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第7話「小さい悪魔」は、エボジャパンの予選プールの合間を、gekido対禍腐餌悪霊の決着、藤宮亜里沙の実力行使、そして一ノ瀬珠樹の姉の登場でつないだ回である。ただしサブタイトルが指しているのは、藤宮亜里沙が作中で一度も自分から名乗っていない名前のほうだ。通して見ると、この回は名前を他人に決められた側の話でそろえられている。




結論:サブタイトルは、本人が一度も名乗っていない名前である
第7話のサブタイトルは「小さい悪魔」(※1)。これは藤宮亜里沙の二つ名レッサーデビルを指しているのだが、亜里沙自身がその名前を口にする場面は一度もない。呼ぶのは全部ほかの人で、しかもこの回は名前を他人に決められた側の人物ばかりが出てくる。
一ノ瀬花の第一声に、サブタイトルがそのまま入っている
亜里沙を止めに入った一ノ瀬花の第一声が「何か小さいのが暴れてんなと思ったらレッサーデビルじゃん」である。「小さいの」と「レッサーデビル」が、一つの台詞の中に並んでいる。サブタイトルは、この一行を切り出したものだと考えていい。見た目が小学生ほどしかない亜里沙と、下位の悪魔という意味の二つ名が、ここで一つの言葉に重ねられている。
二つ名は本人が付けたものではないと、本編がわざわざ説明する
そのあと花は、二人の関係をこう説明する。「あいつも私も福岡のゲームカフェの常連でね」、「互いにマカロン、アリスなどと女子っぽいプレイヤーネームを」使っていた。そして「あの名前を名乗っていたら、プレイスタイルのせいかいつの間にか中二ネームで定着してしまった」。つまり血染めのマカロンもレッサーデビルも、本人たちが名乗ったものではなく、周りが勝手に育てた名前だという説明である。わざわざ由来まで語らせているのだから、これは飾りではない。
同じ回に、もう一つ他人が付けた名前が出てくる
前半のgekido対禍腐餌悪霊でも、同じことが起きている。実況が「殺人笑顔」と叫んだあと、「海外での二つ名でもあり」と付け足す。マーダースマイルという呼び名も、本人が名乗ったものではなく海外で付いた呼び名だと、わざわざ一言で説明されている。この作品はもともとプレイヤーネームの話を何度もしてきた。第5話の白百合様エントリー事件も、本人の意思と無関係に名前が決まるという同じ形をしていた。
第7話で確定したこと(要点だけ)
会場の別々の場所で三つの話が同時に進む回なので、先に事実だけ並べておく。
- 深月綾・夜絵美緒・一ノ瀬珠樹・犬井夕の四人が最初のプールを突破して合流する。乾杯の音頭が「それでは4人揃って最初のプールを突破できたのを祝して」。ただし美緒だけは初戦で黒星で、ルーザーズプールに回っている(※1)。
- その初戦について「1戦目は負けてガン泣きしてたけどね」とばらされ、美緒が「なんでバラすんですか、信じられない」「私のクールなキャラが崩れるじゃないですか」と抗議する。
- 夕は「私、緊張ってほとんどしないんだよね」「ストフォーの頃からそうなんだよね」。
- 昼食中に一人でいる藤宮亜里沙を見つけて誘うが、「そういう気遣い一切いらないから」「この会場にいる時点で私たちは敵」「慣れ合う必要は全くない」と断られる。
- 「そんなことばっか言ってると友達なくしますよ」と返され、亜里沙が実力行使に出る。それを美緒が回し受けで受け、その騒ぎの最中に夕の頭へ焼きそばが落ちる。
- 割って入るのが一ノ瀬花。亜里沙は「殺意の波動に目覚めかけた私を止めてくれたこと、ひとまず感謝しておくわ」と返し、花は「殴り合うのは画面の中でだろ」と言う。
- 亜里沙の立場=「私はトーナメントを勝ち上がる」「仲良しこよしでゲームやってるこいつらは雑魚らしく死んで消える」「それが現実」。
- 美緒の返し=「私は気にしませんよ」→「むしろ拳を交えたことで逆に興味が湧いてきました」「メスガキさんが画面の中ではどんなふうに戦うのか」「お互い何番プールにいようが勝ち進んでいけばいずれは当たる」「勝負です、メスガキさん」。
- 亜里沙の受け=「二度とレバー握れないようトラウマ植え付けて引退さしてやるよ、ババア」→ 美緒「同じく」。
- 花は夕を寮務委員だと知っていて、「まさか黒美のお嬢様たちとこんなところで会うとはね」と言う。珠樹には「今日は友達の付き添いかな」。綾たちは「あの二人って姉妹なんですよね」「多分姉さんって呼んでたし」「そういえばどっちも一ノ瀬だし」と確認する。
- gekido対禍腐餌悪霊(カフェオレ)は決着し、敗れたカフェオレは美緒と同じルーザーズプールに入る(※1)。
- カフェオレ側の回想=「オッサン、そこは俺の特等席だからよ」「そんじゃ、どかしてみろよ、コゾウ」から始まり、「あの日、お前に思わされちまったんだよ」「格闘ゲームって本気ぶっこむ価値あるぐらい深いんかよ」へつながる。
