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『ヤニねこ』第10話の副題は「ニャーもイベントを楽しむにゃ」。公式のあらすじは、そんな綺麗な言葉で誤魔化したい、何もかもを、と結ばれている。ヤクねことハメねこの滝へのドライブは、トイレと仕返しで崩れていく。大家は、あの日のチョコと猛禽類の恩返しに期待して、どちらにも裏切られる。シェアを名乗る侵入者、余命一年の冗談まで、名前と中身が最後までずれ続ける。




副題「ニャーもイベントを楽しむにゃ」と、あらすじの締めの一文
公式サイトのSTORYで、第10話の副題は「ニャーもイベントを楽しむにゃ」と出ている。公式のあらすじは、ヤクねことハメねこの滝へのドライブを紹介したあと、計画通りにいかないのはたぶん旅の醍醐味である、そんな綺麗な言葉で誤魔化したい、何もかもを、と結ばれている。
十本すべて「ニャー」で始まり「にゃ」で終わる
副題は、ニャーがヤニねこにゃ、から始まり、ニャーの後輩たちにゃ、ニャーの妹ちゃんはモテモテにゃ、と続いてきた。十本目の「ニャーもイベントを楽しむにゃ」も、同じ型を崩していない。題の上では、この回もヤニねこの一人称の話として始まる。
あらすじの締めは、毎回のツッコミ
この作品の公式あらすじは、毎回最後の一文で自分の書いた内容に突っ込んでくる。今回の締めは、そんな綺麗な言葉で誤魔化したい、何もかもを、だった。この一文が、そのままこの回の見取り図になっている。
総作画監督から、初めて松浦力の名前が外れた
公式サイトのスタッフ欄では、脚本があおしまたかし、絵コンテが米田光宏と高橋謙仁、演出が神山聖人、総作画監督が能海知佳とHAYUになっている。第1話から第9話まで、総作画監督には必ず松浦力の名前があった。第10話で初めて、松浦力の名前が総作画監督の欄から外れている。絵コンテが二人の名前で並ぶのも、十本でこれが初めてだ。
アイキャッチは加護亜依
公式サイトは、第10話のアイキャッチを加護亜依が担当したと告知している。第9話のぐんぴぃに続いて、この回のアイキャッチも作品の外から招いた一人が担当している。
滝へのドライブは、トイレと仕返しで崩れていく
前半は、ヤクねことハメねこのドライブになる。公式のあらすじが、こいつら、意外と運転免許、持ってます、と書くとおり、運転するのはヤクねこで、ハメねこは車内でカメラを回し始める。
相方はヤクちゃんだぜ
ハメねこは、相方はヤクちゃんだぜ、とカメラを回し、お前これ着くまでずっとやんのか、とあきれられる。行き先を聞かれて、ハメちゃん海行きたーい、と言い、だから水車の滝だよ、神奈川の、これ言うの3回目だぞお前、と返される。行き先の話が三回目になっている時点で、二人の話はもう噛み合っていない。
癒されたくて、滝へ
ヤクねこの目的は、滝がパワースポットらしくてさ、最近ちょっとカリカリしてっから、癒されたくて、というものだった。ハメねこは、照れ屋だから撮ると怒るんだよね、と茶化す。苛立ちを癒すために出かけたドライブが、その苛立ちの原因と一緒の車で始まっている。
ヤクと違って、トイレしないもん
お前トイレ行かねえの、この先トイレもコンビニもないぞ、と念を押されても、ハメねこは、行かなーい、ハメちゃん、ヤクと違ってトイレしないもん、と言い張る。返事は、あっそう、死ね、の一言だった。後の騒ぎの原因は、出発前のこのやりとりの時点で全部そろっている。
調べなかった私が悪いけど
着いた先で、ヤクねこは、まあ、調べなかった私が悪いけど、とこぼし、有名なパフェの店あるから、せめてそこ寄って帰るか、と切り替える。パワースポットで浄化されるはずだったイライラは、滝ではなくパフェで埋め合わせることになる。途中の、このイライラも浄化されるんだ、という期待は、ここで行き場を失っている。
だから、あんとき言っとけって
帰り道、ハメねこは、お腹痛い、トイレ行きたい、と言い出す。だから、あんとき言っとけって、我慢できねえの、と返され、無理、無理、絶対無理、と泣きつく。公式のあらすじが書いた、我が儘に耐えかねたヤクねこの仕返しは、ここから始まる。ほら、そこの草むらで、と車を止めたあと、ヤクねこはハメねこを置いて車を出してしまう。
