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冒険者ギルド王獣の牙で武器や防具の強化を担ってきた強化付与魔術師レインは、ある日突然クビを言い渡される。落ち込むのもそこそこに、彼は仲間に付与してきた強化をすべて解除して、第二の人生を歩み始めた。迷わず全部を解除する潔さ、腹パン希望の規格外の防御力、そしてS級冒険者リリィが抱える空白の2年まで、第1話を場面ごとに一つずつ振り返る。




追放された強化付与魔術師
『追放されたチート付与魔術師は気ままなセカンドライフを謳歌する。』、略して『チー付与』がついに始まった。主人公は、あらゆるものに強化ポイントを付与できる強化付与魔術師のレイン。所属していたギルドを突然追放された彼が、冒険者としての第二の人生を歩み始める。第1話は、追放からギルド探し、そしてS級冒険者リリィとのドラゴン討伐への出発までを、勢いのあるギャグとともに描いた幕開けだった。
突然のクビ宣告
レインは、冒険者ギルド王獣の牙で、武器や防具の強化を専門にしてきた。自分は戦ったことはない。けれど、あの盾もあの剣も、あの鎧もあの斧も、全部自分が強化した。戦わなくても、みんなの活躍に貢献している。そんな自負を持っていたレインは、ギルドマスターのバリオスに呼び出され、給料が上がるのかと期待して向かう。
ところが告げられたのはクビだった。強力な武器と防具がそろった今、強化付与しかできず戦いもしないお前は用済みだ、と。冒頭では、追放は人件費も削れていいことずくめだと、ギルドマスター同士が流行りのように語り合っていた。あまりにも軽いノリで決まった追放という導入が、この作品の空気をよく表していた。
抗議するレインに、仲間だと思っていたギルドの面々は罵声を浴びせるばかり。誰も助けてくれないのか、とショックを受けたレインは、こんなギルドはこっちだって用済みだと言い捨てて飛び出していった。
全ての強化付与、解除
ずっと落ち込んでいても仕方がない。みんながそうなら、こっちも好きにする。レインが使う強化付与魔術は、強化ポイントという特殊な魔力を武器や防具に込めて性能を高める術だ。そして彼は、付与したポイントを取り戻すこともできる。王獣の牙に所属する冒険者512人の武器と防具に付与した強化を、レインはすべて解除した。
戻ってきた膨大な強化ポイントを、レインは手持ちの銅の剣に1万、残りの3033を布の服に込める。これで経験がなくても、装備だけで戦えるはずだ。今までずっと休みなく働いてきたのだから、のんびり暮らしたいし、冒険者も一度はやってみたかった。迷わず全部の付与を解除してしまう潔さに、思わず笑ってしまった。
追放した側が、自分たちの装備がただの剣や鎧に戻っていることにいつ気づくのか。視聴者だけがその事実を知っているという構図が、痛快さを生んでいた。シリアスになりそうな追放劇を、あっという間に笑いへと転がしていく手際が見事だった。
青の水晶との出会い
新しいギルドを探して街をさまようレイン。パン屋で道を尋ねても、何か買えと言われるばかりで、なかなか見つからない。
腹パン希望の主人公
そんなレインに、ガラの悪い二人組が金を出せと絡んでくる。腹パンされたくなければ早く出せ、と。普通なら震え上がる場面だが、レインの頭にあったのは、強化した服の防御力を試してみたいという好奇心だった。
そこへ割って入ったのが、ギルドの受付嬢ニーナだった。人を呼びますよ、と男たちに立ち向かうニーナを、レインは下がっていてくれと制する。そして、自分は今腹パンされたいから、と堂々と宣言した。何を言っているんだろう、とニーナが引いてしまうのも当然だ。助けに入った相手にまで引かれる主人公という展開がたまらない。
実際に殴られても、強化した服のおかげでまったく痛くない。殴った男のほうが手を痛め、なぜか引いている。服に3033の強化ポイントを付与したのだと説明しても、ニーナは適当なことばかり言ってと取り合わない。この二人の噛み合わないやりとりが、早くも楽しかった。
ボロボロのギルドと受付嬢ニーナ
ギルドを探していると知ったニーナは、自分が受付をしている青の水晶に来ないかと誘う。ただし、驚かないでね、と。連れて行かれた先は、見るからにボロボロのギルドだった。がっかりしたか、やめておくかと尋ねるニーナに、レインはここで冒険者登録すると即答する。建物の古さなど気にせず、受け入れてくれる場所を選ぶ。その判断の早さにも、レインらしいまっすぐさが表れていた。
新規登録者が来たと大喜びするニーナとギルドマスターのエルシー。どうせ王獣の牙と間違えて来ただけで、すぐに出ていってしまういつものパターンではないのか、と疑うあたりに、青の水晶の苦しい台所事情がにじんでいた。王獣の牙を抜けてきたからここに入りたい、というレインの言葉は、エルシーにとって何よりうれしいものだったのだろう。
小さくて貧乏でも、温かく迎え入れてくれるギルド。冷たく追い出された王獣の牙との対比が、レインの新しい居場所の居心地のよさを際立たせていた。
プラス1万の短剣
