この記事の作品:
『東京リベンジャーズ【三天戦争編】』第55話は、マイキーの手を握ったタケミチが、東卍解散から2年後の2008年へとタイムリープする回だった。六破羅単代・梵・関東卍會が並び立つ三天時代、それぞれの夢へ進むかつての仲間たち、そしてドラケンをも吹き飛ばした寺野サウスまで、いよいよ最終章の幕開けとなった第55話を場面ごとに振り返っていく。




第55話 10年前へのタイムリープ
俺高校生になってる
『東京リベンジャーズ【三天戦争編】』第55話は、マイキーの手を握ったタケミチが目を覚ます場面から始まる。そこは2008年。「俺高校生になってる」。これまでは12年前に戻っていたのに、今回は10年前。山岸やマコト、タクヤ、アッくんたちも、みんな少しだけ大人になっていて、教室では八戒の噂話まで聞こえてくる。
驚いたタケミチが向かったのは千冬のところだった。「未来のマイキー君と握手したんだ」、「そしたら戻ってきちゃった」。理由は分からない。けれど、「あの人が」、「助けてって言ってるんだ」。前回、ようやくマイキーの口から引き出した助けてくれという言葉が、そのままタケミチを新しい過去へ連れてきたのだと思うと胸が熱くなった。
千冬は、トリガーになる相手次第で戻る時代が変わるのかもしれないと推測し、「そう簡単に未来へは戻れそうにないな」とつぶやく。これまでの直人との握手とは違う、マイキーとの握手でのタイムリープ。いつでも未来へ戻れるわけではないという緊張感が、最終章の始まりにふさわしい重さを与えていた。
これまでのタイムリープは、いつも12年前の中学時代への移動だった。それが今回は10年前、しかも高校生のタケミチになっている。中学の頃とは周りの人間関係も勢力図もまるで違い、タケミチがこれまで積み上げてきた経験がどこまで通用するのか分からない。見慣れた仲間の顔が少しずつ大人びている光景に、ほっとするのと同時に、知らない世界に放り出された心細さも感じた。
三天時代
マイキーが今どうしているのかを尋ねるタケミチに、山岸が東京の不良界の今を解説する。「東卍の解散から2年」、関東を制した東卍がいなくなった東京は「群雄割拠の東京戦国時代に突入した」。ところが三人のカリスマの出現で、その混乱にはたちまち終止符が打たれたという。
港区を拠点とする最大勢力、六破羅単代の総代・寺野サウス。新宿を拠点とする謎の集団、梵。そして渋谷を拠点とし、無敵を謳う関東卍會の総長、佐野万次郎。今の東京は、この3チームによる三つ巴の均衡状態、「三天時代になっているんだ」。マイキー級があと二人と聞いて、タケミチが青ざめるのも無理はない。寺野サウスについては、ブラジル出身で、幼い頃に人を殺したという噂まであるらしい。山岸のいつもの解説役ぶりが、ここでも頼もしかった。
一方、関東卍會を率いるマイキーは、「東京に俺ら以外のチームはいらねえんだよ」と言い放ち、圧倒的な力で相手をねじ伏せていた。未来では梵天を率いていたマイキーが、なぜすぐに新しいチームを作ったのか。「何のために東卍解散したんだよ」と戸惑うタケミチは、周りを巻き込みたくないと言っていたマイキーの言葉を思い出す。
けじめと決意
視野が狭くなりかけたタケミチに、千冬は「まずけじめつけなきゃいけない相手がいるんじゃない」と声をかける。向かった先はヒナのところ。開口一番、「俺、結婚すっ飛ばして死んじゃった」と謝るタケミチと、結婚という言葉に目を丸くするヒナのやり取りには、思わず笑ってしまった。
あいつを助けないと終わらないと打ち明けるタケミチに、ヒナは、たとえその選択が間違っていて最悪の未来になったとしても「それでもヒナは君を応援するよ」と言い切る。どんな未来でも変わらずにタケミチを信じてくれるヒナの強さが、本当にまぶしい。そしてタケミチは決意する。「佐野万次郎をぶっ飛ばす」。助けるためにぶっ飛ばすという、タケミチらしいまっすぐな答えだった。
ヒナの言葉には、何度も未来で失われてきた彼女だからこその重みがある。それでも彼女は、タケミチの選択を責めることなく背中を押す。結婚をすっ飛ばして死んでしまったと謝る場面の笑いから、真剣な決意へと流れていく会話の温度の変化が見事で、この二人の関係がシリーズの芯にあることを改めて感じさせてくれた。
2年後の仲間たち
モノホン
マイキーをぶっ飛ばすには仲間集めが必要だと考えた千冬とタケミチの前に、八戒が現れる。付き合えと連れて行かれた先にいたのは、「林田春樹」ことパーちんと、ペーやん、そして三ツ谷だった。パーちんが出所していることに驚くタケミチに、それはいつの話だと返されるのも、2年という時間の重みを感じさせる。
未来で不動産会社を営んでいた二人は、この時代から部屋探しを手伝っていたらしい。小さなアトリエを借りたい三ツ谷と、柚葉と住むのが嫌で一人暮らしをしたい八戒。部屋の条件にうるさい三ツ谷と、ろくな部屋を見せないパーちんの言い合いや、どうせ親の金だろうと言われる八戒など、かつての東卍メンバーがわいわい騒ぐ姿が懐かしくて楽しかった。物件の条件に仕事場不可と書かれているのに候補に入れてしまうパーちんと、オーナー次第だからとフォローするペーやんの掛け合いも、二人の未来の姿を知っているだけに微笑ましい。抗争に明け暮れていた中学時代とは違う、穏やかな日常の手触りが確かにここにはあった。
