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リディアから返事がもらえず落ち込むテレンスを、サヴァナは学生パーティーへ連れ出す。そこで出会ったのが、美大生のサバだった。羽目を外しすぎた三人が目を覚ましたのは、ドリームランドの錯乱の街だった。そこで待っていたものとは。酩酊した夢人が集まる錯乱の街、新たな仲間サバとの出会い、そしていじめっ子セルヴィアとの対決まで、第4話を振り返っていく。




リディアを忘れたいテレンス
さっさと気持ちを伝えなって意味だよ
『dreamland』第4話「サバ」は、ランニング中のテレンスとエーヴの会話から始まる。リディアからまだ返事がもらえず、すっかり落ち込んでいるテレンス。「自分じゃ釣り合わないってやっとわかったんだよ」と弱気になる彼に、エーヴは「さっさとリディアに気持ちを伝えなって意味だよ」と発破をかける。毒舌の裏に見える、エーヴなりの優しさが印象的だった。
リディアのことで頭がいっぱいのテレンスは、走るペースもすっかり落ちている。好きな人の返事を待つ時間のもどかしさは、誰にでも覚えがあるはずだ。弱気になっているテレンスの姿は情けなくもあり、同時にとても等身大で、思わず心から応援したくなってしまった。
エーヴの言葉は乱暴だけれど、的を射ている。うじうじ悩むくらいなら、きちんと気持ちを伝えればいい。その単純な正論が、今のテレンスにはいちばん難しいことなのかもしれない。
さらにテレンスは、いじめっ子のセルヴィアに服を持っていかれ、タオル一枚で走り回る羽目に。体格差では勝ち目がないが、「ドリームランドの中でボコればいい」とサヴァナはけしかける。そして「今夜はパーッとやって全部忘れるぞ」、「リディアのこともな」と、テレンスを学生パーティーへ連れ出すのだった。
現実では力で勝てない相手に、夢の中なら対等に戦える。ドリームランドの旅人であることが、テレンスにとって単なる冒険の舞台ではなく、現実の苦しみと向き合うための場所にもなり始めているのが興味深い。サヴァナの乱暴な励まし方も、彼なりの兄貴分としての気遣いなのだろう。
サバという男
パーティーでテレンスたちが出会ったのが、美術大学生のサバ。女の子と一緒にいたところを別の女の子に見つかり、とっさに「友達に絵の補修授業をしてたとこ」とテレンスを巻き込んで言い逃れる。「顔の構造を理解できれば難しいことはない」と、もっともらしい講義まで始める口のうまさに笑ってしまった。
初対面のテレンスを平然と言い訳に使うサバの図太さは、かえって清々しいほどだ。調子がよくて口がうまく、それでいてどこか憎めない。サヴァナとはまた違ったタイプの、強烈な新キャラクターの登場だった。
助けられたサバは「サバは借りをきっちり返す男」と調子がいい。一方のテレンスは、「どの子もリディアの足元にも及ばない」、「どうすればリディアを忘れられる」と、忘れるどころかリディアのことばかり考えている。そして酒の勢いで「リディアは俺の憧れの君だぞ」とサヴァナに食ってかかり、やがて三人とも意識を失ってしまう。
忘れようとすればするほど、リディアのことを考えてしまう。その空回りぶりは笑えるけれど、それだけテレンスの思いが本気だということでもある。酔った勢いで本音をぶちまける姿には、少し切なさも感じた。
錯乱の街
酔っ払って寝た夢人がやってくる場所
目を覚ました先は、ドリームランドの錯乱の街。「酔っ払って寝た夢人がやってくる場所です!」と案内役は明るく説明する。陽気な酔っ払いが集まる南側、悪酔いした人たちが行く東側、完全に行っちゃってる人の西側。酩酊の度合いで行き先が分かれるという設定が、なんともこの作品らしいユーモアだった。
南、東、西と、酔い方によって行き着く場所が違うという仕組みもユニークだ。三人がそれぞれ別の区画に飛ばされたのは、それぞれの酔い方の違いを表しているのだろう。誰がどこに行ったのかを考えるだけでも、ちょっとした笑いが生まれる。
案内役は道順を早口でまくし立てたうえで、「でも急いだ方がいいわ、もうすぐ4時44分」と気になる一言を残す。サヴァナは東側、テレンスとサバは西側へ。三人は散り散りになってしまう。
酔っ払いが迷い込む街という発想そのものが、夢の世界を描くこの作品ならではだ。現実の酩酊状態が、そのまま夢の中の地理に反映されている。ふざけているようでいて、夢と現実のつながりという作品の根幹にきちんと結びついた設定になっていた。
内なる猫を呼び覚ませ
西側でサバは、「うちの猫ちゃんが木に挟まって降りられなくなったの」と頼まれる。ところが木の上にいたのは、見上げるほどの巨大な猫だった。「猫と意思疎通するには自分が猫になるの」、「うちなる猫を呼び覚ませ」という謎のアドバイスまで飛び出し、まさに錯乱の街という混沌ぶりだった。
巨大な猫を前に、どうにか言うことを聞かせようと四苦八苦するサバとテレンス。夢の世界の理不尽さが、酔っ払いの論理でさらにねじれていく。何が起きても不思議ではない錯乱の街ならではの、ゆるくてシュールな場面だった。
