この記事の作品:
第146話の公式サブタイトルは「ウェーニバルとデカヌチャン、スリープ大作戦!」。睡眠アプリ『Pokémon Sleep』とのコラボ回で、ネロリ博士もワカクサ本島もカビゴンも、ゲームから丸ごと持ち込まれている。ただし中身はコラボの紹介ではない。眠れない原因が二匹の側ではなく、怪談系の配信を楽しんでいた人間の側にあったと分かるところから動き出す。そして怖がらせた配信と同じゴーストタイプに、カレー作りを手伝ってもらう。




第146話「ウェーニバルとデカヌチャン、スリープ大作戦!」で起きたこと(要点だけ)
公式サブタイトルは第146話「ウェーニバルとデカヌチャン、スリープ大作戦!」(※1)。睡眠アプリ『Pokémon Sleep』とのコラボ回で、ゲームの舞台と登場人物がそのままアニメ側へ持ち込まれている。ただし、この回がやっているのはコラボの紹介ではない。眠れない原因を突き止めて、それを取り除くまでの手順を一本かけて描いている。まず起きたことだけ並べておく。
- ウェーニバルとデカヌチャンが眠れない。適度な運動も、寝る前のホットミルクも試したが効かない
- ポケモンのねむりを研究するネロリ博士と出会う。「多くのポケモンはよく眠ると元気になり、自分の力を発揮できるようになる」
- 見守りカメラでお昼寝の様子を確認すると、やはり眠れていない
- 博士が目をつけたのは、デカヌチャンがハンマーを握る手に力がこもっていること
- 原因は、少し前に見ていた怪談系の配信「隙間からおこんばんは」だった
- ネロリ博士のフィールドワークに同行し、ワカクサ本島へ向かう
- 島のカビゴンが発する、ポケモンを眠りに誘う不思議な力を借りる作戦
- ところがカビゴンは空腹で目を覚ましてしまう
- 満腹にして眠らせるため、みんなで「ぜったいねむりバターカレー」を作る
- 材料集めも調理も、島のポケモンたちが手伝ってくれる
- カビゴンは満足して眠り、二匹もようやく眠る
- 最後は、島じゅうのポケモンの寝顔を見て回る睡眠リサーチで締められる
原因はポケモンの側ではなく、人間の側にあった
この回のいちばん面白いところは、眠れない理由が二匹の体調でも性格でもなかったことだ。原因は一緒に暮らしている側が見ていた配信で、しかも本人はそれを娯楽として楽しんでいた。「僕はゲーム感覚で楽しんでたんだ」「でもウェーニバルもデカヌチャンも怖かったのかも」という気づき方をする。楽しんでいた側と怖がっていた側が、同じ画面を同じ部屋で見ていたことになる。
眠れない理由を、内側からではなく外側から潰していく
同じ環境なのに、二匹だけ眠れない
入り口の置き方が丁寧だった。まず体に異常はないと確認され、次に「よく眠るには適度な運動」「寝る前にホットミルクを飲むのもリラックスできていいかもね」という一般的な対策が試される。運動もミルクも効かず、周りは爆睡しているのに二匹だけが起きている。
そこで出てくるのが「同じことして同じもの食べて、同じ場所で寝てるのに、なんで眠れないんだろう」という一言だ。条件を揃えても結果が違うのだから、原因は条件の外にある。この時点で、話は「体調の問題」から「心当たりの問題」へ切り替わっている。
「隙間からおこんばんは」という怪談配信
心当たりはすぐに出てくる。少し前に見ていたのが、ゴーストタイプのポケモンが隙間から出てくるだけという怪談系の配信だった。「今宵はどこの隙間からおこんばんはしてくるのかな?」という煽りに「戸棚の隙間が怪しくない?」と乗って、音がするたびに盛り上がる。画面の前は楽しい。ただし、同じ部屋にいた二匹には逃げ場がなかった。
ここで謝るのが早いのがいい。「眠れない原因を作ったのは僕だったんだ。ごめんウェーニバル、デカヌチャン」と、気づいた瞬間に自分の責任として引き取っている。配信を悪者にする描き方も、二匹を臆病者にする描き方もしない。怖がらせた側が、怖がらせたと認めるところから解決が始まるという順番だった。
