ベレベレム連邦艦隊の侵攻を食い止めるため、ヒロはクリシュナ一隻で敵の出現地点へ先回りする。サーマルステルスでデブリに化け、大艦隊の真ん中にいる旗艦へ一直線。ミミとエルマも覚悟を決めて同行した無謀な作戦の先には、ヒロだけが知る切り札が待っていた。単艦での奇襲、歌う水晶と結晶生命体、そしてセレナの勧誘からの逃避行まで、第5話を振り返る。




第5話 クリシュナ単艦で大艦隊へ
第5話「歌う水晶」は、ベレベレム連邦艦隊の侵攻を食い止めるため、ヒロがクリシュナ一隻で敵の出現地点へ先回りする回だ。狙うは艦隊の中心にいる敵旗艦。前回のブリーフィングで大見得を切った奇策が、いよいよ実行に移される。ヒロ自身が「勝算はある だが下手を打てば死ぬ」と口にするほどの作戦で、出撃前から空気はぴんと張りつめていた。
ヒロ様の行くところが
危険を承知のヒロは、ミミとエルマに無理についてこなくていいと伝えようとする。ところが二人の答えは早かった。「一緒に行きます」、「降りないわよ」。「ヒロ様の行くところが 私の行くところです」、「私がいたほうが 成功率 上がるでしょ」と、迷いのない言葉が続く。ヒロの言葉を最後まで言わせないくらいの即答ぶりに、三人の間にできあがった信頼の深さが表れていた。
それでいて、ただ黙ってついていくわけではないのがこの二人らしい。「こんな危険なこと 考えてたなら 事前に相談しなさいよ」と釘を刺され、ヒロは「ごめんって」と頭を下げる。命を預け合う覚悟と、言うべきことはきちんと言う遠慮のなさ。その両方があるからこそ、クリシュナのクルーは雇い主と乗組員という以上の関係に見えるのだと思う。出撃の合図に返ってくる「あいあいさ」の軽さも、緊張をほぐすいいアクセントになっていた。
デブリに化けて敵旗艦へ
作戦の手順はシンプルだ。超高速ドライブを維持したまま先回りし、敵艦隊の到着と同時にドライブを解除。「サーマルステルスでデブリを装いながら」敵旗艦に近づき、最後は「ドカーンだ」。「今更だけど これ作戦なんて言えるもんじゃないわよね」とあきれる声が出るのも無理はない。それでもヒロには「あれがなければな」という含みがあり、この時点ではまだ切り札の正体は明かされない。
機体を冷やしてデブリになりすまし、敵の真上から一気に接近する。連邦側の「機体温度が異常に低い」、「過冷却でデブリに化けていた模様」という報告から、相手の慌てぶりが伝わってくる。第2話でも熱源センサーから逃れるために機体を冷やしていたが、今回はその手を大艦隊のど真ん中で使ってみせた。「慌ててる 慌ててる」と楽しげなヒロの様子に、パイロットとしての余裕と、どこか子どもっぽい無邪気さが同居していた。
距離を読み上げる声が200、190、180と縮んでいき、敵の砲撃は「ダメです 捕捉できません」と空を切るばかり。「射程圏内です」の声に合わせて「魚雷発射管」が開き、「対艦反応魚雷」が放たれる。「ジャイアントキリングだぜ」と喜ぶヒロに、すかさず「喜んでる場合」と突っ込みが入る。大艦隊の旗艦をたった一隻で沈めるという、タイトルどおりの最強装備ぶりがいかんなく発揮された場面で、見ていて素直に気持ちがよかった。
歌う水晶と結晶生命体
お楽しみはこれからだ
旗艦を落としても、周りには無数の軍艦が残っている。レーダーロックが次々とかかる中、ヒロは「お楽しみはこれからだ」と不敵に笑う。直後、空間がゆがみ、現れたのは「結晶生命体」。ヒロの言う「あれ」の正体は、サブタイトルにもなっている歌う水晶だった。
