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『生徒会にも穴はある!』第1話の副題は「オスガキにも穴はあるんだよな…」と「かいちょーは梅くんに貰われました」。国語の天才なのに理系で留年の危機を迎えた水之江梅が、内申点のために生徒会へ入ると、そこには全員が大きな穴を抱えた面々が待っていた。クセの強すぎる役員たち、挨拶活動と荷物検査の大騒動、そして伝説となった全校集会まで、混沌の初回を振り返る。




第1話の副題は「オスガキにも穴はあるんだよな…」「かいちょーは梅くんに貰われました」
『生徒会にも穴はある!』第1話は、「オスガキにも穴はあるんだよな…」と「かいちょーは梅くんに貰われました」の2本立て。国語の模試は満点、文学賞の受賞歴まであるのに、理系科目は壊滅的という水之江梅が、留年を回避するために生徒会へ入るところから物語が始まる。待っていたのは、会計の照井有栖、広報の尾鳥たん、そして会長の古都吹寿子という、それぞれに大きな穴を抱えた面々だった。
「来年進級できないやつとは思えねえな」
冒頭の梅は、まさに国語の申し子だ。「文字たちがスーッと浮き上がり」「眼前で踊るんです」と、文章を読む感覚を大真面目に語ってみせる。教師の平塚も素直に感心していたが、続く一言で空気が一変する。「いやほんと来年進級できないやつとは思えねえな」。
理系科目の点数はまさに壊滅的で、学年主任の平塚でもかばいきれない。しかも本人がまず心配したのは「ボーナス減らされちゃう」という自分の懐事情で、梅に「クズ教師」と即座に返されてしまう。生徒より先に自分の査定を気にする教師という導入だけで、この作品の温度感がよくわかった。
そこで平塚が持ち出したのが「生徒会入るとかどうだ」という提案だった。内申点が上がると調子よく持ち上げつつ、本音は自分の都合がかなり大きい。それでも最後には「私だってお前が来年いないとか寂しいからな」と付け加えるあたり、憎めない教師として描かれているのが面白い。
「生徒会も捨てたものではないな」
生徒会室の前で梅を迎えたのは、会計の照井有栖だった。丁寧な物腰の先輩に、梅は思わず「生徒会も捨てたものではないな」と心の中でつぶやく。ところが部屋に入ったとたん、目が合った瞬間の表情に「怖い人だ」と印象が反転する。わずか数カットで、清楚さと怖さの両方を見せる演出が巧みだった。
照井の本領が発揮されるのは、部費の予算を各部に伝えて回る場面だ。「時には不満をぶつけられることもあります」「少し辛いですけどそれも仕事ですからね」と殊勝なことを言いながら、各部の予算を容赦なく削っていく。梅の「先輩にも人の心が」というつぶやきが、そのまま視聴者の心の声になっていた。笑顔のまま査定を下す会計は、公式の紹介にある怖くて優しい清楚な会計という言葉どおりの人物だった。
査定の結果が値札のように告げられていく流れは、テンポのいいコントのようで何度見ても笑える。不満を口にする部員たちと、まったく表情を崩さない照井との温度差が、この場面の面白さを支えていた。
個性派ぞろいの生徒会
生徒会のメンバーは、照井だけでは終わらなかった。
「こう見えて人間のオスなんですよ」
部屋に飛び込んできたのは、広報の尾鳥たん。梅をからかうように距離を詰め、のぞいたことにして「初版割引ってことで5000円」と口止め料まで請求してくる。照井は「男引っ掛ける習性があって」と説明したうえで、「こう見えて人間のオスなんですよ」とさらりと付け加えた。見た目と中身のギャップが最初から全開の人物で、梅が戸惑うのも無理はない。
広報の仕事ぶりも一筋縄ではいかない。文化祭の来場者数のグラフを見せて「どうよこれが僕の広報の力ってわけ」と胸を張るものの、その手段はかなり危うい。梅が勘違いして顔を真っ赤にし、尾鳥にさらにからかわれる流れまで含めて、この二人の掛け合いは今後も作品の名物になりそうだ。
それでも全校集会の場面では、着替えたうえで「我が校の社会奉仕活動と」から始まる真面目な報告をこなしてみせる。梅の「ちゃんとしてる」という驚きに、普段とのギャップがよく表れていた。ふざけているようで、やるべきことはきちんとやれる人物なのだろう。
「本当に生徒会長だ」
会長の古都吹寿子との出会いは、ある落とし物をめぐる誤解から始まる。初対面の印象は最悪だったが、照井によれば「ああ見えて文武両道で人望も厚いすごい人なんです」とのこと。実際、梅のために用意していた資料は「一目でわかるようまとめ上げられている」もので、梅も思わず「本当に生徒会長だ」と見直していた。
会長は梅に書記を任せ、「全校生徒の代表を担う仲間として」「一年間よろしくな」と声をかける。「この青春学園小説の序章のような」「何かの始まりを予感させる」と梅が感じ入った瞬間、尾鳥の乱入で台無しになるのもこの作品らしい。格好よく決まりかけた場面を必ず崩してくるテンポが、作品全体のリズムになっていた。
