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6歳になったニアは、アルトワール学院に入学するため王都へやってきた。そこで出会ったのは、第三王女ヒルデトーラと、ニアを一方的にライバル視するレリアレッド。マジックビジョンの番組に出る同業者同士の三人は、普及のために手を組むことになる。世界の覇権を夢見る王女、ツンデレなライバル、そして天破流という強者の気配まで、第4話を振り返る。




第4話 いざ学院へ
第4話は、6歳になったニアがアルトワール学院に入学するため王都へやってくる回だった。待っていたのは、アルトワール王国の第三王女ヒルデトーラと、ニアを一方的にライバル視する貴族令嬢レリアレッドとの出会い。マジックビジョンを広めるという大きな目標で手を組んだ三人と、ニアの心をつかんだ天破流という新たな強者の気配。学院生活の幕開けを振り返っていく。
小学部と頭突き
アルトワール王国では、6歳から12歳までの小学部を王立の学び屋で過ごす義務がある。その先には中学部、高学部があり、成績が良ければさらに上の学部にも招かれるという。そう説明を受けたニアの答えは、小学部だけ出ればいいか、というあっさりしたものだった。
正直、頭を使うことは苦手。頭突きなら得意なのに、という心の声が、いかにもニアらしい。入学を前にした新入生たちのきらきらした空気の中で、ひとりだけ考えていることの方向がまるで違う。この落差が、この作品の楽しさそのものだ。
兄のさりげないエスコート
学院では、久しぶりに兄と再会する。元気そうで何よりだと迎える兄は、同行していた侍女にも自然に手を差し伸べる。そのさりげないエスコートぶりに、ニアはこれは泣かせる女が増えそうだと内心で舌を巻く。恋人なのかと尋ねるニアに、めったなことを言うもんじゃないとたしなめる兄の姿も微笑ましかった。
そこへ、ようやく会えましたねと声をかけてくる少女が現れる。ニアの名を呼ぶその少女と、もう一人の少女。ここから、ニアの学院生活は思いもよらない方向へ動き出していく。
第三王女ヒルデトーラの野望
三人の同業者
声をかけてきたのは、アルトワール王国の第三王女ヒルデトーラ・アルトワール。以前からニアに直接会いたいと話していた王女で、兄によれば王都の放送局のマジックビジョンに出演している人気者だという。急な訪問を詫びるヒルデトーラは、ニアだけでなく、隣にいたレリアレッドとも話したかったと語る。
レリアレッドはシルヴァー家の人間。シルヴァー領が放送局を開いたとき、ニアは両親や撮影班と訪ねたことがあり、そのとき会った長女に少し似ていると思い返す。うちのチャンネルを見ていないのかと詰め寄るレリアレッドの「私も出てるわよ」という一言で、ニアは「つまり3人は同業者というわけか」と状況を飲み込む。
王女、地方の放送局のタレント、そしてリストン家の令嬢。立場は違っても、三人とも魔法映像の番組に出ている子どもたちだ。偶然のようでいて、ヒルデトーラにとってはこの顔合わせこそが目的だったのだろう。
世界の覇権を握る夢
座って話しましょうと迎賓館に場所を移したヒルデトーラは、単刀直入に切り出す。自分は国の政策であるマジックビジョンの普及に、粉骨砕身の覚悟で臨んでいる、と。かつて世界征服目前というほどの栄華を誇った天空帝国が、飛行船による一般市民の大量亡命によって消滅した。その事件は世界に衝撃を与えたという。
「民は土地の血液」、失うほどに命に関わる。けれど民が逃げる手段を知ってしまった以上、王族や貴人の権威はいずれ必要とされなくなる。だからこそヒルデトーラは、王族として「かつての栄光を取り戻すこと」を目指す。まずこの国にマジックビジョンを普及させ、それから他国も巻き込み、システムを握るアルトワール王国が「世界の覇権を握る」。幼い王女の口から出たとは思えない、壮大な構想だった。
ニアの感想は、なかなかの野心家、嫌いではない、というもの。一人でできることには限界があるが、二人、三人なら相乗効果も望めるというヒルデトーラの誘いに、まずレリアレッドが協力すると答え、ニアも構わないと続く。リストン家が没落しないよう、まだまだ稼がなければならない。それにマジックビジョンが普及すればチャンネルも増え、魔獣と人の血湧き肉躍る番組ができるかもしれない。「で私が戦う」。結局そこに行き着くのが、ニアのぶれないところだ。