ここはマイキー君が守ってくれた未来
仲間に誘ってみろよと言われながらも、タケミチは結局誘わなかった。「やっぱ頑張ってる人たち見てっと なんか誘いづらくてさ」。三ツ谷たちは前に進んでいて、八戒もいつか大物になる。千冬もペットショップでバイトをしていて、未来で自分の店を持つ夢へ向かっている。「2年経って 変わってるんだ」、「中学の頃とは違うんだ」。
千冬の夢、三ツ谷の夢、パーちんとペーやん、モデルになる八戒、ラーメン屋のスマイリーとアングリー、美容師になるアッくん。タケミチが思い浮かべるみんなの未来は、どれも東卍が解散したからこそたどり着けたものだった。「ここはマイキー君が守ってくれた未来なんだ」、「巻き込んじゃダメだ」、「俺一人でやらないと」。仲間を守りたいからこそ一人で背負おうとする姿は、皮肉にもかつてのマイキーと重なって見えた。
前回、マイキーに向かってなんでもかんでも一人で背負いやがってと叫んだのはタケミチ自身だった。その彼が、今度はみんなを巻き込まないために一人で戦おうとしている。仲間の幸せを願う気持ちが、結果として仲間を遠ざけてしまう。このすれ違いが三天戦争編でどう描かれていくのか、とても気になるところだ。
ドラケンと六破羅単代
マイキーに手を出すな
あてもなく悩むタケミチに電話をくれたのはドラケンだった。直してもらったのは、マイキーからもらったバブ。「俺」、「ずっとマイキー君に助けられてきました」、だから今度は自分が助けたいと話しかけたタケミチに、ドラケンは「マイキーはもうどうにもなんねえ」と首を振る。
「あいつは俺らと決別した」、「マイキーに手を出すな」、「平気でお前を殺すぞ」。誰よりもマイキーのそばにいたドラケンがここまで言うことの重さに、関東卍會のマイキーが東卍の頃とはまったく違う存在になってしまったことを思い知らされる。
それでも、ドラケンがわざわざタケミチを呼び出してこの言葉を伝えたこと自体に、彼なりの優しさを感じた。マイキーのバブを整備してタケミチに渡し、危険から遠ざけようとする。もう関係ないと言いながら、マイキーのことも、タケミチのことも見捨てきれていないのがドラケンらしい。
最強は食い殺されるまで最強でいろ
そこへ、イヌピーを狙って押し寄せてきたのが、六破羅単代の大軍と、その総代・寺野サウスだった。「俺の仲間になれ」と迫るサウスに、ドラケンは「俺はもう引退した」と断るが、サウスは聞く耳を持たない。次の瞬間、あのドラケンが一撃で吹き飛ばされた。「ドラケン君が浮いた」という光景は、これまでのシリーズを見てきた身には信じがたいものだった。
「最強は食い殺されるまで最強でいろ」、「それが弱肉強食の世界だろが」。不良の時代を作るという思想を掲げ、同じ思想を抱いた者たちが東京にいる、それをぶち壊すためにここへ来たというサウスは、「俺の元につくか」、「ここで死ぬかの二択だ」と迫る。その矛先は、元一番隊隊長のタケミチにまで向けられた。タイムリープ早々の大ピンチに、思わず息をのむ。
その窮地に割って入ったのが、梵だった。「人の上に立つならよ 後ろもちゃんと気にかけろ」。三天のうち二つのチームがいきなりこの場にそろってしまい、物語は一気に混沌へと突き進んでいく。
わずか一話の中で、三天のうち二つのチームの力が見せつけられたことになる。ドラケンでさえ太刀打ちできないサウスと、その背後を突ける梵。そして、まだ姿をはっきりと見せない関東卍會のマイキー。タケミチが一人で立ち向かうには、あまりにも大きすぎる相手ばかりだ。この絶望的な状況こそが、仲間の力が必要になる理由として描かれていくのだろう。
第55話のまとめ考察
マイキーが守った未来と、タケミチの決意
第55話は、三天戦争編の本当の幕開けとなる回だった。2年後の東京は、仲間たちがそれぞれの夢へ向かって歩き出した優しい世界であると同時に、三つの巨大な勢力がにらみ合う危うい世界でもある。仲間を巻き込まないために一人で戦おうとするタケミチの決意は、マイキーが東卍を解散したときの思いとそっくりで、その皮肉が胸に刺さった。
ドラケンを一撃で吹き飛ばした寺野サウスの圧倒的な強さ、そして割って入った梵。タケミチはこの三天の争いの中で、どうやってマイキーにたどり着くのか。助けてと言ったマイキーの手を、今度こそ最後まで握り続けられるのか、目が離せない。
それにしても、未来の仲間たちの夢がこれほど具体的に描かれたのは、この先の戦いの重さを際立たせるためなのだと思う。守りたいものがはっきりしているほど、それを失う怖さも大きくなる。タケミチが一人で抱え込もうとする気持ちも、仲間を頼ることの大切さも、どちらも分かるからこそ、彼がどんな答えを出すのかを見守りたくなる。




関連作品:




















コメント