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天使たちの猛攻が続く隔離空間で、熾天使の攻撃を受けた佐々木は下半身を失う大けがを負ってしまう。回復魔法も追いつかず、弱っていく佐々木の姿に、お隣さんは大粒の涙をこぼす。そのとき彼女の胸によみがえったのは、幼い日に佐々木が見せてくれた、あるヒーローのような姿だった。お隣さんの記憶、アバドンとの取引、そして重すぎる想いまで、第5話を振り返る。




第5話「英雄と想い」
第5話「英雄と想い」は、隔離空間で大けがを負った佐々木と、その姿を前にしたお隣さんの記憶が重なっていく回だった。幼い日に見た佐々木のヒーローのような姿、アバドンが語った隔離空間の本当の仕組みと協力の申し出、そして帰宅したお隣さんの胸に募っていく想い。タイトルの「英雄」と「想い」がそのまま形になったような第5話を振り返っていく。
足がない
天使たちに襲われていたお隣さんを助けに入った佐々木。気がつけば、その下半身は失われていた。「足がない」という一言の軽さが、かえって事態の深刻さを際立たせる。回復魔法をかけても、傷の治りがまるで追いつかない。
「ほんと相性が悪いよね僕たち」というぼやきに続いて、「これは困ったな」とつぶやく声。命に関わる大けがなのに、どこか淡々としているのが佐々木らしくもあり、見ていて怖くもあった。
僕の分も幸せに
血の気を失っていく佐々木に、お隣さんは「おじさん死なないで」とすがりつく。それでも佐々木の口から出てきたのは、「君が無事でよかったよ」という言葉だった。「私なんてどうでもいいです」、「それよりもあなたが生きてください」と泣き叫ぶお隣さんに、佐々木は「どうか 僕の分も幸せになってください」、「君はまだ若いんだから」と返す。
自分が死にかけているのに、最後まで相手の幸せを願ってしまう。この優しさこそが、お隣さんにとっての佐々木そのものなのだと思う。大粒の涙をこぼしながら佐々木を抱きかかえるお隣さんの姿には、胸を締めつけられた。
お隣さんの記憶
生かされている私
佐々木の命が尽きかけるなか、お隣さんの心に浮かんだのは、これまでの日々だった。「私はおじさんに生かされている」。何の力もない子どもだった彼女は、母のもとから逃れることも、佐々木の差し入れを拒むこともできなかった。「なんて情けない生き物なんだろう」。
自分が別の何かに上書きされていくような感覚の中で、お隣さんはふと思い立つ。「与えられるばかりではない」、「与え返すことができたのなら」、自分を取り戻せるかもしれないと。そして「おじさんは私と同じように孤独な人間だ」、「私と彼とは似た者同士」と考えるようになる。施しを受けるだけの関係を、与え合う関係に変えたい。お隣さんの想いの出発点が、ここにあったのだとわかる。
本物のヒーロー
思い出されたのは、幼いお隣さんが見知らぬ男たちに声をかけられた日のこと。母親が車にひかれた、すぐ病院に来てほしい。そう言って連れて行こうとする男たちの前に現れたのが、佐々木だった。
佐々木は「その子の父親ですが」と名乗り、職場の連絡先や上司の名前を尋ねて男たちを追い詰めていく。「妻の職場であれば私も存じております」のひと言で、男たちは「おい逃げるぞ」と退散した。「おじさん今ナイフが」と驚くお隣さんに、佐々木は「大丈夫」、「声をかける前仕込んでおいたんだよね」、「それとカメラも」と答える。社会人らしい落ち着いた対応が、何とも佐々木らしい。
お隣さんの「まるで映画やアニメの主人公みたいです」に、佐々木は「そ、そうかな」と照れくさそうに笑うだけ。けれど「幼い私の目に」、「おじさんは本物のヒーローみたいに見えて」。タイトルの「英雄」が、派手な戦いではなく、この小さな日常の一場面を指していたのだと気づいて、思わずうなってしまった。
