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くれあ一人の事務所に飛び込んできたのは、パリ行きのチケットを狙うファントムの予告状。メイクの勉強という長年の夢を守るため、くれあはきらめきコピーで正面突破を図るが、デッチ・アゲインは自分の力の謎に揺れる心を突いてくる。ジェット先輩の飛行機の話、仲間たちの言葉、そして謎は謎のままでもいいというくれあの答えまで、第38話を振り返る。




第38話「くれあの答え」は、くれあが自分の力の謎と向き合う回
『名探偵プリキュア!』第38話「くれあの答え」は、前話のラストで示された新たな予言を受けて始まる、くれあにスポットを当てたエピソードだった。なぜ自分には忘れられた種族の力があるのか。答えの出ない問いを抱えたまま、くれあは一人で依頼に向き合うことになる。パリ行きのチケットを狙う怪盗団ファントム、デッチ・アゲインの揺さぶり、そして仲間たちの言葉。探偵として、パティシエとして、そして大王としての自分をどう受け止めるのか。くれあらしい答えの出し方が、とても気持ちのいい一話だった。
るるかにとっての大切な日
冒頭、事務所からみんなが出かけていく。あんなとみくるに続いて、るるかまで出かけると聞いて驚くくれあ。るるかの理由は「限定発売のアイスを買いに行くの」。そして「すごく大切な日」。アイスが大好物のるるからしい真剣な表情に、思わず笑ってしまった。いってらっしゃいと見送ったあと、さっきまでにぎやかだった事務所が急に静かになる。この静けさが、そのまま一人で考え込むくれあの心の中を映しているようでもあった。
一人になったくれあが思い浮かべるのは、自分に忘れられた種族の力があるという事実だった。スターキラリングブローチのリングは相変わらず抜けず、仕組みも分からない。平和な一日になるはずだったところへ、助けを求める依頼人が飛び込んでくる。るるかの大切な日、という小さなエピソードから始まって、くれあ一人の事件へと流れていく導入が自然だった。
パリ行きのチケットを守れ
目黒郁恵さんの依頼
依頼人はメイクアップアーティストの目黒郁恵さん。以前、しるくさんを担当したことがあり、そのときに怪盗団ファントムからイヤリングを守った話を聞いて事務所を訪ねてきたという。届いたのは、本日午後5時発のパリ行きのチケットをいただく、というファントムの予告状だった。なぜ怪盗団が自分のチケットを狙うのか、と戸惑う郁恵さんに、くれあはチケットを見せてもらう。
郁恵さんにとって、パリ行きは観光ではない。「私パリにメイクの勉強に行くのが長年の夢だったんです」。ずっとお金を貯めて、ようやく手に入れたチケット。そこには郁恵さんの夢と思いが詰まっていて、だからこそマコトジュエルが宿り、ファントムに狙われた。夢を形にした一枚の紙きれを守るという依頼は、名探偵プリキュアらしいまっすぐな事件だった。落ち着かない郁恵さんが「私 気合を入れる時にはいつもメイクを直すんです」と洗面所へ向かう姿にも、仕事への誇りがにじんでいた。
デッチ・アゲインとトップオブリリー
外の様子を調べに出たくれあの前に現れたのは、デッチ・アゲインだった。予告した時刻はまだ先だと言い、せっかくだから少し話をしようと持ちかける。話題はガーデンに咲くトップオブリリー。「この花は大昔」、「忘れられた種族と人間の絆によって生まれたそうだ」。忘れられた種族がまだ人間に忘れられていなかった頃に作られた貴重な花で、くれあとも何か縁がある百合だという。
さらにデッチ・アゲインは、「トップオブリリーはもうここにしか残っていない」と続ける。ロンドン事務所のガーデンに咲いていた百合は、事務所の壊滅とともにすべて散ってしまった。来年も花開くといいね、枯れてしまったら終わりだから、という言葉は、穏やかな口調のぶん余計に不気味に響く。そして「さすがは大王というところか」。どうして力を使えるのかも謎だが、とくれあの痛いところを突いてくるあたり、相手の心をよく見ている敵だと感じた。
謎は謎のままでも
ジェット先輩と飛行機の話
ファントムは事務所を取り囲み、すべての出入り口を見張っている。けれど見ているだけで、何も仕掛けてこない。郁恵さんの飛行機が飛び立てば、夢への片道チケットはその役目を終え、マコトジュエルもチケットから離れてしまう。だからどちらにとってもタイムリミットは同じ。動けない我慢比べの時間に、くれあは「確かに私は大王」、「でもどうやって力を得たのかもわからない」と胸の内をこぼす。
そこでジェット先輩が持ち出したのが、飛行機の話だった。飛行機がどうして飛ぶか知っているか。翼があるから、と答えるくれあに、実は飛ぶ原理については詳しく分かっていないらしいと返す。根本的な仕組みは分かっていても、流体力学はとても複雑で、「そういう意味で空気の挙動をすべて解き明かしたわけではない」。それでも「それでも飛行機はとび みんなの笑顔を運ぶ」。
