『百妖譜 第3期【京師篇】』第4話「非非(下)」感想|30年の眠りと陳白水への贈り物

『百妖譜 第3期【京師篇】』第4話「非非(下)」感想|30年の眠りと陳白水への贈り物 ファンタジー

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取りついた人の願いをさかさまにしてしまう妖怪・非非。その力は、とある宦官の身勝手な欲望のために利用されていた。宦官の屋敷に押し入った山賊の中にいた陳白水は、非非をわざと見逃す。黒猫の姿を借りて陳白水についていった非非が、最後に選んだ願いとは。宦官と非非の力、陳白水に取りついた本当の理由、そして奪われた30年の行方まで、第4話を振り返る。

アニ
百妖譜第4話でござる
ラン
非非の下編なんだって
キャロ
陳白水さんの過去が気になりますね。
アニ
非非の願いに注目でござる

第4話「非非(下)」

願いを逆さまにする妖怪の物語

『百妖譜 第3期【京師篇】』第4話「非非(下)」は、前回の陳白水の過去に続いて、彼に取りついていた妖怪・非非の側から物語が描き直された回だった。願いをすべて逆さまにしてしまう非非が、なぜ陳白水のそばにいたのか。奪われた30年と、非非が最後に選んだ願い。前編で積み上げられた不幸の意味が、一つずつひっくり返っていく一話を振り返っていく。

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前回のラストで名前だけが呼ばれた非非が、ついに姿を現す。報いだと思われていた陳白水の不運には、まったく別の理由があった。

願いはどれも良いものなのに

これが人生最後の願いなのだ

磨牙の荷物を漁り、首まで絞めた陳白水。我に返った彼は、手荒なことをしたと謝り、出家の証となる書状を見たかっただけだと打ち明ける。「これが人生最後の願いなのだ」。何一つ思い通りにいかなかった自分には、仏にすがり加護を求めるしかない。その言葉に、彼の人生の重さがにじむ。

磨牙は静かに問いかける。愛する人のために金を稼ごうとして盗賊になり、生計を立てようとして偽物を売り、猫を長生きさせようとして餌をやりすぎて死なせた。そして今夜も寺を知りたかっただけなのに、首を絞めて殺そうとした。「願いはどれも良いものなのに」、いつもやり方を間違えるのはなぜなのか。前回の積み重ねを一言でまとめるこの問いが、今回の物語の入り口になっていた。

全部あんたのせい

その答えを握っていたのが、小さな緑色の妖怪、非非だった。陳白水が願いを叶えられないのは全部あんたのせいなのか。桃夭を呼びつけておきながら隠れていた非非は、おばあさんだと思っていたらこんな小娘だったと言い返す。近づかないでくれと距離を取る桃夭とのやり取りが可笑しい。霊医なのに妖怪に触られるのを嫌がる理由が、博打で勝ちたいからというのも桃夭らしかった。

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そんな非非が桃夭に頼んだのは、陳白水を助けてほしいということだった。彼は悪い人じゃないからという非非に、桃夭はさっき仲間を絞め殺そうとしたのにと返す。それでも非非は、本当に悪い人なら食事に毒を入れていたと言い切る。そして明かされたのが、陳白水があんなふうになったのは、自分が30年分の幸せを奪ったからだという告白だった。

宦官と非非の力

願いを逆さまにする力の使い道

非非の過去は、ある宦官の屋敷から始まる。呪術を得意とする宦官は、非非の使い方が記された貴重な書物を持っていた。皇太子が長生きするように、将軍が無事に凱旋するように。表向きは祝福の言葉でも、非非の力を通せばそれはすべて逆さまになる。宦官は願いを逆転させる力を、呪いとして使っていたのだ。

