この記事の作品:
『バーテックスフォース』第4話「姉と弟」は、無人島に身を寄せたバーテックスの5人が、EDVAの正体を突き止めるため、明を囮にしてバトノイドを捕まえる作戦に挑む回だった。無人島でのサバイバル、父との約束に縛られた晴香、そして二人で強くなりたいと告げた明まで、東道姉弟の関係が大きく変わった第4話を、笑いと熱さを交えて場面ごとに振り返っていく。




第4話 無人島へ
『バーテックスフォース』第4話「姉と弟」は、5人がそろったバーテックスのメンバーが無人島に身を寄せ、EDVAの正体を突き止めるための作戦に挑む回だった。明を囮にする作戦、それに反発する晴香、そして初めて肩を並べて戦う姉弟。タイトルどおり、東道姉弟の関係が大きく変わった第4話を、場面ごとに振り返っていく。
アランの中の拡張空間
冒頭、明の腕の治療が終わる。ララは装置を動かしただけだと言うが、テイア星の技術はすごい。トランスチェンジしたアランの車内は、見た目に比べて室内が広すぎる。それはテイア人が作り出した拡張空間だからだという。なぜそんなことまで知っているのかと尋ねられたララの答えは、「秘密」。ララにもまだ明かされていないことが多そうだ。
テイア星の技術、アランの正体、そしてララの知識。この作品は、少しずつ謎を明かしながら物語を進めていく。冒頭のわずかな会話の中にも、これから先の展開につながりそうな手がかりがいくつも散りばめられていて、何気ない場面も見逃せない。とくにララの「秘密」という一言は、軽い調子だっただけに、かえって気になる余韻を残した。
EDVAの情報を持っているはずのアランは、脱出のときに電磁パルス攻撃を受けてデータが吹き飛んでしまったという。「使えない猫」と言われ、「猫じゃねえ」、「高機能汎用型アシストモジュールだ」と言い返すアラン。わからないことだらけの中で、明は言う。「僕たちが地球を守らなきゃいけないってこと」、「それだけは確かです」。
無人島サバイバル
無人島に到着したものの、アランが積んできた食料も何もかも落としてしまう。夏休みの宿題まで積んでいたと嘆く明に、思わず笑ってしまった。街に戻れば防犯カメラに映ってバトノイドが来るかもしれない。一般人を巻き込まないために無人島を選んだ以上、水と食料の確保が最優先だ。
サバイバルに詳しそうなエレノアは、学んだのは戦闘技術だけだと言い切る。それでもエンジンを使った豪快な漁で魚を手に入れ、陽子のエンジンで魚を焼く。ララは肉も魚も食べず、果物を探しに行く。それぞれの個性が見える島での生活は、戦いの合間のひと休みのようで楽しい。ジャミングベルトのおかげで、エンジンを使ってもEDVAに見つからないのも心強い。
食料を失ったアランへの冷たい視線や、魚を何匹も平らげるアランの食欲など、細かな笑いどころも多い。バーテックスのメンバーはそれぞれ癖が強いが、無人島という閉じた空間で共同生活を送ることで、その癖がぶつかり合い、少しずつ互いを理解していく。重い戦いの物語の中で、こうした日常の場面があることで、キャラクターたちへの愛着がぐっと深まっていく。
ただ、明だけは何もさせてもらえない。手伝えることはないかと聞いても「ない」。水くみに行こうとすれば、晴香が「ダメ水は私が汲んでくるから」と止める。「なんでだよ僕だってできるよ」という明の不満は、この回を通して少しずつ膨らんでいく。
晴香が明に何もさせないのは、意地悪ではなく心配からだ。それは明にも分かっている。けれど、何もさせてもらえないことは、自分が役に立たないと言われているのと同じように感じられるのだろう。守られる側のもどかしさが、明の表情からひしひしと伝わってくる。バナナの葉を集めて戻ってきた明の手が真っ赤になっていたのも、自分にできることを必死に探した証のように見えた。
陽子と晴香
夜、魚を焼くのに失敗して落ち込む陽子に、晴香が声をかける。初めて見たときから思っていた、陽子のエンジンはかっこいい。「めっちゃかっこいいじゃん」。自分のエンジンが怖がられてきた陽子にとって、その言葉はどれほどうれしかっただろう。「アキラの命の恩人だよ」とお礼を言う晴香の姿からは、弟を何より大切に思う気持ちが伝わってくる。
前回、心の傷を乗り越えてエンジンを使った陽子が、ここで改めて仲間から認められる。お菓子を半分こする二人の姿はほほえましく、チームが少しずつ一つになっていく過程が丁寧に描かれていた。陽子がいることで、晴香の優しい一面も自然に引き出されている。
姉としての晴香は弟に過保護だが、仲間に対してはこんなにも素直に感謝を伝えられる。その対比が、晴香という人物の奥行きを感じさせた。陽子にとっても、自分のエンジンを肯定してくれる仲間の存在は大きな支えになるはずだ。この夜の小さな交流が、のちの作戦での陽子の立ち位置にもつながっていくように思えた。戦いの合間に描かれるこうした交流が、チームとしての厚みを少しずつ増やしている。
明を囮にする作戦
ララの作戦