「歌う水晶なんてどこで手に入れたのよ」と問われ、ヒロは「前にちょっとな」とはぐらかす。説明によれば、結晶生命体は「簡単に言えば 宇宙怪獣」で、「有機生命体を執拗に襲う」存在。「歌う水晶を破壊すると」、「あいつらが大量にやってくるわけだ」。しかも「個人で持つなんてもってのほか」、「超一級の禁制品よ」。それを敵艦隊のど真ん中で使うのだから、とんでもない作戦である。
しかもヒロは、「連邦の奴ら なんかヤバいもんでも積んでたのかな」としらばっくれる。ここで逃げるのかと思いきや、口から出たのは「稼ぎ時だな」。「今なんて」と聞き返す声もよそに、クリシュナは再び混乱する艦隊の中へ飛び込んでいく。結晶生命体を呼び出して高みの見物を決め込むのではなく、その混乱に乗じて撃墜スコアを稼ぎにいくあたりに、傭兵としてのヒロのしたたかさと度胸がよく出ていた。
やがて「帝国艦隊、戦闘圏内に到着です」の報告を受け、ヒロは「ここまでだな」と戦域を離脱する。「生きててよかった」という言葉がこぼれるほど、乗っている側にとっては命がけの戦いだった。前話のブリーフィングで、失敗しても死ぬのは自分一人だけだとまで言い切った作戦を、ヒロは本当にやり遂げてしまった。最強装備という言葉だけでは片づけられない、ヒロ自身の操縦の腕と読みの深さを見せつけた戦闘だったと思う。
1095万エネルの戦果
戦闘が終われば、お待ちかねの報酬の時間だ。撃墜スコアは「戦艦3隻」から「コルベット21隻」まで、合わせて「合計1095万エネルね」。一方で「対艦反応魚雷4発で200万エネル飛んでるでしょ」と指摘されると、ヒロは「生き残るための必要経費だ」、「安いもんだ」と涼しい顔。切り札を惜しまず使い切れるのも、最強装備を持つヒロならではの余裕だろう。
ミミの取り分は「44750エネル」、エルマは「268500エネル」。分け前の差が大きすぎると感じる人もいそうだが、乗組員として働き始めたばかりのミミと、傭兵として経験を積んできたエルマの立場の違いを考えれば納得もいく。ヒロの貯金は「1113万ってとこだな」まで膨らんだが、それでも「一戸建てを買うにはこれの10倍必要か」。大艦隊相手にここまで暴れても、タイトルにある一戸建てはまだまだ遠い。この地に足のついた金銭感覚が、本作の宇宙の広さを妙に身近なものにしていて面白い。
帝国騎士への誘いと逃避行
10回目のお誘い
報酬の話の最中に届いたのは、またしてもセレナからの連絡だった。「我がグラッカン帝国では優秀なパイロットを常に求めています」。これで「10回目のお誘い」と聞いて、ヒロが「暇なのか」とぼやくのも当然だ。セレナは「帝国の精鋭と比べても遜色ないほどです」とヒロの活躍を持ち上げるが、ヒロの答えは「お断りします」。「軍人になるつもりはありません」、「貴族になるつもりはありません」と、どんな条件を出されても首を縦に振らない。
「帝国の騎士って」、「軍人として働くことが前提ですよね」と騎士の中身はお見通しで、「騙す気満々じゃねえか」という本音まで飛び出す。セレナの「帝国貴族として栄達することは大変な名誉ですよ」に対して「その名誉に興味がないんだよ」と返すあたり、ヒロが求めているものが地位や名誉ではなく、自由そのものだとよく分かる。「獲物を狙う ハンターみたいな目をしてました」という見立ても的確で、セレナがこのまま引き下がるとは思えない。
その予感は、すぐに現実のものになる。買い物に出かけた先々で、ヒロはなぜか帝国の騎士になる人として扱われ、「ナイトヒロ様」とまで呼ばれてしまう。傭兵仲間たちからは「爆発しろ」、「超新星爆発しろ」と、前回に続いてやっかみ半分の声が飛ぶ。美少女二人を連れたうえに貴族の仲間入りとなれば、こう言われるのも無理はない。
