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雨の日の商店街に現れた暴れ馬の男にさらわれ、気がつけば花嫁衣装を着せられていたらんま。男は格闘茶道大文字流の家元のひとり息子、大文字煎太郎だった。気の進まない縁談を破談にするため、家元のおばあさまの挑発に乗ったらんまは、格闘茶道の試合に挑むことになる。花嫁衣装の誘拐劇、正座で戦う地獄の特訓、そして縁談相手の意外な正体まで、第4話を振り返る。




第4話 暴れ馬と花嫁衣装
第3期第4話(第28話)「格闘茶道どす」は、格闘茶道大文字流の家元のひとり息子、大文字煎太郎が巻き起こす縁談騒動の回だった。暴れ馬とともに現れた煎太郎にさらわれたらんまが、なぜか花嫁衣装を着せられ、格闘茶道の試合に挑むことになる。どこまでも真剣なのにどこまでもばかばかしい、らんまらしさ全開の一話を振り返っていく。
暴れ馬の男
雨の日の商店街に、気絶した男を乗せた暴れ馬が突っ込んでくる。危ないところを止めたのは女のらんまだった。助けられた男は「お礼に一服差し上げます」と、その場でお茶を点てる。「礼を言われるほどのこっちゃねーが」と口にしたお茶の正体は、なんと「痺れ薬どす」。目を覚ましたらんまが着せられていたのは、真っ白な花嫁衣装だった。
三日二晩走り回って、ようやく強い娘に巡り会えたと喜ぶ男の言葉に、らんまはあきれるしかない。「今日さらっておいて何をぬかしやがってんだ」と怒って帰ろうとするらんまを、男は必死に引き留める。出会いから誘拐、花嫁衣装までがあっという間に進む冒頭のテンポのよさに、思わず笑ってしまった。
助けた相手に一服盛られるという展開は理不尽そのものだが、煎太郎に悪気がまったくないのがこの回の面白さだ。本人はいたって真剣に、自分の未来を守るための最善策だと信じている。だからこそ、らんまの怒りと煎太郎の必死さがかみ合わず、会話のたびに笑いが生まれていく。はんなりとした京言葉で次々ととんでもないことを言う煎太郎のキャラクターは、ゲストとしてとても強い印象を残した。
格闘茶道大文字流
男の正体は、格闘茶道大文字流の家元のひとり息子、大文字煎太郎。跡目相続のための縁談が持ち上がっているが、その相手がどうしても好きになれない。そこで自分が選んだ娘が格闘茶道で縁談相手を打ち負かせば、破談に持ち込めると考えたのだという。
そこへ現れた家元のおばあさまは、日本最強の格闘茶道の使い手を相手に、どこの馬の骨とも分からない娘では無理だと言い放つ。黙っていられないのがらんまだ。「格闘と名のつく者に負けたことはねえんだ」、「この勝負受けてやろうじゃねえか」。売られたけんかは必ず買う、らんまの負けず嫌いが、話をますますややこしくしていく。勝てば煎太郎の嫁として認めると言われ、らんまがきょとんとする顔もおかしかった。
格闘茶道という言葉の響きだけで、もう面白い。茶道の静かな所作と格闘技の激しさという、本来なら正反対のものを一つにしてしまう発想は、らんまの世界ならではのものだ。格闘新体操や格闘ペアスケートに続いて、また一つ奇妙な格闘技が加わったことに、シリーズを見てきたファンとしては思わずうれしくなってしまう。
あかねの登場と地獄の特訓
茶杓を届けに来たあかね
らんまがさらわれたことを知り、屋敷に乗り込んできたのはあかねだった。手には、煎太郎がどこかでなくした茶杓。あかねは自分がらんまの代わりに試合に出ると申し出る。茶道の心得ならある、「習ったことあるもん」と胸を張るあかねの姿に、煎太郎もすっかり心を奪われてしまう。
けれど、らんまはそれを許さない。「俺が試合に出るからよ」。そして続けて「この日本一不器用な女を」「鍛え上げる自信があんのか」と言い放ち、あかねに「誰が日本一不器用だ」と怒られる。口は悪いが、あかねを危ない試合に出させたくないという気持ちが透けて見えて、なんともらんまらしい守り方だった。
あかねに試合をさせたくない理由を、らんまは決して素直には口にしない。日本一不器用だとからかうことでしか、心配する気持ちを表せないのだ。あかねもまた、そんな言い方をされて素直に引き下がるはずもなく、二人はいつものように言い争う。それでも、らんまがあかねを危険から遠ざけようとしていることは、見ている側にはしっかりと伝わってくる。
一方で煎太郎は、試合はらんまに頼むが結婚だけはお断りすると言い出す。「誰がおめえの嫁になりたいと言った」と言い返すらんまとのやり取りは、すっかり漫才のようだった。
正座で戦う特訓
格闘茶道の基本は正座。「すべての戦いは正座の姿勢で行われます」という説明どおり、煎太郎は正座のまま驚くほどの速さで細長い部屋を移動していく。手を使って追いかけるらんまに、いざという時に手が使えないと苦労すると忠告が飛ぶ。秘密は「足の指の力で」動くこと。コツをつかんだらんまが喜ぶのもつかの間、「地獄の特訓じゃ」と厳しい稽古が始まる。
正座のまま足の指の力だけで素早く移動するという格闘茶道の基本は、言葉にすると冗談のようだが、らんまが本気で身につけようとする姿には妙な説得力がある。どんな奇妙な格闘技でも、真正面から向き合って自分のものにしてしまうのがらんまの強さだ。特訓の場面は笑いどころでありながら、らんまという武道家の根っこの部分をしっかり見せてくれていた。
