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弱肉強食の命令で生きる意志を取り戻したエルフ姉妹を、アキラはゴブリンの村に迎え入れる。新しい服を仕立て、人間側への保護の宣言まで先回りして済ませるアキラに、姉たちは感謝を深めていく。ところがエウノミアだけは、大好きな姉を取られまいとアキラに反発するばかりだった。保護の許可、エウノミアの反発、そしてエイレーネの感謝まで、第5話を振り返る。




第5話 村に迎えたエルフ姉妹
生きると決めたその後
第5話「思春期エルフに嫌われてるんだけど質問ある?」は、前回のラストで弱肉強食の命令によって生きる意志を取り戻したエルフ姉妹のその後から始まる。「生きればいいのね」という言葉のあと、ディケは「二人を助けてくれて何とお礼を申し上げてよいか」と深く頭を下げ、「ディケはアキラ様のためにこの身を捧げます」とまで言い切る。
それに対するアキラの返しは「大げさだな」のひと言。命を救ったことを恩に着せず、まずはボロボロの服を新調させ、手の空いたゴブリンに風呂の世話まで頼む。助けた相手を支配の対象ではなく、村の新しい住人として迎える。その順番の付け方に、アキラという村長の人柄がよく出ていた。
生きる意志を失っていたエルフにとって、命令ひとつで生き返るというのは、ある意味では恐ろしい話でもある。けれどアキラは、その力を使ったあとで相手に何かを求めようとはしない。身を捧げるとまで言うディケの重たい感謝を、軽く受け流してしまうあたりが心地よかった。
先に通知しておく理由
姉妹を引き取ると決めたアキラは、すぐにカレンへ伝言を頼む。「頼み…いや、通知かな」と言い直し、元魔王軍のエルフ姉妹を村で引き取ること、弱肉強食で抑えられるので安心してほしいことを伝えてもらう。お願いではなく通知という言い方に、アキラの立場の取り方がよく表れていた。
その理由が「こちらから保護したって宣言しておかないと」、「また彼女たちが狙われた時に」、「保護する正当性がなくなるからな」。助けて終わりではなく、その後に姉妹が人間から狙われたときのことまで考えて先に手を打っておく。カレンの「お前は本当に徹底してるな」には、まったく同感だった。
第4話では、自分を警戒する人間側の事情まで理解しようとしていたアキラ。今回もまた、相手が何を問題にするのかを先に読み、筋を通しておく。力で押し通すのではなく、手続きで自分たちの居場所を守ろうとするところが、この作品の主人公らしい面白さだと思う。
新しい服と人間たち
エチゴヤの服
新しい服に着替えた姉妹に、アキラは「よく似合ってる」、「さすがエチゴヤだな」と感心する。エチゴヤの服は人間の街にも卸していて、これが大好評でいい商売になっているというから、ゴブリンの村の手仕事は思った以上に本格的だ。
上等な服に恐縮するディケは、慣れない服で何度も転んでしまう。「ご、ごめんなさい!」と慌てる姿に、アキラが別の服を作ってもらおうかと気づかうと、ディケは「だ、大丈夫です!」と首を振り、「この格好が… 嬉しそうだったから…」と小さくこぼす。聞き返されて「な なんでもないですぅ!」とごまかすまでの流れが、とにかくかわいらしかった。
命令で生きる意志を取り戻したばかりのディケが、アキラの反応ひとつで照れたり慌てたりしている。そこにはもう、無気力な病の影はない。ドジを繰り返す姿も含めて、ディケが少しずつ自分の感情を取り戻していく過程を、コメディの中で見せてくれた場面だった。
保護の許可と王子
辺境伯のもとへ向かったカレンは、驚くほど早く戻ってくる。「許可が下りたぞ」、「ずいぶん早いな」。辺境伯と王子殿下の連名で、「今後お前が魔族を保護しても問題視しないそうだ」という。動きやすい服をエチゴヤに作ってもらったカレンに、アキラが「それ似合ってるな」と返すさりげなさもよかった。
