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『らんま1/2』新作アニメ第3期の第1話、通算第25話の副題は「修行DEディナー」。夏休みを前に、乱馬のもとへ良牙から果たし状が届く。再び拳を交えた二人の勝負は、思わぬ形で乱馬自身の大きな成長を浮かび上がらせる。強くなっていた乱馬、屈辱をばねにするコロンと良牙、そしてあかねのカレーが映した三人の関係まで、第3期の幕開けを振り返る。




第3期第1話の副題は「修行DEディナー」
『らんま1/2』新作アニメの第3期が始まった。通算第25話となる第1話の副題は「修行DEディナー」。夏休みを目前に控えたある日、乱馬のもとに良牙から果たし状が届く。再び拳を交えることになった二人だが、コロンにいたぶられるうちに乱馬が強くなっていたことで、力の差ははっきりしていた。屈辱を味わった良牙の前に、ある狙いを持ったコロンが現れる。そして山での修行の夜、あかねが作ったカレーが三人の関係を浮かび上がらせていく。
「これがこの夏の僕のスケジュールだ」
物語は夏休み直前の天道家と学校から始まる。「夏は海もいいが、山も実にいい」と修行を勧める早雲に、あかねはそっけない。学校では、九能帯刀が「これがこの夏の僕のスケジュールだ」と、あかねとおさげの女とのデートの予定表を突きつけてくる。日曜日については「天候が悪かった時の予備日とする」とまで書き込む念の入れようで、いつもどおりの九能の暴走に思わず笑ってしまった。
もちろん、おさげの女の正体は女の姿の乱馬だ。予定表を見せられた乱馬は九能と手合わせになるが、「いつもより全然キレがないぜ」と軽くあしらってしまう。本人は「そんなにやってねえんだけどなあ」と首をかしげるだけ。この時点では、乱馬自身もまだ自分の変化に気づいていないのがポイントだ。周りが先に気づき、本人だけが首をかしげている構図が、のちの展開への小さな伏線になっている。
第3期の幕開けとして、まずおなじみの顔ぶれと日常のドタバタを見せてくれる構成がうれしい。久しぶりに見る九能の勘違いぶりも健在で、作品の空気が一瞬で戻ってきた。
「やはりあの娘が邪魔じゃな」
その手合わせを、物陰から見ていたのがコロンだった。「しかと物にしておるようじゃのう」と乱馬の上達を確かめたうえで、「やはりあの娘が邪魔じゃな」とつぶやく。乱馬をシャンプーの婿に迎えるためには、許婚のあかねが障害になる。コロンの狙いがどこにあるのかが、ここで静かに示されていた。
一方、良牙は相変わらず道に迷っていた。郵便ポストの場所を尋ねながら、教えられた方向とは逆へ歩き出してしまう方向音痴ぶりも健在だ。届いた果たし状には「明日、天道道場に行くからな」「首を洗って待っていろ」と勇ましく書かれていたが、その「明日」がいつになるのかは誰にもわからない。
子豚の姿で拾われ、猫飯店に連れてこられた良牙は、危うくゆで豚にされかける。正体を見抜いたコロンは「どうじゃ わしと手を組んでみんか」「お主を鍛えてやろうと言っとるんじゃ」と持ちかけるが、良牙は「あいにく鍛えてもらわにゃならんほど弱くねえんだよ」と突っぱねた。
良牙との再戦
そして、ついに良牙が天道家に現れる。
「1週間の遅刻だな」
果たし状の「明日」から遅れること1週間。乱馬の「1週間の遅刻だな」という一言が、良牙の方向音痴ぶりをよく表している。良牙は天道家へのお裾分けを届ける途中だったが、乱馬は容赦なく勝負を受けて立つ。
再戦の結果は、乱馬の圧勝だった。「動きが鈍くなったな」と余裕を見せる乱馬に、良牙は手も足も出ない。そこへあかねが通りかかり、良牙は「あかねさんの前でこんな」と焦りを隠せない。さらに乱馬は、あかねが探しているPちゃんの話を持ち出して良牙をからかう。あかねの前で負けを重ねる良牙の姿が、なんとも気の毒だった。
とはいえ乱馬自身も、勝負の手応えには違和感を覚えていた。「良牙が弱くなったんじゃなくて」「俺が強く」と思い至るまでの流れは、本人が自分の成長に気づいていく大事な場面だ。
「強くなっちゃったのよ」
決定的だったのは、あかねの何気ない一言だった。「もう乱馬には喧嘩売らない方がいいわよ」「強くなっちゃったのよ」。コロンにいたぶられるうちに乱馬が強くなったのだと、あかねは良牙をなだめるつもりで口にする。しかしそれは、良牙にとって何よりの屈辱だった。
夜の町で、良牙は悔しさをぶつけるように何度も壁を殴りつける。そこへ現れたコロンが「相当こっぴどい目に遭わされたらしいのう」と声をかけた。屈辱がそのまま良牙の原動力に変わる瞬間で、一度は突っぱねた誘いに良牙が向き合う流れが自然に描かれていた。あかねに悪気がないからこそ、良牙の傷はかえって深くなる。この残酷さが、らんまらしい三角関係の味わいだと感じた。良牙が悪役ではなく、どこまでも応援したくなる存在として描かれているのも大きい。
山での修行
夏休みに入り、乱馬と玄馬は山へ修行に出かける。
「せいぜい修行に精を出すことじゃ」