ヒッチハイクの車は、口の中を見せろと言う
置いていかれたハメねこは、知らない人の車に乗る。どうしよう、この人さっきから全然喋んない、と怯え、あとはその、歩いて帰るね、と降りようとしたところで、口の中を見せろと迫られる。仕返しの行き着いた先が、誰にとっても笑えない怖さになっている。
悪かったよ、ちょっと楽しくなっちゃって
合流したヤクねこは、悪かったよ、ちょっと楽しくなっちゃって、とりあえず乗れよ、と謝る。徒歩にしては結構移動してたな、もしかしてヒッチハイクとかしてたりして、と聞かれて、ハメねこは、してない、と答える。一番怖かったことを、ハメねこは言わずに済ませている。
あの日のチョコは、チョコではなかった
大家の場面は、アパートの前から始まる。散歩の犬のふんの始末を押しつけられたところへ、ヤニねこがやって来る。
今日あの日だったにゃ
ヤニねこは、これやるにゃ、今日あの日だったにゃ、と包みを差し出す。大家は、お前似合わないことして、と照れ、ありがたくいただくかな、と受け取る。大家は「あの日」を、贈り物の日のことだと受け取っている。
甘いものは大好きだからやめられない
そんなに欲しいにゃ、と聞かれて、大家は、欲しくないって言ったら嘘になるかな、と答え、俺も歳を考えて節制しなきゃとは思ってるんだが、甘いものは大好きだからやめられないな、と続ける。強面の大家が、甘いものの前では正直になっている。この素直さが、次の場面で裏目に出る。
手作りの生チョコか
見た目への疑いを、大家は、このしっとり具合、手作りの生チョコか、と好意的に読み替える。ヤニねこは中身をそのまま言い当ててみせるが、大家は、でもちょっとベタだったな、と笑って流し、今花粉症で鼻詰まってるから味よくわからんかもだけど、と口に運んでしまう。正直に言われた本当のことを、大家は冗談として受け取っている。
外で食べるホットドッグ最高にゃ
中身が犬のふんだったと分かって、大家は、ふざけんなお前、何してんだ、と叫ぶ。そのそばで、ヤニねこは、外で食べるホットドッグ最高にゃ、と上機嫌だ。イベントを楽しんでいるのは、題のとおりヤニねこだけだった。
猛禽類の恩返しは、来なかった
次に大家が見つけるのは、鳥を捕まえたヤニねこだ。ここで大家は、また別の期待を抱く。
誰に決める権利があるにゃ
ヤニねこは、今から締めてホットチキンにゃ、と鳥を掲げる。チキンは鶏だ、いや食っちゃいけない鳥だろそいつ、と止める大家に、この鳥はいいとかこの鳥はダメとか、誰に決める権利があるにゃ、と言い返す。理屈だけ聞けばもっともらしい言葉が、鳥を食べるための口実として使われている。
これで晩飯食え
大家は、ほら、これで晩飯食え、代わりにそいつ解放してやれ、とお金を渡す。ヤニねこの返事は、これでメビウス買えるにゃ、だった。大家が晩飯のために渡したお金は、そのまま煙草に化けている。
あいつの目、何か強い意志を感じた
放たれた鳥を見送って、大家は、あいつの目、何か強い意志を感じた、まさかな、とつぶやく。夜、昼間助けていただいた猛禽類です、命の恩人のあなた様にお礼に参りました、と訪ねてくる姿が浮かぶ。大家は、いけない、もっと自分を大事にするんだ、と紳士的に断るところまで、自分で思い描いている。
なんてことあるはずないよな
その思い描いた場面は、なんてことあるはずないよな、の一言で閉じられる。恩返しは来ず、来てほしかったという期待だけが大家の側に残る。あの日のチョコに続いて、大家はこの回二度目の空振りをしている。
家賃の見回りで、大家は名前と中身の違うものに出くわす
後半の大家は、家賃を取り立てに部屋を回る。そこで出くわすのは、呼び方と中身がずれたものばかりだった。
才能椅子取りゲームみたいな世界
締め切り三日前の漫画家の達郎は、もうやだ、こんな才能椅子取りゲームみたいな世界、とこぼし、やめたい、でも田舎には帰りたくないよ、でも締め切りが、と行き詰まっている。漫画をやめたいのに、やめた先の居場所がないという迷い方になっている。