そして「謎は謎のままでも それだけは事実だ」。全部の謎が分からなくても、郁恵さんと夢をパリまで運ぶことはできる。普段は発明ばかりのジェット先輩が、こんなにもまっすぐくれあの背中を押す場面は珍しく、年長者らしい頼もしさを感じた。謎を解くことが仕事の名探偵に、謎のままでいいと言う。この逆説こそが、第38話の芯になっていた。
きらめきコピーの作戦
メイクを直して気合いを入れた郁恵さん。けれど時計を見れば、もう時間がない。そのためのメイクだった、という言葉どおり、ここからは攻めに転じる。あんなたちに連絡はしたものの、まだ戻ってこない。待っていられないと判断したくれあは、ひらめきとともに正面突破を選ぶ。「きらめいた!」の一言から、くれあの反撃が始まった。
くれあが使ったのは、きらめきコピーの力。くれあと郁恵さんのコピーを次々と飛び出させ、見張っていた幹部たちを引きつける。ニジー、アゲセーヌ、ゴウエモンがそろってコピーに飛びつき、まんまと引っかかる姿はコミカルで楽しい。その隙に本物の二人は裏口から抜け出す。ただし、デッチ・アゲインの目だけは欺けなかった。チケットは奪われ、そこからハンニンダーが生まれる。
キュアエクレールの答え
ひとりぼっちじゃない
郁恵さんの夢は渡さない。そう言ってキュアエクレールに変身するくれあ。「解き放て! 内なる真実の香り」、そして「私の答え 示しましょう」。エクレール一人で見せる変身バンクは、やはり美しく見ごたえがあった。けれど、シャドウの力で強化されたハンニンダーは手ごわく、エクレールは追い詰められていく。
デッチ・アゲインは容赦なく言葉を浴びせる。「自分の力も分からない」、「自分が何者かも知らない」、「誰も何も知らない 謎は謎のまま」。そして「君は ひとりぼっち」。力の謎を突きつけて、心まで折ろうとする揺さぶりは、冒頭からくれあが抱えていた不安をそのままえぐるものだった。他者を追い詰めていくときのデッチ・アゲインは本当に楽しそうで、敵としての存在感がぐっと増していた。
そこへ駆けつけたのが、あんな、みくる、るるかの三人だった。「私たちがいる」。キュアアンサーとキュアミスティックも変身して並び立つが、相手は「こんなに強いなんて…」と驚くほどの強さ。「そう これがシャドウの力」と応じる場面もあり、敵の手ごわさが際立つ。それでも仲間たちは、エクレールにもらったものを一つずつ言葉にしていく。寂しくなったときにおいしいケーキを作ってくれたこと、ウソノワールから助けてくれたこと。「エクレールがいたから」、「私は今ここにいる」。
フライング・インフィニティ
「それでは何の答えにもなっていない」と切り捨てようとするデッチ・アゲインに、エクレールは答える。すべての謎は分からないし、この先も分からないかもしれない。それでも確かなことは、自分の心が教えてくれた。名探偵を名乗る者が、「謎が謎のままでもいいと」、「答えが出なくてもいいと」。探偵も、パティシエも、大王も、自分にとって心は一つ。「それを仲間たちが教えてくれた」。
「心の真実」、「それはみんなを笑顔にすること」。たとえこの力の謎が謎のままだったとしても、みんなを救う力になる。「それが私の答え」。その思いに応えるように、スターキラリングブローチの宝石の一つが光り出す。「これが私のアンサーよ!」から放たれた「プリキュア! フライング・インフィニティ!」で、ハンニンダーは浄化された。副題の「答え」が、そのまま技の名乗りにまでつながる構成は見事だった。
戦いのあと、「さっきのって スターキラリングブローチの力?」と驚く仲間たち。見せてくれるわね、さすがね、と声をかけられたエクレールは「世界一かわいい大王だからね」と笑ってみせる。大王であることを冗談めかして口にできるようになったこと自体が、くれあの答えの一部なのだろう。
第38話のまとめ考察
一つ目の光
チケットを取り戻した郁恵さんは、無事に飛行機に間に合った。「そのためのメイクだった」という言葉のとおり、気合いを入れた顔でパリへ旅立っていく。空港でブローチを見つめる一同の前で、「この輝き 何なのかしら」という問いにも、やはり答えは出ない。「謎は謎のままだ!」と頭を抱えるジェット先輩の姿で、第38話の主題がもう一度軽やかに繰り返されたのが面白かった。
けれど、原理が分からなくても事実は教えてくれる。四つある宝石のうちの一つが光ったのなら、残りの宝石が光ればリングも抜けるかもしれない。「リングも抜けるかもしれないでしゅ」というシュシュタンの前向きな言葉に、物語の大きな謎が少しだけ動き出した手応えがあった。前話の予言にあった四つの光とも重なるとすれば、あんな、みくる、るるかにもそれぞれの覚醒が待っているのかもしれない。
第38話は、謎を解くことが役目の名探偵が、あえて謎を謎のまま受け入れるという逆説を描いた回だった。ジェット先輩の飛行機の話、仲間たちの言葉、そしてくれあ自身の答え。分からないことを抱えたままでも、人を笑顔にすることはできる。その真実を自分の言葉でつかんだくれあは、これまで以上に頼もしく見えた。夢を守るためにそれぞれの覚醒が始まった今、四つの光がそろう日がますます楽しみになった。




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