ただ、アキラはその早さに引っかかる。「タイミングからして前もって準備されていたに違いない」。カレンによれば王子は「とにかく完璧なお方だ」、「失敗したという話は全く聞かない」。そこからアキラは、王子のスキルを「失敗を帳消しにできるものだろうな」と推理し、「考えられるのは時間の巻き戻しかやり直し」とまで踏み込む。
前回の対面で感じた違和感を手がかりに、相手のスキルの正体を少しずつ絞り込んでいく。許可が出たことを素直に喜ぶだけで終わらず、その裏にある相手の思惑まで読もうとするところが、アキラの油断のなさだ。王子との駆け引きは、まだ始まったばかりなのかもしれない。
入れ墨という抑止力
もうひとつの問題が、村にちょっかいをかけてくる人間たちだった。これまでアキラたちは侵入者を大した怪我もさせずに追い払ってきたが、そうなると「追い払われたが大した怪我もない」、「という結果だけが残る」。アキラはすぐに、「俺ならもっと上手くやれるって思う奴らが出てくるわけか」と気づく。
そこで選んだのが、侵入者への入れ墨だった。「人によっては死ぬよりつらいだろ」というほどの罰で、カレンも「入れ墨を刑罰に使う発想はこの国にはないのか」と聞かれて「聞いたことがないな」と答える。前世の知識を持ち込んだアキラらしい発想で、「しばらくは侵入者にこれをプレゼントすることにするよ」と言い切る軽さが妙に怖い。
殺さず、それでも二度と来たくなくなる罰を考える。「つまり今までの対処は失敗だったというわけだ」、「ならやり方を変えるしかないな」と、自分たちのやり方が失敗だったと認めてすぐに切り替えるところも、アキラの強みだと感じた。優しさだけでも、怖さだけでも村は守れない。そのさじ加減を探る村長の顔が見えた場面だった。
エウノミアの反発
肉じゃがと宣戦布告
ディケは「マサムネさんからお料理を学びました」と、アキラのために料理を用意する。ところが、その様子をにらみつけていたのがエウノミアだった。「あんたなんかに」、「あんたなんかにディケお姉さまは渡さないんだから」。いきなりの宣戦布告に、アキラも「はい?」と返すしかない。
出てきた料理は、なんと肉じゃが。「すごい、この世界に肉じゃがを発明したのか」と驚くアキラは、「ディケはいいお嫁さんになるよ」と手放しでほめる。対抗心を燃やしたクロエが「クロも! クロも次は一緒に作るのだ!」と名乗りを上げるのもかわいらしく、食卓が一気ににぎやかになった。
一方のアキラは、「嫌われてるなあ」とこぼしつつ、「ああいう子まで無気力にさせてしまう」、「エルフの病は恐ろしいな」と、エウノミアの反発をむしろ元気になった証拠として受け止めている。嫌われていることよりも、その子がちゃんと怒れるようになったことのほうを喜べるのが、アキラの器の大きさだ。
花と風呂の時間
エウノミアが姉のために摘んできたのは、昔のように部屋へ飾るための花だった。ところが、その花を受け取った姉の関心はアキラへ。「お姉さまのバカー!」と飛び出し、「これで勝ったと思わないことね!」と言い捨てて去っていくエウノミアの姿は、怒っているのにどこか微笑ましい。
風呂では、姉妹が背中を流し合いながら言葉を交わす。「心配かけてごめんなさい」と謝るエウノミアに返ってきたのは、「元気なのが一番似合うわ」という姉の言葉だった。立派な風呂がある理由も、アキラが「お風呂は体と心の両方をきれいにして」、「癒してくれるからとても大事だって」考えているからだという。
