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第3期の幕開けとなる第49話の副題は「蝗」。子の一族の騒動を終え、猫猫は花街の薬師に、壬氏は皇弟として政の場に戻った。楼蘭が残した蝗害の警告、趙迂が口にした虫がスカスカだと不作という言葉、そして砦から流れてきた一冊の図説。日常の小さな違和感が、国を揺るがす危機へとつながっていく第3期という新章の始まりを、花街と宮中の両方から振り返る。




第49話の副題は「蝗」
第49話の副題は「蝗」。第3期の幕開けとなる回で、公式のあらすじは「子の一族の反乱の後始末も落ち着き、後宮の毒見役を解任された猫猫は、花街の薬師の生活へと戻っていた」と始まる。一方で、皇弟であることを公にした壬氏は正式に政に参加し、楼蘭から最後に託された「国を襲う災害の予兆」に頭を悩ませていた。第2期までの出来事をそのまま引き継ぎながら、新しい騒動の種がまかれる回だった。
楼蘭が残した警告
冒頭、壬氏は「楼蘭から渡された紙に書かれていたことだ」と、ある災害の話を持ち出す。それが蝗害だった。「今蝗害が起きると」「間違いなく」、民の矛先は国を統治する帝に向けられる。子の一族の騒動を終えた壬氏の前に、すぐさま国全体を揺るがしかねない次の難題が置かれている。
楼蘭が最後に残したものが、そのまま第3期の物語を動かすきっかけになっているのが印象的だ。第2期で姿を消した楼蘭の存在感は、こうして物語の中に残り続けている。
名持ちの一族と皇后のお披露目
子の一族が滅んだ結果、宮中の勢力争いはこれから大きくなる可能性が高い。ここで説明されるのが、名持ちの一族という仕組みだ。帝から、その一族の者の名にしか使えない字を与えられた者たちのことだ。建国時の三人の家臣の名に十二支の字がついていたことから、帝に認められた一族にはその字が当てられるようになったという。
そして今回、玉葉妃は皇后となる。父の玉袁の一族も、羅の一族と同じ名持ちの一族へと昇格するだろうと語られる。「婚姻も政の手段だ」。華やかなお披露目の裏で、一族同士の力関係が静かに組み替えられていく。異民族の血を引く妃が皇后になることを快く思わない声も聞こえ、この先の火種を予感させた。
お披露目の宴には、羅漢の姿もあった。「半月ぶりに」鳳仙の体調がよいことを喜ぶ様子や、席を巡る陸孫とのやり取りなど、緊張感のある宮中の場面のなかに、いつもの羅の一族らしい空気が混ざっていたのも楽しい。
花街に戻った猫猫
一方の猫猫は、後宮を離れて花街の薬師の暮らしに戻っていた。
朝餉は蝗の煮つけ
ある朝、猫猫は緑青館のやり手婆に呼ばれ、趙迂とともに朝餉をごちそうになる。出てきたのは、親方さんからの土産だという蝗の煮つけだった。「今年は不作で泣き付かれたらしい」。親方さんは商売で穀物を扱っており、売れ残った蝗を高級品の砂糖で煮詰めて保存していたのだ。
猫猫は「最悪」と顔をしかめながらも口にするが、趙迂は「あんまりおいしくないよこれ」と正直に言う。さらに「スカスカしてるけど食べられないことはないよ」。何気ない子供の一言が、この回の謎の入り口になっているのが、薬屋らしい始まり方だった。
「虫がスカスカだと不作だって聞いた気が」
店先でも趙迂は「絶対まずいよあれ」「今年は作物もうダメだな」と口にする。猫猫は聞き逃さず、「今なんて言った」と問い詰める。けれど趙迂は「覚えてないよ」「なんか虫がスカスカだと不作だって聞いた気が」と、はっきりしない。
趙迂は一度死にそして生き返った。その影響で体に麻痺が残り、記憶の多くを失っている。失われた記憶の中に、国の行く末を左右するかもしれない知識が眠っている。猫猫が「思い出せ」と迫るのも無理はない。
趙迂の絵の才能
何か買ってくれたら思い出せるかも、とちゃっかりした趙迂が欲しがったのは、紙と筆だった。猫猫も意外に思うなか、趙迂は緑青館の前で妓女たちの似顔絵を描き、しっかりお金まで取り始める。妓女たちに「本当に上手ね」とほめられるほどの腕前だ。
もっとも、店の前での商売にはやり手婆が黙っていない。「場所代は1割で勘弁してやる」。抜け目のないやり手婆と、ちゃっかりした趙迂のやり取りには思わず笑ってしまう。
「花街は綺麗なだけじゃない」
別の場所で続けると言い出した趙迂を、緑青館の男衆の右叫が止める。病にかかった女を指して「肉塊になりたければ好きにしろ」と脅し、「花街は綺麗なだけじゃない」「その分闇も濃い街なんだ」と言い聞かせる。
「金を持ったガキがいたら」「殺してでも奪おうなんてやつはゴロゴロいる」。華やかな緑青館の外に広がる花街の現実を、子供にも分かる言葉で突きつける右叫の厳しさは、趙迂を守るための優しさでもある。右叫は猫猫が生まれる前から緑青館にいる古株で、やり手婆の信頼も厚い人物だ。
砦から流れてきた図説
趙迂が描いた一枚の絵が、物語を大きく動かす。
二匹の蝗
「ちょっと思い出したんだ」と趙迂が描いたのは、二匹の蝗だった。「上が普通の時のイナゴでさ」「確かもう一つが不作になる時のイナゴだった気がする」。
