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『アオアシ』Season2の幕開けとなる第1話の副題は「スタート・ライン」。ついに東京シティ・エスペリオンユースのAチームに昇格したアシトを待っていたのは、Bチームとは次元の違う世界だった。栗林の帰還と福田の真意、オシム式パス回しの洗礼、そして打ちのめされても消えない高揚感まで、待望のSeason2の始まりを一つずつ丁寧に振り返る。




第1話の副題は「スタート・ライン」
『アオアシ』Season2が、約4年ぶりにいよいよ始まった。第1話の副題は「スタート・ライン」。東京シティ・エスペリオンユースのAチームに昇格した青井葦人を待っていたのは、Bチームとは次元の違う技術とスピードだった。トップチームから戻ってくる栗林晴久、そして基礎のパス練習での洗礼。アシトのAチームでの挑戦が、静かに、しかし確かに幕を開けた。
「今日からAチーム」
「今日からAチーム」。仲間たちに背中を押され、アシトはついに新しい舞台へ向かう。一緒に昇格した1年生たちも、それぞれの覚悟を胸にしていた。二度とBには戻らないという言葉には、AとBの間にある大きな壁と、そこを越えた者の緊張感がにじんでいる。
天然芝のグラウンドに立ったアシトは、ここがプレミアリーグ2連覇の最強ユースチームの練習場なのだと実感する。「俺はようやくスタートラインに立った」。副題そのままの決意が、アシトのモノローグで語られる。けれど、本当の意味でのスタートは、まだこれからだった。
第1期でアシトは、愛媛から上京し、セレクションを経てエスペリオンユースに入り、Bチームで自分の武器を磨いてきた。ディフェンスへの転向という大きな決断も経験している。その積み重ねの先にようやくたどり着いたAチームだからこそ、グラウンドに立った瞬間の感慨はひとしおだったはずだ。見ている側も、4年分の時間を重ねてこの場面を迎えていることに、思わず胸が熱くなった。
「まあ、勘だよ」
この日、練習場の周りはいつもより騒がしかった。16歳でトップチームに帯同し、アジアチャンピオンズリーグにも出場した栗林が、ユースに戻ってくるのだ。福田からの強い要望で、トップチームでの帯同はここまでとなった。理由を尋ねる栗林に、福田は「まあ、勘だよ」と答える。
もちろん、それだけではない。今年のプレミアリーグは高校勢が強く、ユースで戦って得るものが大きいこと。そしてもう一つ、トップチームでの栗林が、周囲の期待に応えようとするあまり、本来の自分を見失いかけていること。わざとツータッチで華麗な技術を見せてからボールを出す、そんなプレーを福田は見逃していなかった。
福田が一番心配していたのは怪我だった。「頼むから怪我だけはするな」「勘を研ぎ澄ませてくれ」。危ういと感じたら引き返す勇気も大事だという言葉は、栗林だけでなく、その場にいた選手たちにも向けられていた。才能を守るための一時帰還という描き方に、福田という指導者の視野の広さを感じた。
栗林ほどの才能でも、周りの期待に飲み込まれれば本来のプレーを失ってしまう。その危うさを、福田は勘という言葉で表した。理屈ではなく、選手を長く見てきた者だけが持つ感覚なのだろう。栗林も「福田さんの指示なら従います」と即答しており、二人の間にある信頼の深さがうかがえる場面だった。
「会話の次元が違う」
栗林と福田のやりとりを聞いていた選手たちは、「会話の次元が違う」と圧倒される。もはやプロ以上を見据えた会話だった。それでも、ある先輩は「だがここからだ栗林」「必ず抜く必ずだ」と闘志を燃やす。栗林の帰還は、チーム全体に火をつける出来事でもあった。
「栗林が戻ってチームが活性化することは間違いない」という言葉どおり、エスペリオンのAチームは新しい熱を帯び始める。そこへ、Bチームから1年生が4人も上がってくる。けれど先輩の一人は、新入りについて「どうせ最初は通用しない」と言い切っていた。
栗林の帰還でチームの熱が上がるなか、昇格してきた1年生たちはまだその熱の外側にいる。先輩たちにとって、新入りはまず結果で認めさせるべき存在なのだ。この温度差が、後半のパス練習でそのまま形になって表れることになる。
オシム式パス回しの洗礼
Aチームでの最初の練習は、試合明けで体に負担をかけないメニューだった。
「最初は絶対に通用しない」
行われたのは、Bチームでもときどきやっていたオシム式のパス回し。ボールを持った選手が別の選手の名前を呼び、パスを受けた選手は必ず指定された選手に出す。ボールが来る前に、その先で奪われにくい選手を見つけておかなければ成立しない。足元の技術だけでなく、周りを見て考える力が最大限に問われる練習だった。
ところが、Aチームのパス回しはスピードがまるで違った。Aチームは控え組であっても「最初は絶対に通用しない」。その言葉どおり、新入りたちはパスの先を確認しているうちにボールが来てしまい、頭が追いつかない。さらにボールが二つに増やされ、ミスが続く新入りたちはディフェンス役を押しつけられていく。基礎練習でさえ洗礼になるAチームの水準が、容赦なく突きつけられた。