「ただのゴブリンの村ではないわ」、「アキラ様が統治している村ですもの」。姉たちがアキラを認めていくほど、エウノミアは取り残されたような気持ちになるのだろう。大好きな姉を取られたくないという、思春期らしいまっすぐな嫉妬。副題の「嫌われてる」の中身が、少しずつ見えてくる流れだった。
力を使わない理由
一人で森の見回りをするエウノミアは、「人間を警戒してるの」と言う。アキラが自分で動いている理由を「リーダーの一番大事な仕事は」、「自分の領分以外は他の者に任せられる仕組みを作ることなんだ」と説明しても、返ってくるのは「バカじゃないの」。「魔王じゃなくて村長な」と訂正するアキラとのかみ合わなさがおかしい。
そこへ、入れ墨を入れられた冒険者が仕返しにやってくる。「お前のせいで俺はいい笑い者だ」。あっさり返り討ちにしたあと、物陰で青ざめていたエウノミアがぶつけたのは、「なんで私に魔王の力を使わないのよ」、「あんたに逆らってるのに」という疑問だった。
アキラの答えは「別に害はないし」、「頭から押さえつける必要ないだろ」。「反発するくらい元気な方がディケも喜ぶし」と続け、最後に「エウノミアは元気なのが一番似合うよ」。姉が口にしたのと同じ言葉を、アキラからも向けられる。「認めない」と言い返すエウノミアに、「反抗期か」と首をかしげるアキラの鈍さまで含めて、この回でいちばん好きな場面だった。
絶対服従のスキルを持ちながら、それを使わない。エウノミアにとってそれは理解できない選択であり、だからこそ警戒もしていたのだろう。けれど、力で押さえつけない理由が自分の元気を願う気持ちだと知ったとき、反発の形も少し変わり始めたように見えた。
第5話のまとめ考察
エイレーネの感謝
夜、アキラのもとを訪れたのはエイレーネだった。「ディケから聞いたわ」、「あなたがあの人の力で助けてくれたって」。魔王のスキルを求めて森まで来たものの、「新しい持ち主の性格まではわからないから」と、それが賭けだったことも認める。
「あなたに恩義を感じているの」と、エイレーネは自分なりのやり方で感謝を伝えようとする。慌てふためくアキラの「やばいやばいやばい」と、その場面をエウノミアに見られてしまうお約束の展開には笑ってしまった。「嫌われちゃったわね」と余裕たっぷりのエイレーネに、「誤解だって」と弁解するアキラ。せっかく縮まりかけたエウノミアとの距離が、また振り出しに戻ってしまう。
それでもエイレーネは「からかってないわ」、「感謝の気持ちと本当にいいと思ったから」と言う。冗談めかした振る舞いの奥に、まっすぐな感謝があるのだと思えた。三姉妹それぞれの感謝や反発の形が違うからこそ、同じ恩人に向ける気持ちの違いがくっきり浮かび上がる。
三姉妹と村の今後
第5話は、副題どおりエウノミアの反発を軸に、エルフ三姉妹がゴブリンの村になじんでいく過程を描いた回だった。ディケは感謝から想いを深め、エイレーネは余裕を見せながらも恩義を感じ、エウノミアは大好きな姉を取られまいと反発する。三者三様の反応が、そのまま三人の性格紹介になっていた。
その裏で、アキラは人間側との付き合い方にも手を打っている。保護の宣言、入れ墨による抑止、エチゴヤの服での交易、そして王子のスキルの推理。にぎやかな日常回に見えて、村を守るための仕組みづくりが着実に進んでいるのがこの作品らしいところだ。ラストでは、姿を消したエウノミアを探しに出るアキラの姿で幕を閉じた。
力で押さえつけないアキラのやり方は、エウノミアのように反発する相手にこそ時間がかかる。けれど、だからこそ心を開いたときの関係は強くなるはずだ。反抗期のエウノミアがいつアキラを認めるのか、三姉妹が加わった村がどう変わっていくのか、これからの展開が楽しみになった。




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