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斎川を手にかけようとする風靡とシャルを追って、君塚とノーチェスは夜の道を急ぐ。対峙したシャルの胸によみがえったのは、5年前にシエスタと出会った日の記憶だった。それでもノーチェスに銃口を向けたシャルに、君塚はノーチェスの体に隠された、ある秘密を突きつけるのだった。シャルの答え、4人と風靡の戦い、そして君塚の誓いまで、第5話を振り返る。




第5話「それが最後に出した答え」
第5話「それが最後に出した答え」は、斎川を狙う風靡とシャルを追った君塚とノーチェスが、ついに二人と向き合う回だった。シエスタとシャルの出会い、ノーチェスの体に隠された秘密、仲間として並び立った4人と風靡の戦い、そして夜明けに君塚が口にした誓い。物語の折り返しとなる大きな山場を振り返っていく。
追いついた先で
ノーチェスの計算では、対象に追いつくまで約3分40秒。その先に待つのは暗殺者とエージェントだ。ところがいつものマスケット銃はどうしたのかと聞かれたノーチェスは、「この前知り合いにあげました」、「物欲しそうに見てる子がいたので」とあっさり答える。シエスタの形見をそんなに軽く扱っていいのかと君塚があきれるのも無理はないが、ノーチェスは「君彦には何か考えがあるのでしょう」と、勝つ算段を君塚に預けてしまう。
追いついたノーチェスがまず仕掛けたのは、シリウス号での一撃だった。「いい火力です」と満足げなノーチェスに、「一回やられてるからって」、「復讐の仕方がえぐい」と君塚がつっこむ。一度やられたことをしっかり根に持っているあたり、意外と負けず嫌いなのが面白い。
そしてノーチェスはシャルの前に立つ。「本当にイレギュラーが多い」といら立つシャルに、ノーチェスは「ただシエスタ様ならうまくいかなかった原因を他に求めることはしなかったでしょうね」、「感情的になりやすいのはあなたの悪い癖ですよ」と静かに返す。その言葉に、シャルは「マームもそうだった」と、遠い日のことを思い出していく。
シャルとシエスタ
5年前の暗殺依頼
「初めてマームと出会ったのは5年前」。きっかけは、ある組織から命じられたシエスタの暗殺依頼だった。暗殺に失敗し、組織に殺されると泣きじゃくるシャルに、シエスタは「私はここで死んだことにする」、「そうすれば君は組織に殺されない」と言い出す。
なぜこんな仕事をしているのかと問われたシャルは、「私の両親も軍人でありスパイだった」と答え、両親の仕事を誇りに思っていると話す。それを聞いたシエスタの「そっか私と一緒だね」。そしてシエスタは「交換条件だよ」と持ちかける。「私は今回君の命を助ける」、「その代わり私の仕事をたまにでいいから手伝ってほしいんだ」。
「私はあなたを殺そうとしたのよ」と戸惑うシャルは、そのとき直感的にわかったのだという。シエスタは本当は手助けなど必要としていない。ただ、シャルが気兼ねなく好意を受け取れるように、あえてそう言っているのだと。「ずるい」とこぼすシャルの声には、悔しさとうれしさが混ざっていた。「そして契約の証にこのペンダントを渡してくれた」。シャルがシエスタに心酔している理由が、この短い回想だけですとんと腑に落ちた。
手を抜く理由
「マームはいつだって私のことを守ってくれた」。シエスタが命を落とした後も、シャルがすぐ新たな調律者のもとで働けるよう手配されていたのは、調律者のもとにいれば組織は手出しできないからだった。その調律者こそが、風靡だったのだ。
そして今、目の前のノーチェスもまた、シャルを殺さないように手を抜いて戦っている。「どうして手を抜くの」、「どうして本気にならないの」、「どうしてまだ」、「私を守ろうとするの」。1年前に何もできなかったシャルは、「マームに代わって今度は私がSPESを倒すって」誓ってきた。守られてばかりの自分が許せないからこそ、シャルは「勝つためなら私は何だってする」と銃を構える。その必死さが痛いほど伝わってきた。
ノーチェスの秘密
本物のシエスタの体
引き金に指がかかったその瞬間、君塚が「シャル お前に本当に撃てるのか」と割って入る。「それが本物のシエスタの体だったとしてもか」。