登録を終えたところに、先ほどの男たちが仲間を連れて仕返しにやってくる。金を出すか、全部壊されるか、それともその男を渡すか。レインは迷わず外に出た。腹パンに強いだけでしょと止めるニーナに、レインは、こんなこともあろうかと用意していた極上の武器があると、小さな短剣を取り出す。
強化ポイント1万を付与した剣は、小さいからといって弱いとは限らない。レインが軽く振っただけで、斬撃は男たちを吹き飛ばし、道路や建物まで破壊してしまった。化け物だと逃げ出す男たち。軽く振っただけで街が壊れるという規格外の威力に、ニーナともども呆然としてしまった。
幸い、巻き添えになった人はいなかった。エルシーは、これから気をつければいい、君はもう青の水晶のメンバーなのだから、仲間が助けたり教えたりしてくれると語りかける。君はすごい冒険者になれるよ、ようこそ青の水晶へ。その温かい言葉の直後に、壊した道路と建物の修理代として金貨1000枚を立て替えたと告げられるのが、この作品らしいオチだった。
感動的な歓迎の言葉から、いきなり借金の話へ。ほろりとさせかけて、すぐに笑いへ落とす。このテンポのよさが、第1話を通して一貫していた。真面目に聞いていると、必ずどこかで足をすくわれる。その心地よい裏切りが、この作品の持ち味なのだろう。
S級冒険者リリィ
金貨1000枚を稼ぐために持ち上がったのが、2週間前から放置されていたドラゴン討伐の依頼だった。
ドラゴン討伐と同行者
ドラゴンなど、ほとんどの冒険者は倒せない。普通は何年も冒険者をやってから挑戦する相手だ。ニーナは止めるが、エルシーは行っちゃえばいいと軽く背中を押す。そこへ現れたのが、S級冒険者のリリィ・フラムベルだった。犬の散歩みたいな格好でドラゴン討伐なんて冗談でしょ、とあきれるリリィに、レインはこの服は鋼の鎧より強いからナイフで刺して試してくれと迫る。
本当に剣で叩いて確かめたリリィは、鋼の鎧以上だと認める。そして、レインを一人で行かせるのが不安なら自分が一緒に行くと申し出た。自分はS級冒険者だと言うリリィに、レインは自分はD級だと元気よく答え、言わないほうがましだとあきれられてしまう。凸凹な二人の組み合わせが、早くも楽しい。
リリィ・フラムベルは、史上最年少でS級冒険者に認定された剣士だ。7歳で低級ドラゴン5体を討伐し、12歳で中級ドラゴンを屈服させて乗りこなし、ついには上級ドラゴンを単独で撃破するほどの実力を身につけた。けれどこの数年、その活躍はまったく聞かなくなっていたという。
何もしていなかった2年間
あんたが一人で行って死んだら、困るのは青の水晶だ。素人を一人でドラゴン討伐に行かせたと批判される。だから自分がついていくのだと語るリリィ。強化付与が必要なら言ってくれと申し出るレインにも、そんなものはいらないとそっけない。被害の規模からドラゴンの大きさを見抜く経験の深さに、レインは素直に感心していた。
ところが、ドラゴンが近づくにつれて、リリィの様子がおかしくなっていく。ドラゴン討伐でも何でも勝手に行けばいいと言い出すリリィ。体調が悪いなら休もうと気づかうレインに、リリィは、この2年自分が何をしていたか知らないでしょう、何もしていなかったのよと叫んだ。最強のはずのS級冒険者が抱える空白の2年間。それまでのギャグの勢いから一転して、物語は重い影を見せたところで幕を閉じた。
まとめと考察
第1話は、理不尽に追放された強化付与魔術師が、新しいギルドで居場所を見つけ、S級冒険者とともに初めての冒険に踏み出すまでを描いた回だった。
ギャグとシリアスの振れ幅
追放、ギルド探し、チンピラとの騒動。本来ならシリアスになりそうな出来事が、レインが絡むとたちまちギャグになってしまう。腹パン希望、ナイフで刺して試してくれ。常識が通じないほどのマイペースさが、この主人公の最大の武器なのだと思う。
その一方で、最後に描かれたリリィの叫びは、一気に物語の温度を変えた。笑いの中に、傷を抱えた人物の重さがしっかりと置かれている。この振れ幅の大きさが、作品の大きな魅力になっていきそうだ。2年前に何があったのか、彼女が戦えなくなった理由は何なのか。物語の本当の軸は、ここから見えてくるのかもしれない。
強化ポイントで装備を強くできるレインと、強さを持ちながら何もできなくなってしまったリリィ。正反対の二人が組むことで、それぞれの欠けたものを補い合う関係になっていくのかもしれない。
青の水晶という居場所
冷たく追い出された王獣の牙と、ボロボロでも温かく迎えてくれた青の水晶。レインの第二の人生は、仲間に恵まれた場所から始まった。ツッコミ役のニーナ、軽いノリのエルシー、そしてリリィ。癖の強い面々に囲まれて、レインのセカンドライフがどう転がっていくのか楽しみだ。
リリィが抱える2年間の空白の理由と、ドラゴン討伐の行方。そして、強化を解除された王獣の牙のその後。気になる要素をいくつも残した第1話だった。
気ままなセカンドライフという題名とは裏腹に、騒がしい毎日が待っていそうなレインの冒険を、笑いながら見届けていきたい。

















































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