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『ブチ切れ令嬢』第11話の副題は「偽りの金貨」。売上金にまぎれた偽金貨は精巧すぎて割に合わず、エリーは「他国からの帝国への経済攻撃」だと読む。出所は、エリーが王国に残してきたファンネル商会だった。エリーはダミーのエリザベス商会で罠を張り、コルトは「化けの皮は剥がれたぞ」と乗り込んでいく。最後の一言は、エリーの「いよいよ大詰めですわね」だ。




副題「偽りの金貨」は、音で見抜かれる
公式のあらすじは、金貨の音から始まる
第11話の副題は「偽りの金貨」。公式のあらすじは、売上金の金貨の音に違和感を覚えたエリーが、ルノアに鑑定を指示するところから始まる。本編でも、今月分の金貨を受け取ったエリーに、周りが「どうかされましたか」「金貨が何か」と声をかける。偽物は、目より先に耳で見つかっている。台詞で音の説明はされず、エリーの様子が変わる場面だけが置かれている。
「こんな材料が使われているわけないわ」
エリーは「ルノアはこの金貨を鑑定して」と指示し、ルノアのアイテムアナライズの結果は「金貨のものじゃないです」。エリーは「帝国金貨は金90%銀10%」「こんな材料が使われているわけないわ」と言い切る。「それってつまり偽金貨」。音で気づき、鑑定で確かめ、成分で言い切るという三段で、偽物が確定している。
精巧すぎる偽物は、割に合わない
エリーが引っかかったのは、偽物であることより出来の良さのほうだった。「でもこの偽金貨、精巧で手がかかりすぎているわ」「これはそれも完璧に模倣している」。「でも偽物なら精巧にできてる方がいいのでは」と聞かれると、「ここまでやるには」「かなりの資金が必要よ」「リスクに対してのリターンも少ない」「つまり割が合わないのよ」と返す。よくできた偽物ほど、偽物を作る理由が分からなくなる。
儲けではなく、信用を落とすための偽金貨
「他国からの帝国への経済攻撃」
割に合わない偽物を、それでも作る理由。エリーの推測は「これは他国からの帝国への経済攻撃だと思う」だった。「偽物が混じっている事実が広がれば」「他国は帝国金貨を警戒する」「その結果帝国金貨の信用は落ち」「王国金貨が大陸経済の中心になるわ」。偽金貨の目的は、使って儲けることではなく、本物の値打ちを下げることにある。
作ったのは、王国かその属国
「それじゃこれを作ったのは王国」に、答えは「もしくはその属国で王国金貨が流通している国」。そして「しかもそれなりの立場があるものが絡んでいる可能性が高いですね」。割に合わないことができるのは、国の後ろ盾がある者だけだ。エリーは「いずれにしてもゆゆしき事態だわ」と動き出す。
鑑定、ルート、先触れ
エリーの指示は早い。ミレイには鑑定士を集めて商会の金貨を確かめさせ、「偽金貨が商会に持ち込まれたルートを洗って」と頼む。ミーシャには馬車の手配と「商業ギルドへの先触れ」を頼み、「緊急かつ重要性の高い問題で伺うと伝えて」。偽物を見つけた直後に、手元の確認と出所の調査と外への報告を同時に始めている。
「これは廃鉄だな」
偽金貨の材料も突き止められる。「これは廃鉄だな」「錬金術で魔力合金を作成する過程で出る廃棄物だ」。しかも「廃鉄は錬金術師ギルドが回収して処分しているはず」「一般のルートから流れることはない」。捨てられるはずのものが、お金の形になって戻ってきている。ギルドの側は「有益な情報ならば高く買おう」と言い、エリーも「私どもも独自で調査を進めます」と応じる。
「心地よい響き」の金貨も、偽物だった
「カードでバカ勝ちしちゃった」
途中で、歩き神官が久しぶりに姿を見せる。上機嫌の理由は「実はカードでバカ勝ちしちゃった」で、「良ければ今夜奢るっすよ」とまで言う。エリーの「金貨ね」に、返事は「この実に心地よい響き」「夢心地っす」。エリーが違和感を覚えたのと同じ金貨の音を、こちらは心地よいと聞いている。
「その金貨、イカサマで手にしたんじゃない」
見せてもらった金貨は「同じです」。エリーは「思ったより流通していたようね」と言い、「これは偽金貨よ」と告げる。そのうえで「同情するわと言いたいけどその金貨」「イカサマで手にしたんじゃない」。周りも「イカサマね」「イカサマですね」と続く。偽の金貨を、イカサマで勝ち取っていた。偽物同士のやりとりで、結局だれが損をしたのかがよく分からない。
「神の鉄槌を受けるっす」
