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『魔入りました!入間くん 第4シリーズ』第22話の副題は「傲慢の歌姫」。アクドル大武闘会の最終種目はライブで、ジャンルはギャリーの得意なロックに決まる。くろむの秘策は「我々は可愛いで勝つために」「可愛いを捨てます」という一言だった。ライブのあと、ギャリーは相手の成長を見落としていたと認める。そのうえで最後に出てくるのが「お前ごと奪えばいい」である。




可愛いで勝つために、可愛いを捨てる
公式サイトのあらすじは、ギャリーがロックを選んだあと「真っ向勝負ではとても太刀打ちできないと思ったくろむは」と書き、その先を秘策とだけ伏せている。第22話は、その秘策の中身を見せる回だった。
秘策は、自分の武器を先に手放すこと
作戦会議で、くろむが最初に言うのが「我々は可愛いで勝つために」「可愛いを捨てます」。続けて「ロックでギャリーに勝つためには」「見たこともないような」「とてつもない可愛いを見せなきゃ」「だからまず」「妖艶でかっこいい全開で行くの」「それが作戦」。
第19話の締めでくろむは「可愛いは全てに勝るのよ」と言い、第21話の締めでギャリーは「かっこいいはかわいいに勝る」と証明してみせると言い返していた。くろむはその勝負を受けて立つのではなく、相手の土俵にいったん入ってから可愛いを見せる道を選んだ。可愛いを捨てるのは、可愛いで勝つための遠回りだった。
「できることは全部やる」
そのための段取りは総がかりである。「アイデアはどんどんちょうだい」「機材も衣装も」「コネもお金も」「パフォーマンスも」「できることは全部やる」。楽器の話になると「ギター」「教えてもらえれば気合で」という声まで出て、イルミも「僕もできることは全部したい」と応じる。
第21話のくろむは、一人で衣装や小道具の話を進めて、仲間の声が届かなくなっていた。それが今回は「アイデアはどんどんちょうだい」から始まっている。秘策の中身より先に、チームで作るという形のほうが変わっているのが大きいと思った。
「最高にキャワワなロック」
本番でチームデビムスが出てくると、「デビムスといえば可愛いというイメージでしたが」「これは意外」という声が上がる。ギャリーは「格好だけロックにしても」「あたし様には勝てないぜ」と構えるが、返ってくるのが「最高にキャワワなロック」「聞かせてやるぜ」だった。
かっこいい格好のまま、口にするのは「キャワワ」。見た目はロックに寄せても、言葉だけは可愛いの側に残している。捨てたのは衣装と音の可愛さで、看板までは下ろしていない。
ギャリーのロックには、順番も同じ曲もない
先に歌うのはギャリーである。「あたし様が歌いたいときに歌う」と言って、順番を待たずにマイクを取る。ロックはギャリーの得意分野で、公式あらすじが言うとおり、ジャンルを選ぶ権利を取ったのもギャリーだった。
持ち歌は一曲、同じ歌は二度とない
説明によれば、「ギャリーには持ち歌が1曲しかない」。正確には全部の曲が同じタイトルで、デビューのときも用意された曲を作り替えて歌ったという。段取りを無視された側の抗議に、返ってくるのが「ギャリーは他のアクドルとは違う」「かっこいいアクドルなんです」「だからあれでいい」。
そして中身は「即興ロック」。曲名はひとつなのに、同じ曲は二度と歌わない。名前を固定して中身を毎回変えるやり方は、看板を守ったまま中身を入れ替えるくろむの秘策と、ちょうど裏返しの関係になっている。
あとに歌うチームがいなくなる
ギャリーの歌のあと、実況は「順番などない」と押し切られ、ほかのチームからは「あんなの先にやられて」「勝ち目なんてあるわけないじゃない」という声が出る。先に歌うことが、そのまま相手の出番を消す手段になっている。
順番を待たないのは乱暴に見えるが、ギャリーにとっては、自分の後に何も残さないための段取りでもある。そこへ乱入するように出てきたのが、チームデビムスだった。
「でもごめんね」「私はわがまま」
デビムスの歌を受けて、ギャリーは「ロックで勝負に出た度胸は褒めてやる」「だがな」と前置きし、「その程度じゃあたし様を絶対に超えられない」と言い放つ。そこに重なるくろむの歌が、「あなたはかっこいい」「でもごめんね」「私はわがまま」。
かっこいいを認めてから、わがままを通す
くろむはギャリーのかっこよさを否定していない。先に「あなたはかっこいい」と認めて、そのうえで「私はわがまま」と自分の側を通す。最後は「一緒に踊れ」。かっこいいと可愛いのどちらが勝つかという問いに、どちらかを下ろさないまま答えている。
ギャリーの側から見れば、度胸は褒めても、超えられるとは思っていない。その相手に向かって、くろむは勝ち負けの前に「あなたはかっこいい」と言ってしまう。相手の土俵で戦いながら、相手の良さを歌詞の中で先に認めるという順番が、この歌の強さだと思った。第19話から続いてきた「かっこいい」と「可愛い」の張り合いは、ここで勝敗ではなく並べ方の問題に変わっている。
優勝チームとは別に、二人を表彰する
結果発表では、実況が「特に今大会を盛り上げた2人のアクドルを」「優勝チームとは別に表彰したいと思います」と切り出し、MVAとして強欲と傲慢の二人が並ぶ。「今大会は彼女たちのためにあったと言っても過言ではない」。