ノーチェスは「バレていましたか」と認める。「シエスタ様の肉体は1年前の戦いの後」、「とある人物によって保存されていました」。そこに「シエスタ様の記憶をベースとした人工知能を搭載し」、「また人工的な心臓を埋め込むことによって」、「私は誕生しました」。ノーチェスがときどき見せるシエスタそっくりの仕草や物言いは、そういうことだったのかと、これまでの場面が一気につながっていく。
けれどシャルは、「私だってマームの匂いくらい覚えてる」と、とっくに気づいていた。それでも「それでも私の使命は変わらない」と言い張るシャルに、君塚は「シエスタが残した遺産は俺たち4人だ」、「誰一人死ぬことがあってはならない」と迫る。そして最後の問いかけ。「お前が愛した師匠は」、「使命と仲間」、「どっちを守ることを優先する人間だった」。
バカか 君は
答えは、シャル自身がいちばんよく知っていた。「なんで そんな楽しそうに笑っているのよ」と取り乱すシャルの前で聞こえたのは、ノーチェスの「痛いです」という声。そして、「バカか 君は」。
返ってきたのは「初めて その言葉を」、「私に 言ってくれましたね」という言葉だった。「バカか 君は」という言葉が、ようやくシャルにも届いた。シエスタの仲間の証を受け取ったシャルの涙に、思わずもらい泣きしそうになった。
4人と風靡
名探偵になれ
そこへ風靡が戻ってくる。「だから甘いって言ってんだよ」、「そこのガキと同類だったみたいだな」。不意打ちを受けたノーチェスは、「この規模のダメージなら緊急停止措置にて対応可能です」と告げ、「あなたたちが今向かい合うべき相手はあっちです」とシャルたちを送り出す。
風靡はシャルに、「本当にいいんだな」、「あの人に立ち向かうってことは」、「いろんなものを失うぞ」と念を押す。シャルの答えは「今さらよ」。「世界がどうなってもいいのか」と問われても、「でも誰か一人が犠牲になって世界が救われることなんて」、「きっとマームは望まない」と言い切った。
それでも風靡は、シエスタが残した遺産の意味を「お前たちも名探偵の意思を継いで」、「世界のために死ねということだ」と突きつける。「夏凪渚ではダメだ」、「あれは弱すぎる」と切り捨て、シャルに「調律者として名探偵になれ」と迫る風靡。けれどシャルは「私はただ名探偵に憧れていたわけじゃない」、「シエスタという一人の美しくて強い女性に憧れてたんだ」と返す。肩書きではなく、シエスタという人そのものを追いかけてきたシャルらしい答えだった。
仲間だから
一対一では風靡にかなわない。追い詰められたシャルを救ったのは、狙撃の一撃だった。「ナイスヒットです 渚さん」。戻ってきた二人に、風靡は自分たちの命を狙った相手の味方をするのかと問う。返ってきたのは「ええ だって仲間ですから」、「そして その後 思い切り喧嘩します」、「それでいいですよね シャルさん」。
さらに「言っとくけど一人じゃないわよ」、「ユイちゃんと私で二人分」、「倍殺しだから」と続く。命を狙われた側が、狙った側と並んで戦う。さっきまでの殺し合いを「喧嘩」で済ませてしまう感覚が、この4人らしくて好きだ。「悪いけど威嚇射撃なんてできないから」と言いながら構える姿も頼もしかった。
斎川、夏凪、シャルの3人が並んで風靡に挑む。ついさっきまで命を狙い、狙われていた者同士とは思えない息の合い方で、見ているこちらまで熱くなった。
間違えているかもしれない選択肢
風靡は容赦なく一人ずつ追い詰めていく。それでも「くだらなくなんかない」、「私たちはシエスタが残した最後の希望」、「誰も負けない」、「誰も諦めない」、「みんなで勝つんだ」と、声は折れない。
対する風靡の言葉は冷たく、それでいて筋が通っている。仲間も絆も友情も、「それが世界の何に役立つ」。斎川には「お前が死ねば世界は救われる」と告げ、できないのなら「世界を救おうと戦う者の足を引っ張るな」。風靡は風靡で、世界を守るという自分の正義を一度も曲げていない。
その正しさを認めたうえで返ってきた言葉が、今回いちばん心に残った。「でも正しすぎた探偵は死んでしまった」。だから「あえて間違えているかもしれない選択肢を選びたい」、「それでも最後に大切な人が隣で笑っている未来を選び取りたい」。正しさのために誰かを差し出すくらいなら、間違っていても全員で笑える道を選ぶ。この作品が何を大事にしているのかが、まっすぐ言葉になった場面だった。