それでも歩き神官は、相手のところへ乗り込んでいく。「神の制裁を下すっす」。相手は「てめえはさっきのイカサマ女」「金を返しやがれ」、返事は「こっちのセリフっすよ」「神の鉄槌を受けるっす」。自分もイカサマをした側なのに、偽金貨をつかまされた側として殴り込んでいる。深刻な偽金貨の話の中で、この場面だけは笑える。
偽金貨の出所は、エリーが作った商会だった
「エリー様が立ち上げ、王都に残してきた商会です」
調べがつく。「偽金貨の出どころが分かりました」「ハルドリア王国に置いてあるものからの知らせです」。出所は「王国のファンネル商会」で、「エリー様が立ち上げ」「王都に残してきた商会です」。「今はフリードの息のかかった者たちに」「上層部が首をすげ替えられていたわね」。帝国を攻撃している偽金貨は、エリー自身が作った商会から出ていた。
品質が落ち、クレームは握りつぶされる
商会の今は「かなり悪どい商売をしているようです」。化粧品は「品質が落ち炎症が出たというクレームも出ています」が、「全て王太子が握りつぶしているようです」。エリーが育てた看板が、いまは王太子の後ろ盾で傷ついたまま売られている。エリーの一言は「ファンネル商会の名も地に落ちたわね」だった。
商会長は、財務大臣の息子
商会長はコルト・ランプトンで、「財務大臣ランプトン公爵の子息で」「王太子の取り巻きの一人です」。評価は「いかにお金を搾取するかしか頭にない」「さして有能な男ではありません」。「後ろから糸を引いているのは間違いなく」「あのクズ殿下ね」。帳簿も「王太子への収支報告書は偽造され」「利益を水増しして報告している」。偽金貨を作る商会は、自分の帳簿まで偽っている。
「私が作った商会を悪用している者たちには、消えてもらう」
エリーの決定は「処分しましょう」。「私が作った商会を悪用している者たちには」「消えてもらう」。やり方は「ハルドリア王国の属国にダミー商会を作り」「大口の取引を餌に」「ファンネル商会に接触しましょう」。自分の作った商会を、もう一つ別の商会を作って片づけに行く。
「信用の問題だよ」と言う側
フリードの「大事な仕事」は、誰がしているのか
回の冒頭、フリードは「俺は次期国王だからな」「俺でなければできない大事な仕事がある」と言い、「せめて無能なロゼリアや文官たちがもう少し使えれば」「俺も楽になるのだがな」とこぼす。一方の執務室では、「処理できないからロゼリア様や私たちが馬車馬のように働いているんでしょ」「今まではエリザベート様がやっていたんだったな」。フリードの「大事な仕事」は、いつもほかの誰かが片づけている。「私たちは出奔したエリザベートの後釜ですわ」という言葉まで出る。
「あのバカ殿下は本当に余計なことしかしませんわね」
そこへ軍部の問題が持ち込まれる。「軍閥派が王国に反発している属国を見せしめに弾圧すべきと主張しておりまして」、しかも王太子がそれに賛同したという。返ってきたのは「あのバカ殿下は本当に余計なことしかしませんわね」。後始末をする側は、次の後始末の知らせを聞くところから仕事が始まっている。
「俺は父上とは違う」
コルトは「ようやく俺にも運が回ってきた」「エリザベート不在の王室など」「簡単に掌握してみせる」と言う。「俺は父上とは違う」。父のやり方は「エリザベートの失脚工作を裏で後押しし」「その上でシルビアの後ろ盾となって」「権力を手にしようなど」「やり方が回りくどすぎる」。エリーの失脚の上に立っている親子が、手柄の取り方で張り合っている。コルト自身は、フリードに直接取り入る道を選んだ。
「信用の問題だよ」
コルトの口から、偽金貨が「フリード殿下に帝国金貨偽造を指示された」ものだと分かる。護衛の「けど元手がかかりすぎて儲けなんてねえんだろ」に、コルトは「信用の問題だよ」と答え、「お前も俺の信用を裏切らないことだ」と続ける。帝国の信用を偽金貨で壊している人が、自分の身の回りでは信用を求めている。護衛の答えは「金さえきっちり払ってくれりゃ守ってやるよ」だった。
「信用も信頼もするな」
コルトの父、財務大臣ランプトン公爵は、息子に「商会が恨みを買っているという話も耳にしている」「身の回りは十分に用心しろ」と言い、最後に「フリード殿下は愚かだ」「信用も信頼もするな」と釘を刺す。コルトは「心得ております」。この回で「信用」を口にする人は、誰も相手を信用していない。
偽の商会で、偽の金貨を集める
「正確には現在の条約の見直しです」
帝国と王国の恒例のパーティーで、サージャス小王国の紛争の功績で伯爵になったレブリック伯爵が、フリードに話を持ちかける。「交易に制限がかかっている物品の制限緩和」「関税引き下げの条約を結びたいのです」、「正確には現在の条約の見直しです」。フリードが「もう少し便宜を図ってもらいたい」と言うと、答えは「関税に関して期限を付けて王国を優遇する」、期限は「10年」。フリードの頭の中では、10年後には帝国の経済が偽金貨で「壊滅的な打撃を受けているはず」だった。
