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アパートの隣に住む少女は、実の母から食事さえ与えられず、隣に住むおじさんの差し入れだけを頼りに生き延びてきた。そして最悪の夜、彼女の前に現れたのは、天使との代理戦争へと誘う一人の悪魔だった。お隣さんの過酷な生い立ち、人質のエルザと男爵位、そして歪んだ愛情の行方まで、1時間の特別編として放送された濃密な第1話を場面ごとに一つずつ振り返る。




お隣さんの過去
『佐々木とピーちゃん Season2』第1話は、佐々木のアパートの隣に住むお隣さんの生い立ちから始まる、1時間の特別編だった。異世界の貴族社会、現代の異能力者の組織、そして天使と悪魔の代理戦争。三つの物語が一気に動き出す、濃密な幕開けだった。
「母と子」の始まり
小学生になると、家から父がいなくなった。母と二人で小さな家に引っ越してから、母はずっと怒っている。父のことを尋ねれば怒鳴られ、物を投げられ、何度も何度もなんでこんなこともできないのと責められる。やがて家には父ではない男の人が来るようになり、そのたびに少女は家から追い出された。
母はご飯もくれない。学校に行けば給食があるが、休みの日はない。だから少女は、地面の下にご飯を隠していた。そのご飯を「泥棒」したのが、アパートの隣のおじさんだった。けれど、そのおじさんはやがてご飯をくれるようになる。とてもお腹が空いていた少女は、おじさんからご飯をもらうことにした。
第1期では謎めいた存在だったお隣さんが、どんな日々を生きてきたのか。淡々とした語りで積み重ねられる一つ一つの出来事が、あまりにも重かった。子どもの目線で語られる家庭の現実に、胸が苦しくなった。
生きることを優先した少女
中学年くらいになると、少女は自分の家庭がほかと比べておかしいと理解するようになる。食事ももらえず、留守中は家にも入れない。だから彼女は、生きることを優先するようになった。たまに家に来るお客さんの正体が、児童相談所の人だということも、図書室の本で知った。おじさんや近所の人が通報してくれているのだろう。けれど母は外面がよく、少し話をするとお客さんはすぐに帰ってしまう。
高学年になっても、母との関係は冷え切ったまま。それでも知恵と体力がついたことで、自助努力の幅は広がった。野に生えている草を、学校の家庭科室からくすねた調味料でおいしくいただく。自動販売機巡りも効率的になり、パンの耳も前より多く手に入る。遠足や修学旅行には、一度も参加したことがない。
たくましさとして描かれているからこそ、いっそう切ない。慣れとは恐ろしいものである、という彼女の言葉には、子どもが背負うべきではない諦めがにじんでいた。
悪魔との出会い
ある日、おじさんの帰りがいつもより遅い夜。母の交際相手の男が少女を部屋に連れ込み、乱暴しようとする。そこに現れたのが、宙に浮かぶ少年の姿をした存在だった。助けてほしいかと問いかけ、男を気絶させたその存在は、自らを名乗る。「僕は悪魔だ」。そして少女に、これから自分に代わって天使の使徒と戦うことになると告げた。
少女が真っ先に口にしたのは、ありがとうございます、というお礼だった。悪魔はその素直さを気に入ったと笑う。最悪の夜に差し伸べられた手が、悪魔のものだった。その皮肉が、お隣さんの物語の始まりを象徴しているようだった。
異世界と男爵位
一方の佐々木は、対策局の課長に呼び出されていた。空から何かが降ってきた映像に映っていたリザードマン。その言語が、以前二人静が連れてきたエルザと同じ言語である可能性が高いという。
課長の疑いと調査
二人静に通訳を頼む課長だが、二人静はあの言語は話せないととぼける。課長は嘘の可能性も考慮しつつ、部下の発言を信じるとして、今回の件の調査を命じた。リザードマンの件で課長に目をつけられたのは間違いない。佐々木は、異世界との行き来にこれまで以上に気をつけなければと気を引き締める。
