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最終回の副題は「ニャーは最終回でもヤニを吸うにゃ」。公式のあらすじどおり、打ち切り、クビ、穴掘りバイトと住人たちに限界が次々と訪れる。その中で一か所だけ、小説に悩む妹ちゃんが「無駄じゃないよ」と励まされる。後半は大家とのけんかが、アパート史上最大の騒ぎになる。そして何一つ片付かないまま、第1話と同じ構図に戻って終わる。いつもどおりの騒がしさである。




副題は「ニャーは最終回でもヤニを吸うにゃ」
公式アカウントが告知した第12話の副題は「ニャーは最終回でもヤニを吸うにゃ」で、最終回であることを題そのものが言ってしまっている。公式のあらすじは、打ち切り、クビ、理不尽な穴掘りバイトと、アパートの住人たちに次々と限界が訪れる回だと書いている。最終回だからこそ全員の限界を一度に並べる、という思い切った作りである。
最終回でも変わらない
副題のとおり、最終回だからといって話の調子が変わるわけではない。しんみりした締めくくりを期待させる言葉を一つも置かず、いつもどおりの騒ぎで一話を使い切る宣言になっている。
監督と制作スタジオの言葉
放送後には、監督が全12話を放送できたことへの礼を述べ、アニメ化できていない面白い話がまだ原作にあると書いている。制作スタジオからも、住人たちがそろったファンアートが届いている。作り手の側が最後に原作を勧めているのが、この作品らしい誠実さである。
打ち切り、クビ、限界を迎える住人たち
前半は、住人たちが一人ずつ行き詰まっていく様子を短く並べていく。公式のあらすじが書く「限界」は、ここで順番に訪れる。
「打ち切りなんて 慣れっこじゃないですか」
最初に描かれるのは、連載の打ち切りである。周りからは「打ち切りなんて 慣れっこじゃないですか」と声をかけられるが、慣れているから平気というわけではない。ギャグの顔をしたまま、創作で食べていく人の痛いところを最初に突いてくる。誰が打ち切られたのかをくどく説明せず、周りの軽い一言だけで状況を伝えてしまう入り方も手際がいい。
ストロングな虚無
ヤク子はバットを振り回し、ぐるぐる回ったあとで強い酒を流し込む。画面は派手な色に染まり、「はい効いた〜」「ストロング猫」と叫ぶ場面になる。最終回で一番派手な作画が、こういう場面に使われているのがこの作品である。酒の缶が画面いっぱいに並ぶ演出は、笑いと同時に、そうでもしないとやっていられない気分まで見せている。
「自分 バイト クビになったんス」
酔いがさめたヤク子は「自分 バイト クビになったんス」と打ち明ける。過去の経歴で未来を潰されたと嘆く相手に、容赦のない言葉が返ってくる。笑える場面の中に、やり直しが難しい人の嘆きがそのまま置かれている。
ハメちゃんとヤク子の取っ組み合い
限界を迎えるのは仕事だけではない。ゲームで負けて荒れたハメちゃんと、それを止めようとしたヤク子の間でも騒ぎが起こる。ゲームで負けた悔しさを引きずったまま寝落ちしていた、という導入からして、この二人らしい。
「いきなり 誰に喧嘩売ってんだよ」
外で寝ていたハメちゃんを起こしたヤク子に向かって、「いきなり 誰に喧嘩売ってんだよ」という声が飛ぶ。ヤク子は「はいはい とりあえずお前はもうゲームやめとけ」となだめにかかる。付き合いの長い二人ならではの、遠慮のない言い合いになっている。
本気の格闘作画
そこからの取っ組み合いは、ギャグ回とは思えないほど丁寧に動く。獣人同士の喧嘩として、人間が間に入れない空気で描かれている。最終回の作画の力を、よりによって住人同士の喧嘩に注ぎ込んでいるのが可笑しい。
春蘭と大家、資料のための一騒動
次の騒ぎは、漫画の資料集めから始まる。新しいキャラクターの参考にしたいという相談が、思わぬ方向へ転がっていく。資料集めという真面目な目的が、あっという間に別の騒ぎへすり替わっていくのが、この回の中盤の流れである。
呼び出された春蘭
資料のために呼び出されたのは春蘭だった。着替えさせられた春蘭を前に、大家は興奮などしないと言い張る。本人は大家のために頑張ったのに、という温度差がそのまま笑いになっている。春蘭本人は気合いを入れて臨んでいるので、空回りの可笑しさがいっそう際立つ。
「ラム酒の香りがするんですよ」
春蘭は唐突に、天の川銀河の中心は「ラム酒の香りがするんですよ」と話し始め、大家は面食らう。かみ合わない会話を、かみ合わないまま次へ進めていくのがこの作品の呼吸である。
妹ちゃんの悩みと、「外に出た方がいい」
騒ぎの合間に、この回でいちばんまっすぐな場面が置かれている。公募に出す小説で悩む妹ちゃんと、漫画家の先生の会話である。
「私才能ないなって思って」
妹ちゃんは、仕上がった作品を読み返してつまらないと感じ、「私才能ないなって思って」と打ち明ける。毎日5時間以上パソコンの前で考えていると言い、小説をやめたほうがいいのかとまで口にする。騒がしい最終回の中に、創作をする人なら誰でも覚えのある悩みがそのまま出てくる。
「外に出た方がいいって意味」