恩返しのつもりが
後日、「この前の犯人」、「捕まったそうだよ」と教えてくれた佐々木に、お隣さんは「あの恩返しをさせていただけませんか」と申し出る。「何でも言ってもらえると嬉しいのですが」。
ところが佐々木は、「通販で頼んでた食料品が届く予定なんだ」と言い出し、「調子に乗って買いすぎちゃったんだよね」と、また差し入れをくれようとする。「あのそういったことではなくて」、「もっとおじさんに得があるような」と食い下がっても、結局また何かをもらってしまう。
「ただ一方的に与えられる施しは」、「いとも簡単に自尊心を腐らせる」。それでも与え返すことができたなら、「私は自分を取り戻すことができる」。佐々木にとっては何気ない親切でも、お隣さんにとっては、受け取るたびに返したいものが積み重なっていく。「互いに足りないものを補完し合えると思うんです」という言葉には、恩返しという言葉では収まりきらない重さがあった。
アバドンとの取引
隔離空間の本当の仕組み
気がつくと、佐々木は元の世界に戻っていた。「無事を喜び合うのも結構だけど」、「時と場所を選んだらどうだい」と声をかけてきたのは、少年の姿をしたアバドンだ。「やあ この姿で会うのは2度目になるかな」。天使の側については「少なくとも使徒は追い払ったよ」という。
佐々木は自分なりの理解を口にするが、アバドンには「なんだいその微妙に間違っている認識は」と返される。「まず数は関係ない」、「そして対象は天使や悪魔ではなく使徒だよ」。天使の使徒が遠ざかったことで、「悪魔の使徒である彼女との間に距離が生まれて隔離空間は消失したんだ」。「それで自分は九死に一生を得たというわけですか」と納得する佐々木。お互いに相手を助けたことで、「お互いにイーブン」というのもいい。
面白いのは、「ていうか君本当に何も知らないんだね」と言うアバドンの側も、「ただそれは僕らとしても全く同じなんだけどさ」と、佐々木のことを何も知らないという点だ。「言っただろ君は不確定要素だと」。佐々木は「天使や悪魔の人たちは異能力の存在をご存知ではないみたいだ」と冷静に分析し、お隣さんのためにも敵対は避けたいと考える。互いに手の内を探り合う、大人の駆け引きが始まった。
成人している同僚
そこへ「わしもそっちに行って大丈夫」、「急に襲われたりしない」と、二人静がおそるおそる近づいてくる。「おじさんの知り合いですか」と尋ねるお隣さんに、佐々木は「ええまあ職場の同僚とでもいうか」。「それにしては小さいように見えます」と首をかしげるお隣さんに、「ああ見えて君より年上というか成人しているんだよ」と説明するのがおかしかった。
ただ、二人静を見つめるお隣さんの目つきには、どこか警戒の色がにじんでいた。このときの小さな違和感が、最後の場面につながっていく。
協力の意思
場所を変えて、アバドンは天使と悪魔の代理戦争について説明する。佐々木の「天使と悪魔の代理戦争とはまたスケールの大きい」という感想はもっともだ。そしてアバドンは、「もし仮に君があと一歩だけ彼女に近づいていたら」、「僕と出会うことはなかったんじゃないかな」と、お隣さんの孤独をさらりと口にしてしまう。「アバドン そういうことは言わないでください」と止めるお隣さんに、「だって事実だろ」。容赦のない悪魔だ。
協力すれば「人知を超えた力でお願い事を叶えてくれるのですよね」と確認する佐々木。「わしそういう危ないのは嫌じゃの」と言いながら、「確かに興味深い話ではあるの」と食いつく二人静に、「二人静さんこの方に頼み込んで呪いを解くつもりでしょ」とすかさずつっこみが入り、「な、なぜバレたのじゃ」。このやりとりには笑ってしまった。