「平行線だな」、「最後に立っていた者だけが勝者だ」。そして相手の姿が見えなくても、「相手は必ず私を見てる」、「私の声も聞こえてる」なら能力は発動する。「あんたはそこから一歩も動くことができない」の一声が、風靡の足を止めた。
俺の物語だ
動きを止められながらも、風靡はふと気づく。「ちょっと待て」、「いつから私は」、「こいつら3人と戦っていた」。「あいつはどこだ」。
君塚は「あんたの状況判断は正しい」と認める。優先して対処すべきはシャルや夏凪たちで、君塚が動けたところで風靡ならいくらでも対応できた。「ただ一つ誤算があったとすれば」、君塚がカメレオンの種を飲んでいたことだった。
副作用のことを聞かれても「そんなの知らん」。「今だけはこのムカつく刑事を殴り飛ばせればそれでいい」、「俺の最愛の相棒の正義をねじ曲げたこいつを」、「ただ一発殴れればそれで」。そして「これは」、「俺の物語だ」。いつも巻き込まれる側だった君塚が、自分の意思で拳を振るう。ずっと見たかった君塚の姿がそこにあった。
種は「吸血鬼からの手土産だ」。「お前 死ぬぞ」と言われても「ま、その時はその時だ」と返す君塚の危うさは気になるが、それだけの覚悟で挑んだ一発だったのだと思う。
夜明けの誓い
ノーチェスの役目
戦いが終わり、ノーチェスは「相変わらず騒がしい人たちですね」といつもの調子で口を開く。ところが続く言葉は、別れのあいさつのようだった。「もう私の使命は十分果たしましたから」。
「あなた方4人にはそれぞれ乗り越えるべき課題がありました」、「私はそれを手伝うために作られたプログラムにすぎません」。夏凪は自分が何者なのかを知り、過去と向き合うこと。斎川は両親の死の真相を受け入れ、人生の選択をすること。シャルは「使命という呪縛から解き放たれ」、「自分の意思を持つことが求められていた」。そして君塚は、「シエスタ様から卒業しなければならなかった」。ここまでの話が、すべてこのための道のりだったのだとわかり、胸が締めつけられた。
俺はお前を諦めない
「私は仕事をやり遂げました」と言うノーチェスに、君塚は「本当にそうなのか」と問い返す。「あいつは泣いてたぞ」、「シエスタは死にたくなかったと泣いていた」。本当にこの結末を望んでいたのなら、「俺たちにあんな泣き顔を見せるとは思えない」。あの場面を見せたのは、「お前の独断だったんじゃないのか」。「シエスタの間違いを正してほしいと」。
そして君塚は、夜明けの海を前に宣言する。「いいか シエスタ」、「俺はお前を諦めない」。「たとえお前がこの結末に満足しようとも」、「俺だけは絶対に認めない」。「もしかしたら誰にも理解されないかもしれない」。それでも、「いつか俺はお前を生き返らせる」、「必ず 必ずだ」。
その誓いに返ってきたのは、仲間たちからの「バカ」の言葉。そして君たち全員へ向けて、あの言葉がもう一度こぼれる。昇っていく朝日の中、君塚は「ここからだ」とつぶやく。探偵はもう死んでいる、のではない。これは「再び探偵を取り戻すための」、「長い長い 目も眩むような物語だ」。タイトルそのものを塗り替えるような締めくくりに、鳥肌が立った。
第5話のまとめ考察
正しさよりも、隣で笑う未来を
第5話は、風靡とシャルたちのぶつかり合いを通して、誰かの犠牲で世界を救うという正しさと、誰も犠牲にしないという間違いかもしれない選択の対立をはっきり描いた回だった。風靡の言い分にも筋が通っているからこそ、それでも全員で笑える未来を選ぶ4人の答えが重く響く。
シエスタは世界を守るために自分を犠牲にした。その「正しすぎた探偵」の選択を、残された4人が「間違い」だと言い切る。シエスタへの深い敬意があるからこそ言える言葉で、ここに来てシリーズ全体のテーマがくっきり見えた気がする。
シエスタを取り戻す物語へ
物語として大きかったのは、やはりノーチェスの正体と君塚の誓いだ。ノーチェスは4人をシエスタから卒業させるために作られた。けれど君塚は、卒業ではなくシエスタを取り戻す道を選んだ。ノーチェスが見せたシエスタの泣き顔こそが、本当の答えだったのだと君塚は読み解いた。
世界の理に背くかもしれない、誰にも理解されないかもしれない誓い。それでも4人が並んで朝日を見つめるラストには、確かな希望があった。ここから始まる、探偵を取り戻すための物語を、最後まで見届けたい。




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