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『才女のお世話』第10話の副題は「成香のぼっち脱却計画」。公式のあらすじは、三つの作戦がすべて裏目に出ることまで先に書いている。ただし三つの失敗は、どれも顔が怖いせいではなく、毎回まったく別の誤解から起きている。そして答えのほうは、作戦の外にあるテニスのコーチの場面にはっきり出ている。成香の誤解を解きに行った伊月は、そこで自分にかかっていた評判を知ることになる。




公式のあらすじが、結末まで先に書いている回だ
副題は「成香のぼっち脱却計画」で、公式が出しているあらすじは計画の中身と結果を最初から明かしている。
三つ全部が裏目に出ることまで書いてある
公式のあらすじには「立案した三つの作戦は、すべて裏目に出てしまう」とはっきり書かれている。しかも締めは「さらに伊月は、自分自身も周囲から令嬢に取り入る嫌な奴だと見られていることを知るのだった」だ。作戦が失敗することよりも、そのあとに伊月が知ることのほうが本題だと最初から宣言されている。
だから見どころは、失敗するかどうかではない
三つの作戦の結末を知ったうえで見ると、注目する場所が変わる。うまくいくかどうかではなく、どう外れるかのほうだ。そして三つの失敗は、外れ方が一つとして同じではない。
副題は計画の名前でしかない
「成香のぼっち脱却計画」というのは、劇中で伊月が実際に口にする宣言の名前だ。開始の合図も「成香のぼっち脱却計画を開始する」である。副題が主題ではなく、劇中の企画名がそのまま置かれている。
優勝はきっかけではない、と即座に否定される
冒頭の相談は「競技大会が怖い」の一言から始まる。
怖い理由は、勝ちすぎたことだと本人は思っている
成香の説明は「去年、私は剣道部門で参加したんだ」「ああ、優勝はした」「だが、あまりにも派手に勝ちすぎたせいか、みんなに怖がられてしまったんだ」だ。そして「あれがきっかけで私はぼっちになったような気がする」と続ける。本人の中では、原因は一年前の一日に絞られている。
幼なじみは、そこを一秒で否定する
伊月の返しは「きっかけではないんじゃないか」「成香は昔からぼっちだったし」である。成香が「私だって過去には、友達の一人や二人、いたかもしれないだろ」と食い下がっても、返るのは「いなかったんだ」だけだ。相談に来た人がいちばん傷つく事実を、笑いの形で先に置いている。
この否定が、後半への布石になる
優勝が原因ではないなら、原因は別にある。この回はそれを三つの作戦で探しに行く構成になっている。冒頭のひとことが、そのまま話の設計図になっている。
助ける側が、先に助けられる形をつくる
伊月の申し出には、必ず交換条件がついてくる。
手伝う代わりに、コーチを頼む
「競技大会までに友達を作ろう」「俺も手伝うから」と言ったすぐあとに続くのが、「その代わり、俺と此花さんにテニスのコーチをしてくれないか」だ。頼まれる側にも渡すものがある形にしている。助けてもらうだけの関係にしないところが、この主人公の一貫した手つきだ。
家の側の理屈でも通る
静音の反応も面白い。都島家の令嬢が相手なら当主も納得するだろうと言いながら、「都島成香様は、ことスポーツの分野に関してはお嬢様を凌駕していますからね」「此花家にとっては立ちはだかる難敵の一人といったところです」と付け足す。友達がいないと悩んでいる人が、よその家では脅威として管理されている。
本人はそれを知らない
伊月の感想は、本人が聞いたら卒倒しそうだ、という趣旨の一言で終わる。学院で怖がられている評価と、財閥から警戒されている評価は、まったく別のところで積み上がっている。成香には自分の評判が二種類あって、どちらも本人の実感と噛み合っていない。
雛子だけが、伊月の変化に気づいている
作戦会議に雛子がついてくる理由は、単なる嫉妬ではない。
理由の言い方が具体的だ
雛子が挙げるのは「天王寺さんの時みたいになるのも嫌だし」で、そのうえで「特に都島さんは要注意」と言う。前回の一日を踏まえた警戒である。雛子の心配は、いつも直前の出来事を根拠にして更新されている。
指摘の中身が、本人の急所を突いている
続く説明は「伊月、都島さんの前だとちょっと変わるから」だ。変わるとはどういうことかと聞かれた雛子の答えは「うん、なんか自然な感じがする」である。怖いのは態度が甘くなることではなく、そこでだけ演技が要らなくなることだと言っている。
この観察が、終盤の悩みと噛み合う
