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ロマンティカの故郷フリレチアで、イエローオーシャン・チャンピオンシップが開幕した。ロマンティカ、アゼスト、プラムが順調に勝ち進む一方、デジールはジョードやプリシーラと共に西方王国会議へ出席する。アウターの脅威をめぐる議論のさなか、城を未曾有の異変が襲うのだった。疑われるヘブリオン帝国、カラスの仮面の男、そして罠を見抜いたデジールの読みまで、第16話を振り返る。




第16話「ビギニング」
平穏が崩れ始めた回
『帰還者の魔法は特別です 第2期』第16話「ビギニング」は、イエローオーシャン・チャンピオンシップでのロマンティカたちの快進撃と、西方王国会議で起きた未曾有の事件が並行して描かれた回だった。順調に勝ち進む3人と、各国の思惑が渦巻く会議。そこへ突如として放たれた最上級魔法と、カラスの仮面の男。副題の通り、新たな戦いの始まりを告げる一話を場面ごとに振り返っていく。
前回、ロマンティカの故郷フリレチアで交わした約束。何があっても逃げろというデジールの言葉が、早くもこの回で重みを持ち始める。平和な大会の空気と、会議の緊張感の落差がとても印象的だった。
西方王国会議とアウター
我々が観測できなかった影の世界
西方王国会議の議題は、多数発生している影の世界について。そこで懸念事項として挙げられたのが、犯罪者の集まりとされるアウターの存在だった。各国が観測できなかった影の世界が、すでにアウターの手で攻略されていた。もしアウターが自分たちより優れた技術を持っているなら、大きな脅威になるかもしれない。
意見を求められた魔塔主のジョードは、2か月前に魔塔がアウターに襲撃されたこと、その際に幹部と思われる者を捕らえ、尋問で計画の一部を阻止したこと、さらに魔塔に潜入していた内通者もあぶり出したことを明かす。そのうえで彼が示したのは、技術ではなく「各国にもアウターが潜んでいるかもしれない」という可能性だった。
そう、ヘブリオン帝国だ
ジョードの指摘に、会議はざわつく。魔塔に内通者がいたからといって自分たちを疑うのは短絡的だと反発する声が上がり、矛先は別の方向へ向かう。西方王国の敵はアウターだけではない。自分たちに気づかれずに影の世界を攻略できる者たちがいるではないか。「そう、ヘブリオン帝国だ」。
帝国は西方王国より優れた技術を持っている。だから魔法石を集めるために犯罪者と手を組んだと考えるのが自然だという主張に、帝国ならやりかねないと同調する声まで上がる。デジールたちはヘブリオン学園から来た身。疑いの目がそのまま自分たちへ向けられかねない空気に、見ているこちらまで息が詰まった。
会議の外では、「毎年これだ」という冷めた声も聞こえる。どの国が最初に仕掛けるかで議論になり、結局その先に進まない。そうやって平和は維持されているのかと納得しつつ、いっそチェスで決めたほうが時間も労力も無駄にならないという皮肉が飛ぶ。一触即発に見えて実は膠着している、この世界の危うい均衡がよくわかる場面だった。
イエローオーシャン・チャンピオンシップ
人は生まれを選べないからね
一方、大会の会場ではロマンティカたちが順調に勝ち進んでいた。ところが、ヘブリオン学園から来た氷の魔剣士として紹介されたアゼストには、観客から厳しい反応が向けられる。いつ戦争が始まってもおかしくないほど仲が悪い国同士。会議でのヘブリオン帝国への疑いが、そのまま会場の空気にも表れていた。
同じ学園の生徒なのに、ロマンティカのときは大歓声だったのはなぜか。答えは、学園の名前を出していないうえに、実家がここでは有名だから。結果がよければすべてよしと笑うロマンティカのちゃっかりぶりが可笑しい。地元の有名な家の娘という立場を、ここぞとばかりに活かしているのがいかにも彼女らしい。それでもアゼストを心配する声には、こんなことを気にするたまじゃないと言い切るあたり、仲間への信頼がにじむ。
対戦相手はアゼストに「同情するよ」と声をかけ、人は生まれを選べないからねと続ける。だが勝負の世界は非情だと全力で挑んでくる相手を、アゼストは冷静に受け止め、最後は鮮やかに勝利をつかんだ。生まれではなく実力で黙らせる。氷の魔剣士らしい、気持ちのいい一戦だった。
一度くらい本気でやりたい
午前の競技を終え、3人とも勝ち上がれたことを喜ぶ一行。ロマンティカは当然と言いたいところだけど、地獄の特訓のおかげだと認める。午後はチーム戦に3人でエントリーし、その後は個人戦。先に当たるのはロマンティカとアゼストだ。「一度くらい本気でやりたいって思ってた」という言葉に、そうだなと応じる二人のライバル関係が熱い。
そこへプラムが、二人とも頑張ってくださいと言いつつ「優勝するのは僕ですけど」と割り込む。言うじゃないと返されるやり取りまで含めて、3人の距離感が本当にいい。シリアスな会議の場面と交互に描かれるからこそ、こうした和やかな時間がいっそう貴重に感じられた。
ただ、その空気も長くは続かない。何者かの気配を感じ取り、どこまでも落ち続ける深淵の世界のような闇のマナに触れて、仲間の一人が苦しむ。偽りの平和、嘘で固められた玉座、ならば破壊しよう。謎の人物の独白が、このあとに起こる事件を静かに暗示していた。