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宦官は宮中を出てからもずっと馬鹿にされ続けていた。その仕返しのために非非の力を使い、彼を馬鹿にした二人の若者は山賊に斬り殺され、気に入らない者たちは破産したり家族が散り散りになったりした。けれど人の願いを逆転させるうちに宦官は年老い、自分の願いは何一つ叶わなかった。人を呪い続けた果ての空しさが、静かに描かれていた。

屋敷の窓や壁を埋め尽くすように書かれた恨みの言葉も、宦官の心の荒み方を物語っていて不気味だった。願いを逆さまにする力は、使う人間の心によって祝福にも呪いにもなる。この場面は、のちに桃夭が語る言葉への伏線にもなっていたように思う。

なんで僕を見逃したんだろう

そんな屋敷に押し入ったのが、陳白水たち山賊だった。妖怪を見つけた仲間は始末しろと命じるが、陳白水は非非をわざと見逃す。ところが山賊たちは、非非の力の使い方が書かれた書物の入った箱を持ち去ってしまう。書物を取り戻すため、そして見逃してくれた理由を知るため、非非は陳白水を追うことになる。

仲間に囲まれた中で、たった一人だけ妖怪を見逃した陳白水。仲間から結婚の資金をからかわれる様子からも、彼が根っからの悪人ではないことが伝わってくる。この小さな情けが、二人の長い因縁の始まりだった。

山賊の陳白水と黒猫

恩を返したい

非非が借りたのは、死んだ黒猫の体だった。猫が喋ったと驚く陳白水に、非非は自分は妖怪の一種だと名乗る。人間は自分たちを万物の支配者だと言うのに、なぜ人から奪った金で妻をもらおうとしているのか。痛いところを突かれた陳白水は、そんなに口が達者だと知っていたら逃がさなかったと苦笑いする。

逃がしてくれた恩を返したいという非非を、陳白水は最初は追い払おうとする。それでも、仲間はみんな死んでしまい、知り合いは君だけだと言われると、餌の魚を買う金はないぞと言いながら連れて行く。猫じゃないから魚はいらないと言っても、いいから食えと差し出す陳白水。山賊のくせに猫には優しい、本当に変な人だという非非の言葉が、陳白水という人間をよく表していた。

山賊の砦に入るときに受けたという三つの試練の話も印象的だ。火の道を歩き、酒を飲み、崖を登る。新入りがつらそうにしていたと話す非非に、自分もやった、崖から落ちなかったのは運が良かっただけだと答える陳白水。嘘つきと疑われて証拠を見せるやり取りには、二人の距離が少しずつ縮まっていく温かさがあった。

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しょんぼりキャワ #hyakuyoufu #百妖譜

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堂々と彼女を妻にして

山賊になったのは、好きな人を娶るためだった。相手の親に一年で百貫貯めろと言われ、手っ取り早い方法を選んだのだという。彼女は駆け落ちしようと言ったが、親不孝はさせられない。「堂々と彼女を妻にして」穏やかに暮らし、添い遂げたい。手を血で染めて結婚したらと心配する非非に、誰も殺していないと答え、最後の大仕事をすれば足を洗えると語る姿は、どこまでもまっすぐだった。

そして陳白水は、非非に願い事はないのかと尋ねる。願いを逆さまにする妖怪に、何かを願う資格なんてない。そう答えかけた非非の言葉が、後の展開に重く響いてくる。

僕を殺してほしい

道を踏み外して欲しくなかった

商人を襲撃する最後の大仕事の日。誰一人生きて返すなという命令のもと、陳白水も出ていく。これがうまくいったら、お前を連れて求婚に行く。そう言い残した陳白水を、非非は止めるしかなかった。「道を踏み外して欲しくなかったんだ」。非非が陳白水に取りついたのは、彼を人殺しにしないためだったのだ。

けれど、取りつかれた陳白水の願いはすべて逆さまになる。人殺しにならずに済んだ代わりに、彼の人生はそこから30年、何一つうまくいかなくなった。書物も、山賊たちが退治されたときに建物ごと焼かれてしまっていた。非非の願いが結果として陳白水の人生を壊したという皮肉が、あまりにも切ない。