「完全に外堀埋めに来てるわね」という言葉どおり、本人の知らないところで噂だけが広まり、断りにくい空気が作られていく。セレナのやり方は、正面からの勧誘よりもずっとたちが悪い。「貴族様って怖い」というぼやきに、思わず共感してしまった。
自由を選んで次の星系へ
そこでヒロが出した結論は、なんと逃げることだった。「正直 騎士待遇は美味しいわ」、「一戸建てだって 帝国領に用意してくれるわよ」と現実的な損得を挙げる声もあるが、ヒロは「その代わり自由がない」、「そんなのまっぴらだ」と迷わない。一戸建てが夢でも、誰かに用意してもらうのでは意味がない。自分の力で稼ぎ、自分で選んだ場所に建てるからこそ価値があるのだと、ヒロは考えているのだろう。
目的地は「6つ先の星系、アレイン星系だ」。「医療系ステーションやバイオテクノロジー関係が集まったハイテク星系ね」という説明に、名物のグルメや作物を使った酒の話まで加わり、「新しいグルメの予感がします」と期待がふくらむ。逃げるといっても悲壮感はまったくなく、むしろ新しい旅への期待のほうが大きい。このあっけらかんとした身軽さこそ、本作の気持ちよさだと感じた。
第5話のまとめ考察
逃しませんよ キャプテン・ヒロ
一方のセレナも黙ってはいない。「国内を自由に移動し 宙賊を狩って回る独立部隊」、「その創設と指揮権を 私にお与えください」と願い出て、許しを得る。「この宇宙から すべての宙賊を 殲滅した後にお願いします」という言葉からは、宙賊狩りへの強い執念がうかがえる。そして最後に残したのが「逃しませんよ」、「キャプテン・ヒロ」だった。
宙賊を狩るという大義名分を掲げながら、独立部隊として国内を自由に動ける立場を手に入れたセレナ。ヒロが星系を移っても、宙賊が出る場所ならどこへでも追いかけてこられるわけで、この二人の追いかけっこはまだまだ続きそうだ。自由を求めて逃げるヒロと、自由に動ける力を手に入れて追いかけるセレナ。対照的な二人の関係が、次のエピソードでどう転がっていくのかが楽しみになった。
ミミの日
ハイパードライブで移動する船内では、当直のミミとエルマが二人きりで言葉を交わす。「ヒロ様って どんな人なんでしょうね」という問いに、「当たり前のこと知らなかったり」、「誰も知らないことを知ってたり」、「世間知らずよね」。「普通のお料理を すっごく珍しがってくれて」という言葉も含めて、二人はヒロのどこか浮世離れした一面をちゃんと見ている。
それでも「傭兵の過去を詮索するのはマナー違反だから」と深追いはしない。「でもたまーに危なっかしいのよ」、「それがなんか可愛く見えるんだけどね」という言葉には、仲間としての信頼と、それ以上の気持ちがにじんでいた。「なんだか大人です」、「大人だもの」というやり取りも微笑ましい。そしてミミが心の中で語りかける「パパ ママ 私 また笑えるようになったよ」、「だから心配しないで」。つらい過去を抱えていたミミが、クリシュナでの日々の中で笑顔を取り戻せたことが伝わってきて、胸が温かくなった。
最後は「今日はミミの日だからね」、「ちゃんとシャワー浴びてから ヒロのところへ行くのよ」というエルマの一言で締めくくられる。二人の間ではすっかり順番が決まっているらしく、恋のライバルというより、同じ人を大切に思う仲間として支え合っている関係が見えて面白い。単艦で大艦隊に挑む大胆な戦闘、歌う水晶という切り札、帝国からの逃避行、そして三人の距離の近さ。第5話はひとつのエピソードの締めくくりとして、本作の魅力がぎゅっと詰まった一話だった。



















































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