そして訪れた4時44分。「お通じの時間です」というアナウンスとともに、街中の酔っ払いたちが一斉に吐き始める。テレンスも例外ではなく、空中で盛大にやらかしてしまう。下品きわまりない展開なのに、勢いと作画の振り切り方でつい笑わされてしまった。
この作品はフランスのバンド・デシネから生まれた物語で、日本のアニメとは少し違ったユーモアの感覚がある。下品な笑いも遠慮なく描くけれど、それが不思議と嫌みにならない。キャラクターたちが全力で酔っ払い、全力で失敗する姿に、どこか憎めない愛嬌があるからだろう。
運命の筆と旅人殺し
俺の運命の筆だ
そこへ現れたのが、テレンスの夢に毎晩出てくるフードの男。「盗んだものを返せ俺の運命の筆だ」と迫る。運命の筆はサバが偶然手にしたもので、本人には旅人の自覚すらなかった。サヴァナいわく、恐怖を克服していなくても夢の中にいると気づいて旅人になる者が時々いる。「でも相当強い酒飲んだやつじゃないと」という条件つきなのが、いかにもこの回らしい。
自覚のないまま旅人になり、しかも誰もが欲しがる運命の筆を手にしてしまう。サバの運の良さは、ほとんど才能と言っていいレベルだ。けれどその幸運が、旅人殺しという危険な連中を引き寄せることにもなってしまった。
フードの男たちは、ドリームランド中を何か月も探してようやく見つけた運命の筆を、目の前でサバに横取りされたのだという。「運命の筆は俺のものだ」。そしてその正体は、テレンスを高校でいじめているセルヴィアだった。自分たちは旅人殺しだという名乗りに、物語が一気に不穏さを帯びていく。
現実ではいじめっ子、夢の中では旅人殺し。セルヴィアがどちらの世界でもテレンスの前に立ちはだかる存在だと分かったことで、テレンスの戦いは一気に個人的なものになった。夢の中の決着が、現実の関係にどう影響していくのかも気になるところだ。
やられる側の気持ちを思い知らせてやる
現実では勝ち目のなかった相手に、テレンスは夢の中で真正面から立ち向かう。「何年もお前に嫌がらせをされて」、「高校生活はまるで地獄だ」。親友のニティまで泣かされてきた。「何にも悪くない奴を苦しめるのは」、「俺が許さない」、「やられる側の気持ちを思い知らせてやる」。テレンスの怒りが、ようやく正しい相手に向けられた瞬間だった。自分のためだけでなく、傷つけられた友達のためにも立ち上がる姿が頼もしい。
これまでのテレンスは、セルヴィアの嫌がらせに耐えるしかなかった。けれど夢の中では、自分の言葉で、自分の力で相手に立ち向かえる。その変化は、炎への恐怖を乗り越えて旅人になったテレンスが、少しずつ自分を取り戻していく過程そのものなのだと思う。
サヴァナの「よく言ったテレボー」という声援も熱い。「俺の友達に手を出すな」という声とともに、三人でセルヴィアたちに立ち向かう。出会ったばかりの三人が、同じ相手に向かって並び立つ姿に心が熱くなった。
テレンス、サヴァナ、そしてサバ。性格も境遇もまったく違う三人が、錯乱の街で偶然そろい、同じ敵に立ち向かう。この三人がこれからどんなチームになっていくのか、楽しみがまた一つ大きく増えた気がする。
第4話のまとめ考察
アスモデウス様がお話になりたい
ところが戦いの最中、テレンスの高校の哲学の先生が現れ、場を収めてしまう。先生も旅人だったのだ。さらに先生は、「悪夢の大公アスモデウス様がお話になりたいそうだ」と告げる。前の話でも名前が出たアスモデウスが、ついにテレンスたちの前に影を落とし始めた。
身近な先生までが旅人だったという事実は、ドリームランドが思っていた以上に現実と深くつながっていることを示している。最近は誰でも旅人になるという言葉もあり、テレンスたちの周りで何かが動き始めている気配が濃くなってきた。
目を覚ましたテレンスたちは、ひどい二日酔いで朝を迎える。「今日は絶対に飲みすぎないようにするよ」、「嘘ばっかり」というやり取りで、騒がしくもどこか楽しい一夜は、ようやく幕を閉じた。
夢の中であれだけの大騒ぎを繰り広げたあとに待っていたのが、ありふれた二日酔いの朝だというのがおかしい。頭痛薬を求め、朝ごはんの相談をする三人の姿は、どこにでもいる若者そのものだ。非日常の夢の世界と、どうしようもなく日常的な朝の風景。その落差も、この作品の魅力の一つだと思う。
第4話は、酩酊した夢人が集まる錯乱の街を舞台に、新たな仲間サバとの出会いと、いじめっ子セルヴィアとの因縁が描かれた回だった。下品でばかばかしい場面が続く一方で、現実では言えなかった怒りを夢の中でぶつけるテレンスの姿には、確かな成長が感じられる。リディアへの思いを忘れられないまま、テレンスはどこへ向かうのか。そしてアスモデウスは何を企んでいるのか。続きがますます気になる。
サバという新しい仲間を得たことで、テレンスの周りはさらににぎやかになった。強運の持ち主で、運命の筆という特別な道具まで手にしたサバが、これからの戦いでどんな役割を果たすのか。テレンス、サヴァナとの三人組の掛け合いにも、今後ますます期待が高まる。




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