優勝は「文句なしのトップアクドルチーム」としてチームデビムスに決まり、「しかしやったなくろむ」「優勝だぞ」に、くろむは「みんなのおかげよ」と返す。副題の「傲慢の歌姫」は、この表彰で並んだ二人のうち、くろむの側の呼び名である。わがままを通して勝った人に、傲慢の字が当てられている。
追いかける側は、相手の成長を見ていなかった
表彰のあと、ギャリーがくろむの前に立つ。ここで出てくるのは負け惜しみではなく、見落としの告白だった。
「すっぽり抜けちまってた」
ギャリーは、自分を磨くことにばかり必死だったと振り返り、「お前が成長してることなんて すっぽり抜けちまってた」と認める。そのうえで「やっぱりお前は最高の女だった」「だから絶対振り向かせてみせる」「好きだよ」。くろむの答えは「知ってるわ」だった。
第21話の回想で、ギャリーに事務所を出ろと言い、もっと輝いて自分を超えてみせてと突き放したのはくろむだった。追いかける側は自分を磨くことだけを見て、追われる側も同じだけ伸びていることを見ていなかった。「知ってるわ」の短さは、その差をずっと分かっていた人の返事に聞こえた。
遅れてきた理由は、相手の優勝祝い
表彰式に遅れてきた理由をくろむに聞かれて、ギャリーは「お前の優勝祝いの準備だよ」と答える。優勝したら結婚すると言っていた人が、相手の優勝を祝う準備をしていた。勝ち負けとは別に、くろむが勝つところまで込みで欲しがっていたのだと思う。
前髪で隠れていた目の色
第22話は、ライブの前の小さな場面から始まっていた。「よかったねチマちゃん」「お姉ちゃんと話せて」と声がかかり、続いて「前髪で隠れてよく見えなかったけど」「チマちゃんの目」「薄く氷が張ってる水みたいで」「すごく綺麗」。くろむと比べて「チマちゃんの方が水色に近いんだね」と言い、最後に「知らなかった」とつぶやく。
近くにいても、隠れていたものは見えていない。冒頭のこの一言と、ギャリーの「すっぽり抜けちまってた」は、同じ種類の見落としを言っている。いちばん近くで張り合ってきた相手の変化ほど見えにくいという話を、第22話は冒頭と表彰のあとの両方に置いていたのだと思う。
強欲は「お前ごと奪えばいい」と言う
月越しを待つあいだ、くろむはイルミに「島の時もライブの時もまたたくさん助けてもらっちゃったね」「あなたを頼って本当によかった」「ありがとう」と礼を言う。そこへ割り込むのがギャリーの「なに あたし様に許可なくいちゃこらしてんだお前ら」だった。
結婚の話を、足し算で解く
ギャリーは「イルミがいい女だってのはよ」「くろむが結婚を決めるのも分かるぜ」と認めたうえで、「お前もあたし様の嫁にしてやろう」と言い出す。理屈は「くろむがお前と結婚するなら」「お前ごと奪えばいい」。「本命はくろむだが」と断り、「見ろ」「反対側があいている」とまで言う。
第21話で、くろむはギャリーを「欲しいものは必ず手に入れる強欲な大富豪」と言い表していた。取り合いになるなら、相手ごと手に入れればいい。MVAで強欲の名を背負った人らしい答えで、引き算の選択肢が最初から無い。
怒っていないと、敬語で言う
その横で、くろむの様子が変わる。何を怒っているのかと聞かれて「怒ってませんが」、なぜ敬語なのかと言われて「前からこうでしたが」。欲しがられる宝石の側が、取り合いの外側で機嫌を損ねている。わがままで勝った歌姫の、いちばん分かりやすいわがままだった。
まとめ:夢だと思った優勝は、夢ではなかった
月越しのカウントダウンのあと、場面は朝に変わる。目を覚ました入間は「なんか、すごい夢を見た気がするな」「僕がアクドルで優勝して」とつぶやく。夢だと思ったその優勝は、家では引き伸ばしたポスターになって待っていた。
可愛いを捨てた回に、残ったもの
第22話は、可愛いで勝つために可愛いを捨てる作戦から始まり、かっこいいを認めたうえで「私はわがまま」と歌うライブに着地した。捨てたのは衣装と音で、わがままは一つも捨てていない。副題の「傲慢の歌姫」は、その通し方に付いた名前だと思った。
大武闘会編は、脚本が4話とも同じ人
公式サイトの各話スタッフによれば、第22話は脚本が井上美緒、絵コンテと演出が辻橋綾佳である。大武闘会編の4話(第19話から第22話)は、絵コンテと演出が毎回違う一方で、脚本はすべて井上美緒が担当している。大会そのものは月越しの風物詩で、ライブのあとは「月越しのカウントダウンが始まるまで」の時間として描かれた。
一人の脚本で4話を通したからこそ、第19話の「可愛いは全てに勝るのよ」と第21話の「かっこいいはかわいいに勝る」が、第22話の「一緒に踊れ」にまっすぐつながったのだと思う。勝負の言葉を毎回少しずつずらしながら、最後に両方を並べる着地まで、最初から設計されていたように見えた。
この先の見どころ(予想)
ここからは予想である。くろむとギャリーの勝負はひと区切りついたが、「お前ごと奪えばいい」という宣言は大会の外まで持ち越された。入間にとっても、アクドルとしての優勝が夢ではなかったことを、家族にどう受け止められていくのかが気になる。イルミとして過ごした時間が、入間本人の学校生活にどう返ってくるのかにも注目したい。




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