蝗害は「国を滅ぼす天災の一つ」。蝗の大群はあらゆるものを喰らい尽くす。幸い、今の帝の統治になってから蝗害は起きていない。だが子の一族の反乱によって多くの者が処刑された今、蝗害が起きれば、それを子の一族を滅ぼした天罰だと捉える者も出てくる。自然の災害が、そのまま政治の危機に直結してしまう。猫猫は「関係ない」と自分に言い聞かせながらも、考えるのをやめられない。
見覚えのある本
趙迂の絵を見て、猫猫は前にも似た絵を見たことがあると思い出す。立ち寄った本屋で見つけたのは、間違いなく見覚えのある本だった。「砦は禁軍により封鎖されたはず」「砦の中にあった本がなぜ市中に出回っているのか」。押収された品を誰かが横流ししているのではないか。
猫猫が頼ったのは、李白だった。ぶつぶつ言いながらも、本を売ろうとしていた男をしっかり捕まえてくる。「ま、嬢ちゃんの頼みだしな」と言いつつ、見返りに白鈴の時間を求めるあたりも李白らしい。
「アメとムチは使いようだ」
捕まった男は、猫猫の顔を見て反応する。砦で見張りをしていた男だった。思わぬ再会に、猫猫は容赦なく相手を追い詰めていく。「お前があの場にいたことを話してもいいのか」。
一方の李白は「お前さん腹減ってないか」と食べ物を差し出し、「悪い人間じゃないと思うがね」と男をかばう。猫猫の詰問と李白の気づかい、二人の対応はまるで正反対だが、「アメとムチは使いようだ」と李白が言うとおり、結果的にはこの組み合わせが男の口を開かせることになる。
「これはイナゴじゃねえよ、バッタだ」
男は出された蝗の煮つけを見て、「これはイナゴじゃねえよ、バッタだ」と言い切る。農民はイナゴとバッタを分けて呼び、「イナゴは食えるが、バッタはスカスカしてまずい」。猫猫は「最悪、バッタが混じってた」とうなだれる。
そして男は、「稲穂よりバッタがたくさん増えた年の翌年は」「虫の害がひでえんだよ」と続ける。趙迂の言っていたのと同じだ。子翠も同じことを言っていたという猫猫の回想が重なり、ばらばらだった手がかりが一本の線でつながっていく。
さらに男は、かつて不老不死の研究をしていた薬師の老人に飯を運んでいたこと、その老人が「どうやったら蝗害を起こさずに済むか」も研究していたことを明かす。砦から本を持ち出したのも、本当は売りたくなかったからだという。
動き出す宮中
猫猫は、確証はないけれど壬氏に伝えておいた方がいいかと考える。その頃、宮中でも別の動きが始まっていた。
「約束を果たす時が来たようだ」
ラストでは、皇帝が「約束を果たす時が来たようだ」と口にし、「月にもそろそろ」「華を選ばせようと思う」と続ける。そして馬閃が「壬氏様、そろそろ」と声をかける。
皇弟であることを公にした壬氏には、これまでとは違う立場の重さがのしかかる。蝗害という国の危機と、壬氏自身の身の振り方。二つの問題が同時に動き出すところで、第49話は幕を閉じた。
新しいOPと、よみがえる面影
第3期から新しくなったオープニングも、見どころの一つだった。中華風の世界観に寄り添った映像のなかに、これまでの登場人物たちの姿が次々と映し出される。
物語の途中で子翠の名が出てくるだけで、第2期の出来事が鮮やかによみがえる。新章の始まりでありながら、過去の積み重ねがそのまま物語の土台になっているのが、この作品の強みだと改めて感じた。
まとめと考察
第49話は、第3期の新しい物語の始まりとして、蝗害という大きなテーマを提示した回だった。
小さな違和感から大きな危機へ
蝗の煮つけの味、趙迂の何気ない一言、一枚の絵、本屋で見つけた本。日常の小さな違和感を猫猫が拾い集めていくと、その先に国を揺るがす危機が見えてくる。後宮の事件を解いてきたのと同じやり方で、今度は国全体の問題に向き合うことになりそうだ。
子の一族の影
趙迂、砦の見張りの男、薬師の老人の研究、そして子翠の言葉。第2期で幕を下ろしたはずの子の一族の物語が、形を変えて第3期にも影を落としている。子の一族は根絶やしにされたことになっている以上、趙迂の正体が知られることは避けなければならない。その緊張感も、これからの物語を引き締めていくはずだ。
今回は大きな事件が起きるわけではなく、静かに情報が積み重なっていく回だった。それでも、蝗の味の違い、虫の中身がスカスカかどうか、イナゴとバッタの呼び分けといった具体的な手がかりが一つずつ示されるので、見ていて飽きることがない。薬と毒の知識で謎を解いてきた猫猫が、今度は虫と作物の知識を足がかりに国の危機へ近づいていく。その過程を丁寧に追っていく作りは、第1期から続くこの作品の持ち味そのものだと思う。
李白や右叫、やり手婆といった花街の面々が生き生きと描かれているのも、新章の始まりとしてうれしいところだった。後宮の外にも、猫猫を支える人たちの暮らしがしっかりとある。華やかな宮中と、たくましい花街。その対比が、物語にいっそうの奥行きを与えている。
皇后のお披露目、名持ちの一族の昇格、壬氏の立場の変化と、宮中の勢力図も大きく動き始めた。花街と宮中、二つの舞台で同時に進む物語が、どこで交わっていくのかが楽しみな第3期の幕開けだった。




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