- 締めは綾の次の対戦相手で、「この手の場ではあんまり見ないタイプ」と紹介されて終わる。
決闘の場所を決めた本人が、その外側で殴りかかる
この回の亜里沙は、前の回の自分の言葉と正面から食い違っている。しかもその食い違いを、最後は本人が自分で言い直して閉じる。
第6話で場所を限定したのは、亜里沙自身だった
第6話のサブタイトルは「崇高なる決闘」で(※1)、これは亜里沙の口上「格闘ゲームとは、モニターを通して心と心で殴り合う崇高なる決闘」から取られている。重要なのは「モニターを通して」の部分だ。殴り合うこと自体は肯定していて、場所だけを画面の中に限定しているのがこの定義である。
第7話の亜里沙は、その限定をあっさり踏み外す
ところが第7話で亜里沙がやるのは、昼食に誘われて断り、言い返されて、モニターを通さずに手を出すことである。自分で決めた作法を、自分で最初に破っている。止めた花の台詞が「殴り合うのは画面の中でだろ」で、亜里沙が第6話で言ったことを、そのまま亜里沙に返す形になっている。言い分を否定するのではなく、言い分どおりにしろと言われているのが効いている。
最後は本人が自分で言い直して戻ってくる
そして亜里沙は「冷静になってみれば画面の中で殴り合う必要も機会もない」と自分で訂正し、「私はトーナメントを勝ち上がる」へ話を戻す。直前には「殺意の波動に目覚めかけた私を止めてくれたこと、ひとまず感謝しておくわ」とも言っていて、止められたこと自体は受け入れている。つまりこの一件は、亜里沙が壊れた回ではなく、亜里沙が自分の定義に連れ戻される回だ。連れ戻したのが、同じゲームカフェで同じように名前を付けられた側の人間だったことも含めて、きれいに閉じている。
美緒は煽りには乗らないが、殴られると乗る
亜里沙に対する美緒の反応は、第6話とこの回で正反対になっている。言葉には反応せず、物理には反応するという、この作品の中でもかなり分かりやすい線引きが出た。
第6話は綾が言い返せず、美緒が代わりに返していた
第6話で亜里沙に絡まれたとき、綾は内心で「どうして、痛いところをつかれたような」と詰まっていて、言い返せていない。代わりに出たのが美緒で、「綾さんは強いですよ。弱そうなの、じゃないし、ふやけてもないです」のあと「あれ、何言うか忘れた」「ばーか」で終わらせた。理屈で勝ちにいっていないのがこのときの美緒である。
第7話は、煽られている最中はまったく動かない
第7話の昼食では、亜里沙が「この会場にいる時点で私たちは敵」「慣れ合う必要は全くない」と言い切っても、美緒は「私は気にしませんよ」で流している。敵と言われても、雑魚らしく死んで消えると言われても、反応が変わらない。ところが実際に手を出された瞬間だけ、態度が切り替わる。「むしろ拳を交えたことで逆に興味が湧いてきました」「メスガキさんが画面の中ではどんなふうに戦うのか」と続けて、最後に「勝負です、メスガキさん」と自分から名指しする。
回し受けは、第4話で確定した設定の回収である
見落とされやすいが、美緒が使ったのは回し受けという受け技で、これは思いつきではない。第4話で、美緒の母が空手経験者であること、そして美緒自身も一年ちょっと空手をやっていて筋が良かったことが説明されている。さらに第4話では、母を実力行使で倒そうとして利き腕を痛めたという過去まで出ていた。母に実力で挑んで失敗した子が、今度は他人の手を止める側に回っている。格闘ゲームの話をしている作品で、実際に人の体が動く数少ない場面に、三話前の設定がそのまま置かれている。
追いかけている二組が、同じ形で置かれている
この回は前半と後半で出てくる顔ぶれがまったく違うのに、置かれている関係の形は同じである。どちらも、先を行く相手に見てほしくて続けている側の話だ。
珠樹の追いつきたい人は、三話またいでまだ名指しされていない
珠樹が第4話で言った「追いつきたい人がいるんです」「その人に私を見てほしいから格ゲーをしています」は、第5話でも正体が明かされないまま持ち越された。第7話でついに姉が出てくるのだが、ここでも珠樹の口から名前は出ない。綾は内心で「合ってる? 違う? だったらウルトラ恥ずかしいけど」と自分で保留していて、語り手すら断定しない形で処理されている。作品としては、まだ答えを出す気がないということだ。
姉の側は、妹が大会に出ていることを想定していない
花が珠樹にかける言葉が「今日は友達の付き添いかな」である。妹が選手として来ているとは考えていない。その直後に「それはつまり今も格ゲーやってるってこと?」と聞き直しているので、今も続けていることすら把握していないことになる。追いつきたい相手に、まだ見られてすらいない。綾がこの日の出来事を「てゃ先輩とお姉さんの空気とか、ミオとメスガキちゃんの感じとか」と並べて振り返っているとおり、この二つはこの回の対になる宿題である。
