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五寸釘に隠し撮りされた小太刀との写真をめぐる騒動は、いよいよ前後編の後編へ。証拠を消そうと奔走する乱馬と、クッキーを食べてもらえずに乱馬を疑い始めるあかね。すれ違う二人の行方は、そしてクッキーの運命はどうなるのか。ワニの首輪に隠されたネガ、誤解を深める口づけ直前の合成写真、そしてあかねのクッキーの結末まで、第6話を振り返っていく。




ネガをめぐる攻防
ネガは首輪の中
『らんま1/2【新作】第3期』第6話(通算第30話)「全部食っちゃうぞ」は、前の話の続き。五寸釘に隠し撮りされた小太刀との写真をめぐり、乱馬は証拠を消そうと奮闘する。ところが肝心のネガは、九能家の池で飼われているミドリガメくん、もといワニの首輪の中。一方のあかねは、焼いたクッキーをなかなか食べようとしない乱馬の様子から、小太刀に弱みを握られているのではと疑い始めていた。
前の話から続く騒動の発端は、たった一枚の隠し撮り写真だった。乱馬にしてみれば身に覚えのない話なのに、写真という証拠がある以上、言い訳はなかなか通じない。しかもネガを握っているのが小太刀となれば、まともな交渉が成り立つはずもない。この時点で、ただでは終わらない予感がひしひしと伝わってきた。
あかねは小太刀の部屋に乗り込み、「何をネタに乱馬を脅してんの」と問い詰める。小太刀は「乱馬様と私はもはや恋人同士」と言い放ち、あかねは「何寝ぼけてんのよ」と一蹴する。「あんたに常識について説教されるとは思わなかったわ」というあかねの返しも鋭かった。
乱馬が何かを隠していると察して、自分から真相を確かめに行くあかねの行動力は頼もしい。ただ、その勢いの裏には、乱馬が小太刀に取られてしまうのではという不安もにじんでいる。強気な言葉の端々から、あかねの複雑な気持ちが透けて見えるのが、この場面の味わいだった。
小太刀の部屋という敵地に一人で乗り込むのは勇気のいることだ。けれどあかねは、相手が誰であろうとひるまない。その真っすぐさは乱馬を振り回す原因にもなるけれど、同時にあかねの一番の魅力でもある。
乱馬は、写真を「俺も記念に一枚欲しいんだが」とごまかして小太刀に近づき、ネガのありかを探る。首輪は形状記憶合金で、外すにはお湯につけるしかない。そこで女の姿のらんまが九能先輩を誘い、首輪ごと風呂へ連れ込もうとするのだった。「お互い高校生らしく清く正しい男女交際をすべきではないのか」と言いながら、結局は誘いに乗ってしまう九能先輩の調子のよさに笑ってしまった。
女の姿になれば九能先輩を思いどおりに動かせるという乱馬の作戦は、何度見ても身もふたもない。けれど、その作戦が毎回それなりに成功してしまうのが、九能先輩という人物の面白さでもある。おさげの女にめっぽう弱い九能先輩と、それを利用する乱馬の攻防は、このシリーズの定番の笑いどころだ。
ネガを取り戻すためなら、どんな手段も選ばない乱馬の必死さも笑いを誘う。写真ひとつでここまで右往左往するのは、それだけあかねに誤解されたくないという気持ちの裏返しなのかもしれない。
口づけを交わす直前の模様
ところが、小太刀の口から思わぬ写真が飛び出す。「これをご覧なさい」。「口づけを交わす直前の模様です」と見せつけられたのは、乱馬と小太刀の唇が触れそうな一枚だった。「合成写真だ」と弁解する乱馬だが、あかねは聞く耳を持たない。小太刀に「私とあかねとどっちを取るの?」とまで迫られ、事態は収拾がつかなくなっていく。
小太刀の言い分を信じるなら、乱馬は浮気をしていたことになる。けれど乱馬からすれば、まったく身に覚えのない合成写真だ。互いの言い分が真っ向から食い違う中で、誰の言葉を信じるのか。あかねが乱馬の言葉を信じきれないのは、それだけ小太刀の存在が気がかりだという裏返しでもあるのだろう。
合成写真という言葉が出てきたことで、視聴者にはからくりが見えている。それでも当事者同士は信じ合えずにこじれていく。見ている側だけが真実を知っているもどかしさが、この前後編の大きな楽しみ方になっていた。
九能先輩までが「天道あかね 君を愛する心は変わらんぞ」と割り込み、場は大混乱。逃げ出した乱馬は「あかねのバカヤロウ、どうして人の話を聞かねえんだ!」と叫ぶ。話し合えば話し合うほどこじれていく、このシリーズらしい騒動の連鎖だった。誰か一人でも冷静になれば済む話なのに、誰も冷静になれないところが、らんまの世界の楽しさでもある。
九能兄妹がそろうと、話はとたんに収拾がつかなくなる。兄は兄で自分に都合のいい解釈しかしないし、妹は妹で思い込みの激しさでは負けていない。財力と行動力を持て余した二人に、乱馬とあかねが巻き込まれていく構図は、何度見ても飽きない。
あかねのクッキーと小太刀の手料理
助けてほしいか
乱馬を捜し回るあかねは、九能家の思わぬ罠にかかってしまう。そこへ現れた乱馬は、「助けてほしいか」と意地悪く尋ね、「疑ってごめんなさい 助けてくださいだろ」と迫る。素直になれないあかねは「誰があんたの助けな!」と突っぱね、結局はひどい目に遭ってしまう。どちらも一歩も引かないやり取りが、この二人らしかった。