このパス回しは、ルールの説明がとても丁寧で、何が難しいのかがわかりやすく伝わってきた。ボールを持つ前から次の次まで考えなければならない練習は、サッカーをあまり知らない人でも、その難しさが直感的に理解できる。だからこそ、Aチームの選手たちが涼しい顔でこなしていることの凄さが、より際立って見えた。
それでもアシトは必死に食らいつく。「ここで評価されたら」Jリーグの舞台に高校生でも立つことができる。「そしたら俺は夢が叶う」「母ちゃんに金、送ってやれる」。「這いつくばってでもBには落ちねえ」というアシトの叫びには、家族への思いと、ここで認められなければならないという切実さが込められていた。
アシトのサッカーは、いつも家族への思いと結びついている。母親に楽をさせたいという願いは、第1期から変わらないアシトの原動力だ。華やかな夢の裏にある切実な事情が、Aチームという舞台でもう一度はっきり示されたことで、アシトを応援したい気持ちがいっそう強くなった。
「この一年二人がいると練習になりません」
アシトの動きは、次第に周りの目を引き始める。見ていた福田は、アシトと黒田をレギュラー組のパス回しに入れた。眠ると言っていたはずの栗林まで練習に加わるなかで、二人はミスをしてもディフェンス役をさせないという特別扱いで挑戦することになる。黒田の「でも葵くんこれはチャンスだ」という言葉に、アシトも「やってやろうで」と応えた。
しかし、レギュラー組のパス回しはさらに別次元だった。全員が足元の技術を持ち、軽いパスと速いパスを瞬時に使い分け、まったく違う発想でボールを散らしていく。流れがまったく読めず、ついに「この一年二人がいると練習になりません」と外されてしまった。誰一人として自分が目に映っていなかったという悔しさが、静かに胸に刺さる。
レギュラー組に入れられたのは、福田がアシトと黒田に何かを感じたからだろう。特別扱いのチャンスを与えられながら、結果としては外されてしまう。それでも、試されたこと自体に意味がある。今はまだ届かなくても、福田の目に留まったという事実は、二人にとって大きな一歩になるはずだ。
黒田は以前Aチームにいた経験があり、そのぶん周りより少しだけ状況が見えている。そんな黒田が、アシトをチャンスへと引っ張っていく姿も印象的だった。BからAへ上がった1年生同士が、互いに刺激し合いながら壁に挑んでいく。同期の存在が、この先のアシトの成長を支える大きな力になりそうだ。
それでもアシトの口からこぼれたのは、「これがAチーム」「すげえ」という言葉だった。打ちのめされながらも、目の前のレベルに興奮を隠せない。悔しさよりも先に湧き上がる高揚感こそが、アシトという選手の一番の強みなのだと改めて感じた。
まとめと考察
試合のシーンが一つもないのに、これほど手に汗握る一話になるとは思わなかった。パスの音、選手たちの声、ボールを追う視線。その一つひとつが緊張感を生み、Aチームという場所の厳しさを伝えていた。第1期から続くこの作品の演出力の高さを、改めて強く実感させられた一話だった。
第1話は、Aチームに昇格したアシトが、栗林の帰還という大きな出来事のなかで、基礎のパス練習から圧倒的なレベルの差を思い知らされる回だった。
基礎練習が示した壁
試合ではなく、パス練習だけで一話を描き切る構成が見事だった。ボールを見るのではなく、選手やスペースを見る。アシトが第1期で磨いてきた、フィールドを俯瞰して見る力が、Aチームではまだ通用しない。けれど、ついていけなかった理由ははっきりしている。見えていたのに、足元の技術と動き出しが追いつかなかったのだ。
つまり、アシトに足りないのは才能ではなく、技術と経験の積み重ねだ。だからこそ、ここからの成長がはっきりと想像できる。課題が見えた第1話だったと思う。栗林が福田から託された「勘を研ぎ澄ませ」という言葉は、アシトにとっても大切な指針になりそうだ。
第1期のアシトは、見えている景色を言葉にし、周りに伝えることで自分の価値を示してきた。Aチームでは、その見えることに加えて、見えたものを瞬時に形にする技術が求められている。目と足がそろったとき、アシトはどんな選手になるのか。その過程を一話ずつ追っていけることが、何よりの楽しみだ。
Season2のスタート・ライン
4年ぶりに動き出したエスペリオンの面々は、相変わらず熱く、そして厳しかった。黒田や大友といった同期たちも、それぞれのやり方でAチームの壁に挑んでいる。Season2のスタート・ラインに立ったアシトが、この圧倒的な差をどう埋めていくのか。悔しさと高揚感を胸に走り出した第1話に、続きへの期待が大きく膨らんだ。
エンディングのあとには、次の展開を予感させる短い場面も用意されていた。Season2は、毎回最後まで目が離せない作りになっていそうだ。Aチームという新しい舞台で、アシトが何を見て、何を掴んでいくのか。一話ごとの小さな成長を、これからもじっくり見届けていきたい。




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