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『朱色の仮面【第1クール】』第4話「真実と嘘」は、ペルたちがマフィアの抗争で荒れる街ガロファノを訪れる回だった。人が消えるというストレーガ博物館、周りの人間の本音をさらけ出してしまう伝心の仮面、そしてその仮面が取れなくなった少女ティナと、娘を助けたいと泣き崩れる母モレノ。本音と建前が激しく交錯する第4話を、場面ごとに順に振り返っていく。




第4話「真実と嘘」 本音が筒抜けになる街
腹の底までは隠せない
『朱色の仮面【第1クール】』第4話は、不穏な場面から始まる。「私は正義そのものだ」と胸を張る警察署長。ところが、本人が口にしていないはずの本音が次々と声になって漏れ出し、街の寄付金を着服していることも、その金の隠し場所まで、すべてが明るみに出てしまう。「口先や立場はご立派でも」、「腹の底までは隠せない」。冒頭から、この回のテーマがはっきりと突きつけられた。
署長を脅して得意先に引き込んだのは、急速に勢力を広げているストレーガの組織だ。そこへ、クラウンと呼ばれる人物も姿を見せ、「この先も持ちつもたれつの関係でいようじゃないか」と言葉を交わす。そして、その力の中心にいたのが、少女ティナだった。
「この力があればファミリーはもっと大きくなる」と語りかけられたティナは、「欲にまみれた本音ね」、「耳が腐り落ちそう」と吐き捨てる。人の心の声が聞こえてしまう彼女にとって、ここは欲望の声ばかりが響く場所なのだろう。「無理やり剥がすといい」、「成功したやつは見たことがないがね」という言葉が、彼女の逃げ場のなさを物語っていた。
マフィアの街ガロファノ
一方、ペルたちが向かったのはガロファノ。「よりにもよってガロファノかよ」という反応のとおり、マフィアの抗争で治安は最悪の街らしい。モクの目当ては、定着した仮面を確実に剥がせるという剥がし屋。「あくまで旅のついでだ」と言いつつ、ペルたちの本来の目的は、この街で相次ぐ失踪事件を調べることだった。
ところが着いてみれば、観光地のような街並みにおいしそうな食べ物。「治安最悪には見えねえよ」という声が出るのも無理はない。ところが路地に入れば、店からみかじめ料を取り立てるチンピラの姿があり、しかもそれが一行の顔見知りだったことから、軽くお灸をすえる展開に。取り立てた額を適正な額に戻させるやり取りがコミカルで、治安の悪さとのギャップが面白い。
そのチンピラから聞き出せたのが、ストレーガの組織がここ数か月で突然勢力を拡大したこと、そして「ボスのマーロン・ストレーガには誰も逆らおうとしないんすよ」という街の実情だった。さらに、仮面屋の失踪について尋ねると、マーロンが経営する博物館で人が消えるという噂が出てくる。物語の舞台が、一気にストレーガ博物館へと絞られていった。
ストレーガ博物館と真実の目
嘘を見抜く像
博物館に入った一行は、来館者の中に「普通の人と違う感じがする」人物がいることに気づく。「よく見てんじゃん」という言葉どおり、警戒心が強く隙のない人間が何人もまぎれていて、それがストレーガの構成員だろうと見当をつける。博物館そのものが組織の監視下にあるという緊張感が、ここから一気に高まっていく。
館内の目玉は、嘘を見抜くという真実の目の像。くだらない売り文句だと思った矢先、デート中の男性の口から「さっさと帰りて」という本音が漏れ、相手の女性が凍りつく。「お前も将来変な男に引っかかるなよ」、「私ちゃんと男見る目あるもん」というやり取りは微笑ましいけれど、その一方で、この像の噂がただの売り文句ではないことがはっきりしていく。
そして見逃せないのが、本音を漏らした男性の体に浮かんだ模様だった。人の心が勝手に暴かれる仕掛けが、この博物館のどこかにある。閉館のアナウンスが流れる中、「ソナ 仮面借りるぞ」と、ペルはカメレオンの仮面で姿を消して一人で奥へと潜入していく。
ペルは優しい人だから
ペルを待つ間、モクはソナに旅の理由を尋ねる。お姫様がペルについて回るのは惚れているからかと茶化すモクに、ソナは「違うよ」と返し、「ペルは優しい人だから」、「一人にすると無茶ばっかりするの」と答える。痛みを抱えたまま旅を続け、その痛みを自分にはぶつけてくれないペル。ソナがどれだけ彼のことを見ているのかが伝わってくる、静かで温かい場面だった。
そこへ現れたのが、博物館の中に娘がいると泣き崩れる女性、モレノだった。「この中に娘がいるんです」、「助けなきゃ」、「私のせいで」。理由はわからなくても、ただ事ではないことだけは伝わってくる。泣いている人を見過ごせないソナにとって、放っておけるはずがない出会いだった。
伝心の仮面と音の刺客
心の声が漏れる模様
一方、博物館の奥でペルが目にしたのは、ピエロ姿の男と向き合うティナだった。「真実の目の噂」、「その正体はあの子だ」。彼女のそばに入り込むと体に模様が浮かび上がり、心の本音があらわになってしまう。真実の目という像は、ティナの力を隠すための看板にすぎなかったのだ。