パワーダウンからの復旧率は30%にも達しておらず、多くの国でインフラが不安定なまま混乱が続いている。EDVAはバーテックスを見つけるためにあらゆるコンピューターに侵入しており、それがパワーダウンにつながっているのだ。被害を食い止めるためにも、EDVAの正体を突き止めるのが最優先。バトノイドを捕まえて解析すれば、何か情報がつかめるはずだという。
そしてララが立てた作戦は、明に囮になってもらうことだった。晴香は「ふざけないで」と猛反発し、陽子も反対する。それでも明は「僕やります」と手を挙げる。EDVAを倒さない限り、明とENIAは狙われ続ける。危険なのはどちらにしても変わらない。
「今の明とENIAじゃ戦力外だしな。」という言葉に、「(ララ)今の?」と返すやり取りが印象的だった。今はまだ戦力外でも、これから変わる可能性がある。その含みが、明の決意を後押ししているように見えた。「お父さんたちが守った地球を」自分も守りたい。明のまっすぐな思いに、晴香も最後には折れるしかなかった。
囮という危険な役目を、明は自分から引き受けた。パワーダウンで苦しんでいる人がたくさんいる、それを止めたい。「僕だって守りたいんだ」という言葉には、守られてばかりの自分から抜け出したいという思いも込められていたのだと思う。晴香が反対すればするほど、明の決意は固くなっていく。この時点で、姉弟の思いはすれ違ったままだった。
ひとりで戦う晴香
作戦は単純だ。明を島に残し、ほかのメンバーは島を囲む。明がベルトを外してENIAを装着すれば、それに反応してバトノイドが現れる。島に上陸したところを四方から攻撃して捕獲する。ところが晴香は、配置につく前に通信を切ってしまう。
晴香はひとりでバトノイドに立ち向かっていた。「来なさい!バトノイド!」、「明のところには絶対に行かせないから!」。けれど相手は速く、晴香は苦戦を強いられる。そこで明かされるのが、父との約束だった。お父さんが帰ってくるまで、アキラは私が守るから。晴香を縛っていたのは、父と交わした約束だったのだ。
これまで晴香が明を過剰なほど守ろうとしてきた理由が、ここで腑に落ちた。弟を心配して何が悪いのか、と叫ぶ晴香の姿は痛々しい。けれど、その約束を守ろうとするあまり、仲間との作戦まで投げ出してしまったのも事実だ。守ることが目的になってしまった姉の危うさが、はっきりと描かれていた。
父との約束は、晴香にとって生きる支えであると同時に、重い鎖でもあった。弟を守ることだけを考えるあまり、弟の気持ちも、仲間との連携も見えなくなってしまう。晴香がひとりで突っ走ったのは、明を信じていなかったからではなく、約束を果たせなくなることが何より怖かったからなのだろう。そう考えると、彼女の無茶もどこか切なく見えてくる。
第4話のまとめ考察
二人で強くなりたい
そこへ駆けつけたのは明だった。「バカは姉ちゃんだろ」と言い返す明は、さらに続ける。「こんなのおかしいよ」、「こんな無茶して守ってもらってもちっとも嬉しくないよ」。そして、「僕は守ってもらいたいんじゃない」、「僕だって姉ちゃんを守りたいんだ」、「二人で強くなりたいんだ」。
守られるだけの弟から、姉を守りたい弟へ。一方的な関係から、並び立つ関係へ。明の言葉を受けて、晴香も「そうだね アキラ」とうなずく。二人の連携でバトノイドを追い込み、最後は明の後ろ回し蹴りが決まる。「後ろ回し蹴りで決めるなんて すごいじゃない」と喜ぶ晴香の笑顔が、これまでで一番晴れやかに見えた。
晴香は心の中で父に語りかける。アキラはもう自分の助けなんていらないのかもしれない、だからこれからは二人で一緒に頑張っていく。父との約束は、守り抜くことから、一緒に強くなることへと形を変えたのだ。サブタイトルの「姉と弟」が、この場面ですべてつながった。
守る者と守られる者という関係は、一見すると強い絆のように見える。けれど本当の絆は、互いに支え合い、互いの力を信じることから生まれる。第4話は、そのことを東道姉弟の不器用なぶつかり合いを通して描いてみせた。二人で強くなるという明の言葉は、晴香だけでなく、5人のチーム全体にとっての合言葉にもなりそうだ。
作戦は成功かと思われたが、最後には詰めの甘さも露呈し、EDVAの側では「宇宙の秩序は私が守る」という不穏な言葉が響く。EDVAなりの正義で動いているのか、それとも別の目的があるのか。謎はまだ多い。それでも第4話は、晴香と明が初めて対等な姉弟として並び立った、シリーズにとって大きな一歩となる回だった。陽子やアランを含めた5人のチームが、これからどんな戦いを見せてくれるのか楽しみだ。
明の後ろ回し蹴りが決まった瞬間は、この回でいちばん胸がすく場面だった。ずっと守られてきた弟が、姉と息を合わせて敵を倒す。小さな一撃に、明の成長と姉弟の新しい関係が詰まっていた。
戦いの後、晴香が仲間たちに素直に謝る場面もよかった。ひとりで突っ走ったことを認め、仲間の無事を喜び合う。姉弟の関係が変わったことで、晴香とチームとの関係も一歩前に進んだのだと思う。EDVAの正体という大きな謎は残ったままだが、バーテックスがようやく本当のチームになり始めたことが感じられる回だった。




関連作品:






































コメント