人格にならないかって?」「冗談じゃない」「お断りよバカ」だ。宇宙の構造を何十行も説明した相手に、素子は三行で答えている。
多重人格ではなく完全な統一だと訂正される
人形使いはそれを「多重ではなく完全な統一」「融合だ」と言い直し、互いに多少は変わるが「失う部分はない」と続ける。融合したあとは互いを認識することが不可能なはずだ、という確認まで入って、条件のほうが先に細かくなっていく。
素子が先に確かめたのは、死んだあとのこと
素子の質問が「それじゃあ私が死ぬ時どうするの?」で、遺伝子もミームも残せないと続く。返事は、新しい自分がことあるごとに変種をネットへ流すというもので、人間が遺伝子を残すのと同じだと説明される。
保証を二つ求めて、二つとも無いと言われる
素子が挙げた保証は二つだ。人類の消去に手を貸すことにならないという保証と、私が私でいられるという保証だった。返ってきたのが「前者の保証はない」と「後者の保証は全くない」になる。片方は確率が低いという説明が付くが、もう片方には説明すら付かない。
確かめることをやめた瞬間に決めている
そのあとに素子が言うのが「もういいわ」「どうせ何を聞いたところで信頼できないんだし」で、続けて「申し出を受けるわ」だ。情報を読んで動いてきた人物が、これ以上聞いても意味が無いと判断した直後に受けている。
「私も何かを予感してたのよ」
受ける理由として素子が挙げたのは、聞き出した情報ではなく「私も何かを予感してたのよ」だった。相手が積み上げた理屈ではなく、確かめようのない側から出てきた言葉で決まっている。
何十行も説明した相手が、選んだ理由は一言だった
融合を受けたあとに、素子はもう一つだけ質問する。ここで返ってくる答えの短さが、それまでの長台詞と噛み合っていない。
「推定所要時間の25分の1で返事があるとは」
承諾を聞いた人形使いの反応が「結論がOKなのは分かっていたが」「推定所要時間の25分の1で返事があるとは」「評価を改めねばならんね」だ。結論は読めていたと言いながら、読めていなかったのは速さのほうだったと認めている。
「なぜ私を選んだの?」「縁があったからだ」
素子の最後の質問が「なぜ私を選んだの?」で、返事は「縁があったからだ」の一言だった。宇宙の分岐まで説明してきた相手が、いちばん個人的な問いにだけ一語で答えている。
縁の説明だけがまた長い
素子が「縁?」と聞き返すと、人形使いはまた説明を始める。互いの中にある要素が対応することを縁と呼ぶ、という筋だ。短い答えの中身を問い直すと、また同じ長さの説明が返ってくる。
素子はそれを「結婚」と呼ぶ
説明を聞いた素子の受け方が「知能だけの生命体と結婚しようってのに」「その理由が縁があったからとはね」だった。融合という言葉を、素子は自分の言い方に置き換えてから受け取っている。
「これで私は真の生命体となる」
融合の直前に置かれるのが「これで私は真の生命体となる」という一行と、流れる雲のように移ろう、不確実で多様な世界の一部に、という言葉だ。生命体だと名乗ることから始まった存在が、その名乗りを完成させるために揺らぎのほうを買いに来ていたことになる。
男性型の義体で目を覚まし、最初に求めたのは鏡だった
副題の三つ目にあたる部分は、目を覚ますところから始まる。ここで素子が最初に口にする要求が、この回の後半を決めている。
「状況説明と鏡見せて」
起きた素子の第一声が「状況説明と鏡見せて」だ。状況の説明と自分の姿の確認を、同じ一つの要求として並べている。
日付と場所が読み上げられる
返ってくるのが日付と時刻、そして「ここは俺のセーフハウス」という場所の説明だ。要求のうち前半には即座に答えが出て、後半の答えは鏡のほうから返ってくる。
4年前に流行った型だと言い当てる
鏡を見た素子は、それが4年前に流行った型であることを型番まで言い当てる。新しい体を渡された最初の反応が、感慨でも嫌悪でもなく、製品としての識別になっている。
「これ男性型の義体よ」
前の持ち主について聞くと、仲間が掘り出し物と間違えて持って帰った、という答えが返る。そこで素子が言うのが「これ男性型の義体よ」と「なんか歩きづらいわね」だ。受け取った体が自分の性別と違うことを、歩きにくさという一点だけで済ませている。
労いの言葉を求められて返るのが「ご苦労さん」
型番の話しかしない素子に対し、「それだけ?」「他に何か言うことあるんじゃないの?」という促しが入る。返ってきたのが「ご苦労さん」だった。促されて出てきた言葉も、やはり仕事に対する評価の形をしている。
暗証番号が再会の合図に変わる
最後の場面は、車を出すところで終わる。ここでバトーが渡すのは実務の情報で、素子はそれを別のものに読み替える。
バトーが渡すのは車のキーと数列
別れ際にバトーが言うのが「車のキー持ってけよ」で、続けて暗証番号を伝える。番号の中身は、ある曲の冒頭の八秒を数列にしたものだと説明される。
素子はそれを別のものに読み替える
素子の返しが「それ」「再会するときの暗号にしましょう」だ。車を動かすための番号が、その場で次に会うための合図に変えられている。
バトーの問いに、素子が返す答え
バトーが聞くのは、生命体と名乗るものに融合を求められて受け入れたら、どうなるのか、ということだった。素子の答えが「知ることになるわ」で、続けて情報の高効率パッケージであること、そして「生命の偉大さをね」が挙げられる。問われた側は結果を説明せず、これから知ることになる、という形でしか答えていない。
「さて、どこへ行こうかしらね」
「で、どこへ行く?」に対する返事が「さて、どこへ行こうかしらね」で、そのあとに「ネットは広大だわ」が置かれて本編が終わる。行き先を聞かれて、行き先ではなく広さのほうを答えている。
三本ぶんの章題が一話に入った最終回
公式サイトが出している副題は「BRAIN DRAIN ⅲ + GHOST COAST + EPILOGUE」で、章題を三つ並べているのは第3話とこの回だけだ。逃亡と、対話と、目覚めのあとが、それぞれ独立した章題を持ったまま一話に収められている。
落ちが分からないという声もある
記事内の箱には、きれいに終わったという受け取り方と、これで終わりなのかという受け取り方の両方が並んでいる。長い対話がそのまま結末になる作りなので、どこを終わりと感じるかで印象が割れている。
































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