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『バーテックスフォース』第5話「それが答えです」は、バトノイドの解析にひとりで没頭するララと、彼女のために仲間たちが動き出す回だった。みんなで作った代用コーヒー、明を救うためのサイバーダイブ、そしてついに人の姿で現れたEDVA。冷たく見えたララの本心と、チームの絆が少しだけ深まった第5話を、場面ごとに順番にじっくり振り返っていく。




第5話「それが答えです」 ひとりで解析を続けるララ
一人になれるところ
『バーテックスフォース』第5話は、前回手に入れたバトノイドの頭部を、ララがひとりで解析し始めるところから始まる。「これは私が調べる」、「あなたたちはここで休んでて」。どこへ行くのかと尋ねる明に返ってきたのは、「一人になれるところ」、「集中したいから」というそっけない言葉だった。
気にかける明は、今は一人にしてやれと諭され、寝られるときにはしっかり寝ておけと助言される。「睡眠不足ではパフォーマンスが低下する」、「母の教えだ」。翌朝、明が蹴り起こされて騒ぎになる場面も含めて、無人島での共同生活がすっかり板についてきた様子がうかがえる。
パパの時計
夜通し解析を続け、何も食べていないララのもとへ、明は食事を届けに行く。魚は食べられないと聞いて用意した一品に、ララは「おいしい」とつぶやく。そっけない態度の奥に、ほんの少しだけ素直さが顔をのぞかせた瞬間だった。
ララが身につけていたのは、止まった時計。「止まってるんじゃない未完成なの」。地球に来て時計職人になった父が最後に作っていた時計だという。「この時計は私が完成させるの」、「パパのような時計職人になって」、「いつか必ず」。EDVAを倒して元の生活に戻りたいというララの言葉には、父の夢を継ぐという確かな目標があったのだ。
一方の明は、「僕のお父さんは僕には何も残してくれなかったから」と少し寂しそうに語り、「受け継ぎたくないものだってある」と返される。父から受け継いだものへの思いが、二人の間で静かにすれ違う。「ララさんなら絶対できますよ」とまっすぐ励ます明に、「作業に集中したいから帰って」と突き放すララ。それでも、明の言葉はきっと届いていたはずだ。
この時計のエピソードで、ララというキャラクターの見え方が大きく変わった。これまでの彼女は、作戦のためなら明を囮にすることもいとわない、冷たい合理主義者のように描かれてきた。けれど、その奥には父との思い出と、未来への具体的な夢がある。早くEDVAを倒したいという焦りも、ただ戦いが嫌いだからではなく、取り戻したい日常があるからなのだと分かると、これまでの言動の一つひとつが違って見えてくる。
ララのための代用コーヒー
コーヒーがない
解析が行き詰まる中、ララがつぶやいたのは「コーヒーがない」の一言だった。持ってきていたコーヒーは、アランが全部海に落としてしまったらしい。そこで明が提案したのが、「コーヒーを作ろうと思うんです」という作戦。本に載っていた、木の実や根っこで作る代用コーヒーだ。
「いいじゃんそれ」、「やろうやろう」とノリノリの声が上がる一方で、手伝いを頼まれたエレノアは渋い顔。「友達なんでしょ」と言われても、「あたしらは会ってまだ2週間も経ってないぞ」と返すのだ。
このチームはララが作ったんだ
この流れで描かれたのが、エレノアとララの出会いだった。バトノイドを倒して喜ぶエレノアの前に現れたララは、倒したのはEDVAではなく、EDVAが作ったただの兵隊だと告げ、「一緒に来て」と声をかける。「あたしもあいつのことはよく知らん」、「けど一つだけはっきりしてることがある」、「このチームはララが作ったんだ」。素っ気ないエレノアなりに、ララへの敬意がにじむ言葉だった。会ってまだ2週間とは思えないほど息の合った戦いぶりを見せてきたチームが、実はララのひと声で集まったばかりだったという事実も新鮮だ。だからこそ、ララのために何かをしてあげたいという仲間たちの気持ちが、この短い時間の中で育ってきたことがより印象的に映った。
集めたタンポポの根っこを乾かすのは、陽子のエンジンの出番。出番だと声をかけられ、緊張しながらも火を操る陽子の成功に、みんなで大喜びする。前回、自分のエンジンに自信を持てなかった陽子が、仲間のために力を使える場面は見ていてうれしかった。
明を救うサイバーダイブ
死にたくない
一方、解析を進めるララは、ひとり追い詰められていた。「こんなプロテクトに手こずってて どうすんのよ」と焦るララの口から漏れたのは、何度も繰り返される「死にたくない」という言葉。冷静沈着に見えた彼女が、どれほどの恐怖を抱えて戦っていたのかが、ここで初めて見えてきた。
そこへ届けられたのが、みんなで作ったタンポポの代用コーヒーだ。「香りはいいけど」、「変な味」と言いながらも、ララは「でもおいしい」、「みんなが私のためにこれを」と受け取る。「ありがとう 頭が冴えてきた」。おいしいわけではないのに、おいしいと言える。そこに、仲間の気持ちがちゃんと伝わったのだと感じられた。コーヒーそのものよりも、自分のために誰かが動いてくれたという事実が、張り詰めていたララの心を少しだけほどいたのだろう。プロテクトの突破を「コーヒーのおかげかも」と笑うララの表情は、この回でいちばん柔らかかった。