まさかの無計画
では、どのような方法でマジックビジョンを広めるのか。そう尋ねられたヒルデトーラは、言葉に詰まってしまう。そのまま、ごきげんようと去っていった後に残されたのは、方法はみんなで考えましょうという答えだけだった。
「まさかの無計画とはね」。あれほど堂々と世界の覇権を語っておきながら、肝心の方法はこれから。けれどニアは、そう都合よく天啓が降りてくることもないだろうと、どこか納得もしている。壮大な野心と、年相応の無計画さ。そのギャップが、ヒルデトーラという王女をぐっと親しみやすくしていた。
レリアレッドとの火花
シルヴァー家の台所事情
残された二人の会話は、さっそく火花を散らす。ニアが気にしたのは、シルヴァー家の放送局の建設費用だった。間違いなく莫大な費用がかかったはずだと心配するニアに、レリアレッドは「財力をバカにしてるの」と食ってかかる。
けれどニアに悪気はない。一般論として、第四階級のリストン家でも財政は苦しかった。そちらも大変だったのでは、という問いかけは、同じ苦労を知る者としての素直な気遣いだ。レリアレッドの侍女によれば、シルヴァー家も浮島を担保にお金を借りたり、多額の投資を受けたりしているという。どちらの家も、早くマジックビジョンを軌道に乗せる必要があった。
レリアレッドは「ヒルデトーラ様の顔を立てるために」協力はすると言いながら、「あんたには負けないから」と宣言する。侍女の説明によれば、マジックビジョンで活躍するニアの姿を見て奮起し、同い年であることも重なって、一方的にライバルだと思っているのだという。
その様子を見た兄の感想は、ニアの友達に良さそうだ、というもの。のんきなものだと呆れるニアのそばでは、あんなのと友達になりませんよね、むしろやっちゃいましょうよ、という物騒な声まで上がる。「だからやめなさいって」とたしなめるニア。周りの大人たちまで含めて、どこまでも騒がしい出会いだった。
寮と二人きりの生活
兄と別れたニアは寮へ向かう。寮長は生存報告の放送を見ていたと、元気になったニアを喜んで迎えてくれた。職業訪問を見たことがあるという子もいれば、家にマジックビジョンがないという子もいる。「私を知らない子の方が多いか」。学院の中にも魔晶板は置かれておらず、貴人の見るものだとなかなか見てもらえない。マジックビジョンを広めるのは、「なかなか大それた夢なのかもしれないな」と、ニアは現実の厳しさを実感する。
部屋に案内されると、リノキスは「二人きりの生活がスタートしますね」と浮かれ、さらに「同棲生活スタートですよね」と言い換える。「なぜ言い換えたの」と冷静に返すニア。着いたばかりなのだからゆっくりしようと甘えるリノキスを、ゆっくりするのはやるべきことをやってからよと連れ出すあたり、6歳とは思えないしっかり者ぶりだった。
制服姿の撮影
買い物に出た先で、ニアは再びレリアレッドと出会う。制服を取りに来たレリアレッドには、シルヴァー領の撮影班が同行していた。初めての制服姿をぜひ放送したいのだという。これはチャンスと見たニアは、自分も出ていいかと切り出す。
「早めに仲がいいところを見せておけば今後もやりやすいわ」というニアに、「別に仲良くはないじゃない」と返すレリアレッド。それでもニアは手をつかんで、「仲良くお手手つないで行きましょう」と強引に連れていく。ライバル心むき出しの少女と、それを軽くいなすニア。この二人の掛け合いが、今回いちばん楽しかった。
こうして撮影された入学準備の映像は、新しい学院生活の始まりを伝える番組になった。監督から、三人のおかげですごくいい絵が撮れたと礼を言われ、急に呼び出された兄も一緒に収まっている。また来るであろうファンレターに怯える兄の姿に、ニアは内心で苦笑していた。
天破流という強者
姉たちと武闘大会
撮影の後、ニアはレリアレッドに誘われて昼食を共にする。そこには彼女の姉たちも来ていた。今日の撮影でお化粧をしてくれた姉と、今年から中学部3年生になるという姉。レリアレッドによれば、その姉は去年の中学部の武闘大会で準優勝したほど強いのだという。
けれどニアの目は冷静だった。素手で戦う体を作っているようだが、「この程度で準優勝」なのかと、むしろ大会のほうを心配してしまう。「ある意味驚いたな」という心の声に、思わず笑ってしまった。神殺しの武人の目から見れば、学院の大会などまだまだ物足りないのだろう。