その後、二人で作業をしている最中に手が重なり、会長は「恋人つなぎになっちゃったな」「ドキドキしちゃったぞ」と大人の余裕を見せる。けれど心の中では大慌てで、「しかもむっつりだった」という梅の結論に落ち着く。公式の紹介にあるカリスマむっつり生徒会長という肩書きが、たった一話でここまで腑に落ちるとは思わなかった。
頼れる先輩としての顔と、内心の動揺を隠しきれない顔。その落差こそが会長の魅力で、梅との距離が縮まるたびに何が起こるのか、見ていて目が離せない。
挨拶活動と荷物検査
生徒会の仕事として、朝の挨拶活動と荷物検査が行われる。
「校則違反も検査します」
会長の号令で始まった挨拶活動。照井は「ついでに今回はなんと」「校則違反も検査します」と楽しげに付け加える。梅は「風紀を正すというのは望むところなんですが」と、生徒を直接注意することにためらいを見せていた。真面目な梅らしい戸惑いで、ここにも彼の人の良さがのぞく。
声が出ない梅に、会長は「声かけるときはもう少し腹から声出すといいぞ」と実践つきで教える。いざ動き出すと、校則違反の塊のような生徒や、「問題児集団と音に聞く軽音部」まで現れて、現場は一気に騒がしくなった。まともに検査が進まない朝の校門のドタバタは、勢いのある作画も相まって見応えがあった。
没収品の扱いをめぐって照井が梅をからかい、上の空だった会長がとんでもない返事をしてしまうくだりも笑いどころだ。真面目な議題のはずが、気づけば全員の穴がむき出しになっている。そんな生徒会の日常が、この挨拶活動の一日によく表れていた。
梅は振り回されながらも、決して投げ出さずに自分の役目を果たそうとする。生徒会のメンバーがそれぞれ好き勝手に動くなかで、真面目な梅がいることで、かろうじて組織としての形が保たれているようにも見えた。
全校集会
そして第1話のクライマックスは、生徒会が登壇する全校集会だった。
「とことん欲求に弱い人ですね」
本番直前、「しっかり見てっから胸張ってけ」と梅を励ましたはずの平塚は、トイレに行ったきり戻ってこない。以前にもトイレでたばこを吸って騒ぎを起こしたことがあるらしく、「とことん欲求に弱い人ですね」「とことん面倒にも弱い人ですね」と散々な言われようだ。生徒会よりも穴の大きい教師という構図には思わず笑ってしまった。
一方で、会長の挨拶は原稿なしのアドリブだという。照井の「慣れてますし頭の回転も早いので」という説明に、梅も「さすがは学年トップ」と感心する。そこへ「むっつりなのに」と二度も付け足される流れが絶妙で、会長が尊敬されつつも同じくらいいじられていることがよくわかる。
「見てろよ平塚」
いよいよ梅の番になり、緊張は頂点に達する。「ものすごい人数」に声が詰まりかけたとき、梅の頭に浮かんだのは見ていると言ったはずの平塚の姿だった。「見てろよ平塚」。怒りが緊張を吹き飛ばし、「逆に緊張がほぐれてうまくいったな」という結果に落ち着くのが面白い。
しかし集会の最後に、会長にとって思いもよらない事態が起こる。「その全校集会は伝説となり」というナレーションのとおり、会長は大きな恥をかくことになった。照井の「これはもう梅君がもらわないとですね」という一言から、「古都吹は水之江がもらうことになった」という締めに至るまで、副題の回収が鮮やかだった。
二本目の副題「かいちょーは梅くんに貰われました」が、最後の最後で一気に意味を持つ構成もうまい。何の話かと思わせておいて、全校集会のオチで回収してみせる。初回から副題の使い方まで凝っている作品だとわかり、制作側の遊び心を感じた。
まとめと考察
第1話は、留年の危機から生徒会に入った梅が、クセの強い役員たちと出会い、挨拶活動と全校集会を通じて少しずつ生徒会の一員になっていくまでを描いた回だった。
穴だらけの生徒会
タイトルどおり、この生徒会の面々には全員に大きな穴がある。照井は笑顔で容赦がなく、尾鳥は人をからかうのが生きがいで、会長は頼れる顔の裏で動揺を隠せない。教師の平塚に至っては、生徒以上に穴だらけだ。けれど、誰もが自分の仕事だけはきちんとこなしている。欠点だらけでも役目は果たすという姿が、この作品の笑いの土台になっていると感じた。
梅自身も、国語の天才でありながら理系は壊滅的という大きな穴を抱えている。だからこそ、彼はほかの役員を一方的に裁く立場にはいない。同じように欠けた者同士が集まり、互いに補い合っていく。その構図があるから、ドタバタの連続でもどこか温かい空気が流れているのだろう。
振り回され役の語り手
梅は物語の語り手であり、同時に最大の振り回され役でもある。文学的な言い回しで場面を飾ろうとするたびに、周囲の誰かがそれを台無しにする。この繰り返しが作品のテンポを生み、梅の真面目さがそのまま笑いになっていた。気取った独白と、それを容赦なく崩す周囲の反応。その往復こそが、この作品ならではの笑いの型なのだと思う。
今回はまだ顔ぶれがそろっていないと会長も話しており、生徒会にはまだ見ぬメンバーもいる。勢いのある作画と遠慮のないギャグで押し切りながら、役員同士の距離感も丁寧に描いた第1話だった。梅の書記としての一年がどんな騒動の連続になるのか、続きを楽しみに待ちたい。




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