ティナに語りかける男は、彼女を使って仮面を集めようとしているらしい。「私は仮面なんて大嫌いなの」と突っぱねるティナに、男は表の社会では生きていけない、帰る場所などないと揺さぶりをかけ、母親に疎まれて捨てられたことにまで触れる。「違う私が捨ててやったのよ」と言い返すティナの声は、強がりにしか聞こえなかった。「うるさい」という叫びとともに能力の範囲が広がっていく描写が、そのまま彼女の心の悲鳴のようで痛々しい。
姿は消えても音で見つかる
姿を消しているはずのペルの前に立ちはだかったのは、剣を持った刺客だった。「俺の姿は見えないはずだ」、「なんで位置がバレてんだ」。ペルはすぐに、剣で音を飛ばし、反響で相手の位置を探っていることを見抜く。攻撃も音の斬撃という厄介な相手で、しかもカメレオンの仮面をつけていられる時間にも限界が迫っていた。
それでもペルは、仲間の助けもあってこの窮地を切り抜ける。「貸し1だかんね」という得意げな一言がいい。ところが逃げる途中で何かをやらかしてしまったらしく、「私じゃない私じゃない」と慌てるソナに、すかさずツッコミが入る。緊迫した戦いの直後に挟まるこの軽さが、三人のチームらしさを感じさせてくれた。
姿を消せるカメレオンの仮面は、これまでペルたちの切り札として何度も窮地を救ってきた。その仮面が、音の反響というまったく別の感覚の前では通用しない。どんなに強い仮面にも相性があり、使える時間にも限りがある。ガストンの仮面をめぐる戦いが、力比べだけでなく知恵比べでもあることを改めて感じさせる一戦だった。ストレーガの組織には、こうした厄介な使い手がまだまだ控えていそうで、救出作戦も一筋縄ではいかないだろう。
ティナとモレノ
母親失格よ
博物館を逃げ出したペルたちは、モレノから事情を聞く。ティナがかぶっていたのは伝心の仮面。「仮面をつけた本人には影響しないが」、「周囲にいる人間の心の声を筒抜けにする」。危険度はそこまで高くないものの扱いが厄介な、ガストンの仮面の一つだった。マーロンはこの力で情報を握り、成り上がったのだ。
モレノの一家はもともと貴族だったが、半年前に夫を亡くしたことをきっかけに没落し、すべてを失った。友達が離れていった理由を知りたかったティナは、父の骨董品のコレクションの中に心が読める仮面があったことを覚えていて、それをかぶってしまう。そして、仮面は取れなくなった。
近くにいるだけで心の声が漏れてしまう少女に、人々は近づかなくなる。どこに住んでも変わらない日々の中で、モレノの心に一瞬だけ浮かんでしまったのが、「あの子がいなければ」という思いだった。それをティナは聞いてしまう。「ほんの一瞬でもあんなことを思わなければ」、「母親失格よ」と泣くモレノの姿に、言葉が出なかった。誰よりも娘を思っているからこそ、自分を許せないのだろう。
本音と建前の両方を持っているのが人間だ。誰にも言うつもりのなかった一瞬の弱音が、そのまま娘に届いてしまう。伝心の仮面がどれほど残酷な仮面なのかが、この回想に詰まっていた。仮面のせいで泣く人をもう見たくないと語っていたソナにとっても、目をそらせない話だったはずだ。
それでも一人は寂しいよ
そんなモレノに向けられたのは、「そんなことない」、「モレノさんはティナちゃんのために一生懸命じゃない」という言葉だった。「ティナちゃんを救い出そうよ」という提案に、連れ出したところで娘さんが生きていくには地獄のような世界だろうと現実を突きつける声もある。それでも返ってきたのは、「それでも一人は寂しいよ」という一言。この短い言葉に、第4話でいちばん大事なことが込められていたように思う。
ペルもまた、「どちらにせよ師匠の仮面を放っておくことはできない」と動き出す。「ティナを連れ出すことは最優先だ」。仮面を壊すという旅の目的と、目の前の一人を救いたいという思いが、ここでぴたりと重なった。「作戦がある」という言葉とともに、物語は救出作戦へと動き出していく。
第4話のまとめ考察
真実と嘘、そして本音の行き場
第4話「真実と嘘」は、人の本音をさらけ出す仮面を通して、本音と建前のあいだで揺れる人間の姿を描いた回だった。冒頭の警察署長やデート中の男性の本音は笑えるものだったが、モレノの一瞬の本音は、娘の心を深く傷つけてしまう。同じ「心の声が聞こえる」という力が、場面によってまったく違う重さを持つ構成が見事だった。
ティナが口にした「欲にまみれた本音」という言葉も印象的だ。周りの人間の欲望ばかりを聞かされ続けた少女が、仮面を大嫌いだと言い切る。その一方で、彼女のもとに届かなかったのが、娘を探し続けてきた母の本当の思いなのだと思うと、なんともやるせない。ペルたちの救出作戦が、母と娘の本音をもう一度つなぐものになってほしい。
ペルを支えたいソナ、剥がし屋を探すモク、師匠の仮面を壊すペル。それぞれ目的の違う三人が、ティナを救うという一点でまとまっていく流れも気持ちよかった。そして、ストレーガの背後にいるクラウンと、伝心の仮面で仮面を集めている連中の存在。物語の奥にある大きな影も、少しずつ輪郭を見せ始めている。




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