それでも家に帰れば、ピーちゃんが待っている。おかげで後ろめたさを感じることなく、異世界での活動に精を出せそうだと話す佐々木の表情は穏やかだった。二重生活の緊張と、文鳥との日常の温かさ。その落差が、この作品らしい空気をつくっていた。
人質に取られたエルザ
異世界に渡った佐々木とピーちゃんを、ミュラー伯爵が深刻な顔で迎える。王位の跡目争いの中で貴族の寝返りが起き、ケプラー商会との関係をめぐって佐々木の名前まで取り沙汰されているという。協力を頼みながらも言葉を濁すミュラー伯爵に、ピーちゃんは、この男と自分はそこまで「頼りない存在だろうか」と問いかけた。
明かされたのは、娘のエルザが人質に取られているという事実だった。命じたのはアインハルト公。佐々木は、責任の一端は自分にもあると協力を申し出る。巻き込んでばかりですまないと詫びるピーちゃんに、佐々木は自分も留守番や文鳥のふりで負担を強いていると返し、気遣い上手な相棒に「僕は嬉しい限りだよ」と笑う。互いを気遣い合う一人と一羽の関係が、何ともいとおしかった。
男爵位とレクタン平原
そこへ現れたアドニス殿下が告げたのは、佐々木に男爵位を授与する話だった。ただし与えられる領地は、町も村も集落の一つすらないレクタン平原。しかも国境に防壁を築けという命令がついてくることが容易に想像される。派閥内の争いの一端だと察しながらも、ピーちゃんは、むしろ好都合ではないかと言い出す。
敵地で苦労している分には、誰も難癖をつけてこない。表舞台から離れてスローライフを望む一人と一羽にとっては、辺境の領地はむしろ願ったりかなったりだ。王の前で男爵位を受けた佐々木は、防壁が完成するまで首都に戻らないと誓う代わりに、ミュラー伯爵家の娘を返してほしいと嘆願する。騎士ふぜいが不敬だととがめる声も上がる中、願いは聞き入れられた。屋敷に戻ったエルザが口にした「ありがとう佐々木男爵」という言葉に、彼女の素直になりきれない感謝がこもっていた。
ドラゴンと防壁
防壁づくりの手はずを整える中で、ピーちゃんは野良のドラゴンを国境近くの大穴に住まわせ、隣国の兵を遠ざける作戦を立てる。「異世界といったらドラゴン」とわくわくする佐々木は、「手乗りドラゴン」をペットに迎えたいとまで夢見るが、現れたのは想像とはまるで違う姿だった。
人や物資はマルクさんたちに調達してもらうことになり、関係各所を飛び回るうちに数日が過ぎていく。魔法の練習をする暇もなかった、次はもう少しゆっくり異世界を楽しみたい、とぼやく佐々木に、彼のささやかな願いが透けて見えた。
アバドンの使徒として
場面は再びお隣さんへ。悪魔アバドンとの契約が交わされ、天使と悪魔の代理戦争が本格的に始まる。
契約と隔離空間
契約の痛みにも声を上げずに耐えたお隣さんに、アバドンは驚く。この世には悪魔と天使がいて、本人同士が争えば世界が壊れかねないため、人間を使って代理戦争をしている。敵陣営の使徒を倒せば、願いを一つかなえてもらえる。お隣さんは、子どもを選ぶのは扱いやすいからかと冷静に問い返し、アバドンはどちらも正解だと答えた。
使徒同士が近づくと、隔離空間が展開される。敵の使徒が現れた瞬間、お隣さんは教わったとおりに「アバドン、顕現せよ」と告げる。本来の姿を現したアバドンは、相手の天使と使徒をあっという間に倒してしまった。自分は何もしていないと戸惑うお隣さんに、アバドンは、使徒の指示が文字通り自分たちの体を左右するのだと説明する。
どうして自分が選ばれたのかと尋ねるお隣さんに、アバドンは、真面目な性格の奥で世の中を憎み、いびつにねじ曲がった愛情を抱いているところが悪魔好みなのだと語る。少女の心の奥を見透かす悪魔の言葉に、ぞっとさせられた。
母との決別
帰宅したお隣さんを待っていたのは、母の怒声だった。交際相手の男のことを訴えても、母は聞く耳を持たない。嘘や言い訳ばかり、ごくつぶしと罵り、「生きられてると思ってんのよ」と叫ぶ。そして母の口から再び出たのは、「あんたなんか産むんじゃなかった」という言葉だった。