特訓の途中、らんまが本当は男だと知った煎太郎は、とたんに容赦がなくなる。男だと思ったら手のひらを返すのかとらんまが怒り、二人のけんかはますますヒートアップ。真剣な特訓とくだらない言い争いが同じ温度で描かれるのが、この作品の楽しいところだと思う。
女だと思っていたときは丁寧だったのに、男だと分かった途端に態度を変える煎太郎は、なかなかに分かりやすい人物だ。らんまにとっては腹立たしいことこの上ないが、こうした手のひら返しもまた、女の姿と男の姿を行き来するらんまならではの騒動と言える。性別が変わる体質に振り回される日常のおかしさが、ここでもしっかり描かれていた。
第4話のまとめ考察
縁談相手は猿
それにしても、縁談相手はどんな人なのか。家柄は申し分なく、ミス茶道にも選ばれた明るい人柄だと聞き、らんまは何が不満なのかと首をかしげる。ところが試合当日、現れた縁談相手はどう見ても猿だった。「何が悲しうてサルと勝負せにゃならんのだ」と帰ろうとするらんまに、「小柄で可愛いお人じゃありませんか」、「少し野性味あふれるお人どすが」と真顔で返されるやり取りには大笑いしてしまった。
「お似合いだよおめーら」と茶化すらんまだったが、結局は格闘茶道の流儀で勝負することに。正座のまま繰り出される茶道具を使った技の数々は、どれも真剣そのもので、だからこそ笑える。猿と互角に渡り合うらんまの姿に、これなら嫁にしても恥ずかしくないという声まで上がるのが可笑しかった。
正座のまま茶道具を武器にして戦うという絵面は、真剣であればあるほどおかしい。茶釜や茶杓までが次々と技に組み込まれ、静かなはずの茶室がたちまち戦場に変わる。動きの一つ一つが丁寧に作画されているからこそ、ばかばかしさが際立っていた。猿相手に本気で戦うらんまの姿にも、負けず嫌いな性格がよく表れている。
煎太郎の妙案とあかね
試合を見守るあかねに、煎太郎は思う人はいるのかと尋ねる。らんまの名前を出されたあかねは「あんなやつ別に」とそっぽを向くが、その反応がかえって二人の関係を物語っていた。そして煎太郎は「妙案が浮かびました」と、らんまと縁談相手を相打ちにさせて、あかねと結婚しようとたくらむ。
煎太郎があかねに惹かれたのは、茶杓を届けてくれた優しさと、らんまの代わりに試合に出ようとする度胸に心を動かされたからだろう。あかねの魅力は、まっすぐな気の強さと、困っている人を放っておけない優しさが同居しているところにある。らんまが口では悪く言いながらもあかねを守ろうとするのも、きっと同じ魅力に気づいているからなのだと思う。
再び「痺れ薬どす」を持ち出す煎太郎に、あかねは「お断りよ」ときっぱり。ここで本物の縁談相手が姿を現し、すべての真相が明らかになる。お見合いの日を心待ちにしていたのに、いざ当日になると恥ずかしくなって替え玉を立てたのだという。「猿を身代わりに立てるほうがよっぽど恥ずかしいわ」というあかねのツッコミが、視聴者の気持ちをそのまま代弁していた。
替え玉という真相が明かされたことで、それまでの騒動がすべてひっくり返るのも気持ちがいい。猿を相手に本気で特訓し、本気で戦ったらんまの苦労はなんだったのかと思う一方で、誰も傷つかずに丸く収まる結末は、この作品らしいやさしさでもある。笑いの裏にある温かさが、最後まで心地よかった。
本物の縁談相手は「わたくしでよければ」と応え、煎太郎もすっかり心を奪われる。縁談はめでたくまとまり、名前を呼び合う二人の姿で騒動は一件落着。「あたしもうおなかすいてきちゃった」と帰り支度をするあかねのさっぱりした反応もよかった。
恥ずかしくて替え玉を立ててしまった縁談相手と、縁談から逃げ回っていた煎太郎。互いに相手のことをよく知らないまま、すれ違っていただけの二人だったのかもしれない。顔を合わせてみれば、あっという間に意気投合してしまうのだから、縁談というのは不思議なものだ。騒動の発端からは想像もできない、ほほえましい結末だった。見ているこちらまで幸せな気分になる。
振り返ってみると、第4話は素直になれない人たちの物語だった。好きな相手の前で恥ずかしくなって替え玉を立てた縁談相手、自分の結婚から逃げ回っていた煎太郎、そしてあかねを試合に出させまいと口の悪さでごまかすらんまと、らんまのことを聞かれてそっぽを向くあかね。縁談騒動のばかばかしさの中に、らんまとあかねの不器用な関係がさりげなく重ねられていて、二人を見守りたくなる回だった。
一件落着した後、天道家に戻ってからの穏やかな空気も印象的だった。縁談がとんとん拍子でまとまった煎太郎たちをうらやむような声も聞こえ、らんまとあかねの関係がなかなか進まないことへのささやかな皮肉にも聞こえる。それでも最後にまた暴れ馬が現れて、らんまが振り回される気配で締めくくられるあたり、この作品らしいにぎやかさは最後まで健在だった。




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