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真純の帰りが遅いと知り、久しぶりに一人で飲みに出た小路。隣のサラリーマンの何気ない会話から、スーツの下に隠せるパグ太郎の腹巻きを思いつく。さらにケンタの部屋へのお呼ばれ、職場で見つけた意外なグッズ、そしてケンタからの思わぬ報告と、小路の日常に小さな事件が続く。パグ太郎の腹巻き作戦、同志宅へのお呼ばれ、そして小路の思い切った決断まで、第5話を振り返る。




第5話 パグ太郎の腹巻き作戦
第5話は、出勤途中の小路が、ぼんやりしていた女性を危ないところで助ける場面から始まる。「あの女性のバッグについてたマスコットを見てたから」、「いち早く気づけたけど」という心の声がいかにも小路らしい。人助けをしたのに、真っ先に気にするのが「怪しい人にならずに済んだ」かどうかなのだから、カワイイもの好きを隠して生きる苦労がしのばれる。
職場では部下から、タバコを吸う姿も似合いそうだと持ち上げられるが、本人は「俺はタバコ吸わないな」。理由は「パグ太郎に匂いついちゃうしな」。どこまでもパグ太郎が生活の中心にある小路の一貫ぶりに、冒頭から笑わされた。
周りから見れば、仕事ができて落ち着いた大人の男性。けれど頭の中はいつもパグ太郎のことでいっぱいで、何を選ぶにもまずパグ太郎を基準に考えてしまう。そのギャップこそが小路という人物の面白さであり、周りの部下たちが勝手にふくらませる渋い課長という人物像との落差が、毎回のように笑いを生んでいる。第5話の冒頭も、その魅力がよく出たやり取りだった。
久しぶりの一人飲み
真純の帰りが遅いと知った小路は、「久しぶりに飲んでいくか」と仕事帰りに一杯ひっかけることにする。注文は「生ともつ煮」。「こういう店は久々だな」とつぶやき、「最近夕飯は」、「真純が用意してくれることが多いから」と振り返るあたりに、甥との二人暮らしがすっかり日常になっていることがうかがえる。
そこで耳に入ってきたのが、隣のサラリーマンたちの会話だ。「こないだ俺さ腰やっちゃって」、「見てこれコルセット」、「温めとけ」、「腹巻き 腹巻き」。何気ないやり取りから、小路は「若者向けグッズで腹巻きを見た気がするな」と思い出し、スマホで検索を始める。見つけたパグ太郎の腹巻きに「こんなのあるのか 可愛いな」と目を輝かせる姿は、まさに少年のようだった。
小路の頭の中では、すぐに理想の使い方が組み上がっていく。「スーツの中に隠して着用できるんじゃない」、「デスクワークで痛めやすい腰を」、「優しく温めつつ守り」、「誰にも見つかることなく」、「好きなキャラを密かにめでられる」。ネクタイや靴下は「身に着けるには やっぱり勇気が出なくて」、パグ太郎ベルトは「スーツに全く合わない」。そんな小路にとって、外から見えない腹巻きはまさに理想のグッズに思えたのだろう。
ところが、想像はすぐに悪い方向へ転がっていく。「トイレで見つかってしまうかもしれない」、「シャツから透ける可能性もあるのでは」と、会社でばれる場面が次々に浮かび、最後は「忘れよう」。そして「すみません 生追加で」。夢をふくらませてから自分で打ち消し、お酒で流し込むまでの流れが見事なコントになっていて、思わず声を出して笑ってしまった。
とはいえ、腰を温めながら好きなキャラをそっと身に着けるという発想そのものは、決して悪くない。周りに知られずに好きなものと一緒にいたいという気持ちは、小路に限らず多くの人に覚えがあるはずだ。小さな工夫で毎日を少しだけ楽しくしようとする小路の姿には、笑いと同時に共感も覚えた。
朝の女性との再会
その飲み屋に偶然居合わせたのが、朝に助けた女性だった。女性は「朝のイケオジ再び」と心の中で舞い上がり、「今朝のお礼を」と声をかけるきっかけを探す。ようやく言葉を交わせたものの、その途中で小路のスマホの画面が割れてしまうというハプニングまで起きてしまう。
それでも小路の心の声は「スマホの画面は ダメになってしまったが」、「さっきまで見ていたパグ太郎に気付かれなかったのは」、「不幸中の幸いか」。画面が割れたことより秘密が守れたことを喜ぶあたりが、いかにも小路だ。一方の女性も、仕事がつらいと思っていた一日の終わりに思いがけない再会があり、すっかり元気を取り戻した様子だった。お互いにまったく違うことで一日を締めくくるすれ違いぶりが、この作品らしい温かな笑いを生んでいた。
ケンタ君の部屋へ
同志宅へのお呼ばれ
後日、小路はケンタから「おじさん今度うちに来ませんか」と誘われる。「うち会社から割と近いんですよ」、「うちなら人目も時間も気にせず 可愛いもの話ができる」。飲み会もショップめぐりも一度きりで、なかなか会えていなかった二人にとって、家なら周りの目を気にする必要がない。小路の「夢にまで見た」、「ついにこの日が」という喜びようが、ほほえましかった。
当日、手土産を前に小路が考えていたのは、「ちょうどいいサイズのパグ太郎欲しいな」ということ。キーホルダーやストラップのような硬いものではなく、ふわっとした手触りで「手のひらに収まるくらいの」パグ太郎がほしい。同志に自分の推しを見せたいという気持ちが、そのまま次のグッズ探しにつながっていくのが面白い。