助けてほしいのに素直にそう言えないあかねと、謝らせなければ気が済まない乱馬。互いに意地を張り合うやり取りは子どもっぽいけれど、だからこそ二人の距離の近さが感じられる。本当に嫌いな相手なら、ここまで意地を張り合うこともきっとないはずだ。
結局、乱馬はあかねを見捨てることなどできない。口では意地悪を言いながらも、きちんと助けに戻ってくる。その一貫した行動こそが、乱馬の本心を何よりも雄弁に物語っている。
さらに小太刀は、ネズミ捕りの解錠用の鍵を手料理の中に落としてしまったという。鍵を探すため、乱馬は小太刀の手料理を夢中で食べ始める。「わたしのクッキーは」、「食べなかったくせに」。あかねの小さなつぶやきが、心にちくりと刺さった。
鍵を探すためとはいえ、目の前で別の女の子の手料理をおいしそうに食べる乱馬の姿は、あかねにとってこれ以上ないほどつらいものだったはずだ。自分のクッキーは食べてもらえなかったのに、という悔しさ。料理が苦手なあかねだからこそ、その一言に込められた思いの重さが伝わってきた。
一方の乱馬も、好きで小太刀の料理を食べているわけではない。あかねを助けるために必死なだけなのに、その姿が誤解を深めてしまう。善意がことごとく裏目に出る展開は、まさにらんまらしいすれ違いの描き方だった。
やきもちもどかすぎるとかわいくねえぞ
鍵を見つけてあかねを解放した乱馬だったが、すねるあかねに「あのな、やきもちもどかすぎるとかわいくねえぞ」と余計なひと言。「なんであたしがやきもちなんか」、「俺が誰の手料理を食おうと関係ねえだろ」と言い合いになり、あかねは帰ってしまう。ところが乱馬の体には、手料理に仕込まれていたしびれ薬が効き始めていた。
乱馬の言葉は、あかねの気持ちを分かっていないようでいて、実は図星を突いているのが厄介だ。やきもちを焼いていると認めたくないあかねと、それをからかわずにはいられない乱馬。二人とも本心では相手を大切に思っているのに、口から出るのは正反対の言葉ばかりなのがもどかしい。
しびれ薬で動けなくなる乱馬の姿には、さすがに同情してしまった。小太刀の手料理に何かが仕込まれているのはお約束とはいえ、これほど見事に引っかかるのも乱馬らしい。あかねのために体を張った結果がこれなのだから、なんとも報われない。
第6話のまとめ考察
じゃあ全部食っちゃうぞ
家に戻ったあかねを励ましたのは姉たちだった。乱馬が手料理を食べたのは、揺すられていたからではないか。「あんなに一生懸命作ったんだもの」、「美味しいって言わせてやりましょう」。一方、小太刀は乱馬に「先ほどの合成写真を真実にいたしましょう」と迫る。その言葉で、あかねも乱馬の言っていたことが本当だったと気づくのだった。
落ち込むあかねを、姉たちがそれぞれのやり方で励ます場面にもほっとさせられた。一家の温かさが、騒がしい本編の中のちょっとした休息になっている。家族に背中を押されて、あかねがもう一度前を向けたことが、終盤のクッキーの場面へとつながっていく。
姉たちの言葉は軽やかだけれど、妹のことをよく見ている。乱馬が手料理を食べた理由を冷静に推理してみせるあたり、天道家の姉妹の頼もしさがよく出ていた。
騒動のあと、乱馬はあかねに「忘れ物だぞ」とクッキーを差し出す。「いらない」と返すあかねに、「じゃあ全部食っちゃうぞ」、「いいんだな」。そして全部食べた乱馬は、案の定具合を悪くしてしまう。それでもあかねの気持ちを受け取るために食べきった乱馬の不器用な優しさが、副題の一言にぎゅっと詰まっていた。
いらないと突っぱねたあかねも、本当は食べてほしかったに違いない。乱馬もそれを分かっていたからこそ、わざと全部食べるという形で受け取ったのだろう。言葉では素直になれなくても、行動で気持ちを伝え合う。二人らしい仲直りの仕方に、思わずこちらまで笑顔になってしまった。
あかねの料理の腕前が相変わらずなのも、この作品らしい落としどころだ。おいしいと言わせる展開を期待させておいて、結局は具合を悪くしてしまう。それでも乱馬は文句を言わずに食べきった。その事実だけで、あかねには十分だったのだと思う。
第6話は、写真とクッキーをめぐる前後編の決着回だった。九能兄妹に振り回され、互いに素直になれない二人がすれ違い続けた末に、最後はクッキーひとつで気持ちが通じ合う。あかねの料理の腕は相変わらずでも、乱馬が全部食べてくれたという事実が、あかねにとって何よりのごちそうだったのだろう。ドタバタの中に、二人の関係の温かさがしっかりと光る一話だった。次はどんな騒動が二人を待っているのか、今から楽しみだ。
振り返ってみれば、今回の騒動の原因はすべて九能兄妹の思い込みと五寸釘の隠し撮りにあった。乱馬もあかねも、ある意味では被害者だ。それでも二人がここまでこじれてしまったのは、互いを特別な存在だと意識しているからこそだろう。どうでもいい相手なら、写真一枚でここまで心を乱されることはない。




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