アバドンは、使徒は隔離空間の外でも、宿した力の一部を使えると教える。相手の体に軽く触れるだけで、力を吸い取ることができるのだ。母に手を伸ばしたお隣さんの姿は、まさに闇に落ちた瞬間だった。けれど彼女がとどまった理由が、母を殺せばおじさんの隣に住めなくなるから、というのがまた切ない。
「私はおじさんに生かされている」
最近忙しそうなおじさんは、しばらく顔を合わせる機会が減るかもしれないからと、お隣さんに食べるものを渡す。「私はおじさんに生かされている」。この数年間ずっと面倒を見てもらった分、自分がおじさんにお返しするのが正しいのだと、彼女は心の中で語る。
けれどその思いは、ただの感謝ではない。アバドンに願ったご褒美を使って、お隣さんはおじさんの心をかき乱そうとする。素直に好きにさせればいいのにと言うアバドンに、それでは意味がないと答える彼女の愛情は、相手に受け入れてもらうことより、相手が自分のもとへ落ちてくる過程を望むものだった。「私たちは似た者同士ですから」と言い切る自信に、歪んだ愛情の深さを見た気がした。
再び動き出す日常
何とか体の異変を乗り切った佐々木のもとに、二人静から連絡が入る。翌朝、局へ向かう前に話がしたいという。
「とても幸せなことだな」
留守番を頼まれたピーちゃんは、インターネットにいそしんでいると答える。人の姿を失ったことで、これまで見えていなかったものに気づく機会も増えたと語るピーちゃんは、文鳥としての暮らしをそれなりに楽しんでいるようだ。行ってらっしゃいと送り出され、佐々木は、送り出してくれる相手がいるのは「とても幸せなことだな」と思う。お隣さんの孤独な日々を見た直後だからこそ、この一言が心にしみた。
課長の自作自演
二人静が明かしたのは、驚きの事実だった。ボーリング場での騒動は、課長の「自作自演」だったという。騒動の場では、課長だけは絶対に殺すなという指示が全員に下っていた。ただ、それで課長がどんな得をするのかは、二人静にもまだ分からない。しばらくは上司の動きにも注意すべきだという忠告に、佐々木はうなずく。
そこへ当の課長から連絡が入る。目の前で起きている騒動の正体は、魔法少女が野良の異能力者を相手に暴れているというものだった。またあの魔法少女かとぼやきながらも出動する二人静と佐々木。日常と非日常が地続きであることを、改めて思い知らされる締めくくりだった。
まとめと考察
第1話は、お隣さんの過去と現在を軸に、異世界の貴族社会と現代の対策局の動きを同時に描いた回だった。1時間という長さを感じさせない密度で、Season2の大きな流れが示されていた。
「母と子」という題の重さ
サブタイトルの「母と子」は、お隣さんと母の関係そのものだ。子どもを守るはずの存在が、子どもを追い詰める。その中でお隣さんを生かしてきたのは、隣に住むおじさんの差し入れだった。彼女の愛情がいびつに歪んでいったのは、ほかに頼れるものが何もなかったからなのかもしれない。そう思うと、彼女を単なる危うい存在として片づけることはできない。
一方で、エルザとミュラー伯爵の親子の姿は、お隣さんの家庭とは対照的だった。娘を守るために頭を下げる父と、その父を慕う娘。同じ回に二つの親子を並べた構成が、題の重みをいっそう際立たせていたと思う。
佐々木を取り巻く三つの綱渡り
異世界では男爵となって辺境の防壁づくりを任され、現代では課長の思惑に注意しなければならない。そして隣の部屋には、悪魔の力を手に入れたお隣さんがいる。佐々木の周りで同時に張り詰めていく三つの糸が、これからどう絡み合っていくのか。
それでも佐々木とピーちゃんの穏やかなやりとりがあるからこそ、この物語は重くなりすぎない。一人と一羽がどんなスローライフを手に入れられるのか、Season2の行方を見届けたい。




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