伊月は学院では素性を伏せている。だから自然でいられる場所が一つだけあることは、彼にとって弱点でもある。この回の終盤で彼が抱える悩みは、雛子がここで指摘した一点から出てくる。
美麗は、使命の話をして去っていく
競技大会の種目を選ぶ場面で、天王寺美麗との一幕が挟まる。
誘い方が丁寧で、断り方が同じ言葉になる
ポロを選んだ美麗は「よかったらお二人も参加してみませんか?」「また私が教えて差し上げてもよろしいですわよ」と誘う。伊月の返事は二度とも「慎んでご遠慮させていただきます」だ。同じ言葉を二回繰り返すことで、社交辞令ではないことがはっきりする。
割って入るのは雛子だ
「私は友成さんに聞いているのですが」と食い下がる美麗に、雛子が「友成さんは私と一緒にテニスに参加する予定ですので」と答える。念押しは「一緒に二人で決めました」だ。この二人のやり取りは、いつのまにか勝負の形を保ったまま親密になっている。
去り際に出るのは、やはり使命という語
美麗の締めは「決着をつけなければならない項目が一つ増えましたわね」から「ただし私には今、ポロのチームメイトを優勝へ導く使命がありますの」に続き、「また会いましょう、此花雛子」で終わる。この人はどんな場面でも、自分の役目を先に口にしてから退場する。
作戦その1と2は、怖がられて失敗したのではない
ここからが本題だ。三つの作戦は、失敗の理由が三つとも違う。
現状確認の時点で、笑いの畳みかけになる
成香が挙げる現状は「伊月たちを除いて、友達はゼロ人だ」「私が話しかけようとすると、距離を取られる」「それどころか、何もしてなくても恐れられる」と続き、「歩いていると、モーゼの海割りのように道が開けて」で伊月が止めに入る。自己申告のほうが、他人の評価よりよほど容赦がない。
作戦1が外れた理由は、学力の誤解だった
勉強会に混ぜてもらおうとした成香に、クラスメイトは怖がるどころか期待する。「でも、いろいろ教えてくれるかも」という反応だ。ところが成香は「私も別に教えられるほど成績がいいわけじゃなくて」と答えるしかなく、相手は「今度の試験で上位に入るために勉強していて」と続ける。ここで失敗の原因になったのは顔ではなく、頭がいいと思われていたことのほうだ。
作戦2が外れた理由は、転んだことだった
イメチェンを担当するのは雛子で、方針は「都島さんはどちらかというと直線的なイメージなので、少し柔らかい印象にできればと」。ところが教室へ向かう途中で「緊張のあまりこけてしまってな」となり、着崩れた姿は「喧嘩帰りの不良」に見えた。柔らかくするための衣装が、転んだ拍子にいちばん硬い印象に化けている。
教師にも同じ誤解が届いている
呼び出された先で聞かれたのは、誰と喧嘩したのか、そして相手の治療費を見積もりたいからどんな怪我を負わせたのか、という質問だった。成香の感想は「百歩譲って私が喧嘩したとして、なぜ私が負けた可能性については一切触れられないのだろうか」だ。この回でいちばんよくできた反撃は、生徒ではなく教師に向けられている。
作戦その3は、二人の原点から持ち出された
三つ目は駄菓子だ。この小道具の意味は、第3話を見ていると変わってくる。
狙いは庶民的な親しみやすさだった
伊月の説明は「都島家の娘で、武道派とかクールとかのイメージがついてしまっているが、実は成香もごく普通なんだってことを分かってもらうんだ」である。なぜ駄菓子なのかは「懐かしがって、誰かが声をかけてくれるんじゃないかって成香が」と説明される。この作戦だけは、伊月ではなく成香自身が中身を決めている。
選んだものが、二人の始まりの場所のものだった
第3話で、外に出られなかった幼い成香を伊月が最初に連れ出した先が駄菓子屋だった。今回の「子供の頃から駄菓子好きだったからな」は、そこから続いている。友達を作るために持ち出した道具が、たった一人の友達との思い出の品になっている。
誤解の方向が、まったく予想外だった
結果は「声かけられないね」で、しかも見られてはいる。学院の生徒は駄菓子を知らないので、飴をくわえた姿が別のものに見えてしまう。親しみやすさを狙った小道具が、いちばん近寄りがたい絵に化けている。
視聴者からも、規制が逆向きにかかっているという指摘が出ている。
作戦としては全滅だが、そこで折れないところが見どころだという声もある。
答えは、作戦の外にはっきり出ている
土曜のテニスコートは、この回で唯一うまくいっている場面だ。
教える側に回った途端、一度も詰まらない