カラスの仮面の襲撃
不吉な予感
会議の場で、デジールは肌が泡立ち、鼓動が早まるのを感じる。「あの頃にも何度もあった」不吉な予感。一度目の人生で何度も味わった感覚が、危険を知らせていた。次の瞬間、城を覆うほどの最上級魔法エクリプスが炸裂する。ジョードが守ってくれたおかげで聖女プリシーラも無事だったが、警備の兵は全滅していた。
同じころ、会場の街でも異変が起きていた。ロマンティカのおかげで助かったという声が上がり、城のほうで爆発が起きたと知るや、真っ先にデジールの名を呼ぶ声が上がる。離れていても、互いを思う気持ちは変わらない。
ジョードは、彼らのうち誰か一人でも欠ければ世界の均衡は保てなくなると言って、デジールに避難を優先させる。各国の代表を守り抜こうとする姿勢に、魔塔主としての責任の重さが表れていた。誰が狙われたのかもわからない混乱の中で、まず全員を生かすことを最優先にする判断の速さはさすがだ。
死よりも辛い目に遭ってもらっただけさ
姿を現したのは、カラスの仮面をつけた男だった。互いに嫌悪をむき出しにする中でも、ジョードはさっさと片付けてチェスでもしようと余裕を崩さない。捕らえたアウターの幹部の名を口にし、その名をどうやって聞き出したのかと問われると、口を割るくらいなら死を選ぶはずの相手に、死よりもつらい目に遭ってもらっただけだと平然と答える。穏やかな口調の奥にある、ジョードの底知れなさにぞっとした。
空間魔法で場所を移し、二人の戦いが始まる。この世界の秩序を乱し、罪なき者たちを苦しめているのは君だと告げるジョードに、男はまるで世界の中心が自分たちであるかのような物言いだと反発する。秩序と繁栄は我らの力によるもの、傲慢ではない誇りだよ。二人の価値観は真っ向からぶつかっていた。
激しい魔法の応酬の末、男が最上級魔法エクリプスを任意のタイミングで発動させていたことが明らかになる。かつて革命の時に失われたはずのものを、なぜ持っているのか。「質問しなければならないことが増えてしまったようだ」というジョードの言葉で、この男の背後にあるものの大きさが一気に浮かび上がった。男は、次に会うときは殺してやると言い残し、空間魔法で姿を消す。
本当に、ジョードに似ていますね
一方、プリシーラと共に脱出したデジールは、正門に仕掛けられていた罠を見抜いていた。理由を問われたデジールは、「脱出できる場所が正門だけだったからです」と答える。城全体を覆うほどの魔法を使ってきた以上、出席者の誰一人として生かしておく気がなかったはず。だとしたら、失敗した場合にも備えていると考えたのだ。
仮面の男が自分たちをここへ逃げるよう誘導し、罠を張っていた。その読みに、プリシーラは「本当に ジョードに似ていますね」と口にする。前回に続いてのこの言葉には、デジールの思考がすでに魔塔主に近いところまで来ているという驚きがこもっていた。
けれど、事件はこれで終わらなかった。ある国王は別行動は危険だという制止を振り切り、「テロ一つ防げない無力な国王のせいでな」と言い放って国元へ帰ってしまう。フリレチアを西方王国会議に加えたのは間違いだったという言葉まで残して。王を守ってくれたことに感謝する従者の一言が、かえって国同士の亀裂の深さを感じさせた。
戻ってきたジョードは、男に逃げられたこと、そして街にも被害が出ていることを告げる。後のことは任せて、パーティーの元へ行きなさい。心配なのだろうと背中を押されたデジールは、仲間たちの無事を祈りながら走り出す。「みんな無事でいてくれ」という叫びで、物語は幕を閉じた。
第16話のまとめ考察
偽りの平和の崩壊
第16話は、「ビギニング」という副題の通り、これまでかろうじて保たれていた西方王国の平和が崩れ始める回だった。互いを疑い合いながらも、どの国も最初の一手を打たずにいた膠着状態。そこへカラスの仮面の男が放った一撃は、ただのテロではなく、各国の不信感に火をつける引き金になった。国王が去り際に残した言葉は、その亀裂が決定的なものになりつつあることを示している。
仮面の男の独白にあった、偽りの平和と嘘で固められた玉座。男には男なりの正義があるらしいことも、単純な悪役では終わらない予感を抱かせる。失われたはずの力を持つ理由も含めて、アウターの全体像はまだまったく見えていない。
ジョードとデジール、二人の頭脳
今回改めて感じたのは、ジョードとデジールという二人の頭脳の頼もしさだ。ジョードは圧倒的な魔法の力と冷徹な尋問で敵を追い詰め、デジールは一度目の人生で培った経験と読みで罠を見抜く。プリシーラが二人を似ていると評したのも納得で、この二人がいるからこそ、最悪の事態はぎりぎりで避けられたと言える。
そして最後に残ったのは、仲間を思うデジールの叫び。どれだけ頭が切れても、デジールが戦う理由はいつも仲間を守るためだ。前回の約束を抱えて、彼が無事に仲間の元へたどり着けるのか。大会と事件がどう交わっていくのか、続きが待ち遠しい。




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