ケンタの部屋で待っていたのは、動物の形をした中華まん「クママン」。小路も負けじと「動物和菓子 お取り寄せ コンビニ受け取りです」と手土産を差し出し、テーブルの上はあっという間にかわいいもので埋まっていく。「映えますね」の一言からケンタがSNSに写真を上げていると分かり、小路も「ちょっとやりたくなってきた」と興味を示す。
ただしケンタは、どうやら女子と間違われているらしく、「うまく否定できないまま結局友達もできず」。小路も「いや 絶対にアップしないで」とくぎを刺す。部屋のキャラものも普段は「ここの棚の一番下に」しまってあり、「普段はこっちに飾って隠してるんです」。「突然来客があってもいいように」と話した直後に本当にチャイムが鳴り、二人して慌てたら宅配便だったというオチまでついていた。
私とクマどっちが大事なの
話題は彼女の話へ。ケンタの元彼女は、趣味に口を出さず「放置してくれる彼女だったんですよ」。小路が「最高じゃないか」と食いつくが、それをいいことにグッズを増やしていったある日、「私とクマ どっちが大事なの」と迫られてしまう。「即答できないんだ」、「両方じゃダメなの」。結果、「いろいろあって別れました」。
好きなものを好きだと言える相手がいても、それで全部うまくいくわけではない。ケンタが「ひとまず隠しておこうかなと」と言うのも分かる気がする。小路もまた「今一緒に住んでる甥に見つかるんじゃないかと」、「ヒヤヒヤしてるよ」と打ち明け、「お互い休まる場所がないな」と苦笑い。秘密を抱えた者同士だからこそ分かり合える時間が、二人の乾杯をいっそう特別なものにしていた。
年齢も立場も違う二人だが、好きなものを人前で堂々と出せないという悩みは同じだ。ケンタの部屋では、年の差も関係なく、ただのかわいいもの好き同士として肩を並べている。小路にとって、こうして気兼ねなく話せる相手がいること自体が、何よりのごほうびなのだと思う。
第5話のまとめ考察
メガネ拭きという答え
同志の家に招かれた小路は、仕事中もすっかり浮かれている。「仲間と過ごす時間が こんなに楽しいものだったとは」、「今すぐ踊りだしたい気分だ」、「踊ったことはないけど」。真面目な課長の顔の下で、こんなに弾んだ気持ちを抱えているのがたまらなくかわいい。
そこへ、珍しく眼鏡をかけてきた部下が、限定品のかわいいメガネ拭きを取り出す。小路は「メガネ拭きがかわいいだと」と衝撃を受け、「メガネ拭きなら普段はケースの中にしまっておける上」、「使うときも目立たない」、「これならパグ太郎を持ち歩けるんじゃないか」とひらめく。さらに「老眼は近くのパグ太郎が見えづらくなるから」、「嫌だと思っていたが」、「これは案外悪くないかもしれない」。年齢の悩みさえパグ太郎の楽しみ方に変えてしまう前向きさに、思わず拍手したくなった。
腹巻きで夢を見て、すぐに諦め、メガネ拭きで新しい答えにたどり着く。第5話の小路は、隠しながらも好きなものを身近に置く方法を探し続けていた。人目を気にしながらも、好きなものを諦めない。その試行錯誤こそが、この作品の一番の魅力なのだと改めて感じた。
しかも今回のひらめきは、部下が何気なく取り出したメガネ拭きから生まれている。かわいいものは、思いがけないところに転がっているものだ。腹巻きのときと同じように、周りの何気ない会話や持ち物からすぐにパグ太郎へ発想を広げてしまう小路の観察眼は、ある意味で仕事ができる課長ならではの才能なのかもしれない。次はどんなグッズを見つけ出すのか、毎回の楽しみがまたひとつ増えた。
ケンタ君に彼女
昼休み、ケンタは小路に「水族館や動物園とか行かないんですか」と尋ねる。お土産屋は「結構かわいいキャラの宝庫で」と聞いて「そこちょっと詳しく」と身を乗り出す小路だったが、続いたのは「俺この前行ってきたんですよ」、そして彼女ができたという報告だった。「よかったじゃないか」と祝福しつつ、「いやそこは彼女を優先してあげて」と大人の対応を見せる小路。けれど心の中では「せっかくできた同志と語り合えない」、「何だろう この気持ち」と複雑な思いが渦巻いていた。
「早く帰って パグ太郎に癒やされたい」とため息をつく小路のもとに届いたのは、パグ太郎に会えるイベントの案内メール。「家族連れの中 一人で行くなんて 俺にはできない」と一度はためらうものの、「いつかっていつだよ」と自分に問いかける。「人気とはいえいつまでもやってるとは限らない」、「時間は有限なんだ」。そして「ついに応募してしまった」、「このままスキップしてしまいそうだ」。
同志に彼女ができて少し寂しくなったからこそ、小路は自分の「好き」に正面から向き合う一歩を踏み出せたのかもしれない。いつかではなく今を選んだ小路の決断に、見ている側まで背中を押されるような気持ちになった。パグ太郎の腹巻き、同志の部屋、メガネ拭き、そして思い切った応募。第5話は、小路の小さな勇気がいくつも積み重なった、温かくて楽しい一話だった。




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