先生は一度、やめろと言ったように聞こえる返事をしてから、慌てて「机の前じゃなく外に出た方がいいって意味」と言い直す。そして「私ネタに詰まるとよく散歩するんだ」と続け、「要は脳の刺激だね」とまとめる。一瞬ひやりとさせてから、ちゃんとした助言に着地させる会話の運びがうまい。
「あなたはプロになる素質が十分あると思う」
机の前の時間を無駄にしたと落ち込む妹ちゃんに、先生は「無駄じゃないよ」と言う。「嫌になるくらい考え続けて」アイデアが降りてくるのはその後だと説明し、「あなたはプロになる素質が十分あると思う」と締める。この作品で、ここまで素直に人を励ます台詞が出てくるのは珍しく、最終回らしいご褒美の場面になっている。
水着と警察
ところが、その後の資料集めは警察沙汰になる。警官の「それで何で未成年に 街中で水着なんか着せてたの」という問いに、謝り続けるしかない。いい話で終わらせず、すぐに落とすのがこの作品の流儀である。
穴掘りバイトと、大家への怒り
後半の中心は、公式のあらすじにある理不尽な穴掘りバイトと、大家とのけんかである。ここまでの住人たちの限界が、最後に主人公自身の限界として回ってくる構成になっている。
掘って、埋めて、また掘る
ヤニねこは「バイトでずっと穴を掘らされたにゃ」「明日はその穴を埋めるにゃ」とこぼし、それを今週は繰り返すという。全身が痛いとこぼす姿にも、いつもの余裕はない。意味のない労働をそのまま言葉にした一行が、ギャグなのに妙に重い。
「暇してるとろくな人間にならねえぞ」
ほうきで庭を掃いている大家を見て、ヤニねこは暇そうだと決めつける。家賃を催促した大家の「暇してるとろくな人間にならねえぞ」を、ヤニねこはそのまま「暇してるとろくな人間にならないにゃ」と言い返し、大家の手間を増やしたうえで「仕事増やしてやったにゃ」と言う。相手の説教をそっくり返して仕事を増やすという、最悪にして筋の通った反撃である。
電子レンジが飛ぶけんか
公式のあらすじによれば、この後は電子レンジが飛び交う、アパート史上最大のけんかになる。住人たちも次々に顔を出し、騒ぎは広がっていく。最終回の山場が、世界の危機でも別れでもなく、大家とのけんかだというのが清々しい。
吸い殻入りのビールと、静江の最後の出番
騒ぎのあと、部屋に戻ったヤニねこは、どれが灰皿でどれが飲み物か分からなくなる。けんかの熱が冷めたあとに、また身勝手な小さな事件が待っているという順番がこの作品らしい。
捨てたくない高いビール
灰皿代わりにしていた缶と飲みかけの缶が混ざり、ヤニねこは高いビールだから捨てたくないと迷う。かつて静江が吸い殻入りのジュースを飲んで肺に穴が開いた、という話まで思い出す。危ないと分かっていながら手を伸ばすところまでが、この主人公の生き方そのものになっている。
「最後の出番だなんて」
その回想で登場した静江は、放送の字幕によれば「こんなのが 最後の出番だなんて」と嘆いている。脇役にまで最終回の自覚を持たせて、自分でそれを嘆かせるのがこの作品のやり方である。
「ニャーは何も悪いことしてないのに」
結局ヤニねこは当たりを引き、最後は「ニャーは何も悪いことしてないのに」と叫ぶことになる。最後まで反省しない主人公のまま、きちんと痛い目を見て終わるのがこの作品の公平さである。
第1話の構図と、いつもの顔ぶれ
最後の場面は、第1話と同じ構図で締めくくられる。何かが変わったようで、何も変わっていない終わり方である。最終回で大きく何かを変えるのではなく、最初の形に戻ることで、この日常がこの先も続くと伝えている。
第1話と同じ場所に戻る
最終回のラストは、第1話と同じ構図に重なる作りになっている。何かが解決して終わるのではなく、同じ一日がまた始まるという終わり方が、この作品の日常をよく表している。
声をそろえて題名を呼ぶ
放送の字幕では、最後に住人たちが声をそろえて「ヤニねこ」と題名を呼ぶ。特別な別れの言葉を用意せず、いつもの顔ぶれで題名を呼んで終わるのが、この作品にいちばん似合う締め方だった。
まとめと考察
第12話は、住人たちの限界を並べておいて、そのどれも解決しないまま、いつもの一日に戻って終わる最終回だった。大きな事件も感動的な別れもないが、それが物足りなさにならず、むしろこの作品の完成形に見えるのが面白い。
限界は解決されない
打ち切りも、クビも、穴掘りバイトも、最後まで何一つ片付かない。それでも住人たちは同じアパートで同じように暮らし続けていて、その変わらなさこそがこの作品の救いになっている。
いちばんまっすぐな励まし
妹ちゃんへの「無駄じゃないよ」は、この作品には珍しいほどまっすぐな言葉だった。下品さと騒がしさで埋め尽くされた最終回の中で、一か所だけ置かれた本気の励ましが強く残る。先生自身もしょっちゅうネタに詰まると認めたうえでの言葉なので、慰めではなく実感として届く。
最終回でもヤニを吸う
副題どおり、ヤニねこは最終回でも変わらずヤニを吸っていた。全12話を通して、主人公の暮らしぶりは何ひとつ改まらなかった。成長も反省もしない主人公を、最後までそのまま肯定して終わるのが、この作品なりの誠実さだと思う。




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