願い事はないのかと聞かれ、願う資格なんてないと答えかけた非非。それでも心の中には、陳白水に道を踏み外してほしくないという願いがあった。願いを逆さまにする妖怪の願いだけは、逆さまにならずに叶ってしまった。そう考えると、この30年の不幸はなおさら重く感じられる。

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僕の命は自分ではどうすることもできない

非非が桃夭に頼んだ本当の願いは、自分を殺してほしいということだった。非非が死なない限り陳白水の願いは永遠に叶わない。けれど、陳白水が生きている限り、何をされても非非は死なない。だから霊医である桃夭を呼んだのだ。

桃夭は、陳白水が山賊になったのは自業自得だと突き放しつつ、金の鈴は鳴っていないから殺すつもりはないと言う。それでも、僕を消してあの人を救ってよと食い下がる非非に、ついに願いを叶えると約束する。死んだら体は好きにしていいという非非との契約。その最後に、非非はもう一つ頼みごとをしていた。

家族の居場所

翌朝、陳白水は出家をやめたと告げ、遠くへ旅立つ。手紙が届き、家族の居場所がわかったのだという。彼の想い人だった蓮は、身ごもったまま遠くの町へ移り住み、女の子を産んで、母娘で支え合いながら暮らしていた。そして蓮は、結婚していなかった。

陳白水に娘がいること、そして母娘の居場所を知っていたのは非非のほうだった。妖怪の多いこの世では、調べるのは簡単だという。非非のもう一つの頼みは、陳白水を家族のもとへ導くことだったのだ。陳白水本人は、自分のために動いた妖怪がいたことを知らない。知らせるわけがない、というひと言に、見返りを求めない優しさがあふれていた。

第4話のまとめ考察

奪った30年を返すということ

磨牙が、非非を殺していないのかと尋ねると、桃夭は鈴は一度も鳴らなかったと答える。非非を30年眠らせるくらいたやすいこと。その時間を陳白水に返したのだという。殺すのではなく眠らせることで、陳白水から奪った30年を彼に返す。誰も傷つけずに願いを叶えた桃夭のやり方が、とても温かかった。殺してほしいと頼んだ非非の願いを、言葉通りではなく、その奥にある本当の願いのほうで叶えてみせたのが見事だ。

前回、陳白水は報いを受けた人として描かれていた。けれど今回、その不幸は彼を人殺しにしないための代償だったことがわかる。願いを逆さまにする妖怪が、一人の人間の道を守ろうとした。その願いは結果として彼を苦しめたが、最後には桃夭の手で正しい形に戻された。前後編を通して見ると、とても美しい構成だったと思う。

刀を振るう人間

桃夭は、非非がまた誰かに悪用されることを案じつつ、「私が殺すとしたら刀じゃなくて刀を振るう人間よ」と言い切る。妖怪の力そのものに罪はなく、それをどう使うかを決めるのは人間だ。宦官は非非の力で人を呪い、非非は同じ力で陳白水を守ろうとした。力の善し悪しを決めるのは使う者の心だという、この作品らしいメッセージが込められた一言だった。

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「私が殺すとしたら、刀じゃなくて刀を振るう人間よ」金言きたな… #hyakuyoufu #百妖譜

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30年ぶりに家族のもとへ向かう陳白水と、静かに眠りについた非非。互いの存在を知ることのないまま、それぞれの願いが叶った結末に、しみじみとした余韻が残る。京師篇の中でも、特に心に残るエピソードになった。人と妖怪の関わりを描くこの作品の魅力が、前後編の二話にぎゅっと詰まっていたと思う。

アニ
優しい結末でござった
ラン
黒猫の非非がかわいかった
キャロ
陳白水さんが家族に会えるといいですね。
アニ
桃夭の旅を見守るでござる

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