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『ブラッククローバー 2nd Season』第4話「贖罪の日」は、最上位悪魔ナハマーとリリスの前にたった一人で立つナハトの戦いと、彼が背負ってきた過去が丁寧に描かれる回だった。弟モルゲンとの思い出、自分を許さないという誓い、そしてついに限界を超えた賭けと駆けつけたアスタまで、息をのむ演出と熱量が続いた第4話を場面ごとに振り返っていく。




第4話 最上位悪魔とナハト
『ブラッククローバー 2nd Season』第4話「贖罪の日」は、最上位悪魔ナハマーとリリスの前に一人で立つナハトの戦いと、彼がずっと背負ってきた過去が描かれる回だった。弟モルゲンとの思い出、決して自分を許さないという誓い、そして限界を超えた先に駆けつけたアスタ。息をのむ演出が続いた第4話を、場面ごとにじっくり振り返っていく。ナハトという人物の見え方が大きく変わる回だった。
かわし続けるしかない戦い
最上位悪魔に、ナハトの攻撃は通じない。魔力は底なしで、防御もできない。ナハトにできるのは、死ぬまでひたすらかわし続け、悪魔たちをここに引き止めることだけだった。じっくり楽しもう、殴って、もてあそんで、殺して、壊して。遊ぶように追い詰めてくる悪魔たちの笑い声が、背筋が凍るほど不気味だ。
なんで逃げないのかな、と問う悪魔に、ナハトは答える。「お前らを許さないために」、「俺は生きてるからだよ」。勝てないと分かっていても逃げない。その理由が、続く過去の回想で明かされていく。
これまでのナハトは、冷静で皮肉屋で、どこか他人と距離を置く人物として描かれてきた。アスタたちを厳しく鍛え、自分の感情はほとんど見せない。その彼が、命を削りながら最上位悪魔を足止めする姿には、ただの任務以上の何かが感じられた。勝つためではなく、引き止めるために戦うという覚悟の重さが、冒頭から画面に満ちていた。
光のような弟
ナハトは、自分が楽しいと思えることしかしたくない少年だった。物心ついた頃から悪さばかり。一方の弟モルゲンは正反対で、誰からも愛され誰をも愛す、他人のために自分を犠牲にできる、魔法属性と同じ光のような存在だった。「兄さんが一番魔法の才能があるよ」と兄を慕い、魔法騎士団に入るよう勧め続ける。
グリモワールを手に入れた頃、ナハトは不思議な魔法を使う人物と出会い、つるんで悪さをするようになる。それが若き日のヤミだった。半年後、ヤミとモルゲンは同じ魔法騎士団に入団する。誰にでも分け隔てないモルゲンはヤミとも仲良くなり、二人は光と闇のコンビとして活躍していく。ローブが全然似合っていないと笑い合う三人の姿は、まぶしいほど楽しげだった。
今の冷徹なナハトからは想像できないほど、若い頃の彼は奔放で、ヤミとは悪友そのものだった。互いを小突き合いながらも、どこか認め合っている二人の関係は、現在の黒の暴牛の団長と副団長という間柄の原点なのだろう。そしてその輪の真ん中には、いつもモルゲンの笑顔があった。三人で過ごした時間が明るければ明るいほど、このあとに訪れる悲劇の影が濃くなっていく構成がつらい。若き日のヤミが見せる無邪気な笑顔も、のちの出来事を知っていると見え方が変わってくる。ヤミにとってもモルゲンはかけがえのない仲間であり、その喪失はナハトと同じように、彼の中にも何かを残したのではないだろうか。三人の関係を知ったうえで、今のヤミとナハトのやり取りを見返したくなる回想だった。何気ない軽口の一つ一つに、二人だけが知る痛みが隠れているように思えてならない。
ファウスト家の悪魔学
18歳になったナハトは、両親から家を継ぐのはお前だと告げられる。「我らファウスト家は代々悪魔学に身を捧げてきた一族なのだ」。そのおぞましくも美しい未知の誘惑に、ナハトの中の悪意は歓喜した。ファウスト家の家系では、ちゃんとイカれているナハトのほうが普通で、モルゲンのほうが異質だったのだ。
一方で、悪魔学という家の秘密を知ったときのナハトの高揚は、見ていて恐ろしいほどだった。善良な弟とは違い、自分の中には確かに悪意がある。その悪意が喜ぶものを、ようやく見つけてしまったのだ。自分は弟とは違う種類の人間だという自覚が、このときすでにナハトの中にあったように思える。
悪魔学にのめり込んだナハトは、驚くべき速さで4体の悪魔と契約し、その力を使いこなしていく。そして父は、最上位悪魔との契約まで持ちかける。「やめるんだ 兄さん」と止めるモルゲンに、ナハトは「危険だからいいんじゃねえか」と笑い、「今ここで限界を超えてやるよ」と儀式を始めてしまう。この言葉が、のちに全く違う意味で繰り返されることになる。
危険だからこそ面白い、スリルがなければつまらない。若きナハトの言葉には、自分の才能への過信と、退屈な日常から抜け出したいという渇望が混ざっていたのだと思う。弟が必死に止めても耳を貸さないその姿は、才能に溺れた若者の危うさそのものだった。だからこそ、この先の悲劇は誰か一人の悪意ではなく、ナハト自身の選択が招いたものとして、彼の心に深く刻まれることになる。
贖罪の日
失われた光