ネロリ博士の見立ては、寝顔ではなく「握った手」から入る
先に性格を訊いてから、映像を見る
ネロリ博士の登場が唐突なのはご愛敬として、診断の手つきはかなりまともだった。見守りカメラの映像を見る前に、まず「この子たちの性格は?」と訊いている。返ってきたのは、ウェーニバルは優しくてダンスが好きな明るい子で、真面目で少し繊細なところもある。デカヌチャンは大胆で豪快だが職人気質で、夢中になると他のことが見えなくなりがち、というものだ。
性格を先に聞いておくと、同じ映像から読み取れることが変わる。「もしかすると何かに怯えてるのかもしれないね」という仮説は、繊細さと集中しやすさという二つの情報があって初めて出てくるものだった。
ハンマーを握る力は、防衛本能だった
そして映像から拾い上げたのが、「デカヌチャンのハンマーを握っている手にすごい力がこもっているよ」という一点である。「何かから身を守るために防衛本能がこうさせているのかもしれないね」と続く。眠れていないという結果ではなく、眠りながら身構えているという状態を見ている。
寝顔の研究者が最初に見るのが顔ではなく手だった、というのが利いていた。しかもこの観察があるから、原因が「怖い記憶」だと分かった時点で、対策が「安心できる場所へ連れて行く」に確定する。診断が次の行動をそのまま決めているので、話が寄り道をしない。
ワカクサ本島は、ゲームの最初のフィールドそのものだった
『Pokémon Sleep』の手順を、そのままなぞっている
向かった先はワカクサ本島。『Pokémon Sleep』は、カビゴンがいる島でネロリ博士と一緒にポケモンの睡眠を研究し、寝顔を集めて「ポケモン寝顔図鑑」を完成させるゲームで、ワカクサ本島は最初に選べる唯一のリサーチフィールドにあたる(※2)。ゲーム内の解説も「この地域の一番大きな島」「一番多くポケモンが生息している島」で、画面の端までポケモンが埋まっている今回の絵づくりと噛み合っている。
放送日にあわせて、公式からも『Pokémon Sleep』からのプレゼントがあるという告知が出ていた(※3)。コラボであることを隠していない回だが、作りとしては「ゲームの紹介をアニメでやる」ではなく「ゲームの舞台で、アニメ側の困りごとを解決する」形になっている。
ゲームの前提を、一度こわしてから始める
面白いのはここからだ。ゲームでは、プレイヤーがよく眠るほどカビゴンの「ねむけパワー」が大きくなり、ポケモンが集まりやすくなる(※2)。眠りを引き寄せる力の持ち主がカビゴンだ、という前提である。ところがこの回では、その力の持ち主が空腹で起きてしまう。
「カビゴンは眠ることも好きだけど、食べることも大好きなんだ」で片付けられるのだが、おかげで話が一段増える。眠らせてもらいに来た側が、先に相手を眠らせなければならないという順番になるからだ。借りに来た力を、自分たちの手で立て直してから借りることになる。
「怖くない」を、説明ではなく共同作業で示した
怖がっていた相手に、手伝ってもらう
「ぜったいねむりバターカレー」は、カビゴンの大好物として提案される。「これをもりもり食べてお腹いっぱいになれば、すぐに眠くなるよ」「ぜったいねむりバターカレーは辛くないんだ」と説明され、材料はほっこりポテトとリラックスカカオに、トマトとミルクを合わせた四種類。「カビゴンはものすごくたくさん食べるから、結構大変な仕事になるよ」という前置きどおり、量がとにかく多い。