アバドンが「困ったことに僕の相棒はかなりの人見知りなんだよね」と言えば、お隣さんは「アバドンあなたはさっきから余計なことばかり言ってます」とむくれる。佐々木は「なるほど星崎さんと同じタイプか」と思い、自分も大差ないと振り返りつつ、「最近はピーちゃんが一緒だから毎日が充実しているけど」と心の中でつぶやく。こういう地に足のついた独白が、この作品の味わいだと思う。
最終的に佐々木は「いずれにせよ我々には協力の意思があります」と伝える。「おじさん無理はしないでください」、「私は一人でもうまくやれます」と気づかうお隣さん。アバドンに「この子のことがそんなに心配かい」と聞かれた佐々木は、「心配でなければあの場に割って入ったりしませんよ」と返す。アバドンが求めているのは、天使との戦いよりも「人同士のいさかいに助力を求めているんだ」という現実世界での協力。佐々木は「一度持ち帰って検討させてください」と、どこまでも会社員らしく話をまとめた。
お隣さんの重すぎる想い
聞き耳と覗き見
二人静に送ってもらって帰宅したお隣さんは、「またしても 私はおじさんに生かされてしまった」とつぶやきながら、頬がゆるみっぱなし。アバドンに気味の悪い笑みだと言われても、「あなたにそのようなことを言われるのは心外です アバドン」と返す。
佐々木たちが何者なのかわからなかったというアバドンに、お隣さんは「おじさんはおじさんです」、「私にとってはそれで十分です」と言い切り、「相手から教えてもらえるときを待つべきだと思います」ともっともらしく続ける。ところがアバドンに「いつも壁に耳を押し付けて聞き耳を立てているじゃないか」、「窓の外から覗き見していたこともあったね」とばらされ、「おじさんには絶対に言わないでください」。言っていることとやっていることが正反対なのがたまらない。
似た者同士、お似合いの二人
「今はおじさんを感じていたい」。お隣さんの頭の中は、もう佐々木のことでいっぱいだ。「おじさんのことを考えているだけで私はこんなにも幸せになれる」。ここまで純粋に一人の人を想えるのは、ある意味で尊い。けれど、その想いは確実に重い方向へ傾いている。
「大丈夫」、「おじさんと私は似た者同士」、「お似合いの二人なのだから」。そして「今度は私がおじさんのことを助けるのだ」と決意する。「そしてお互いにお互いの血に塗られた私たちは」、「これまで以上に深い間柄になっていく」。助けたい気持ちと、もっと近づきたい気持ちが、きれいに一つに溶け合ってしまっている。
締めくくりは、「でも次に会ったら」、「あの妙な喋り方をする女の素性は確認しないと」。目を光らせるお隣さんの表情に、背筋が冷たくなった。二人静の身が本気で心配になるラストだった。
第5話のまとめ考察
英雄は、小さな日常の中にいた
第5話は、異能力バトルのど真ん中で、佐々木という人の英雄らしさを、幼い日の小さな出来事から描き直した回だった。男たちを追い払った知恵も、差し入れを欠かさない優しさも、死にかけてなお相手の幸せを願う言葉も、どれも派手さとは無縁だ。けれどお隣さんにとっては、それこそが本物のヒーローだった。
同時に、お隣さんの想いの根っこにあるのが、与えられるだけの自分から抜け出したいという願いだと見えてきたのも大きい。佐々木を想う気持ちは純粋だが、その純粋さゆえに、どこまでも重くなっていく。
協力関係の先にあるもの
アバドンとの協力関係は、まだ持ち帰って検討する段階だ。天使や悪魔の側も佐々木の正体を知らず、佐々木もまた二人の全てを知っているわけではない。互いに手探りのまま手を組もうとしている危うさがある。
そしてお隣さんの目は、すでに二人静へと向いている。佐々木を中心にした関係が、これからどう揺れていくのか。英雄と想い、その両方の行方を見守りたい。




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