漫画で食えなきゃ、いっそこっちで
達郎は、手元の衣装を着て、これ着て一体何と戦うのよ、と自分に突っ込み、漫画で食えなきゃ、いっそこっちで食べていけないかな、と考える。そこへ、先生いるかい、と家賃の件で大家が顔を出し、私こんなふざけた格好で、と固まる。やめたい仕事の逃げ道として考えた格好を、よりによって取り立ての相手に見られてしまう。
窃盗ではなく、シェア
別の部屋では、見知らぬ男が、人々が独占をやめ、手を取り合い生きていくことが、この不安定な世を渡る生き方だと僕は思う、と語りながら、他人の冷蔵庫を開けている。お酒とつまみしか入ってないじゃないか、もちろん君の健康を気遣ってのことだが、と言いつつ、おつまみももらおうかな、と手を伸ばす。ニュースが、窃盗ではなくシェアだと言い張る男の逮捕を伝えると、この男は、他人のものを盗んでまで飢えをしのごうとする気持ちが、僕には分からないな、と首をかしげる。
妖怪とか猛禽類の精とか、いるわけない
家賃を取りに来た大家は、鍵もかけねえで、最近空き巣や変質者が多いんだから、と住人をたしなめ、住人が天井を見ているのに気づく。妖怪とか猛禽類の精とか、いるわけないだろうが、と笑い飛ばした直後に、天井の妖怪と鉢合わせする。自分の恩返しの空想を、自分の口で否定した直後に、本物の不審者が天井から出てくる。
嘘は、面白さの見本として重ねられていく
終盤は、ヤニねこがカンサイねこに持ちかける話になる。ここからは、嘘が次々に重ねられていく。
ニャーは癌で余命一年にゃ
ヤニねこは、話があるにゃ、と切り出し、ニャーは癌で余命1年にゃ、と打ち明ける。カンサイねこは、ネタは禁止や、もっとおもろいのを持ってこい、と突き返す。最初の嘘は、冗談にしてはいけない種類の嘘として、はっきり退けられる。
じゃあ禁煙するにゃ
次にヤニねこが出したのは、はい、じゃあ禁煙するにゃ、だった。ヘビースモーカーのヤニねこにとっては、禁煙の宣言がそのまま一番わかりやすい嘘になる。だったら関西、見本見せろにゃ、と今度はカンサイねこに振る。
うち、子供二人おんねん
カンサイねこは、せやけど、ま、自分がそこまで言うんやったら、うちとしてもやぶさかでないっちゅうか、と乗り、写真を見せて、うち、子供2人おんねん、と言う。ヤニねこが、みんなに教えるにゃ、と言い出すと、ちょ、待てアホ、お前が嘘つけ言うたんやろがい、とあわてる。写真は弟とのものだった。弟との写真を持ち歩いてるのは意外だったにゃ、と言われて、そこはいいやろ別に、と照れる。
やっぱり関西は面白いにゃ
ヤニねこは、やっぱり関西は面白いにゃ、と褒める。照れるやん、どうしたん急に、と喜ぶカンサイねこに、それも嘘だと明かし、おもろいこと思いついたから、春蘭借りるにゃ、と続ける。褒め言葉までが、次の嘘のための前置きだった。
妹子に届いた知らせと、綺麗な言葉の下にあるもの
最後の場面は、妹子の学校生活に移る。ヤニねこの「おもろいこと」は、妹子のもとに届く。
お姉ちゃんにお土産、何買おう
妹子は、来月修学旅行だなんてわくわくするね、お姉ちゃんにお土産何買おう、と友だちと話している。姉に振り回されてばかりの妹が、姉へのお土産を真っ先に考えている。
赤ちゃんできたにゃ
そこへ届いた姉からのメッセージには、赤ちゃんできたにゃ、父親こいつにゃ、と写真が添えられていた。春蘭を借りて仕掛けた嘘は、妹子を相手にしたものだった。妹子は、誰だ、と叫ぶしかない。
名前と中身が、最後までずれ続けた
手作りのチョコは犬のふんで、猛禽類の恩返しは大家の空想で、シェアは窃盗で、面白いという褒め言葉も、赤ちゃんの知らせも嘘だった。この回に出てきたものは、どれも付けられた名前と中身が違っていた。公式のあらすじが最後に書いた、そんな綺麗な言葉で誤魔化したい、何もかもを、は、この一話全体への一番正確な要約になっている。




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