カフェオレも、追いかけた相手に負けて終わる
後半の禍腐餌悪霊も同じ形をしている。回想で本人が言うのが「あの日、お前に思わされちまったんだよ」「格闘ゲームって本気ぶっこむ価値あるぐらい深いんかよ」で、格闘ゲームに本気になった理由がgekido本人にあることがはっきり言葉になる。「止まらねえんだよ」「あの日からムカつきがよ」も同じ動機の裏返しだ。そのうえでこの試合には負け、美緒と同じルーザーズプールに落ちる(※1)。追いかけている側が、追いかけている相手に届かないまま下に回る。珠樹の話と、まったく同じ位置に置かれている。
脚本がこの回だけ別の人で、絵コンテと演出は第4話と同じ人である
担当者を並べると、この回だけ明らかに座組が違う。しかも重なっているほうの相手が、この回と主題がそろっている回だった。
脚本の王雀孫は、七話までの中でこの一本だけ
第7話の脚本は王雀孫で、ここまでの七本の中で登板はこの回だけである(※2)。ほかは渡航が第1話・第2話・第5話、さがら総が第3話・第4話、井畑翔太が第6話で、七本を四人で書いていて、一本しか書いていないのが王雀孫だけという並びだ。そしてその一本が、黒美女子学院の外側にいる人物の過去がまとまって入る回になっている。gekidoと禍腐餌悪霊の来歴も、福岡のゲームカフェの話も、全部この回に集まっている。
絵コンテと演出の玉木慎吾は、第4話とこの回の二本だけ
もう一方の重なりのほうが強い。玉木慎吾が絵コンテと演出を担当したのは、第4話とこの第7話の二本だけで、どちらも一人で兼任している(※2)。監督の井畑翔太が第1話や第6話でまとめて担当しているのは当然として、それ以外でこの位置に二度入っているのは玉木慎吾だけである。担当者が同じというだけなら偶然で済むが、この二本は中身のほうも重なっている。
重なっている二本は、どちらも家族が重石になる回である
第4話「真夜中の勉強会」の公式あらすじは「母親からのトラウマもある美緒にとって、テスト勉強は泣きたくなるほど嫌なもので」で締められている(※1)。つまり家族が主人公側の重石になる回だ。そして第7話は、もう一組の家族である一ノ瀬姉妹が出てくる回で、珠樹の側から見れば、姉は追いつけないままの相手として置かれている。おまけにこの回で美緒が使う回し受けの出どころも、第4話の母のくだりである。家族の話をする二本を、同じ一人がまとめて組み立てていることになる。
まとめ:名前を付けられた側が、名前どおりに動く回である
通して見ると、この回に出てくる呼び名はほとんど本人が決めたものではない。血染めのマカロンもレッサーデビルも周りが育てた名前で、マーダースマイルは海外で付いた名前で、白百合様に至っては第5話で他人が勝手に登録した名前だった。呼ばれる側は、その名前を否定しないまま、その名前どおりに動いている。
自分から名乗ったのは、美緒の一回だけである
その中で例外が一つある。「勝負です、メスガキさん」と自分から相手を指名した美緒だ。しかもその相手の呼び方も、美緒が自分で付けた「メスガキさん」である。名前を付けられる側の回で、唯一こちらから名前を付けて挑んでいる。エボジャパンはダブルエリミネーションで、第6話で説明されたとおり二回負けたら脱落する。ルーザーズに落ちた美緒に、ウィナーズ側へ戻る道はもうない。それでも「お互い何番プールにいようが勝ち進んでいけばいずれは当たる」と言えるのは、負けが確定していないうちは、全員が同じ会場に残っているからだ。
次回の予想
この回が残した宿題は三つある。美緒と同じルーザーズプールに落ちた禍腐餌悪霊、珠樹と姉が答え合わせをしていないこと、そして亜里沙と美緒がまだ画面の中で当たっていないことである。予想としては、次に動くのはルーザーズ側だと見ている。理由は単純で、公式あらすじがわざわざ「gekidoに敗北した禍腐餌悪霊は美緒と同じルーザーズプールに入れられて」と書いて第7話を締めているからだ(※1)。同じプールに入れたことを最後に書くのは、当てるためであることが多い。美緒の側には、第6話で指摘された「同じ行動ばっかりするのはナンセンス」という宿題も残っている。もっとも、これはあくまで予想である。
出典
※1 TVアニメ公式サイト STORY(第7話「小さい悪魔」ほか各話のサブタイトルとあらすじ)/taiari-anime.com
※2 ウィキペディア「対ありでした。〜お嬢さまは格闘ゲームなんてしない〜」各話リスト(各話の脚本・絵コンテ・演出)/ja.wikipedia.org


























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