この記事の作品:
『名探偵プリキュア!』第37話の副題は「ウソノワールとニジーのティータイム」。マコピョンの着ぐるみに宿ったマコトジュエルを追うあんなたちの前に、怪盗団ファントムのボスであるウソノワール自らが姿を現す。紅茶の注文が暴いた嘘、ウソノワールが明かした忘れられた種族の孤独、そして時を越えし者への新たな予言まで、物語の根幹に触れた一話を場面ごとに振り返る。




第37話の副題は「ウソノワールとニジーのティータイム」
『名探偵プリキュア!』第37話の副題は「ウソノワールとニジーのティータイム」。商店街の新しいマスコット・マコピョンの着ぐるみに宿ったマコトジュエルをめぐり、怪盗団ファントムのボスであるウソノワール自らが動き出す。パティスリーチュチュでの小さな推理劇から、ウソノワールが初めて語った自分自身の話、そして新たな予言まで、物語の根幹に触れる一話だった。
抜けないリングと消えたマコピョン
冒頭、あんなたちは第36話でまふる所長から託されたスターキラリングブローチのリングを抜こうと、顔をゆがめて力を込めていた。それでもリングはびくともしない。力任せに抜こうとしても無理で、まことの名探偵でなければ抜けないらしい。ただ力を込めるだけではどうにもならない代物のようだ。
あんなとみくるが必死の形相で踏ん張る横で、るるかだけは落ち着いた表情のまま、という対比が楽しい。コミカルな導入に見せておいて、実はこの回の答えにつながる試練がさりげなく示されている。リングを抜くために必要なものは何なのか、その手がかりが後半で少しずつ見えてくる構成だった。
そこへ持ち込まれたのが、商店街の新しいマスコット・マコピョンの着ぐるみの依頼だ。商店街の会長に頼まれてデザインし、ようやく完成したばかりの着ぐるみが、さっきまであった場所から消えてしまったという。しかもその着ぐるみには、マコトジュエルが宿っていた。
着ぐるみの中の怪盗団
着ぐるみの中にいたのは、怪盗団ファントムだった。逃げるマコピョンの姿を遠くから見た怪盗団の仲間たちは「ウソノワール様自ら出陣されたのよ」と驚き、「デッチが暁の証明まふるを見つけないから」とぼやく。デッチ・アゲインがまふるを取り逃がしたことが、ボスの出陣につながったという流れだ。
ただし、空間を移動して逃げる手は使えない。「ウソノワール様は華麗に盗むのが美学よ」という言葉どおり、能力に頼らず盗むのがウソノワールのこだわりだ。着ぐるみのまま街を駆け回る姿はなんとも滑稽で、ボスなのに妙に親しみやすい、ウソノワールの新しい一面がのぞく導入になっていた。
パティスリーチュチュの推理
ぬいぐるみのフリをするボス
あんなたちの追跡をかわすため、ニジーは「変装して奴らの動きを探ります」と提案する。人間の姿になれないウソノワールに向けた答えは「ぬいぐるみのフリをすれば良いのです」。二人が逃げ込んだ先は、くれあが働くパティスリーチュチュだった。「まさかこの店にいるとは思わないでしょう」という大胆な発想に、ウソノワールも「大胆だな、嫌いじゃないぞ」とまんざらでもない様子だ。
ここからの紅茶の注文がとにかくおかしい。ニジーは「走ったので僕の気分はアイスティーです」と言うが、ウソノワールは「私の気分ではない」「走っていないからな」と返し、「ホットをもらおう」と別の紅茶を頼む。さらに砂糖が付いていないと「砂糖は2杯と決まっている」と不満を漏らす。悪の組織のボスとその部下が、喫茶店で紅茶の好みを言い合うという光景が、副題の「ティータイム」そのものだった。
一方、くれあとるるかはプリキットミラールーペで足跡を探していた。ところが見つかったのは本物のうさぎの足跡で、着ぐるみのものではない。みくるはマコピョンの絵を描いて聞き込みを重ね、この公園の方に向かったという証言をつかむ。それぞれの得意分野で少しずつ手がかりを集めていく流れが、探偵ものらしくて心地よい。
「犯人はあの人だ」
聞き込みのためにチュチュを訪れたあんなは、紅茶を楽しむ男性客に声をかける。マコピョンを見なかったかと尋ねると、男性は「見てない」と答えた。ところが、あんなは男性のテーブルにアイスとホットの二つの紅茶が並んでいることに気づく。「アイスとホットの紅茶があるからもう一人いらっしゃいますよね」と尋ねると、男性は一人で両方を楽しむのだとごまかした。
「アイスはシロップなしなのにホットには砂糖を入れるなんて」と感心したあんなに、男性はこの店の紅茶が美味しいと聞いて「列車を乗り継ぎはるばるとやってきたのさ」と付け加える。この一言が決め手になった。あんなが「犯人はあの人だ」と気づくまでの流れは、さりげない会話の中に矛盾を仕込んだ見事な推理パートだった。
あんなの推理はこうだ。たいら店長に尋ねたとき、店長は「マコピョンってなんだい」と聞き返した。この街の人でさえ知らない新しいマスコットの名前を、遠くから来たはずの男性はすぐに受け止めていた。「着ぐるみだとも言ってない」「ただマコピョンって言っただけで見てないって言った」という指摘は、まさに名探偵の観察力だ。はるばる遠くから来たという言葉が、かえって嘘を暴く証拠になった。
ウソノワールが明かした素顔
嘘を跳ね返したあんな