儀式の下で力が抑えられているはずなのに、現れた最上位悪魔の魔力は桁違いだった。手を出してはいけないものだったと気づいたときには、もう遅い。体が動かないナハトの前で、モルゲンが悪魔との因縁のある物を壊して儀式を止め、その代償を一身に受けてしまう。
「僕の夢は」、「兄さんと並んで」、「影と光の魔法騎士で」、「国の平和を」、「守ること」。途切れ途切れに語られたモルゲンの夢が、あまりにも残酷だった。まっすぐ見られないくらいまぶしかった弟を、ナハトは「大好きだったんだ」。自分なんかが隣にいると弟の輝きを汚してしまいそうで、だからこそ、お前だけでも光っていてほしかった。
死ぬべきは俺なんだ、弟を助けてくれ、神様お願いだ。そう祈った直後、ナハトは自分自身を責める。散々好き勝手やってきて、困ったら神様に頼むのか。「誰が助けるか 俺は死ぬまで」、「俺を許さねえ」。この日から、ナハトの生き方は決まったのだ。
弟の命を奪ったのは悪魔だが、悪魔を呼んだのは自分だ。ナハトはその事実から一度も目をそらさなかった。誰かを恨めば少しは楽になれたかもしれないのに、すべての責任を自分一人で背負う道を選んだのだ。その選択の重さを思うと、これまで彼が見せてきた無表情の一つ一つが、まるで違う意味を帯びて見えてくる。
影から悪を持って悪を滅す
どれだけ償おうとしても、自分は自分を許さない。称賛を得たり、脚光を浴びたりはさせない。モルゲンのようにはなれないし、なってはならない。「俺は死ぬまで、影から悪を持って、悪を滅す」。これまで見せてきたナハトの冷徹さや、自分を顧みない戦い方の理由が、すべてこの一日に詰まっていた。悪を滅するために、あえて自分も悪の側に立つ。その生き方は、弟の光を守れなかった自分への罰であると同時に、弟が守りたかった国の平和を、別の形で守り続けるための選択でもあったのだろう。
冒頭の「お前らを許さないために俺は生きてる」という言葉の重みが、回想を経てまるで違って聞こえる。悪魔を許さないことと、自分を許さないことは、ナハトにとって同じだったのだろう。贖罪の日という副題が、これほど胸に刺さるとは思わなかった。
第4話のまとめ考察
今ここで限界を超える
「二度と言うことねえと思ってたのによ」。かつて弟を失うきっかけになった言葉を、ナハトは今、自分の意志で口にする。「今ここで」、「限界を超える」。契約している悪魔は全員中位悪魔で、最上位悪魔には触れることさえできない。「俺は俺の限界を知っている」。だからこそ、悪魔たちに「俺の賭けに付き合ってくれ」と頼む。
応える悪魔たちの言葉も温かい。冥府では決して見られないものを見せてくれた、ナハトさんならできるよ。悪魔同化によって、一度だけ魔法を最上位悪魔クラスに引き上げたナハトは、自らを生け贄に、悪魔たちを光も生も死もない影の世界に閉じ込める。「永久に俺と 地獄の鬼ごっこと行こうか」。かつて自分の限界を超えようとして弟を失った男が、今度は誰かを守るために限界を超える。同じ言葉が、贖罪の言葉に変わった瞬間だった。
うちの副団長に何してんだ
けれど、最上位悪魔はその影さえ破ってしまう。すべてを絞り切り、空っぽになったナハト。最上位悪魔に勝てる人間はいない、いるとすれば。そこへ響いたのが、「うちの副団長に何してんだ」という声だった。駆けつけたのは、反魔法を持つアスタだった。
自分のことなんかどうでもいい、早くダークトライアドを倒しに行け、と言うナハトに、アスタは「どうでもよくなんかない」、「俺はあなたのおかげで強くなったんだ」と返す。影から悪を滅すと誓い、誰にも称賛されない道を選んだナハトが、確かに誰かを強くしていた。アスタを鍛え、悪魔との付き合い方を教えてきたのは、ほかでもないナハトだった。厳しい言葉の裏で、彼はずっと次の世代に何かを託そうとしていたのかもしれない。自分を許さない男に、救いの光が差し込んだように見えて、思わず目頭が熱くなった。アスタの真っすぐな言葉は、ナハトがずっと否定してきた自分の価値を、まっすぐに肯定するものだった。
最上位悪魔の二体は合体し、さらに強大な姿となって立ちはだかる。対するアスタも、悪魔との同化でさらに大きな力を見せる。オープニングを省いて挿入歌で盛り上げ、エンディングにオープニング曲を流すという特別な演出も、この回にかける熱量の表れだったのだろう。第4話は、ナハトという一人の男の贖罪と、その思いを受け取ったアスタの物語だった。
自分を許さないと誓い、影に徹してきたナハトにとって、アスタの言葉は思いがけない救いだったはずだ。称賛も脚光もいらないと決めた男が、知らないうちに誰かの力になっていた。それは、かつてモルゲンが望んだ誰かを守る魔法騎士の姿に、ナハトが自分でも気づかないうちに近づいていたということではないだろうか。最上位悪魔との戦いはまだ終わっていないが、ナハトの物語には確かに一つの区切りがついたように感じた。弟モルゲンの夢だった影と光の並び立つ姿が、ナハトとアスタの間に形を変えて生まれようとしているのかもしれない。




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