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『LV999の村人』第10話の副題は「Lv10 これから壊す」。捕まった仲間を助けに行く回なのだが、鏡が持ち出したのは救出でも討伐でもなく、魔王と国王の停戦協定だった。そしてデビッドの語りで、国王が他人を洗脳する力を持っていたことが分かる。作り変えられていたのはクルル一人ではなかった。壊すと言った相手は国王ではなく、第1話の副題そのものである。




「これから壊す」の「これ」は、第1話の副題だった
副題は「Lv10 これから壊す」
第10話の副題は「Lv10 これから壊す」。公式サイトのストーリー欄と、テレビ東京の番組情報ページの両方に同じ表記が載っている。
この作品の副題は「Lv」に話数を付けた番号と、短い言葉を組み合わせる形で統一されている。第9話が「Lv9 これまでにない希望」で、第8話が「Lv8 相容れない」。名詞で置かれることが多い並びの中で、第10話だけが宣言の形になっている。
第1話の副題は「Lv1 世界の仕組み」だった
十話ぶんの副題を並べると、最初と今回が同じものを指していることが分かる。第1話は「Lv1 世界の仕組み」で、そこから物語が始まっている。
第10話で鏡が壊すと言った相手は、その世界の仕組みそのものだった。デビッドの話を聞き終えた鏡の返しが、この世界の仕組みがそうさせてるんだ、それを潰さないと何度でも同じことは起きる、である。十話かけて副題が一周し、最初の言葉に手をかけたことになる。
副題と各話のあらすじは、テレビ東京の番組ページでも読める
公式サイトは開いても本文が取り出しにくい作りになっていて、副題を確かめるのに手間がかかる。ところがテレビ東京の番組情報ページには、第1話から第10話まで副題と短いあらすじが並んでいる。
放送時間まで載っているので、第6話だけが二十四時三十分開始だったことも分かる。ほかの九話はすべて二十四時ちょうどの開始だった。なお同じ第10話でも公式サイトのあらすじのほうが一段詳しく、そちらにはパルナの裏切りという言葉まで入っている。
前回伏せられた「地上でやっておきたいこと」の中身が出る
話は、地上に戻った直後から始まる
冒頭は帰還の場面だった。連れ帰った魔王にメノウが世話を焼き、落ち着け、お前は相変わらず極度の世話焼きだな、と止められる。
待っていたのは悪い知らせだった。公式のあらすじによれば、パルナの裏切りでアリスの正体が露見し、クルルとレックスが王都へ連れ去られている。前回、鏡は用意された二つの選択肢をどちらも断ったうえで、地上に戻ってやっておきたいことができた、と言い残していた。その中身がこの回で明かされる。
行くかどうかを、勝てるかどうかで決めていない
事情を聞いた鏡は、その場で王都だよ、お前らも行くぞ、と動き出す。今回の相手はモンスターじゃないんですよ、と止められても止まらない。
理由の出し方が独特だった。100%無理じゃないなら逃げずに戦う、それが俺の信条だ。1%でも可能性があるなら挑まなきゃ何も始まらないだろ、と続く。勝てる見込みの大小ではなく、ゼロかどうかだけで判断している。
答えは、討伐でも救出でもなく停戦協定だった
王都へ向かう道中で鏡が切り出したのが、あんたと国王で停戦協定を結んでもらいたい、である。魔王に頼んだ用件が、戦うことではなく交渉だった。
反論のほうが筋が通っている。国王がそんな話受けるわけありませんよ、今までの行動全てを否定することになるんですよ、とティナが言う。返ってきたのが、それは魔族も同じだ、だからトップ同士の話し合いが必要なんだ、だった。否定になるのはどちらも同じだ、という一点で押している。
失敗する前提で組み立てられている
鏡自身、成功を見込んでいない。無謀な交渉だってのは分かってる、と先に認めたうえで話を進める。
今すぐ停戦協定が結べなくても、魔王にその意思があることだけは伝えたいんだ。目的が結果ではなく、意思を残すことに置かれている。聞く耳を持たれなかったらどうするのか、という問いにも、その時は話し合ってくれるまで戦うしかないね、戦うのは俺だけ、と返している。
魔王との関係が、この回で初めて「協力」と呼ばれる
協力するのは、これが初めてになる
鏡が昔みたいに協力してほしい、と持ちかけると、返ってきたのは、私はお前に協力したことなど一度もない、だった。
続きが噛み合っている。お前が勝手に挑んできて勝手に強くなっただけだ、だから協力するのはこれが初めてになる。何度も戦った仲だと思っていた側の記憶が、その場で訂正される。そのうえで、ここまでされて断るわけがあるまい、と引き受けている。断り文句の形で承諾している。
村人だったから、というところで意見が揃う
再会の場面で出るのが、立派になったものだ、村人の身分でよくぞそこまで、という評価だった。
鏡の返事が、むしろ村人だったからかもしれないぜである。相手も、そうなのかもしれんな、と受ける。最弱の役割を与えられたことが、役割から外れる理由になったという読み方で、敵だった二人の意見が一致している。
手を貸す理由が、種族の話になっていない