姉は天破流の門下生で、レリアレッド自身も去年から習っているという。ニアが生きていた頃には聞いたことのない流派だ。天を破ると謳う、傲岸不遜な流派。「興味はある」というニアの一言に、すでに戦いの火がついているのがわかる。
師範をも上回る師匠
さらにレリアレッドは、明日のクラブ見学に自分の師匠が参加すると明かす。まだ若いため師範代代理という立場だが、その実力は「師範をも上回ると言われてるの」。その言葉を聞いた瞬間のニアの表情が、すべてを物語っていた。
「そんな強者が手の届く場所にいるのか」。学院生活への期待よりも、強者との出会いへの期待のほうがはるかに大きい。その師匠のほうは、一瞬寒気を感じていたようだ。まだ顔も合わせていないのに、すでに標的として見定められてしまったのだから無理もない。
侍女たちの火花とレリアレッドの本音
侍女同士の可愛さ論争
ニアたちが食事をしている間、侍女たちも言葉を交わしていた。レリアレッドの侍女はリノキスに、ニアについて尋ねる。「尋常じゃないほどに」強い方だと見抜いたうえで、あなたが教育をと問われたリノキスは、「当たらずとも遠からずです」と答える。一番弟子となった前回を思えば、なかなか味のある返しだった。
話題はやがて、レリアレッドのライバル心へ。マジックビジョンでニアを見ては、私の方が可愛い、私の方がもっと上手くやれると言っていたらしい。ニアお嬢様の方が「100倍可愛いけど」と内心で毒づくリノキスに、相手の侍女も黙ってはいない。まだ6歳なのにあの落ち着きぶりは不気味で、「子供じゃなくてお年寄りみたい」だと。
「いずれこいつとは決着をつけてやる」。拳で「お嬢様の可愛さを教えてやる」と燃えるリノキスの姿に、侍女同士の戦いの火蓋まで切られてしまった。主人たちに負けず劣らず、侍女たちも騒がしい。
一緒に広めてあげてもいいわよ
食事の席で、レリアレッドは少し照れながらニアに本音を打ち明ける。一方的にライバル宣言したけれど、今日一日一緒に撮影してみて思った。「あんた思ったよりやるじゃん」。もちろん負けるつもりはない。でも、そっちがその気なら「一緒に広めてあげてもいいわよ」。
ところが当のニアは、まったく話を聞いていなかった。頭の中にあるのは天破流のことばかり。「ぜひ手合わせしたいものだ」と心の中で闘志を燃やすニアに、「話聞いてんの」と叫ぶレリアレッド。ツンデレな歩み寄りが、見事に空振りしてしまうのがおかしかった。
待っていろよ天破流
その夜、機嫌が良さそうなニアに、リノキスはずいぶんと機嫌が悪そうだった。「いずれ決着をつけねばならない相手が現れました」と打ち明けるリノキスに、ニアは「あら羨ましいわね」、私もよと返す。どこのどいつですかと食い下がるリノキスをよそに、ニアの頭にあるのは、明日の身体測定とクラブ見学だけだった。
一緒に寝ましょうとせがむリノキスの声を聞き流しながら、ニアは「待っていろよ」と天破流への思いを募らせる。主人は強者との手合わせを、侍女は相手の侍女との決着を。二人そろって、それぞれの戦いに心を躍らせる夜になった。
第4話のまとめ考察
三人の少女と一人の武人
振り返ってみると、第4話はニア、ヒルデトーラ、レリアレッドの三人がマジックビジョン普及のために手を組んだ回だった。世界の覇権を夢見る野心家の王女、ライバル心むき出しの令嬢、そして戦うことしか考えていない元英雄。目指すものはそれぞれ違っても、魔法映像を広めるという一点で三人はつながった。
その一方で、ニアの心を一番強くつかんだのは、学院生活でも新しい友人でもなく、天破流という強者の存在だった。レリアレッドの歩み寄りを聞き流してしまうほどの熱中ぶりは、いかにもこの作品の主人公らしい。可愛らしい少女たちの日常の裏で、ニアの笑顔だけが別の意味を帯びている。
家の財政を背負う子どもたちの姿も印象的だった。リストン家もシルヴァー家も、放送局のために多額の借金を抱えている。華やかなタレント活動の裏にある切実な事情が、三人の協力関係に現実味を与えていた。
学院という新しい舞台、増えていく仲間、そしてまだ見ぬ天破流の師範代代理。ニアの戦いと、三人のタレント活動がどう絡み合っていくのか。学院生活は、ニアにとってかつてないほど刺激的なものになりそうだ。




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