修行には、なぜかあかねも同行することになった。「言っときますけど、私だって修行に行くんです」と言い張るあかねの大きな荷物に、乱馬は不満顔だ。姉からは「ランマ君が女になったらさ写真いっぱい撮ってきて」とカメラを渡され、かすみからは胃薬を持たされる。あかねが山でみんなの料理を作ると張り切っていると聞いて、家族の反応がすでに不穏だった。
早雲の「これが娘が嫁いでいく父親の気持ちというものか」という大げさな感慨にも笑わされる。山では偶然を装ってコロンが姿を見せ、「せいぜい修行に精を出すことじゃ」と告げ、成果が試される時はすぐに来ると意味深な言葉を残して去っていった。
コロンが良牙に課した修行は、まず岩を砕くこと。良牙が力任せに砕いてみせても、コロンは「わしゃ砕いてみろと言ったんじゃぞ」と納得しない。そして自ら手本を見せ、指先で突いただけで岩を粉々にする技を披露した。コロンが良牙に授けようとしている技が、一週間後の勝負の鍵を握ることになりそうだ。
「修行の後、カレーライス食いてえなあ」
出発前、あかねは乱馬に修行の後に食べたいものをさりげなく尋ねていた。乱馬が思い出したのは、修行中に食べたくさやの干物や鮒ずし、ドリアン、そしてキャンプをしていた人たちにごちそうになったカレーだった。「修行の後、カレーライス食いてえなあ」という何気ない一言を、あかねはしっかり覚えていたのだ。
料理をしたことのないあかねは、隠し味にりんごを入れると聞いたことを思い出し、さらに乱馬がおいしかったと言っていた食材まで次々と鍋に入れていく。最後に白ワインを加えて「完璧ね」と満足げなあかねの姿は、見ている側からするとハラハラの連続だった。あかねの不器用な気づかいが詰まった一皿だと思うと、笑いながらも少し切ない。
カレーをめぐる三人
修行を終えた乱馬たちの前に、あかねのカレーが並ぶ。
「一生懸命作ったのに」
玄馬の「個性的というか変わった香りだな」という感想からして、すでに嫌な予感しかしない。乱馬は「安心しろよ死ぬほど腹減ってるから豚の餌だって食えるぜ」と軽口をたたき、あかねの機嫌を損ねる。そして一口食べたとたん、玄馬と乱馬は「修行再開じゃ」とその場から逃げ出してしまった。
一人取り残されたあかねは「一生懸命作ったのに」と叫ぶ。乱馬の何気ない一言を覚えていて、慣れない料理に挑戦したのだから無理もない。けれど乱馬も、「俺しかいねえじゃねえか」とあのカレーを自分が食べるしかないと腹をくくっていた。素直になれない二人のすれ違いが、カレー一皿でここまで鮮やかに描かれるのが見事だった。
「こやつの強い気持ちに心打たれてのう」
そこへ現れたのが、同じ山で修行していた良牙だった。あかねにカレーを勧められた良牙は「生きててよかった」「俺は世界一幸せな男だ」と感激し、「こんなうまいものを食ったのは生まれて初めてだぜ」と言い切る。あかねへの思いが味覚を上回ってしまう良牙の一途さが、たまらなくおかしい。
乱馬が「しろよ味見くらい頼むから」とあかねに言い返すと、良牙は「やめろ それ以上言ったら俺が許さん」と割って入る。あかねは「傷ついてなんかいないから」とかばうが、乱馬の「俺も弱い者いじめしたくねえんだよな」という一言で、良牙の怒りに火がついた。
そこで二人を止めたのがコロンだった。「こやつの強い気持ちに心打たれてのう」「どうじゃ、一週間後に勝負してみんか」「こやつはもっと強くなる」。乱馬も「面白え、上等だよ」と受けて立ち、一週間後の再戦が決まる。あかねは良牙の世話をしに行ってしまい、乱馬は自分の料理などまずくて食べられないのだろうと突き放されたまま取り残された。
最後に、乱馬が無理をして残りのカレーを口に運んでいたことがさりげなく明かされる。言葉では素直になれなくても、行動ではあかねの気持ちに応えようとしている。その不器用さが、何よりも乱馬らしかった。
まとめと考察
第3期の第1話は、乱馬の成長と良牙の屈辱、そしてあかねのカレーをめぐるすれ違いを通じて、一週間後の再戦へとつながる序章を描いた回だった。
カレーが映した三人の距離
この回の主役は、ある意味であかねのカレーだった。乱馬の言葉を覚えていて作ったあかね、口では文句を言いながらも食べようとする乱馬、そして心から喜んで食べる良牙。同じ一皿に対する三人の反応の違いが、そのまま三人の関係を映し出していた。
良牙の一途さは本物で、その思いがコロンの心を動かした。一方で、コロンには乱馬とあかねの仲を裂きたいという狙いもある。良牙を鍛えることが、その思惑とどう結びついていくのか。一見ドタバタ劇に見えて、人物それぞれの思惑が丁寧に配置された構成になっていると感じた。
再戦への序章
自分の成長に気づき始めた乱馬と、屈辱をばねに新たな技を身につけようとする良牙。コロンが見せた岩を砕く技を、良牙がどこまで自分のものにできるのか。一週間後の勝負は、これまでとは違う緊張感を帯びたものになりそうだ。
第3期も、高橋留美子作品らしい笑いと切なさのバランスは健在だった。おなじみの面々が再び動き出したうれしさとともに、乱馬とあかねの不器用な関係がこれからどう揺れ動くのか、続きが楽しみになる幕開けだった。




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