「むしろお手柄と言っても良いほどの成果です」
国王は「あのバカ息子がロゼリアの意見も聞かず」「独断で通商条約を見直すとは」と怒るが、報告は「条約内容に問題はないかと」「むしろお手柄と言っても良いほどの成果です」「条件は王国に有利になっております」。国王は「では今回は不問とするか」。王国に有利に見える条約ほど、疑われずに通っていく。
「第一段階はクリアね」
エリーの側では、「マーヴェリックがコルトとの接触に成功」の知らせが入り、「多めにお金をばらまいても構わないから」「取引をねじ込むように伝えて」と指示が飛ぶ。そして「ルーカス様からも条約を結んだ旨の連絡が来ているわ」「第一段階はクリアね」。フリードがうまくやったと思っている条約は、エリーの計画の一段目だった。エリーは「向こうに情報に長けた者でもいない限り」「こちらの仕掛けに気づかれることはないでしょう」と見ている。
「まるで作り物みたいに」
ところがコルトの護衛は、エリザベス商会の番頭マーヴェリックを見て「あれは裏家業の人間だ」と見抜く。調べると、商会は「つい最近になって」「大々的に商売を始めたらしい」、「それまでどこかで活動していた形跡が一切ないことだ」、「商会長のエリザベスとかいうやつの姿を見たものが誰もいないらしい」。マーヴェリックの前歴も「まるで作り物みたいに」きれいだった。エリーが「いない限り」と言った情報に長けた者が、相手の側にいた。エリザベス商会という名前が、エリザベートとよく似ているのも意地が悪い。
「本物だって嘘の鑑定をしてるからな」
さらに、同じメリーナ公国の老舗商会のベリットが、「エリザベス商会はファンネル商会を潰すためのダミー商会らしいのです」と持ちかけ、「我々と組んで逆にエリザベス商会を潰すというのは」「奴らの資金を吸い上げてやろうかと思います」と言う。2か月後、コルトは「おまけに渡した金貨が偽物だとは夢にも思うまい」と笑い、護衛は「ベリットが手を回した鑑定士が」「本物だって嘘の鑑定をしてるからな」と言う。エリーの商会には、偽の金貨と、偽の鑑定がそろって流れ込んでいる。
「化けの皮は剥がれたぞ」と「いよいよ大詰めですわね」
マーヴェリックからは「さらに大きな取引をしたいから」来てほしいという手紙が届く。護衛は「奴らの裏にいるのは帝国のトレートル商会だとよ」「商会長はエリー・レイスとかいうやつだ」と伝え、コルトは「もちろん乗り込むさ」「どうやって俺たちを潰すつもりかお手並み拝見だ」。「エリザベス商会」「化けの皮は剥がれたぞ」。一方のエリーは「私もメリーナ公国へ直接乗り込むわ」と決めていて、最後の一言は「いよいよ大詰めですわね」。罠を見破ったと思っている側と、大詰めだと言う側が、同じ場所へ向かっている。
まとめと考察
偽物を見抜いたのは、耳だった
この回の偽金貨は、目で見て分かる偽物ではなかった。偽造防止の細工まで「完璧に模倣している」金貨を、エリーは音の違和感から見つけ、歩き神官は同じ音を「心地よい響き」と聞いた。同じ音を聞いて、疑う人と酔う人に分かれている。
信用を壊す人たちが、いちばん信用を口にする
偽金貨は、帝国金貨の信用を落とすための道具だった。それを作らせているフリードの周りでは、コルトが「信用の問題だよ」と言い、その父は「信用も信頼もするな」と言う。信用を壊す側の人たちが、身内の信用にいちばん神経をとがらせている。
自分が作ったものを、自分で片づける
ファンネル商会は、エリーが立ち上げて王都に残してきた商会だった。エリーはそれを取り返そうとはせず、「処分しましょう」と言った。報復の相手に、昔の自分の仕事まで含まれている。狙いは「コルトだけでなく」「私を裏切った父親の財務大臣も追い込める」ところにまで広がっている。
見破ったつもりの側と、大詰めの側
コルトは、エリザベス商会の正体もその裏にいるトレートル商会も突き止め、「化けの皮は剥がれたぞ」と言った。けれど回の最後に置かれているのは、「いよいよ大詰めですわね」と言うエリーのほうだ。相手が罠に気づいたことまで含めて、エリーの計画に見えてしまう。偽りの金貨を集めた先で何が起きるのかは、まだ描かれていない。


























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