そこで手伝ってくれるのが島のポケモンたちで、調理にはジュペッタとゴーストも加わる。つまり、二匹を怖がらせた配信に出ていたのと同じゴーストタイプだ。見張りを任されたデカヌチャンに向けて「ゴーストはお腹が空いてるだけで、怖いことはしてないから安心して」と説明が入り、そのあと本当に一緒にうちわで火加減を調整することになる。怖くないと言葉で言うだけでなく、隣で同じ作業をさせるのがうまい。
ウルトの「真心」も、まったく同じ形で扱われている
カレー作りで大切なものとして挙がるのが「真心」で、身振りつきで全員に回ってくる。そこで一人だけ動かないのがウルトだった。照れくさい類の振る舞いから距離を取りたがるのは、いかにもこの人らしいところだ。
かけられる言葉が「ウルトの気持ちは痛いほどわかる。でも、カレーには真心が必要なんだ」「大丈夫、真心は怖くない」だ。直前にゴーストへ向けられた「怖いことはしてないから安心して」と、言い方がそっくり同じになっている。怖がっているのはポケモンだけではない、という並べ方で、この回のテーマがギャグの側にも一度通されていた。
まとめ|寝顔を見に行く場面で終わったのが、いちばん効いている
同じポケモンでも、寝顔は様々
カビゴンが満腹になって眠り、二匹もようやく眠る。そこで話を終わらせず、最後に置かれたのが睡眠リサーチだった。プリンのぼんやり寝、マンキーの怒り寝、ウソッキーの木のふり寝、楽しい夢を食べるとピンク色の煙を吐き出すムンナの夢の煙寝、そしてピカチュウのしっぽ立ち寝。トゲキスにいたっては、二匹並んでいるのに寝方が違う。
「同じポケモンでも寝顔は様々なのさ」という一言が、そのまま冒頭の「同じことして同じもの食べて、同じ場所で寝てるのに」への返事になっている。条件を揃えても眠り方は同じにならない、というのがこの回の答えだった。眠れなかった二匹を治す話が、眠り方は一つではないと確認する話で終わるのは、きれいな畳み方だと思う。
前回と並べると、眠れない理由が正反対になっている
第145話でも眠れない子が出てくる。ナヴィが夜の取材を楽しみにしすぎてお昼寝に失敗し、出発の時間には寝てしまって留守番になった回だ。前回は楽しみで眠れず、今回は怖くて眠れない。二週続けて同じ症状を、正反対の原因で出してきたことになる。しかも前回は怪奇現象が全部こんらんの見せた幻で、今回は怖いものの正体が身近な配信だった。「見えているものを疑う」話のあとに「知らないものを知りに行く」話を置いた並びである。
次回は初めてのポケモンコンテスト(予想)
次回は第147話「激エモ!ポケモンコンテストざます!!」。公式のあらすじによれば、リコがマスカーニャ、ラウドボーン、ウェーニバルと一緒に出場し、コーチを自称するナヴィの特訓を受けて本番に臨む(※4)。会場にはピカチュウアイドルグループ「キューティーピカピカ」をはじめ実力者が集まり、リコは不安になるという。今回ぐっすり眠ったウェーニバルがそのまま舞台に立つ流れなので、眠りの回は次回の下準備でもあったと読める。コンテストは戦って勝つ場ではなく見せて魅せる場なので、ダンスが好きだと紹介されたウェーニバルの性格がここで効いてくるはずだ、というのが今のところの予想である。
出典
※1 テレビ東京アニメ公式「ポケットモンスター」エピソード(第146話「ウェーニバルとデカヌチャン、スリープ大作戦!」2026.08.21放送)tv-tokyo.co.jp
※2 『Pokémon Sleep』ゲームシステム・リサーチフィールド(ネロリ博士/ワカクサ本島/ねむけパワー/ポケモン寝顔図鑑)ja.wikipedia.org
※3 テレビ東京アニメ公式「ポケットモンスター」おしらせ「すやすやプレゼントキャンペーン」(2026.8.14)tv-tokyo.co.jp
※4 テレビ東京アニメ公式「ポケットモンスター」第147話「激エモ!ポケモンコンテストざます!!」あらすじtv-tokyo.co.jp




関連作品:






















コメント