王都に着いてからのやり取りも同じ形だった。人間を助けるのに自らの身を危険にさらそうだなんて、魔王のセリフとは思えないわね、と言われる。
返ってきたのが、私も人間に助けられた、お互い様であろう。理屈が貸し借りの話になっていて、どちらの種族かという話が出てこない。この回の停戦協定は、すでにこの二人の間で先に成立している。
クルルが笑わなくなった理由と、その直され方
かつては、よく笑う人だった
デビッドの語りは、かつてのクルル様はよく笑うお方でした、から始まる。自分よりも他人を優先して気遣える人だった、と続く。
たとえがそのまま置かれる。ちょうど今のアリス様のように。人間の王女の昔の姿を、いま隣にいる魔族の少女で説明している。ここまで敵と味方で分けられてきた二人が、同じ性格の持ち主として並べられる。
笑わなくなったのは、心を守るためだった
賢者の役割を持って生まれたクルルは、魔王討伐のために毎日厳しい訓練を受けさせられた。レベルを上げるためにモンスターとも戦わされる。
ところが相手が弱くても戦おうとしなかった。命を奪うこと自体を受け入れられなかったからだ。そしてある日、まったく笑わなくなる。心を守るために、思考を放棄なされたのです、というのが説明だった。壊れないために自分で止めた、という言い方になっている。
王は、笑わないことのほうを問題として扱った
ここから国王の話になる。王は笑わなくなったクルルを、王族としての社交性に欠けると問題視した。訓練の中身ではなく、表情のほうが直す対象になっている。
そのうえで手を加えたのが心そのものだった。王は他者を洗脳する力を持っています。その者が持つ思考や志を根底から変えてしまうものだ、と説明が付く。国の頂点が持っている力の中身が、ここで初めて具体的に出る。
作り変えられたのは、クルル一人ではなかった
洗脳のかかり方が二段になっている。魔王討伐を自ら望んでいたと思い込ませ、そのうえで人格そのものを作り変えた。他者を思いやり、全ての命を慈しみ、魔王討伐など一度も考えたことのない人物が、討伐を望む王女になった。
さらに範囲が広がる。王は優秀な冒険者を見つけては洗脳し、魔王討伐がそもそもの彼らの目的であったと思わせるようにしてきました。前回、地下で語られた仕組みと同じことが、地上の国の中でも行われていたことになる。強い人間を作る装置の話が、王城の中の話に降りてくる。
デビッドが王に背いた理由は、笑ったのを見たから
頼みごとの中身が、命ではなく表情だった
デビッドの頼みは順番がはっきりしている。停戦協定はおそらく失敗するでしょう、と先に断ってから、クルル様だけはお救いしてほしい、と続ける。
その理由が、急がなければクルル様は、きっとまた笑わなくなってしまうだった。命の危険を急いでいるのではない。魔族を敵と見なし、また魔族と戦うだけの存在にされてしまうことのほうを急いでいる。
気づいたきっかけは、日常のほうにあった
きっかけも派手ではない。街を訪れたとき、クルルがかつてのように笑っていることに驚いた、と言う。
そこから、クルル様は自らの呪縛を解き放ち、別の道を歩もうとしているのではないかと考えた。皆様という存在がクルル様を変えたのだ、とも言う。長く仕えてきた側が、外から来た者たちの効果を認めている。そのうえで、たとえ王の意思に背くことになろうとも、と続く。
返事のほうが、頼みより先に出ている
鏡の返答は短い。頼まれなくても助けるさ、仲間だからな。
そんな不安そうな顔するなって、が先に来る。頼まれた内容を検討するより先に、相手の顔のほうを見ている。この回の鏡は、しょげた顔にも不安そうな顔にも、同じ順番で返している。
壊し方が、殺さないことで決まる
選んだのは正門だった
王都の守りは説明されている。あの壁を越えた先が貴族街、さらにその先が王城で、守りは厳重だ。こっそり潜入するのは無理だ、という結論も出る。
鏡が選んだのは正面だった。命が惜しくないのか、と言われて返すのが、そりゃ逆だぜ、命が惜しいなら黙って見過ごせよである。見過ごすほうが命を落とす、という言い方になっている。
一人ではやれない理由が、加減だった
仲間が追いついた場面で、鏡が力を借りる理由を口にする。気絶だけさせるのって加減が難しいんだ、俺一人だけじゃ辛い。
続くのが、奪っていい命なんて一つもない、そんなことをしたら俺たちの大義名分を失うからな。停戦協定を持ちかけに来た側が兵士を殺してしまえば、話そのものが成り立たなくなる。手加減が目的ではなく、交渉のために必要な条件として置かれている。城には屈強な兵士が大勢控えています、必ず皆様の力も必要になるでしょう、という前置きも同じ場面で入っている。
手本は、力を見せることだった
それに対して示されたのが、殺さず戦意を奪うなら圧倒的な力を見せてやればよい、というやり方だった。魔力を使えば正体は知られてしまう。
ところがそこも計算に入っている。魔族と人間が手を組んで王城へ乗り込んできたという噂が立つ方が都合がよい。交渉に入る前に、交渉の中身のほうを噂で先に流している。締めの一言が、お手本ってのはそういうことか、だった。




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