成香の指導は具体的だ。伊月には「球種とコースの使い分けが課題だな」「無意識に相手のコートの中心にボールを打っているから、左右どちらかにばらけさせた方がいい」。雛子には「正直、教えることがないくらい上手だ」と前置きしてから「ただ、高い打点のショットが若干不安定だと思う。特にバックハンドだ」と続ける。相手の長所を先に言ってから課題を言う順番が、全部そろっている。
進行の仕切りまでできている
どこを直すべきか聞かれたときの返事も「アドバイスは、一通り練習してからにしよう。その方が効率的だからな」だ。話しかけられないと悩んでいる人が、二人ぶんの練習計画を組んで回している。
伊月はそれを見て、いちばん大事なことを言う
伊月の内心は「ことスポーツに関しては、成香は本当にすごいな」で、そのあとに「自覚はしてないだろうが、雛子とも自然に話せている」と続く。ぼっち脱却の答えは、三つの作戦ではなくこの一日のほうに出ていた。役割があれば話せる、という単純な話だ。
いちばん怖がられている姿を、美しいと思っている人がいる
同じ場面で出てくる伊月の独白がもう一つある。「成香に伝えたことはないが、初めて会った時、真剣に竹刀を振る姿に見とれてしまった」「今も同じだ」「凛としてかっこいい」。周りが怖がっている一点を、この人だけが最初から美しいと受け取っている。
二人ぶんのウェア姿や、動きの見せ方についての反応も並んでいる。
誤解を解きに行った側が、自分の評判を知る
新しい作戦は、競技大会を話題にすることだった。そして二度目の実践で、話は別の方向へ動く。
一度目は威圧になってしまう
「君は去年、競技大会で剣道部門に出ていたな」「今年も出るのか?」まではよかったが、続くのが「今年も、負けないからな」で、相手は返事以外できなくなる。伊月のツッコミは「威圧してどうする?」だ。話しかけたい気持ちが、そのまま宣戦布告の形になってしまっている。
二度目は、冷たく切り上げられる
次の相手には防具の話を振るが、返ってくるのは「なんでもよくないですか?」「すみません、急いでいるんで」だった。成香の受け止めは「やはり、私の顔か。顔がダメなのか」である。顔のせいにするのがいちばん簡単で、いちばん間違っている。
相手にも、相手の事情がある
伊月が問い詰めると、相手が挙げるのは意外な理由だった。「俺はいつも両親に厳しく言われているんだ」「財力がある家には関わるな」「下手に機嫌を損ねると、一家丸ごと潰されるぞって」。冷たい態度の正体は、悪意ではなく家庭の教育だった。伊月の感想も「この学院の生徒たちは、そんなことまで考えないといけないのか?」である。
そして、話がこちらに向く
相手は続けてこう言う。「お前、A組の友成だろ? 知ってるぞ」「みんながみんな、お前みたいに取り入るのが得意なわけじゃないんだよ」。成香の誤解を解きに来た人が、その場で自分にかかっていた誤解を受け取っている。
心当たりが、次々に出てくる
伊月の独白は容赦がない。「雛子も天王寺さんも成香も、学院では特別なお嬢様で、俺はそういう人たちとお茶会もしたし、勉強会もした」「目立っていたんだろう」「彼は他のクラスなのに、俺のことを知っていた」。そして「要するに、俺は雛子たちと一緒にいるのにふさわしくないってことだ」。身分を偽って通っている人にとって、これはいちばん触れてほしくない一点だ。
ふさわしいかどうかではなく、一緒にいたいかを聞く
落ち込んだ伊月の前に現れるのは、いつのまにか来ていた雛子だ。
来ていたことに気づいていない
「いつからそこに?」に返るのは「結構前から、静音に連れてきてもらって」だ。そして「伊月、なんか難しい顔してる」と言われる。隠しごとの多い人が、いちばん隠したい表情のときにだけ見つかっている。
聞き方を、自分で選び直している
伊月が口にするのは「なあ、雛子。学院にいる時も、俺と一緒にいたいか?」である。ふさわしいかどうかを確かめる質問ではない。他人の評価を聞くのをやめて、当人の希望だけを聞いている。
答えは短くて、条件がついていない
雛子の返事は「うん、私はいつきとずっと一緒がいい」だ。伊月の受け取り方は「分かった、頑張ってみる」「いろんな人に認められないとな」である。ふさわしくないという結論が、認められに行くという行動に置き換わっている。
締めの一行は、答えを出していない
最後に置かれるのは「どうしたらいいかはまだ分からないが、俺は引かないと決めた」という一行だ。方法は何ひとつ決まっていない。この回で決まったのは手段ではなく、退かないという一点だけである。




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