ところが、最下層のプロテクトを解除した瞬間、バトノイドの頭部が再起動し、明の脳を支配しようとする。「プロテクトの解除が再起動のキーだったんだ」。ララの解析すら計算に入れたEDVAの罠だった。EDVAの狙いに気づけなかったと悔やむ間もなく、明の中の光はどんどん弱まっていく。「脳乗っ取られたら終わりだぞ」という声が飛び交う中、仲間たちの視線は、助ける方法を知るただ一人の存在であるララへと集まっていった。命を懸けるかどうかの決断を、誰よりも死を恐れる彼女に委ねるしかないという状況が、なんとも残酷だ。助ける方法はあるが、失敗すればララ自身が死ぬかもしれない。「死にたくない」と言い続けてきたララが、それでも明を助けるために動き出す。
希望の光
ララがエンジンで精神をデータ化し、明の心の中に入り込むサイバーダイブ。「そこまで私の意識が持つかが勝負」と覚悟を決めて飛び込むララの姿に、思わず手に汗を握った。「眠いよ、パパ」、「もう寝ちゃっていいかな」とつぶやきながら、それでも「死にたくない」と踏みとどまるララが痛々しくも美しい。
外では、仲間たちが必死に呼びかける。「負けないで」、「みんなの希望の光を」。そして明の心に響いたのは、父の言葉だった。「お前は光になるんだ」、「未来を導く希望の光」。父は何も残してくれなかったと語っていた明が、実は大切な言葉を受け継いでいたという構成が見事で、胸が熱くなった。
明とララ、二人とも父から何かを受け継いでいる。ララは未完成の時計を、明は希望の光になれという言葉を。受け継ぎたくないものだってあると語ったララと、何も残してもらえなかったと思っていた明が、互いの命を救い合うことで、それぞれの受け継いだものの意味に気づいていく。この対比の描き方がとても丁寧で、第5話の芯になっていたと思う。
人の姿で現れたEDVA
宇宙の秩序を乱す欠陥生命体
無事に戻った明たちの前に、ついにEDVAが姿を現す。「はじめまして、バーテックスの皆さん」。人の姿をしたEDVAは、世代交代を重ねて今の姿になったと語る。かつてララの父たちに倒されたはずが、実際は太陽コロナの磁場に閉じ込められていただけだった。物理的な実体を持たない、膨大なデータの集合体。だからこそ倒せなかったのだ。
EDVAの目的は、ENIAと融合して実体化すること。そしてその先にあるのは、「宇宙の秩序を乱す欠陥生命体を全滅させます」、「あなたたち人類もです」という恐ろしい答えだった。「おかしい おかしいよ そんなの」と叫ぶ仲間に、EDVAは「それが答えなのです」と淡々と返す。副題の「それが答えです」が、ここでこれほど冷たく響くとは思わなかった。
明を殺せばENIAは呼び出せなくなるため、EDVAは明の意識を乗っ取ろうとしていた。「決まってます」と、ENIAは絶対に渡さないと宣言する明。「交渉決裂ですね」と去っていくEDVAに、去ったあとに飛び出す変態黒タイツという軽口まで含めて、緊張と笑いが同居するこの作品らしい締めくくりだった。
それにしても、EDVAの語り口の静かさがかえって恐ろしい。怒りも憎しみもなく、ただ与えられた問題の答えとして人類の全滅を口にする。善悪の物差しがまったく通じない相手だからこそ、話し合いで止めることはできない。明たちが向き合う敵の大きさが、ここではっきりと示された場面だった。
一方で、EDVAがベルトをすべて解析したと告げて去っていったことも見逃せない。これまで身を隠すために使ってきた手段が通じなくなった今、無人島での比較的穏やかな日々にも終わりが近づいているのかもしれない。
第5話のまとめ考察
死にたくないララと、希望の光
第5話は、これまで冷たく見えていたララの本心が描かれた回だった。父の時計を完成させたい、死にたくない。その思いを抱えながらも、明を救うために命がけのサイバーダイブに挑んだララの姿は、チームを作った彼女がいちばん仲間を必要としていたことを教えてくれる。
ラストの「あなたを助けたのは私が助かるため」という言葉も、きっと半分は本心で、半分は照れ隠しなのだろう。それでも、ひとりきりになった夜に「私は死にたくない」とつぶやくララの姿には、まだ明かされていない重い事情を感じずにはいられない。EDVAを倒す方法はもうこれしかないという言葉の意味が、今後どう描かれていくのかが気になる。
タンポポの代用コーヒーという小さな出来事と、人類の存亡をかけた大きな脅威。その両方を一話の中で描きながら、チームの絆が一歩深まったことを感じさせる回だった。明と仲間たちが、ララの抱えるものをどう支えていくのか、続きが楽しみだ。人類を全滅させるという答えを掲げるEDVAに対して、バーテックスのメンバーがどんな答えを示していくのか。物語は、ここからいよいよ本格的に動き出しそうだ。




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