正体を見破られたウソノワールは、嘘を本当にする力をあんなに向け、自分たちを逃がすように命じる。しかし、あんなは苦しみながらも「嫌だ」と叫び、その力を振り払った。信念だけで力を跳ね返したことに驚くウソノワールに、あんなは自分は嘘をつかないからだとまっすぐに答える。
前にもあんなは同じようにウソノワールの力を跳ね返している。嘘をつかないという信念そのものが、嘘を本当にする力への抵抗になっているという構図は、この作品のテーマを象徴するものだ。そして、この「嘘をつかない」という言葉に、ウソノワールが意外な反応を見せる。
忘れられた種族
ウソノワールは、なぜ自分がこの姿なのかを語り始める。「妖精は人に変化できる」「若き妖精は変化できぬが」「歳を重ねれば人に変化することが可能」。妖精は年を重ねれば人の姿になれる。しかし「だが、私にはその能力が欠けていたのだ」。ウソノワールは人の姿になることができず、人間に紛れることもできないという。
さらにウソノワールは、自分たちを「忘れられた種族であり、誰にも見向きもされぬのだ」と語る。「私には居場所が、舞台がない」「ならば、作るしかなかろう」。その答えが、嘘で覆われた世界だった。ウソノワールの目的が、単なる支配ではなく自分の居場所と舞台を作ることだと明かされたのは、物語の大きな転換点だろう。
これまで謎めいた存在だったボスが、実は誰にも見向きもされなかった孤独な妖精だった。その事実は、敵でありながら同情を誘うものだ。そう考えると、これまでの行動の意味も少し違って見えてくる。
鏡に映る敵の姿とお母さんの教え
強化されたハンニンダー
チュチュから逃げ出したウソノワールたちは、マコトジュエルを回収して引き上げようとする。しかし、あんなたちは公園で待ち構えていた。目立つ着ぐるみで動けば目撃情報があるはずなのに、ここで足取りが途絶えた。「だからこの公園のどこかに隠したと推理したの」という読みが、みくるの聞き込みとつながっている。
戦いでは、ハンニンダーが明らかに強くなっていた。ハンニンダーにも手が加えられていると言われるとおり、その攻撃には「シャドウの力だ」という声が上がるほどの重さがあった。敵の側もまた本気で強化を重ねているという緊張感が、戦いの迫力を一段上げていた。
それでもミスティックとエクレールの援護を受け、アルカナがプリキュア アルカナホワイトリリーで浄化する。くれあとるるかが仲間として並び立つ姿に、これまで積み重ねてきた絆が感じられる場面だった。
「お前と同じだ」
戦いの中で、ウソノワールはあんなに語りかける。「全てを嘘に変える力は」「短い時間しか使えない」「人の姿にもなれない」「いわば私は」「嘘をつけない」「お前と同じだ」。嘘を本当にする力を持ちながら、自分自身は嘘をつけない。だからこそ嘘で世界を覆おうとする。ウソノワールの言葉には、ひねくれた理屈の中に切実な孤独がにじんでいた。
戦いの最中、鏡に映るウソノワールの姿を見つめる演出も意味深だった。嘘をつかないあんなと、嘘をつけないウソノワールは、鏡合わせの存在なのかもしれない。正反対に見えて、実はとても近いところにいる。その気づきが、あんなの心に小さな影を落とす。
一方で、あんなには揺るがない支えがある。「お母さんに教えてもらったの」「自分で一歩歩き出すって」「一歩の勇気が」「答えになるって」。予言や書物に頼るウソノワールに対し、あんなは母の教えを胸に自分の足で進もうとする。ウソノワールが「お前が母の教えを信じるように」「私も未來自由の書を信じる」と返したのは、二人の違いをはっきりさせる言葉だった。
新たな予言とこれからの物語
時を越えし者をあるべき場所へ
逃げ延びたウソノワールのもとに、新たな予言が現れる。「真の道を照らす4つの光あらわる」「光は時をこえし者をあるべき場所へと還す灯火となる」。時を越えし者とは、2027年からやってきたあんなを指しているように読める。四つの光が何を意味するのか、あんなが元の時代へ帰る日が近づいていることを予感させる予言だった。
予言の言葉は難解だが、四つの光という数字はどうしても気になる。あんな、みくる、くれあ、るるかの四人なのか、それとも別の何かなのか。いずれにしても、この予言は物語が終盤へ向かう合図のように響いた。楽しい日常が続く一方で、別れの気配が少しずつ近づいている。
嘘と真実は等しい
事件は解決し、依頼人の江藤教恵も喜んでくれた。けれど、あんなの頭からはウソノワールの言葉が離れない。「全てが嘘で覆われれば嘘が真実となるのだ」「嘘と真実は等しい」。嘘をつかないことを大切にしてきたあんなにとって、この言葉は簡単には受け流せないものだった。
それでも、あんなは前を向く。抜けないリングも、難解な予言も、ウソノワールの孤独も、すべてはこれから向き合っていく謎だ。一歩の勇気が答えになるという母の教えは、そのままスターキラリングブローチのリングを抜く鍵にもつながっていくのかもしれない。
ギャグのようなティータイムから始まり、敵のボスの素顔に迫り、そして別れの予感まで描いた一話だった。ウソノワールを単なる悪役ではなく、居場所を求める一人の妖精として描いたことで、物語はさらに深みを増している。あんなとウソノワールの鏡合わせの関係がどこへ向かうのか、これからの展開を見守りたい。




関連作品:


































































コメント